湧水めぐり・まち歩き 藤川格司

水を調べている日々を書き込む予定です。最近は熱海のまち歩きを楽しんでいます。

宮古島の水環境03 地質と水質

2019年02月21日 | 水文と環境
宮古島の水環境03
今回は宮古島の地質と地下水の水質について説明します。



友利アマガーを調べている2018年度の宮古島探検隊のメンバーです。
宮古島の調査は、2015年に予備調査に入り、2016年から4年生の卒業論文として調査してきました。3年間継続して宮古島市上下水道局をわずらわして、研究してきました。のべ15名の学生が参加しました。



島の地下水のモデル図です。淡水レンズを形成します。淡水と海水の密度差により、海水の中にポッカリ浮いています。



宮古島は、標高 30~80m の平坦な隆起サンゴ礁の島を形成し、島の大部分は第四紀更新世 琉球石灰岩によって覆われ、その下部には固結した泥岩を主体とする島尻層群が広く分布する。 水理地質的には、島尻層群を不透水層として上位の層厚 30~70m の琉球石灰岩が宮古島の地 下水帯水層となっている。この琉球石灰岩は、間隙に富み、地層の約10%が地下水を含有して いるため優秀な地下水帯水層の能力を持っている。さらに、この島は、北西-南東方向の断層 が約 1~2km 間隔で発達しており、この断層の間隔ごとに独立した地下水盆を形成している。 そのため、この地下水は、それぞれの地下水盆ごとに島の主として南北方向に流下して海岸沿いで湧水となって流出する。
伊良部島や多良間島は、不透水層が海面以下に分布しているので地下水は「淡水レン ズ」の形で島の地下に存在しており、塩水化の危険性があるため取水量には限界がある。
(H24年度宮古島市地下水水質保全調査報告書)


宮古島の地下水の流動メカニズムを説明した図です。島尻層群泥岩は水を透しにくいので、受け皿となっています。琉球石灰岩は水を透しやすいので、地下水をためたり、湧水を形成します。

湧水がみられる崖 (保良ガー)



宮古島の水道水源である白川田水源の水質を示しています。石灰岩の島ですから、CaイオンとHCO3イオンが多いです。海水の影響を受けてNa,Clイオンも多いです。宮古島市上下水道局としては、Caイオンが多いので、硬度低下処理をしています。

白川田水源の調査中です。


宮古島の水質をヘキサダイアグラムで示しています。多くの地点は石灰岩地域の地下水の典型である「重炭酸カルシウム型」に分類される。



電気伝導度は水の中に溶けている物質の量を示します。0.5dS/mは500μS/cmです。地下水の電気伝導度としては高い値を示します。河川水で100~150です。富士山の湧水の湧玉池で150μS/cmぐらいです。島の中央の高い値を示すところは、温泉排水の影響で地下水汚染があったところです。
宮古島市地下水水質保全調査報告書のデータから分布図を作成しました。


pHはアルカリ性を示しています。石灰岩の島ですから。

成川ガー


硝酸イオンは高いです。地下水の持続的な利用を考えるきっかけとなりました。


硫酸イオンも高いです。これらは主にサトウキビ畑の化学肥料によるものです。


カルシウムイオンは高濃度です。


海岸沿いは海水の影響で、島の中央部は温泉水の排水による影響です。

今回はざっくりと宮古島の地質と地下水、そして地下水の水質について示しました。




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宮古島の水環境02 地形・地質と湧水

2019年02月19日 | 水文と環境

今回は湧水の紹介です。それには地形と地質を理解してもらわないとわかりません。
宮古島はサンゴ礁が隆起してできた非常に透水性の高い琉球石灰岩からなる島です。
宮古島の層は下から水を透しにくい島尻粘土層、その上に水を透しやすい琉球石灰岩(有効間隙率10%と言われています)、
そして表層の土壌は島尻マージ(暗赤色土)でできています。



宮古島総合博物館にあった地形図 (使わせていただきました)
断層によりケスタ地形が形成されています。また、そのために地下水の流域がわかりやすくなっています。


(宮古土地改良区)



宮古島は島全体が琉球石灰岩に覆われて平均標高60mの平坦な島です。水を透しやすい琉球石灰岩と水を透しにくい島尻粘土層からできています。


このように流域区分ができます。湧水を紹介します。位置はこの図に示しました。


役人が使った湧水です。役人は本土から来ますから大和井です。井戸や湧水は「ガー」と呼ばれています。


きれいに石積みされています。水温23.4℃、EC(電気伝導度)581μS/cm、硝酸態窒素濃度9mg/L


住民用の井戸、プトゥラガーです。使い込んであります。階段が少しすり減っていました。


家畜用の井戸です。三つの井戸は近接しています。


これは友利アマガーです。鍾乳洞でした。本当に水を汲みに降りたのでしょうか。階段がすり減っていました。


ムイガーです。断崖絶壁を降りたところにあります。



上の写真を撮っていた場所です。足元が崩れていました。とても危険な場所です。良い子はまねをしないように。


宮古島の南側の崖です。数多くの湧水があるそうです。手前の崩壊しているところがムイガーの崖です。


野城ガー(ノグスクガー)
矢印のある場所が湧水地点です。最初、下のサトウキビ畑をうろうろ探していたのですが、見つかりませんでした。農家の方に聞いて上の矢印の場所を教えてもらいました。


白川田湧水のように高い位置で流出しているようです。これも断層が作った地形です。


皆福地下ダム
展示用に掘られたものです。


2018年は地下水位が高く、地下ダムの堤体の上をオーバーフローしていました。地下でも同じことが起こっていたのでしょうか?


宮古島には数多くの地下ダムが建設されています。地形や地質構造から作りやすいのがわかります。地下ダムの水は主に灌漑用に使われています。


砂川地下ダムの流域を示しています。地下ダムは見えないので、直線を引いたところの地下にあります。地上ではどこにあるのかわかりません。


平良の市街地にある井戸です。蓋が重くて、中が見えませんでした。水道が普及したので、現在は使われていません。


宮古ブルーにあこがれて、やってきました。

次回はどうしようかな。
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宮古島の水環境01

2019年02月18日 | 水文と環境

研究していた宮古島について書いていこうと思います。まずは、講義で使用したパワーポイント「亜熱帯の島嶼の水環境、宮古島」を示します。
今回は第1回として宮古島の水問題と気候などの概要を説明します。





これは宮古島市の地下水水質保全調査報告書からの図で、水道水源の硝酸態窒素濃度の年平均値の経年変化を示しています。水道水源の硝酸態窒素濃度は10㎎/L以下が基準値ですので、相当高い時期があったことを示しています。
昭和52年(1977年)には加治道水源は4.5㎎/Lであったが、平成元年(1989年)には9.0㎎/Lになっています。これは年平均値ですから、10㎎/Lを超えた時期もあったと思います。


宮古島の地下水汚染のモデル図(宮古島市地下水水質保全調査報告書)です。サトウキビへの化学肥料、家畜のふん尿、生活排水と自然循環が原因です。そして、島ですから、生活用水はその汚染された地下水を使っています。地下水汚染を少なくして、持続的に地下水を利用できるようにすることが必要です。


宮古島の位置を示します。沖縄本島より南側で暖かいです。研究対象として選んだ理由の一つでもあります。宮古島の面積は約159Km2です。宮古島市は宮古島以外に大神島、池間島、来間島、伊良部島、下地島からなります。



人口は5万人くらいです。観光客が年間33万人ほどです。



年平均気温と年降水量の変化を示しています。地球温暖化により気温が上昇していることを示しています。降水量はばらつきが大きく、1300㎜~3200㎜です。1993年と1994年は雨が少なく、水不足になり水道の取水制限をした年です。



宮古島市と富士市の気温と降水量の比較を示しています。宮古島が暖かいことと、梅雨の時期が早く7月が一番降水量が少ないことを示しています。沖縄は7月がベストシーズンです。



台風による降水量の比率を示しています。8,9月はとても危険で近づけないです。しかし、台風の雨がないと、水不足になります。(宮古島市地下水水質保全調査報告書から)



宮古島は可能蒸発量が多く、年間1400㎜ぐらいです。降水量の大部分が蒸発して使える水が少ないです。富士市と比較するとよくわかります。



月ごとの水の余剰量を示しています。平年値でも7月は水不足です。特に。取水制限をした1994年は4月~9月まで水不足を示しています。

今回は宮古島の水問題と気候などの概要を説明しました。次回は湧水めぐりなどして宮古島の地下水について説明したいと思います。

・・・不定期ですが。
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