Re:SALOON & VBA

青春が遥か遠い風景になって

 青春が遥か遠い風景になって、ふと気づくと、僕の心のなかに残しておきたかった部分が驚くほど小さくなっていて──
 風に乗って、草の陰に咲く小さな花を両腕いっぱいに摘みとって、街の花屋の前に雪のようにふりそそぎたい思いも、
 車窓からみた、見知らぬ街はずれの路に魅かれて、汽車を降りたりする旅も、
 ましてや、青いままに崩れる波を探したいなどという思いは、
 ひとには言ってはならないセンチメンタルな夢になってしまい、
 心を閉ざしたまま、誰とでも微笑んで話し合ったり、生活のために嘘を上手につけるようになったり、その他いろいろと、それが生きてゆく上には必要なこととは解っていながら、
 孤り真夜中に飲むブランディーが、かざしたグラスに揺れるさまに波を思い浮かべた時などは、妙にいらだちにも似た思いにさいなまれ、
 自分は成長したのか、汚れてしまったのかと、よけいに酔いのなかに逃げこんだりしてしまう。

 そんな時に出逢ったのがあなたです。



塚原将『愛する人よ-あなたと旅ができるなら』より
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