花郎徒の庵 

目指せ楽隠居! 大長今ファン&歴史フリークの隠者・花郎徒による よろずつれづれ日記です。(*>∀・*) 

王都妖奇譚

2008-06-20 21:07:24 | 本・書籍関連
 10代の頃、よくコミックを読み漁ってました。まぁ、それを遥かに上回る活字本も読んでましたが…
今はさすがに限られたものしか読みませんが、刺激を求めいまだに時々思い出して読む作品もあります。

 今回ご紹介します『王都妖奇譚(おうとあやかしきたん)』のそんな作品の一つです。
 
 舞台は平安時代中期の京都とその周辺地域。主人公は今ではすっかりメジャーになった日本を代表する陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)。
晴明が主人公の作品と言えば、夢枕獏氏の小説『陰陽師』とそれを下敷きにした岡野玲子氏のコミックを思い出される方も多いでしょう。また野村萬斎氏が主演された映画版をご存知の方も多いのでは?
 
 晴明と言えば、その類稀なる呪術で例えば『宇治拾遺物語』や『今昔物語』の中で数々の逸話(伝説)を残しています。
夢枕氏の小説に出会う前に、それらは古典物語に嵌っていた高校の一時期通し読みしてましたけど、やはり氏の小説で晴明の存在を詳しく知る機会に恵まれ、以降はそこでの晴明像が私なりの陰陽師のイメージとして固定されたと言えますね。

 -閑話休題-
本作は岩崎陽子氏の描く晴明の物語(全12巻)です。秋田書店のプリンセスコミックの作品群ですので、思いっきり女性向けコミックでして、学生時代に初めて友人の姉に
花郎徒くん歴史好きでしょ? こんなの知ってる?」
と勧められて読んだ時は
(これが少女誌の掲載じゃなかったらもっと早く出会っていたのに…)と痛く後悔したものでした。
 
 やがてあまりに嵌ってしまい、書店でコミックを購入しようと意気込んで出かけたものの、いざコーナーに入るとやはり周囲の目が気になりしばしウロウロ、傍から見ようによってはかなり挙動不審人物に思われたかもしれません。まぁ、何とかその後無事に買ってこれましたが…

 作品での晴明は当初は常に冷静沈着で掴みどころの無い浮世離れした人物でしたが、性格が正反対の宮廷武官で後に無二の親友になる熱血漢・藤原将之と出会った頃から次第に感化され人間臭さが現れ始め、他の癖のあるキャラ(男勝りの女御で将之の姉・彩子、物の怪が見える特殊体質の持ち主・千早、厳格な中にちょっとしたウィットさを兼ね備えた師・賀茂忠行[かものただゆき]、現世と冥界を行き来する謎の女性・小野氷月[おののひづき]等…)の影響もあり、陰陽師としての使命のみならず人を遍く救う精神も収めてゆきます。

 そしてかつての兄弟子にして最大のライバル・橘影連[たちばなのかげつら]による妖異を用いた飽くなき挑戦に立ち向かい、平安京に真の平安をもたらすべく戦う姿は、美しく気高く凛々しいものがあります。
 
 基本的にオムニバス形式の物語ですが、内容によっては数編連続する場合もありますし、晴明が明らかに脇に回ってる話もあり、そもそもの画の美しさも手伝って現代流の古典絵巻の如く仕上がってますので、歴史や古典に普段あまり興味が無い方でも現代物と遜色なく楽しめると思います。


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