
円盤のような形の真ん中に穴があいていて、それを口にはさんで吹くとピィ~ッと鳴るのが面白くて、吹きながら帰ってきました。でも家のそばに来ると今までの楽しさが消えて、この笛をみんなに見せてはいけない気がして、ポケットにしまいこみました。「ただいま~」と言って中に入ると、母に「どうしたの?」と、こまごまと聞かれ全部話してしまいました。何でわかったんだろう~ととても不思議でしたが、口の中や周りが真っ赤では誰にでもわかってしまいますね。
家が商売をしていたので、店にはお釣銭が何時も置いてありました。近所のお兄ちゃんがそれを持ってきたら遊んでくれるというので、そっとつかんで遊びに行き裏の駄菓子屋さんで買ってもらったのでした。薄べったくて四角いそのお菓子は、甘くておいしかったので遊びながらゆっくりなめていましたが、その時に口中が紅く染まってしまったようです。笛を隠してもすぐに分かるはずです。
お金を盗むような悪いことをしたので、叱られて表の土蔵の中に入れられてしまい、泣きながら「ごめんなさ~い」「もうしません」と叫んでも真っ暗で物音ひとつ聞こえません。誰も助けに来てくれないので、恐くて外に出たくて思いっきり扉を引っ張ってもびくともしませんでした。
その時間はたった5分も経っていなかったようでしたが、幼かった私にはとても恐くてか、お漏らしをしてしまったそうです。それは覚えていませんが、もうこんなこと絶対するまいと思いました。
お兄ちゃんの家には母が話しに行ってきて、後でその子は家の人にぶたれたそうですが、元気でそれからも遊んでくれたので子供心にもほっとしました。
お風呂に入れようとして着物を脱がせたらお金が1枚おちたことが前にも一度あったそうで、その時の事はまったく覚えていません。いけないことを繰り返して心配かけたから、そのおしおきで蔵に入れられてしまったんですね。
学校にあがる前の出来事で、蔵に入れられたのはその時だけでしたが時々思い出しました。