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未来の読書ノート

読んだ本のメモ。あくまでもメモでその本を肯定したとは限らない。そんなノート。

高島康司著 『こんな時はマルクスに聞け』

2009-09-23 | 資本論
 このような、ときとして暴力をともなうことにもなる新しく労働者を作り出す過程を、『資本論』では、本源的蓄積といっている。
 『資本論』では、本源的蓄積を、資本主義の初期に起こった現象としてエンクロージャーなどを例に出しながら解説している。
 本源的蓄積は、資本主義の歴史を通して幾度となく起こった。なぜなら、この方法によって安い労働力が手に入り、より大きな利潤が望めるからである。
 これは、マルクス以後の時代に現われた多くのマルクス主義の思想家も指摘する点だ。本源的蓄積のくり返し、共同体を解体して安い労働力の源泉を作り出すことは、資本主義システムの一般的な傾向であるといって間違いないだろう。 ㌻100

 未来記=資本主義を、歴史の一過程としてとらえることは重要。そして、そもそもの本源的蓄積を考えると、資本主義はけっして平和的に行われていないことがわかる。「努力したものが報われる」というイデオロギーは、資本主義の始まりその時からウソにつつまれているのだ。

『季論21』第5号 浜林正夫「いま、なぜ、マルクスなのか」

2009-08-09 | 資本論
 マルクスに対する関心は依然として高いようだ。
 今月(09年5月)だけで、私の眼についた限りでも聽濤弘『カール・マルクスの弁明』、不破哲三『マルクスは生きている』、三田誠広『マルクスの逆襲』があるし、かもがわ出版の門井文雄『理論劇画マルクス資本論』も売れ行きが好調のようだ。『資本論』のやさしい解説書も何種類か出ている。マルクスとは直接にはつながらないが、『蟹工船』も何十万部か版を重ね、新しい映画も上映されはじめ、俳優座も『蟹工船』を上演している。 ㌻46-47

 未来記=『カール・マルクスの弁明』はなぜこのタイトルにしたのだろうか。マルクスが生きていたなら、「弁明」するなどとはいわない。時代の発展に対して、現代に共通すること、時間の経過とともに解明されたされたことなどを、弁証法的にさらに理論化しただけだと思う。「弁明」という言葉はふさわしくない。
 『マルクスは生きている』は、正攻法でマルクスの理論を哲学、経済、社会発展の側面から解き明かしている。哲学部分は極めて重要な具体的説明をしている。ただ、新書版を手に取る読者層を考えたとき、物理学の発展に貢献した理論展開は難しい面があるので、もう少し入門編的な導入であればよかったと思う。その点、『理論劇画マルクス資本論』は入門書として入りやすいと思う。
 マルクスと『資本論』への注目、『蟹工船』ブームの背景は同じである。そこは強調してもいいと思った。

『マルクス「資本論」入門』 KAWADA道の手帖

2009-07-25 | 資本論
 『時代はまるで資本論』(基礎経済科学研究所、二〇〇八)という本も出ており、小林多喜二の『蟹工船』ブームとあいまって、ほぼこうした発想は事実上、いまや広く共有されつつあるようにも思えるのです。実際、新自由主義以降の個人主義的な市場原理にすべてを委ねようとする政策方針のもとで、資本主義経済はその本来の作用をあらわにし、経済格差を拡大し、働く人々の雇用と生活を不安定化し、抑圧する傾向を強めてきています。どうしてそうなるのか。『資本論』を読みながら考えると分りやすいのです。 ㌻34

 未来記=本書に収録されている個々人の様々な読み取りすべてに同意できるわけではないが、いろいろな人々が今日の資本主義社会の矛盾を『資本論』によって、読み解こうとする流れがあることは重要だろう。
 『蟹工船』が世界中で翻訳され、あるいは翻訳されようとしていることや、ドイツをはじめ『資本論』が世界中で再注目を集めていることは、現代資本主義の限界が世界中の人々にしわ寄せされていることの反映である。
 『資本論』を現代の眼で読み直し、資本主義の本質を見極め、資本主義が歴史的産物であることを認知することによって、未来社会を問う方向になってきている。今後の展開に注目したい。

マルクス『資本論』(新書版) 第二部第5章 通流時間

2009-07-11 | 資本論
 生産過程全体の正常な中断、すなわち生産資本が機能しない休止期は、価値も剰余価値も生産しない。それゆえ、夜間にも労働させようと努力が生じる。 ㌻193

 通流時間と生産時間とは、お互いに排除し合う。資本は、その通流時間中は生産資本としては機能せず、それゆえ商品も剰余価値も生産しない。 ㌻196

 未来記=この章を読んでいると、徹底した在庫管理をするトヨタ方式が思い浮かんだ。