おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
風はどうですか 空もそうですか
おしえてください
私は時折苦しみについて考えます
誰もが等しく抱いた悲しみについて
生きる苦しみと 老いてゆく悲しみと
病いの苦しみと 死にゆく悲しみと
現在の自分と
答えてください
この世のありとあらゆるものの
すべての生命に約束があるのなら
春は死にますか 秋は死にますか
夏が去る様に 冬が来る様に
みんな逝くのですか
わずかな生命の
きらめきを信じていいですか
言葉で見えない望みといったものを
去る人があれば 来る人もあって
欠けてゆく月も やがて満ちて来る
なりわいの中で
おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
春は死にますか 秋は死にますか
愛は死にますか 心は死にますか
私の大切な故郷もみんな
逝ってしまいますか
海は死にますか 山は死にますか
春は死にますか 秋は死にますか
愛は死にますか 心は死にますか
私の大切な故郷もみんな
逝ってしまいますか
防人は、「さきもり」と読み、664年(天智三年)に中大兄皇子が朝鮮半島での白村江の戦いに負けたために、日本の本土防衛のために創設されて、筑紫・壱岐・対馬などの北九州の防衛にあたった東国から選ばれた兵士達のことです。
北九州の防衛に何故、遠い東国からだったのか・・・
これは東国の勢力を少しでも弱めようとした当時の施策とされていますが、遠い東国からの赴任ですから、目的地に達するまでに行き倒れとなった人達や、任期の途中で病気等により二度と故郷に帰れなかった人達も多かったでしょうね。
そんな防人達が家族と離れる寂しさや、残された家族の無事を祈る気持ちを読んだ悲しい歌が防人の歌で、万葉集に84首が残されています。
我が妻も絵に描き取らむ暇もか旅ゆく吾は見つつ偲はむ
大王の命かしこみ磯に触り海原(うのはら)渡る父母を置きて
水鳥の立ちの急ぎに父母に物言(は)ず来(け)にて今ぞ悔しき・・・などなど。
さて、
「おしえて下さい」
心から吐き出すようなこの言葉から、この曲は始まります・・・
そして、何とも言葉にし難い切なさがこの曲全体を支配していきます。
あらがい様のない大きな流れ、考えても答えが出ない苦悩、・・・・・
人生の永遠のテーマに対し、正面から問いかけぶつかっていくこの曲、さすが、さださんというべきでしょうか。
なお、万葉集16巻にこの曲の原型となった詩が、詠み人知らずの歌として出ています。
「鯨魚(いさな)取り 海や死にする 山や死にする 死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ」
ちなみに、この曲の原型は「防人の歌」ではなかったのですね。
この曲「防人の詩」は、1980年(昭和55年)製作、公開された、三船敏郎さん、仲代達矢さん、あおい輝彦さん、夏目雅子さんなどの出演で、舛田利雄さん監督の東映映画、「二百三高地」の主題歌です。
地味な映画でしたが、日清戦争に続く、日露戦争のなかでの重要な戦いを描き、明治から昭和へと続く我が国が選択した国際紛争を解決する手段としての戦争の歴史を知るには役立ちました。
そして、一握りの軍人や政治家たちの思惑や権謀術数のために、多くの人のかけがえのない生命を奪うものが戦争だということも知りました。
そして、この曲は、さだまさしさんのレッテルに、「暗い」「軟弱」「女性蔑視」に加えて「右翼」というのが貼られた記念すべき歌でした。(笑)
しかし、この曲、本当は、「右翼」でも「左翼」でもなく、人が好きで、好きだからこそ、その生命を大切にすべきだと、それを強く主張している曲と、ふうちゃんは思っています。