1ヵ月ほど前に、Amazonから水中写真家吉野雄輔氏の新本が届いた・・・。
「世界で一番美しい海のいきもの図鑑」という名の写真集みたいな本だ・・・・。
届いた当日の夕方、ダイビング後のほっとした合間にパラパラと捲りながら、どうせなら、雄輔さんが潜って来た軌跡に、じっくりと向き合ってみようと想いたった・・・。
僕はプロのガイドダイバーである・・・。
自分のフィールドのリアルな旬の海を自分なりにアレンジして魅せる表現者である・・・。
もちろん、他人のガイドにも興味がある・・・。そして、言葉であれ、詩(歌)であれ、写真であれ、その表現方法は問わない・・・。
思うに、水中写真家も「ガイド」であり、正に表現者である・・・・。
この本を初めて見開いた時に、とても興味深く感じ、そして惹かれた・・・。
だから、吉野雄輔という表現者の軌跡と対面で向き合って魅せてもらおうと想いたったのだ・・・。
そして、毎日、少しずつ、じっくりと眺めていて、昨日、読み終わった・・・。
驚いた事が幾つかある・・・。
まず、価格である・・・。このサイズでこの内容量なのに、3800円(税別)とは・・・・。
顔となる表紙と帯の絶妙でセンスの良いバランス感も素晴らしい・・・・。
そして、もちろん、本の完成度の高さである・・・。
それはそうであろう。20万点以上のストックの中から、「形」「色」「浮遊」「顔」「発光」「戦略」「擬態」「華」「群」「棲む」「営み」「継ぐ」「遭遇」などのテーマ別に、5ミリのクラゲから50トンのクジラまで厳選された375点が収録され
生物たちのフォルムや色彩が際立つような黒バック写真に拘り、興味深い生態エピソードなど、潜水歴40年、世界80か国を旅してきた海洋写真家が捉えた地球上のもうひとつの世界が凝縮されている。
写真の選択は、同じ被写体を幾度も撮影した中から、この写真でいこうと選択した意図みたいなものが構成の中に見て取れ、随所に唸らせられた・・・・。
全くもって当然で失礼な話だが、僕だったら、自分のお気に入りの写真ばかり選んでしまって、こんな引く時には引ける様な味のある構成は出来ないなと素直に脱帽した・・・。
拘って撮影された黒い背景に浮かぶ数々の生物達の色彩やフォルムが、直接的に眼に飛び込んできて、「この生物は、こんな美しい色合いだったんだ・・・。こんな奇妙な形だったんだ・・・・。」・・・っと、改めて気が付き感動させてくれた・・・。
添えられたエピソードは撮影者しか知りえない現場での体験談で、とても共感出来たり、「へぇ~???」っと、驚かされたりで読み物としても、とても面白かった・・・・。
でも、やはり1枚1枚の写真の素晴らしさである・・・。
水中写真をデジタル写真から始められた方には、ピンと来ないかもしれないが、僕が雄輔さんとお付き合いさせてもらっている、かれこれ30年ほどの前の、もちろん銀塩カメラのフィルム写真の頃から、
インリーフで撮る様な優しいフワッとした雰囲気の写真や薄いピントの淡い写真などの今風の走り的な写真から、絞り22のオヤジ写真・・・・(^_^;)。
もちろん、被写体である生物の色彩の美しさやプロポーションの繊細なフォルムをきっちりと表現するような写真、全てを撮っていた吉野雄輔氏だからこそであろう・・・。
最後のあとがきは、とても、吉野雄輔さんらしく綴られ、この本を、最後に温かく包み込んでいるようだった・・・・。
追伸・・・・吉野雄輔様・・・・。この本に巡り合えて、改めて、海に潜っていて良かったなと、素直に思いました・・・・。
もちろん、ノンダイバーの方が読んでも面白いし僕とは別の楽しみ方が出来ると思いますが、海に潜っているからこそ解る深見が随所に実感でき、面白さやこの本の渋さが倍増した思います・・・。
雄輔さんと潜る海は、いつも新鮮で、僕に色んな感性を与えてくれましたが、この本のページを捲りながらも、一緒に潜っているような感覚に捉われ、また、新しい感性を与えてくれているようでした・・・。
こんな本に巡り合わせてくれてありがとうございます。こんな集大成みたいな写真集のような図鑑のような本を出されて、もう疲れているかもしれませんが、また、こんな唸らせてくれる本を、ぜひ、また、作って下さい。
何時でも何度でもお手伝いしますから・・・・。
ダイブ・エスティバン
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