インサイト満タンにして走りたい走行可能距離の半分
この歌を詠みたる時点で想定せり 家出願望実装の日を
家のみな好む煮豚を作りしが突然プツリと何かが切れり
断りを入れたる夫(つま)に見送られ<ワレイエヲイヅ>二十時過ぎて
あてはなく時もて余すコンビニ前 「お、おう!」と返すメールの来たり
ケータイの電池残量尽きたりて毛布と電源確保を要す
十年(ととせ)前 友から預かる別荘の鍵の存在後光の差せり
使用許可願い送らば理由(わけ)訊かずビールとチーズの在処(ありか)返り来(く)
実母も帰省中の子も夫(つま)も置き<リョウサイケンボ>をダーツの的に
着たきりの木綿単衣は寒からう ウール持ち出し我らしきかな
前夜とは違ふフロント嬢出(いで)てかの地に二連泊の予約叶ひぬ
ゐどころを返信せずとも分からるる顔ささず土地勘ある海辺
どんよりとしたる海こそ癒しなれ 我にも丹後の血の流れたり
汝(な)と吾(あ)とのあひだに運河のある如し ひとつのボタンの掛け違ひより
平日に岸壁の母・妻のゐし場所に立つ我は<イッタイ ナニ ヤッテンダカ>
この辺の水はしょっぱいはずなどと由良川沿ひを下りて思ふ
海は良し。季節・天気にかかはらず眺むるだけで抱(いだ)かれるやう
奈具海岸ひとり走りて口惜しき 素直な愛車も返事に能はず
寄せ返す波のごとくに続きたる日常といふ大いなる歴史(とき)
いつの日か笑ひ話にきつとなれ 常より高き敷居跨ぎぬ
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