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未来の読書ノート

読んだ本のメモ。あくまでもメモでその本を肯定したとは限らない。そんなノート。

宇都宮健児著 『13歳から学ぶ日本の貧困』

2009-08-30 | 政治
 ホームレスの人は住民票がないので、もちろん選挙権もありません。現状の改善を政治に反映させたくても、投票による意思表示の機会が奪われているのです。しかし、選挙権がなくても同じ国民ですから、本来の政治は、ホームレスになっている人々のように、もっとも生活が苦しい人々に光をあてる政治が行われるべきだと思います。 ㌻71

 やってもやっても減ることのない相談を受けるうちに、目の前の人を助けているだけでは限界があることに気がつきました。 ㌻88

 ひとりでは大きな力にならなくても、大勢が声をあげれば、国の政治を動かすことができます。 ㌻89

 未来記=「本来の政治」という視点がどれだけ希薄になっていることか。「誰のための政治か」ということをよく考えなくてはならない。主人公は国民だ。

浜林正夫著 『イギリス労働運動史』

2009-08-26 | 政治
 日本では1897年に日本最初の労働組合である鉄工組合が結成されるとすぐ、1900年に治安警察法ができて弾圧に乗り出しますが、イギリスにはまだこういう弾圧法はありませんでした。慣習法(コモン・ロー)には「取引を抑制する」行為を禁ずるという規定があり、これがのちにストライキ禁止のために利用されたことはありますが、この時期にはそういう利用はなかったと思われます。 ㌻30

 未来記=ここでいわれているイギリスの時代は日本の1900年から大きく遡る時代だが、ストライキに対する対応の違いは際立っている。日本がいかに酷かったか、というこでもあるが。

広瀬隆著 『資本主義崩壊の首謀者たち』

2009-08-23 | 政治
 その頃の”ニューヨーク・タイムズ”は、アメリカ経済をタイタニック号にたとえて、ブッシュ船長のもとで完全に沈没する姿を描きました。
 つまり、2008年に起こった金融崩壊は、その二度目の繰り返しにすぎない事件なのです。言い換えれば、ウォール街には、まったく反省がないのです。ということは、これから何年後かに、二十一世紀に入って三度目の金融腐敗が表に出ることが確実だと断言できるわけです。
 なぜなら、2002年に金融犯罪で当局に摘発された大銀行の名前は、6年後の2008年に金融崩壊で当局に助けを求めた大銀行の名前と、みな同じだからです。 ㌻32

 未来記=国民には「自己責任」論押し付け、大銀行の失態には「公的資金」投入、まったくあべこべの政治だ。

『季論21』第5号 二宮厚美「野蛮な新自由主義的分権化路線」

2009-08-10 | 政治
 第一は、橋下流分権化とは、分権化というよりは集権的性格の強いものだということである。第二は、地方分権といっても、地方自治の拡充につながるものではないこと、すなわち「分権必ずしも自治ならず」を示していることである。それどころか、第三に、橋下流分権化は憲法にもとづく福祉国家の分権的解体路線上で進められている、ということである。第四は、新自由主義的改革には橋下知事に典型をみる独特のキャラクターが適合的だということである。 ㌻140

 未来記=府民不在のうえ、福祉解体路線を進める橋下知事の本質を示す論稿として注目される。「橋下知事の品格に欠ける個性と体質」を、もうそろそろ府民も国民もわかるべきだろう。

山田敬男著 『新版 戦後日本史』

2009-08-06 | 政治
 国民的な共同闘争を発展させるうえで、「左」右の分裂主義、反共主義を克服することの重要性が体験を通じてあきらかにされたことです。民社党や全労会議(その後の同盟)による共産党との共同を原理的に拒否する反共的な分裂主義とともに、社会運動に初めて登場した学生運動を中心とする過激派の問題です。日本における過激派の形成は、五六年二月のソ連共産党第二〇回大会におけるスターリン批判や同年一〇月のハンガリー事件を経て、五七年一月の「日本トロツキスト連盟」の結成によって本格化します。安保闘争のときは、全学連指導部を占拠した共産主義者同盟(ブント)の幹部が右翼の田中清玄と接触し、資金援助や戦術指導を受け、挑発的行動を繰り返しました。当時、社会党や一部の知識人は、この過激派を批判した共産党に大人げない、セクト主義的であると批判的でした。しかし、六三年二月二六日のTBS放送が、当時の全学連幹部と田中清玄との関係を当事者の告白にもとづくレポートによってあきらかにすることによって、事態の本質が明確になりました。 ㌻161

 未来記=「六〇年安保闘争」の意味を分析したものの一つの項だが、分裂主義、反共主義の克服の重要性は、今日でも取り組まなければならない課題だ。そしてセキト主義についても重要な課題。

読売新聞大阪本社社会部編 『徹底検証「橋下主義」』

2009-07-25 | 政治
 いずれにせよ、メディア自身、どのように知事と向き合うかが問われるようになったのは事実だ。知事の過激発言を報道することによって、結果的に、知事の「敵」を追い詰めることになりかねない。結局、メディアは利用されているだけではないのか、という批判もつきまとう。 ㌻348

 未来記=ドキュメンタリーしたての本書には、報道では流されなかった事実も分析されている。裏舞台を知ることによって、今まで見えていない真実が少し垣間見えるかもしれない。
 「結局、メディアは利用されているだけではないのか」と自問しながら、現在も報道姿勢は改善されていない。
 本書には、まったく抜け落ちているものがある。不要不急の大型開発、進めれば進めるほど赤字が膨らむ箕面森町の開発、阪神高速大和川線などにはまったく触れられていない。当初は「予算の範囲内で」をくり返した橋下知事だが、いまでは従来の開発路線をさらに拡大しようとしている。そのことにまったく触れないことが、本書の最大の欠陥であり、読売の財界擁護の報道姿勢を端的に示している。
 大阪府の累積赤字は、過去の大型プロジェクトのツケであり、この路線を転換しないことには累積赤字は減らない。橋下開発路線は、またぞろ同じ路線にまい進し、そのツケはすべて府民に回されることを報じることこそ、メディアの役割ではないか!

読売新聞大阪本社社会部編 『徹底検証「橋下主義」』

2009-07-25 | 政治
 「僕は秘書使って、各施設を覆面リサーチかけているんですよ。国際児童文学館もビデオ撮ってきました。議会に呼ばれたら、証拠として持って行きたいと考えている」
 「ビデオ撮影は隠し撮りなのか?申し込みなのか?」
 記者からの問いに、橋下は、「隠し撮り」とはっきり答え、8月に2回、私設秘書の奥下剛光を使って、利用実態をひそかにビデオカメラで撮影させていたことを明らかにした。 ㌻313 

 「知事は絶対に超えてはいけない一線を超えた」「正直言って、そこまでするかと。我々のことを信用してもらえてないんですね」「職場の士気は下がりまくりですわ」・・・。
 そこかしこの職場で、幹部もヒラ職員も橋下への失望感を露わにした。
 議会も問題視した。 ㌻313

 「隠し撮り」発言から橋下と北口の論争まで、一連の経緯を取材していた祝迫は、問題となった盗撮映像を見てみた。
 記録は、平日8月7日と、日曜日8月24日の2回分。1階から2階へ、あるいは本棚の間を縫うように動き回ったわずか6分余りの長さで、手ぶれが激しく、特に平日分は携帯電話の動画で画質が粗い。一部略。
 橋下はそれを見て、「(運営改善の)努力の形跡は見られない。(職員は)やる気がないのでないですか」とこき下ろしていたが、何かを判断するにはあまりにも情報が乏しく、客観性に欠けている。撮影者の主観でどうにでも加工できるシロモノでしかなかった。 ㌻314

 橋下にとって、国際児童文学館は「廃止ありき」。実際には、漫画が蔵書全体の15%未満に過ぎないということも、恐らく関係ない。「漫画図書館」という批判は、一気にカタをつけるための方便でしかなかったかもしれない。 ㌻316

 未来記=目的のためには手段を選ばず。それも、過激な発言と演出によって、シロさえクロと言いくるめようとする姿勢が、この「隠し撮り」の顛末は物語っているのではないか。

読売新聞大阪本社社会部編 『徹底検証「橋下主義」』

2009-07-24 | 政治
 教育委員会は、時の権力によって教育が歪められてはならないとの考えから、首長とは独立した行政委員会として、政治的中立性を保っている。 ㌻280

 「市町村教委が(結果を)開示するか、開示しないかで、35人学級とかいろいろ、府の単独費用でつけているものに関して、2009年度予算は方針を決めさせてもらう。予算は(結果の)公開・非公開できちんと差をつけなければならない」
 予算を人質に市町村教委に圧力―。 ㌻283

 「予算つけない」とは、尋常じゃない。そんな恫喝まがいの手法が許されていいのか。 ㌻283

 声をあげれば、知事に利するだけ・・・。森は一体、これまでにどれだけの人間が、そんな思いで、口をつぐみ、橋下の元を去ったのだろうと思った。 ㌻299

 未来記=橋下知事に耳を貸さないものは、すべて「抵抗勢力」に祭り上げ、マスコミをも利用した圧力によって、封殺しようとする。民主主義とは無縁の姿勢が垣間見える。

読売新聞大阪本社社会部編 『徹底検証「橋下主義」』

2009-07-24 | 政治
 税金を無駄な道路整備でなく、教育に回すべきだという女子生徒の話には「あなたが政治家になって、そういう活動をやって下さい」と気色ばんだ。女子生徒が「それじゃ遅いんです」と泣き出しても、「必要か、不必要か、最終的には政治判断」と返した。 ㌻165

 女子生徒が、さらに「結局自己責任になるじゃないですか」と食い下がると、橋下は「今の日本は自己責任が原則。おかしいというなら、国を変えるか、自己責任を求められる日本から出るしかない」と諭した。 ㌻166

 未来記=この高校生とのやり取りには、さすがに府民からたくさんな異論が出された。選挙権もない高校生に「政治家になってやれ」とか、高校生の責任でできるはずのないことを並べ立て、あげくの果てには「日本から出るしかない」などと放言。これと同じ発言を他の政治家がしたなら大問題になっただろうに、いったいどういうことなのか。
 この発言に対し、『ロスジェネ』第3号の羅一等は、「少なくともぶってなくて気に入った」と無責任なことを書いている。このような当事者への思いやりのかけらもない思考が橋下の暴言をさらに許すことになっている。

読売新聞大阪本社社会部編 『徹底検証「橋下主義」』

2009-07-22 | 政治
 入庁した時、胸に抱いた「住民の福祉のために働きたい」という大志。だが、実際にやっていることは、それとは正反対の作業だった。住民サービスを削ることに心血注いでいる。正直、葛藤もあった。おれは何をやっているんや―。 ㌻131

 「どういう哲学でやるのかが見えない。健康福祉部は約10年かけて、個人給付のばらまき福祉から自立支援に変えてきた。政策は支持するが、財政を削って、府民の生活や命を削ることがあってはならない」 ㌻133

 「医療費助成は府と市町村が共同で進めてきたセーフティーネットだ。PT案では、弱い人、病気に悩んでいる人、障害を持っている人を補助しようという精神が消えているのではないか。まず削減ありきで、1100億円に向かって削ることしか見えてこない」 ㌻141

 「救命救急センターは、府民にとって命の最後の砦だ。財政を削って、府民の命まで削ることのないように」 ㌻154

 現場からは「救急医療を効率だけで考えるのは乱暴だ。補助金が打ち切られ、センターの機能が低下して急患に対応できなくなれば、それはそのまま、患者の死を意味する」と、悲鳴に似た報告が上がっていた。
 「命にかかわる事業の予算削減は断じて避けるべきだ。万一のために税金を使っても、府民は理解してもらえると信じている」 ㌻157

 未来記=職員や市町村長などが府民の生活と命を守るために必至に声をあげた。しかし、マスコミの乗っかった無節操なバッシングや嫌がらせ電話が、これらのまっとうな声を黙殺してしまった。一部修正されたとはいえ、概ね橋下知事の思惑通り進んでしまった。
 忘れてはならないのは、府民の生活や命を守るために声をあげた職員たちは、翌年の人事異動で配置転換(左遷)させられた。たとえ府民のための声であっても、自分楯突くものは許さない、という見せしめだ。こんなことでは誰もモノを言えなくなり、正常な機能を果たしえない府に変わり果てるだろう。

読売新聞大阪本社社会部編『徹底検証「橋下主義」』

2009-07-20 | 政治
 「立候補するにあたり、周囲の方々、特に放送局の方、私が出演していた番組のスタッフの方に多大なご迷惑をおかけしました。編集に追われ、申し訳ないと思っております。大阪のために頑張りたい思いますので、今回の件はご了承下さい」
 会見の第一声が番組スタッフへの謝罪?まずは「2万%出ない」と断言し、欺いた府民に謝るべきじゃないのか―。辻坂はそう思ってあっけにとられた。 ㌻71

 未来記=出馬会見のこの日から橋下知事の頭には大阪府民は存在していない。「大阪のため」とは言っても、「大阪府民のため」とは言っていない。記者があっけにとられた出馬会見には、多くの府民・国民も同じ思いだった。振り返れば、この時から府民はだしに使われるだけの存在だった。