花郎徒の庵 

目指せ楽隠居! 大長今ファン&歴史フリークの隠者・花郎徒による よろずつれづれ日記です。(*>∀・*) 

銀河英雄伝説

2008-11-02 21:15:47 | 本・書籍関連
 地元ではすっかり初冬の装いになりつつありますが、他地域ではまだまだ晩秋の風景を楽しむことができますね。秋の醍醐味の一つである「読書の秋」に耽る方も多いことでしょう。という訳で久々の本ログです。

 今回ご紹介しますのは… 『銀河英雄伝説』という小説です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%80%E6%B2%B3%E8%8B%B1%E9%9B%84%E4%BC%9D%E8%AA%AC

 原作は『アルスラーン戦記』『創竜伝』『薬師寺涼子の事件簿シリーズ』などで知られる田中芳樹氏。カテゴリー的に言えば欧米では昔からけっこうポピュラーとされる「スペースオペラ」であります。

 本編全10巻・外伝が4巻。第1巻が出版されたのが1982年と言いますから、なんと実に世に出て四半世紀を経過しています。もしかしたらお越しの皆さんの中でも読んだことがある方がいらっしゃるかも…

 ちなみに私がこの作品に出会ったのは大学生になりたての頃でしたから、読者としては若い層かもしれませんがそれでも付き合いは長い方だと思います。
たまたま高校時代の友人に勧められて読んだのがきっかけでして、それまで歴史小説かファンタジー小説をメインに読んでいた私にとって新たなジャンルを開拓する契機になった作品であり、続けて田中作品にハマる原因となった作品でもあります。

 舞台はずっとずっと後世の宇宙社会、人類が地球と言う狭い生活圏を捨てて汎銀河に進出して久しくなった時代の話です。
人類社会は一つの銀河系に二つの勢力がその政治思想の別で争覇していました。
 一つが中世の覇権専制主義に似た銀河帝国ゴールデンバウム王朝
もう一つは近現代の国家民主主義を基盤とする自由惑星同盟と言います。
 
 元々後者(以下「同盟」)は前者(以下「帝国」)の圧政により自由に生きる権利を失った者や帝国での権力闘争に敗れ新たに生きる道を求めた者たちにより建国され、一人の伝説的指導者に導かれ、帝国の支配の及ばなかった銀河の深奥に活路を見出し、失われた故地を回復するべく長き雌伏の時間を過ごしたのが始まりでした。
 その後、一定期間両者は一度も邂逅することなく平和に過ごしていましたが、遂に帝国は大昔に去っていった「同盟」という名の反乱分子の末裔たちの攻撃を受け、以降両者間には戦端が開かれたのでした。

 それから実に百五十年、人類社会は両者のパワーバランスの下で奇妙な共存状態にあり、さらに両者間を綱渡りし経済的に社会に強い影響力を持つ狡猾な貿易国家・フェザーン自治領も加わる形で食うか食われるかの戦時体制下に… 
 そんな時、時代は二人の宇宙史に残る名将を生み出しました。

 帝国側に生まれたのは、ラインハルト・フォン・ローエングラム。通称『常勝の天才』。
貴族とは名ばかりの貧家に生まれ、ある時その最愛の姉が皇帝の後宮に売られたことを契機に、一人の親友とともに腐敗と差別と閉塞感に澱む現王朝を打倒しようと志し、静かなる野心の炎を胸に抱き、そのステップとして軍人の道を選び、類稀な頭脳と胆力と強運を武器に数々の武勲を挙げ、若干20歳にして帝国元帥となった若獅子であります。
 その圧倒的な存在感と英気は貴族以外の出身者に特に人気が高く、常に陣頭に立つ姿勢や政治的な指導力の高さも大いなる声望を呼ぶことになります。

 一方の同盟側に生まれたのは、ヤン・ウェンリー。通称『不敗の魔術師』。
惑星間貿易商の息子で元々は歴史学者志望の軍事とは全く無縁な目立たない人物だったものの、成人前に唯一の肉親だった父親が不慮の死を遂げたため、学費に困らない士官学校に入学、そこでタダで歴史を学ぼう!と企むも肝心の歴史科が廃止され、やむなく別の科に編入した後、それまでの歴史学習の過程にて得た戦術の冴えが上層部の目に留まり、やがて数々の戦役を生き延びて同盟軍きっての智将と呼ばれる人物であります。

 この出自も経歴も人物タイプも対照的な二人の英雄の生涯を軸に描かれる大河ロマンと言える作品がこの銀河英雄伝説です。なお、本作品をずっとシリーズ全体で読んでゆくとわかることですが、多分に三國志をはじめとする古典名著や古今の歴史事象の影響もあります。
 例えばラインハルトは、出自を問わず有為な人材を盛んに登用する姿は魏の曹操、常に陣頭に立ち敵を打ち破る姿は唐の太宗李世民、早熟の英雄としての栄光はアレクサンドロス大王のような印象を受けます。 

 他にも特筆すべき点には、帝国側の人名や地名、生活様式などはドイツ(ゲルマン)様式で、同盟はその他の全世界的な名称(星系や軍艦の名前には世界神話にまつわる名前など)を用いて表現されています。

 また原作もさることながら、その世界をより詳細にビジュアル化したアニメ(現在はDVD化/本編のみでは全110話)にもなっていますので、興味がある方は一度ご覧になってみてはいかがでしょうか? 
 起用された声優は国内における著名声優(俳優を含む)の大部分が出演しているのではないか?との評判も高く、故に「銀河声優伝説」という異名もあるとかないとか…
 さらに各人物の描写や戦場のみならず帝国宮廷や同盟政府内での暗闘など重厚な物語の魅力に加え、それを彩るBGMはいずれも荘重で優雅なクラシックの名曲ばかりで、場面にマッチしたものが多数ありますのでその視点でも十分に楽しめると思います。
(ちなみに作品イメージはこんな感じです。こちらこちらもあります。よろしかったらどうぞ)


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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おぉ~銀英伝♪ (角田)
2008-11-03 18:01:26
銀英伝、だ~い好きな作品です♪
堂々とスペース【オペラ】と語れる作品ですね。

アニメもまた良いです。
珍しくも、アニメ化に際し一切原作からの逸脱、勝手なエピソードなどが無く、小説の世界を忠実に再現してますから、小説→アニメと入っても、逆にアニメ→小説と入っても違和感無く楽しめます。

原作有りアニメがタイトルと人物が同じだけの別作品という悲しい扱いを受けているのが多いだけに嬉しい作品です。

「ボレロ」が静かに厳かに流れる中で整然と進む戦闘シーンというのは、無音である宇宙での戦闘を効果的に盛り上げましたね。
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同好の士発見!(笑) (花郎徒)
2008-11-03 22:57:48
角田さん、こんばんは!
随分とご無沙汰しておりました。お元気だったでしょうか?

>堂々とスペース【オペラ】と語れる作品ですね。
 まさしくその通りです。それまで宇宙を舞台にした物語と言えば、ヤマトとかハーロックとか999とか、松本零士の世界くらいしか思いつかなかった私が、ようやくスペースオペラの真髄に触れることが出来たと実感した作品です。
 スケールこそ壮大ですが、基本はやはりハードではなくソフト、すなわち兵器でも機械でもなく人間の物語なんだと考えさせられました。

>原作有りアニメがタイトルと人物が同じだけの別作品という悲しい扱いを受けているのが多いだけに嬉しい作品です。
 そうですね、結構惨い結果になってしまってるのが多いです。
近年は制作費はうなぎのぼりのクセに、CG頼りのものが増えてしまい、いささか面白みに欠けます。プロデューサーや脚本家が自分の個性を出したがる気持ちもわからないでもありませんが、やはり原作の設定や雰囲気に忠実にやってもらえば面白さは後から自然についてくるのではないかと思う次第です。

 ちなみにいつかは銀英伝DVD全巻を購入してじっくり見たいと思っております。
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うちにはまってる方が約1名。 (まなかり)
2008-11-04 15:10:19
こんにちは。まなかりです。
このDVD、うちにひと揃いあります
家庭内で居場所が無い時など、ヘッドホン装着のうえPCで再生しながら、ひとり静かにどっぷりとその世界に嵌っておられます…。
先日はガンダムの『シャア携帯』などもご購入になり、わたしにはさ~っぱり分かりません
返信する
そういえば… (雨婆)
2008-11-05 12:43:13
花郎徒さん、こんにちは。
お元気ですか??
 はないけど、クタクタです。毎日、世間に出るので。
ほとんど天空のラピュタンで暮らしてたから 
世間はしんどいわ。 退屈しないけど。

 いつか話題になりましたよね?
何とか・フォン・シェーンコップという登場人物が居たハズ。
その「何とか」が思い出せませぬ。
オットー? カール? リヒャルト? ミヒャエル? クリスティアン? グスタフ? ハインリッヒ? ゲルト? ラインハルト? アドルフ? ヘルマン? エーリッヒ? ボルフガング? パタリロ?
ありゃ、シェーンコップって、そもそも居なかった  

ところで、「イゲ・ムォエヨ?」のは何ですかしらん?

冬になり、雪が積もって、もしかしたら、
くたびれたチャンが、その下で、
中かもしれないマーク?

初雪はまだですか? 風邪を引かれぬように、
雪かきに備えて、たくさん皮下脂肪を蓄えてくださいね。
お互い 
も早く風邪が治りますように
昨夜も観た。
富士山ナンバー取ったのかしらん?
返信する
それはですね (花郎徒)
2008-11-05 20:16:48
☆まなかりさん
>このDVD、うちにひと揃いあります
 うわぁ~超うらやましすぎますぅ~
ひょっとして耽溺されているのはご主人ですか? しかもあのシャア携帯までお持ちとは… それだけの材料でも何となく話が合いそうな方でらっしゃるようです。

☆雨婆さん
 季節の変わり目ということもあって、いささかお疲れのようですね。穢れなく暮らしをされている雨婆さんのような粋人には、下界の喧騒は心身の毒にもなりかねませんのでお大事に…
 あ、でも、庵には遠慮なくお越し下さいませ。いつでも心よりお待ち申し上げておりますので…

>何とか・フォン・シェーンコップという登場人物が居たハズ。
その「何とか」が思い出せませぬ。
 え~と、それはですねぇ…
答えは「ワルター」でござりまする。

ワルター・フォン・シェーンコップ
(Walter von Schenkopp)
私なんぞがあれこれ申し上げるよりもずっと気が利いておりますので
以下を参考になさって下さいませ。
http://www012.upp.so-net.ne.jp/sakaba/jinnbutu9.htm
http://www.ginei.jp/character_d.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%97

>「イゲ・ムォエヨ?」の
 後日、解答を。
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はじめまして (francois)
2008-11-09 12:44:03
銀英伝は小説は挫折しましたが アニメの方はしっかりとりあえず外伝以外は毎日こつこつとみました~。リアルタイムではなかったですけど、あれほどの大作はめったにみられませんね。
私はロイエンタールが非常に好きです。
あの矜持の高さにほれぼれ。
いつか小説も読破したいと思いつつも何年も過ぎていってしまってます。
懐かしい文字をみて 飛び入りでコメントさせていただきました。
丁寧な解説文にも脱帽です。
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こちらこそ (花郎徒)
2008-11-09 18:41:10
francoisさん、はじめまして。

そうですか、原作よりもアニメを深く鑑賞されたんですね。どちらから入ってもあの作品に関してはクオリティーが高いので楽しめると思います。

>私はロイエンタールが非常に好きです。
あの矜持の高さにほれぼれ。
 私も好きですよ、ロイエンタール提督。
特徴である金銀妖瞳の印象と何をしてもラインハルトと別の次元で「様になる」高貴さと野性味が渾然一致したような人間性もいいですね。

「マインカイザー(我が皇帝)」とラインハルトを呼ぶのは、彼だけに与えられるべきですし、他の人では似合わないと思います。
あと、彼の功績で一番評価したいのは…

「民主主義が生んだ変異性の怪物」ヨブ・トリューニヒトを葬ってくれたことでしょう。
その点では帝国・同盟両方からも感謝されてもいいのではないかと…

ちなみに容姿や果した役割から想像するに、彼のモデルじゃないかと思うのは、三國志に登場する魏の武将・夏侯惇かと…
(彼は反逆はしませんでしたけど…)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E4%BE%AF%E6%83%87
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