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未来の読書ノート

読んだ本のメモ。あくまでもメモでその本を肯定したとは限らない。そんなノート。

清水直子・園良太編著 『フリター労組の生存ハンドブック』

2009-09-27 | 反貧困
 「派遣切り」にあった人たちは、いきなり所持金がわずかになるわけではない。寮を出てしまい、ネットカフェなどに滞在して、ギリギリまで自分で何とかしようとして、次の仕事を探しながら、次第に蓄えが尽きてしまう。 ㌻13

 未来記=「派遣村」へ行かざるを得なかった人たちへバッシングする人たちがいるが、「ギリギリまで自分で何とかしようとして」いる姿が見えないのだろうか。「自己責任」論というイデオロギーに固まった人の考えを変えるのは容易ではないが、現実を知らしめながら、わかってもらうしかないのだろうか。あまりにも、悲しい。

高島康司著 『こんな時はマルクスに聞け』

2009-09-23 | 反貧困
 日本は世界でも有数の自殺大国となってしまった。98年以来だから、すでに3万人を突破して10年になる。10年間で30万人の自殺者だ。 
 2003年に始まったイラク戦争では、米軍の死傷者は1万2000名になるといわれている。それが日本では5年間で15万人の自殺者だ。ある識者によると、これはすでに日本が戦争状態であるといってもよいのではないか、とさえ発言している。 ㌻36

 未来記=自殺者の多さに胸が痛くなる。

中西伊之助著 「農夫喜兵衛の死」

2009-09-22 | 反貧困
 伝作は、それ以上に、もう父に迫る勇気はなかった。彼は、いつも自分の燃えたつような欲望の炎に、貧乏と云う冷たい水を浴びせられて、消してしまうことに慣れ切っていたからであった。 ㌻405

 未来記=『日本プロレタリア文学集・6 中西伊之助集』収録。「燃えたつような」思いを「消してしまうことに慣れ切って」しまうことは恐ろしい。展望がないとこういうことになるのだろう。プロレタリア文学初期作品のリアルさに注目しつつも、ここからどの様な光を与えるのかは本作にも見られない。
 多喜二が描いた『蟹工船』が、人々に共感されたのは、悲惨な現状をリアルに示しただけでなく、光を示そうとしたからだ。

湯浅誠ほか編 『若者と貧困』

2009-09-05 | 反貧困
 ボロボロになってユニオンに駆け込んでくる若者がいる。
 相談を受けていると、多くの若者は、うまく言葉が出てこない。自分の苦しくてどうしようもない気持ちを、どう打ち明ければよいのか悩んでいるのだ。
 自分が受けた理不尽な仕打ちをどう説明すればよいのか。気持ちばかりが先行してしまって、なかには涙で話が途切れてしまう人がいる。
 いったいどこでまちがえたのだろうかと、僕たち若者は考えてしまう。仕事のミスか、人間関係か、自分の欠点か。
 そして、「こんなハズじゃなかった」と悩む。
 ついには、「自分たちには居場所がないこと」に、若者はようやく気づかされるのだ。 ㌻248

 未来記=首都圏青年ユニオンに駆け込んでくる若者の姿。「自己責任」論のすえに、若者を追い詰める。このままでは絶対にいけない。

湯浅誠ほか編 『若者と貧困』

2009-09-04 | 反貧困
 日本で若者の貧困が長らく顕在化しなかったのは、家族の支えがあったからである。日本では20代の若者の親との同居率が高く、親の扶養下で長期の若者期を過ごす者が多いが、そのため、若者の抱える問題が家族のなかに隠されてきた。 ㌻123

 未来記=人々がこれほどの事態に気づくのに遅れたのは、こうした家族のなかに隠れていた面もあるだろう。

湯浅誠ほか編 『若者と貧困』

2009-09-03 | 反貧困
 今、最も変えなければならないのは、自分と同じような「恵まれた」人たちの意識だと思う。私たちの世代が、変えていかなければならない。それが社会をよりよくしていく鍵なのだと思う。であればすべきことは山積みだ。 ㌻87

 未来記=どれだけの人がこのような気持ちになるかが鍵だ。

宇都宮健児×湯浅誠編 『反貧困の学校 2』

2009-09-02 | 反貧困
 対等の立場で話し合えるか、本当に生きるために、本当に暮らしを勝ち取るために、みんなで話し合えるか、一緒に手を取り合って年に1回の反貧困フェスタとか派遣村ではなくて、俺たちが本当に生きている職場や地域で手を取り合える道筋を作っていけるのか、それが今問われています。法律改正は大切。だけど、当事者が声をあげなければいけない。もっと垣根を低くしていかなければいけない。本来なら労働運動や社会運動は楽しくてやりがいあるものです。 ㌻60

 私自身も長い間、労働組合活動をしてきましたが、感じるさまざまな限界をどう乗り越えるか。長い苦労と闘いの蓄積があって、乗り越えられるのだと思います。 ㌻61

 未来記=「本来なら労働運動や社会運動は楽しくてやりがいあるもの」。そのとおり。

宇都宮健児×湯浅誠編 『反貧困の学校 2』

2009-08-31 | 反貧困
 もともと労働者派遣制度は、多様な働き方を求める労働者のニーズに応えるという美名のもとに導入された制度ですが、その本質は、企業の利益追求のために、労働コストの削減と手軽な雇用調整弁としていつでも簡単に労働者の首を切るための制度であったことが、今回の大量派遣切りや派遣村の取り組みで明らかになったと言えます。
 派遣村は、また、仕事を失えばいきなり住まいも失って路上に放り出され、たちまち生存の危機に瀕する人々が大量に生み出されているという日本社会の貧困の実態を明らかにしました。 ㌻6

 これ以上の貧困の拡大を許すのか、それともここで貧困の拡大を食い止め、人間らしく働き人間らしく生活できる社会を確立することができるかが問われています。
 貧困問題を解決していくには、消費者運動、労働運動、社会保障運動の垣根を越えた協力・協働がこれまで以上に重要となっています。また、イデオロギーや政治的立場を超えた連携・連帯が大切になっています。
 反貧困運動は、いわば「平成の世直し運動」です。貧困が広がる社会を変えるため、今こそ一人ひとりが声を上げ、立ち上がりましょう。そして、今こそ一人ひとりが垣根を越えてつながりましょう。そうすれば、必ず国や社会を突き動かし、「貧困」という大きな山を動かすことができるものと確信しています。 ㌻10

 未来記=「貧困」「雇用破壊」を推し進めた自民党政治に終止符が打たれた。「自民不満、民主不安」という中で、今後の政治に眼を光らせていくことが重要だ。財界にモノの言えない民主に労働者派遣法の抜本的改正などをさせるには、何よりも国民の声と運動を広げていくことが欠かせない。

山野良一著 『子どもの最貧困・日本』

2009-08-23 | 反貧困
 逆に、貧困な子どもたちの発達の保障を考えるとき、家族の所得を増加させることがまず一義的に考えていかなければならない点でした。所得の増加は、家族のストレスを減らし、子どもの発達を促す遊具などの購入や、良い環境の住居で暮らす機会の増加を家族に与え、子どもたちの成長を促進することができます。
 子どもたちの貧困の実態にまったく目を向けようとしないことで、結局、日本社会は大きな社会的損失を被り続けているのかもしれません。子どもたちは、貧困状況の連鎖の中でもがき、その才能は生かされないままに、かえって発達上のさまざまな課題を背負ったまま次の世代へと、つまりは親になっていきます。 ㌻257

 未来記=子どもの「貧困」を見過ごしてはならない。「損失」うんぬんという言い方はどうかと思うが、「貧困」解消の緊急性はあらゆる面で現われている。

山野良一著 『子どもの最貧困・日本』

2009-08-22 | 反貧困
 児童虐待の問題が、社会的注目を浴びるようになってきてから、救われた子どもたちはたしかに増えたはずです。しかし、私が出会ってきた前記のような家族の状況を振り返ってみると、これまで日本で語られることの多い家族の病理的な側面に対する介入だけでは、家族が児童虐待問題を起こしてしまう原因を取り去ることは難しいのではないかと思い至るようになったのです。
 児童虐待問題対策や貧困問題についての研究に長い歴史のあるアメリカでは、児童虐待と貧困の関連性についてはどのように語られているか、またその関連性に対してどのような対策が練られているのか。 ㌻117

 未来記=著者は「この本を書くきっかけ」が、貧困問題との関連性と後述している。7人に1人が「貧困児童」といわれる日本の異常。このまま社会の「貧困」化が進めば、もっと子どもの「貧困」は拡大する。いま、「貧困」をなくす運動は急務だ。

山野良一著 『子どもの最貧困・日本』

2009-08-22 | 反貧困
 ひとり親家庭の貧困率と同様に、日本は他の国と極端に違う様相を示していると言えます。日本では政府の介入は子どもの貧困率を下げることにほとんど寄与できていないどころでなく、逆に介入によって貧困率が上がっているのです。これは異常事態だと言えるでしょう。 ㌻47

 未来記=この異常な事態をなんとかしなければならないだろう。

貧困研究会編 『貧困研究』 vol.2

2009-07-31 | 反貧困
 東海林智 日本人の中に、頑張ればなんとかなるっていう意識がものすごく強いんですよね。
 要するに、頑張ってもなんともならないところがあるんだ、ということを認めたくないんですよね。この社会がまあそこまで傷んでるってことを認めたくなくて、とにかく頑張ればなんとかなるんだから、なんともならない人は頑張っていないという理解で。だから今の世の中、頑張ってもなんともならないところがすでにあるんだっていうことを、やっぱり伝えていかなきゃなんないとこなのかなあと。 ㌻89

 未来記=「頑張ってもなんともならないところがある」ということを認識することが重要。しかし、そんなに簡単なことではないのも現実。認識格差をどう解消していくか。真実を知らせ、伝える以外に方法はないと思うが、もっとスピードがいるだろう。

貧困研究会編 『貧困研究』 vol.2

2009-07-30 | 反貧困
 「ネットカフェ難民」という現象は、派遣労働の拡大など雇用の不安定化、雇用保険の加入率低下、失業給付の給付率の低下など、雇用と社会保障の領域での変化を十分に踏まえて論じるべき問題である。貧困問題研究が、「貧困に陥った人」を対象に研究するのではなく、その貧困を生み出している政策制度も含む社会全体を対象にした研究として深められることを期待したい。 ㌻35

 未来記=極めて重要な指摘だ。

貧困研究会編 『貧困研究』 vol.2

2009-07-29 | 反貧困
 「派遣切り」であれ「若年不安定就労者」であれ、まず行政窓口や労働組合が支えなければならないはずの人を、ホームレス支援団体が最後の最後のセーフティーネットとして、かずかな資源をもとに住居・生活資金の確保や就労提供で支え、その上で自立支援センター入所や生活保護受給という公的セーフティネットにつなげなければならないところに、施策の貧困の実態が横たわっている。 ㌻18

 未来記=湯浅誠氏は『派遣村 何が問われているか』(岩波書店)で、「年越し派遣村」に、自殺を試みて保護された警察官に連れ添われて来た人、ハローワークから回されて来た人が複数いたことを記している。
 「あろうことか、生活保護の担当部署である福祉事務所すら、「あそこに行けば何とかなる」といって派遣村に人を回してきました」と憤りをこめて告発している。
 いったい、この国はどうなっているのか!

貧困研究会編 『貧困研究』 vol.2

2009-07-29 | 反貧困
 Gさんは40歳前半。2008年10月1日に大阪難波で十数人が亡くなった個室ビデオ店放火事件の数日後、難波のネットカフェ生活者への相談呼びかけの時に出会った。同年9月半ばに製造派遣の仕事を辞めて寮を出てきたが次の仕事が見つからず、約1ケ月間個室ビデオ店やネットカフェで宿泊し、所持金も底を尽こうとしていた。事件のあったビデオ店にもその間何回か泊まったことがあった。「事件の日に泊まっていなくてよかったね」という私のひと言に彼が返した答えは「自分も泊まっていて死んでいられればよかった。寝ている間に死ねるのだったら」だった。 ㌻14

 未来記=このような言葉を聞く度に胸が締め付けられる。「死んだほうが楽」と言わせる社会はあまりに酷過ぎる。こうしたことに無感覚な人、わけても政治家には怒りを禁じえない。