今NHKの朝の連ドラが人気です。藤山直美主演の「芋たこなんきん」ですね。私も恥ずかしながらこのドラマのファンであります。昭和40年代の大阪をメインの舞台にしていいるから、自分の子供の頃の記憶を確認できるので楽しみにしています。
先週から今週にかけては主人公の思春期の時代をえがいています。具体的には戦争中の庶民の生活が放送されています。主人公の「軍国少女」ぶりがリアルにえがかれています。
私がここで何故リアルだと思うかです。実は母親(故人)が田辺聖子さんのファンでよく氏の本を読んでいました。母親は田辺聖子さんと似た年齢で暮らす地域も大阪だったからとてもシンパシィを感じていました。そんな母親からいろんな話を聞かされたからです。
彼女から聞いた話では、当時の人々はこの戦争が負けるなんて思ってなかった。どんなに爆弾が落ちても最後には「神風が吹く」と大人達が言ってたそうです。だいたい現在の私達はこの戦争が昭和二十年には終わることを知っています。だから戦争中のドラマを見ていても「あー後2年や」なんて思います。
しかし母親達は、当時この戦争は「100年戦争」と教えられていました。当然ながら「じゃまだ90年以上は続くね」と考えたそうです。それを思うと当時の庶民の閉塞感は如何ばかりかと偲ばれます。
近所の婆ちゃんの話しです。少女の頃工場で働いていました。主にはダミーの戦闘機を作ってたんだけど、時にはゼロ戦などの燃料タンクも製作したらしい。その製品には軍関係の検査官が不定期に調べに来たそうです。そりゃ飛んでる最中に燃料が漏れたら大変ですから。
当たり前ですがそんな時は工場中が大変で、恙無く検査官が帰ってくれることに専ら腐心するんです。戦争中の庶民の口には入らないはずの食べ物や芸者さんで歓待したそうです。やはり機嫌良く出来るだけ早く退散して欲しかったんですね。何時の時代も同じで役人は卑しかったんでしょう。
これは別の婆ちゃんの話し。大掃除ってやりますね。私の子供の頃は大晦日の前にしていました。大阪ではそれが普通でした。当地は雪国だからその時分は寒いし雪も降ります。だから真夏のお盆の前にやります。それだけなら単なる庶民の生活なんだけど・・・
これは敗戦前のことです。「巡査はんが一軒一軒ちゃんと大掃除してるか見て回ったもんじゃ」。私たちの常識からすれば、なんとも不思議な事ですね。しかしそれにはちゃんとした理由があったのです。
当時の日本は今の北朝鮮と同じみたいなもんです。いやもうちょっとましかな?ところでなんで警察官が?という疑問が残ります。答えは「衛生」のためです。当時は今よりずっと不衛生な生活でした。だからこれは国家的な課題だったんです。その促進の為に大掃除を奨励したんです。
今なら保健所の管轄かなと思いますが一般人に対する強制力と顔見知り性から近所の巡査が廻ったのかなと思います。その話を初めて聞いた時は殆ど理解できませんでした。しかし当時の情勢や雰囲気を考えたら少し納得しました。
以前にも書いたかもしれませんが、戦前の日本人の大陸に対する憧れは大変なものだったらしい。当時は庶民的には農本主義だったから土地が基本でした。長男だけが引き継いだら次男三男はあぶれ者です。また小作人も沢山いました。彼らの生きる道は中国大陸しかなかったというのが当時の社会の雰囲気だったそうです。
いろいろ書きましたが何を言いたいかというと、大所高所からではない庶民の目線で残す歴史が必要なのではと思うのです。いやどちらかだけではなく、両方が大事なんです。大本営発表は活字に残りますが下々の民の声はその時だけのものです。
そんな事を常々思ってたら「芋たこなんきん」で主人公が「私は書き残さなあかん」と言って先週からの放送になりました。母親から聞いた話の断片を思い出しながらこれは自分にとっても大事な責務やなぁと思いました。知ってる事は出来るだけ次の世代に伝えたいと思っています。
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