エコヴィレッジ鶴川は一日にしてならず

鶴川某地にて展開する自然志向のコーポラティブハウス「エコヴィレッジ鶴川」。
住民の手で心地よい暮らし、現在進行形。

パーマカルチャー講座 第5回

2006年02月12日 | パーマカルチャー公開講座
日時:2006年2月12日 11:00~13:30
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパシモリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 日高さん

酒匂さん講義

【今日のテーマ】
・おはようございます。こちらは暖かいですね。岩手は寒いです。昨日は私が学生時代にお世話になった房総半島の三芳村の日本有機農業研究会のイベントに参加してきました。
・今日は樹木がテーマですが、アンケートの結果も考慮し、また都会の人にとっては樹木は身近な話題ではないということもあり、予定していたデザインワークはしません。楽しみにしていた方は申し訳ありません。

【バイオダイナミックについて】
・皆さん昨日夜月見ましたか?明日は満月です。ニューヨークでは満月に犯罪が多いという統計結果もあるそうです。満潮の時間にはお腹の赤ちゃんが外に出ようとするということもあります。霜は大潮と新月、満月の時におりやすい。このように月の満ち欠けは私達の体や自然界に影響を与えています。
・1920年代は農薬や化学肥料の弊害が出始めた頃ですが、その頃にオーストリアのシュタイナーという人が、農薬や化学肥料で育てられた作物は、本来の作物が持つ力(エネルギー)が相当落ちていることに気付き、農薬や化学肥料の害を世界で1番最初に訴えました。バイオダイナミック農法のもとになる考え方を提唱しました。シュタイナーの考え方は教育や建築、医療などの他分野にも広まっています。ホメオパシーというのも近い考え方です。私はバイオダイナミック農法をすべて実践しているわけではありません。バイオダイナミックに「農業講座」という本がありますがとても読みずらく3回読んでなんとか読破しました。私たちの文明生活では想像できない考え方がベースになっているために頭が対応し切れず読みずらいのではないかと思います。というわけで、今日はバイオダイナミックの深い精神世界のをお話するこをはできません。表面的な考え方のお話しになります。
・バイオダイナミックの考え方の1つの特徴として宇宙から降りそそいでくるエネルギーがあります。最近ではノーベル化学賞を取った小柴さんが、宇宙からは素粒子が降りそそいでいるということをおしゃっています。太陽光線は身近で一番強いものですが、月やそれ以外でも多少なりとも影響を与えているものがあります。

【バイオダイナミック~種まきカレンダー~ 】
・シュタイナーの弟子のマリアトゥーンは、植物がどのような影響受けているか検証するために10年間にわたり種をまき続けて統計を採ったものがあります。「種まきカレンダー」というもので世界中で使われています。統計を取ってみると、科学的に認識している惑星だけではどうしても数が足りない、冥王星の外側にまだ惑星があるはずということに気付きました。最近になってようやく世間でもそのような説が出てきましたが、植物を良く観察していると宇宙の彼方が想像できるということが分かります。
・本日の資料に5月のカレンダーを載せています。黒の部分が植物の生育には適さない休耕日です。自然界は厳しいようですがちゃんと自然のリズムの中に休む日がある。宗教の安息日も関係あるのではないかと思います。自給自足の暮らしをしている私に取っては毎日やることが山積みなのでこのような日があるとほっとします。逆に休耕日に木を伐採すると、木が活発に動いていないので伐採した後に木が暴れずらくて木の力が残りやすい。木の伐採については私は専門ではありませんが、「木と付き合う知恵」(自由社)というおもしろ本がありますし、「新月の木」というNPOが活動していてHPもありますので関心のある方はぜひご覧になってください。カレンダーを見ると新月は5月8日で2日後に休耕日があります。2月は28日が新月で27日~28日が休耕日になります。新月の時かその前後が休耕日になります。
・休耕日の例で1つ宇宙と植物の関係をあげました。それ以外に、私たちの食べる植物はいろんなところにエネルギー(養分)が溜まります。実り部分といいますが、例えば米であれば実、大根であれば根、ブロッコリーやなばなは花、なっぱは葉を収穫します。大きく分けると4つに分けられます。それらが必要するエネルギーに影響する惑星は次の通りです。月が水のエネルギーに関係するのは例えば海の潮の満ち引きに関係していることからも分かります。また月が天空を廻る時にどこにあるかでエネルギーに力を与えます。実の中でも種のために収穫する場合はしし座が適しています。

 ◎実・・・熱のエネルギーを必要とする。熱に力を与える月の位置:おひつじ座/しし座/いて座。熱に力を与える惑星:水星/土星/冥王星
 ◎花・・・光のエネルギーを必要とする。光に力を与える月の位置:ふたご座/てんびん座/みずかめ座。光に力を与える惑星:金星/木星/天王星
 ◎葉・・・水のエネルギーを必要とする。水に力を与える月の位置:うお座/かに座/さそり座。水に力を与える惑星:月/火星/海王星
 ◎根・・・土のエネルギーを必要とする。土に力を与える月の位置:おうし座/おとめ座/やぎ座。土に力を与える惑星:太陽/地球/(リンガル)

月の満ち欠けは27.3日の周期です。それぞれの星座の位置にくる日が2~3日ずつある。カレンダーを見ると休耕日と合わせて5つの周期になっている。時々変なパターンが入っているのは惑星の影響です。
・もう1つお話ししておくと、資料の5月のカレンダーを見てみると、5月12日~25日がグレーになっています。これは月が下降している時です。月には3つのリズムがあります。①満ち欠け、②天空を周る、③高さの上下です。下に落ちている時は作物が根をはる力が強い。この時を定植適期といいます。
・例えば、5月16日~18日に我が家は田植えをしました。定植適期の実の日を選べれば一番良い。夏野菜(トマトなど)も実の日が良いのでこの日に植えたいのですが、もう1つ霜には気をつけないといけない。新月、満月が霜が降りやすい。カレンダーを見ると5月上旬と下旬にあります。5月下旬まで待つのは難しかったので定植適期に夏野菜を植えました。今年は5月下旬の霜はおりなかったのでラッキーでした。5月9日がしし座なのでごぼうの種つけをしました。次の日にたまねぎとにんにくに液肥をやりました。実に関わる作業は、できればあらゆる作業を実の日にするのが良いのですがなかなかそうもいきません。カレンダーは優先順位を付けてくれるものです。例えば根の日であれば、人参、大根を植えることを考える、できなければ土寄せをすることを考えるということです。
・仲間で自然農をやっている人の話です。5月24日は8時までが葉の日でした。その日、ほうれん草の種を朝に蒔いて、昼からも蒔いた。それを観察していると、葉の日の朝に蒔いたほうが早く発芽してりっぱなものができた。
・ニンニクも根の日とそれ以外の日に収穫したものでは根の日のほうが腐ったものが少なかった。ドライフラワーの出来も葉の日と花の日では違う。我が家で味噌作りをした時も、豆の良い匂いがしない日がありましたがその日は葉の日でした。葉の日は水の力が強いので植物に水が入ろうとする。腐りやすいので保存食をやる日に向かない。微妙な変化なので絶対だめというわけではありませんが、適した日に良い条件が重なれば良い結果が出る可能性が高いということです。
・枝豆やインゲン、エンドウ豆は実になる途中の花に近いものを食べます。そのため同じ大豆を蒔くにしても枝豆にしたい時は花の日に蒔くのが良い。使い道によって花の日と実の日を使いわけると良いです。微妙なのはねぎですが、ねぎは基本的には葉の日です。葉の日でなければ根の日が良い。このように両方の性質を持っているものもあります。

【質疑応答】
(受講者)みそ作りは実の日が良いですか?
(回答)葉の日でなければ良いと思います。
(受講者)2月、3月の葉の日は?
(回答) 今年の種まきカレンダーはまだなので2月までしかありません。「種まきカレンダー」は旺文社から発売されます。2月の葉の日は11日、12日、21日、22日、23日。
(受講者)家菜類も同じ考え方ですか?
(回答)同じトマトでも例えばトマトピューレなどの保存食にする時は葉の日はさけるのが良い。でもとらわれすぎるととストレスになります。
(受講者)動物や卵は同じ様に影響を受けますか?
(回答)産まれた日で優劣はないのでないのではないかと思いますが、知っていれば個性が輝く可能性はある。家畜に関しては与える飼料がカレンダーに沿ったものではあればやはり力を与える。卵も周期がある。ミツバチはかなりカレンダー通りに動く。ミツバチが動かない日とそうでない日に仕事をするのでは全然大変さが違います。釣りは半月の日はよく釣れます。
(受講者)種取りがしし座が良いというのは根菜など何でもあてはまりますか?
(回答)そうです。

こだわりすぎる必要はないですが、植物にリズムがあるということを知ることで、植物との関わりの中で楽しみが出てくると思います。

【樹木について~農業にとって樹木がいかに大事か~】
・シュタイナーやパーマカルチャーでは、農業の中で樹木はとても大事という考え方が共通しています。確かに1本の木を植えると農業のための面積が少なくなります。でも無農薬、無肥料がうまくいかないという時は、たぶん木の力を借りていない。木を増やすことは作物が良く育つことと密接に結びつきます。物理的には水や空気の調整をしています。生態学的には、昆虫の住み家になる。昆虫というとすぐ害虫が思いつきますが、例えばモンシロチョウでも良い種ではないものに卵を産んでせん定してくれる。ミツバチは花粉を運んだりしてくれる。幼虫は腐食土を分解する。昆虫は木が出しているエネルギーを分散させる仕事をしている。それだけでなく生態系が豊かになることで田畑に良い影響を与えてくれます。また木は鳥の巣にもなります。ツバメやスズメは虫を食べてくれる。のっぺらぼうな田んぼでも止まり木一つあるだけで鳥はきてくれます。
・シュタイナーは、木を切って収穫量がいっけん増えたように見えても、作物に含まれるエネルギーの質は全然変わると言っています。木は単に製材ではない。街中の公園や学校でも木を身近に感じることができる。ぜひ身近にある木を感じてほしいと思います。ヤマモモは空気中の窒素を土に保有してくれる。落ち葉が落ちるとミミズが増える。微生物と共存することで相乗効果が出ます。この前お話ししたように温帯の木は40%~50%の養分を土の中に保有しています。焼畑は、20~30年のサイクルで、山⇒畑⇒山⇒畑・・・を繰り返して、ほとんど肥料をやらなくてもなりたっていた。ずっと畑をやるとなりたたなくなります。
・木は水分を多面的にコントロールしています。まず木は9割が水で出来ています。枝葉のあたりは湿度が常に90%あります。雨が降った時は、雨をしずくにして勢いを弱めてくれる。樹皮も水を含んでいます。木があることで相当の水が保有されています。また誰でも知っていることですが、質の良い酸素を供給してくれます。木は共同組合そのものだという概念です。窒素固定は微生物と根、葉と微生物で共存関係を作っています。スライドを観ながら木がどのように役立つかを見たいと思います。

【スライド~木がどのように役立つか~】
◎ぶどうの棚・・・木はスペースがなくても蔓性のものを這わしたり、地面がなくてもプランターで育つことができます。
◎雪が降り積もった木・・・災害で倒れることもあるのでもし家の近くの狭い場所に植える時は倒れずらい木を選ぶ必要があります。例えば松はやせた土地でも良く育ちますが粘りがない。
◎田んぼのまわりの木・・・ネムの木は窒素固定をしてくれて土地を肥やしてくれる。特にネムの木はそれほど茂らないので都会の狭い場所でも良い。夏には美しい花をさかせます。
◎土手の木・・・普通は植えないような場所でも木を植える試みをしてほしい。オーストラリアでは校庭に食べられる木を植えています。日本でも桜の木が良くありますがさくらんぼで子供たちが楽しめても良いと思います。
◎ネムの木・・・造成をしてほったらかしにしていたところにネムの木が自生しました。造成した後はたいてい土を肥やしてくてる開拓樹=パイオニアプランツが入ってきます。写真では木のまわりで根がはっているところまで緑が豊かなのがはっきり分かります。
◎サイカチの木・・・豆の木。ちょっと前までは河川敷に自生していました。サポニンという成分を持っていて石鹸の変わりになる。サポニンを含む木は他にエゴの木があります。エゴの木は鶴川にありましたが残りましたでしょうか?カブトムシはサイカチの木が好きだし花もきれいです。でもトゲが多い木です。サイカチゾウムシはその木しかつかないので絶滅の危機になっています。
◎防風林(生垣)・・・高いもの低いもの、常緑、落葉、が混在しているほうが機能する。アセビなどの常緑の潅木があると良い。たいてい常緑の潅木は半日陰でも充分育つ。オーストラリアでは山火事が多いので燃えすらい木を防風林にしている。
◎果樹・・・西洋ナシ。一緒にハーブやコンフリーを植えると空間を利用できる。コンフリーは果樹が届かない奥まで根をはる。年に4回収穫できますし収穫しなくてもミミズはコンフリーが好きなのでそのままにしておいても土が肥えます。花はミツバチも好きです。

【どういう防風林(生垣)が理想的が】
・ブロック塀は100%風を遮断しますが、強い風が来るとつむじを巻いて中に入ってくる。丈夫な家は良いがビニールハウスや苗木などは影響を受ける可能性がある。防風林は普通は杉だが下のほうがスカスカになる。中くらいの木。低、中、高、多層に配置できれば良いです。その結果、風が50%遮断できる。理想的には50%風を遮断できる防風林が良い。そうすれば一番高い木の15倍先まで守ってくれる。
・どうせ植えるのであれば生活の役たつものを植える。食べられるもの、毒になるもの、まきや肥料になるもの。参考として今日の資料「有用樹チェックリスト」準備しました。準備した後で気付いたのですが有用樹と書くと反対が無用樹になってりまう。特用樹に書き換えてください。例えばアセビは自然の殺虫剤になる。イタヤカエデは蜜源になる。葉は防腐効果もあり根菜類をムロに保存する時に使うと効果がある。量は少ないがメープルシロップが取れる。樹液をそのまま飲むだけですごく美味しい。樹液でコーヒーを入れるとほんのり甘い。樹液は新月の時は吸上げない。逆に満月の時に聴診器をあてて聞くと樹液の音がよく聞こえます。カキは実を食べられることもあるが、青い時には柿渋として使え、熟したら渋柿を亀にいれて密封しておけばまろやかな酢になります。手軽にできる。干し柿を砂糖がわりにもできるしミツバチの蜜源にもなる。コナラや白樫はシイタケの原木になる。どんぐりは家畜の餌になる。ヨーロッパでは高級豚を雑木林にはなしてナッツを食べさせます。グミは窒素固定してくれます。渋いですが実が食べられ、ジャムにもできる。蜜源にもなります。ツバキは油が取れますが、お茶からも油が取れます。ヤマモモは窒素固定もしてくれ食べられ薬用にもなります。蔓性のマタタビやサルナシも這わせることで防風林になります。昔話で山へ芝刈り、川へ洗濯へと出てきます。木を切るのではなく芝狩りです。細かい木を集めてかまどなどに使った。森がなくてもまきを収穫できます。まだまだ木はいっぱい利用価値があります。皆さんにももっともっと身近な木を利用することを考えてもらえれればと思います。

【質疑応答】
(受講者)苗木の入手経路を紹介してください。
(回答)オーストラリアやニュージーランドは苗木を職業としているところで買い求められる。日本では今日の話しに出たものは普通の植木屋さんで揃います。マナーを守って山から調達する方法もある。その時に気をつけることは、新芽が緑の葉になる前に植えることです。できれば夏の間に探しておいてショックをあたえておくのが良い。1mの木なら木から50cmのところでスコップで根に切れ目を入れて移動することに慣らしておく。果樹に関しては無農薬でやっている草木屋というところがあります。
(受講者)マルチ材に向くものの基準は?
(回答)落葉樹の落ち葉のほうがミミズが分解しやすい。葉のマルチ材という意味です。
(受講者)今日のリストでコンテナでも出来るものは?
(回答)果樹はたいていできますが、アケビ、イチジク、ウメ、オオムレスズメ、カキ、サルナシ、サクランボ、ナツグミ、ネム、ハマナス、マタタビ、ミヤギノハギ、ツバキ、ヤマグワ、ヤマブドウ、ヤマボウシ、などです。
(受講者)天敵誘因とは?
(回答)例えばイチジクは葉が大きくて鳥から虫が守られる。周りの生態系が守られるということです。マタタビはアブラムシの天敵のクサカゲロウが集まります。
(受講者)木の葉をマルチとして使うには?
(回答)いろんな条件があるが、できれば腐葉土に近い形にするために湿らせる。斜面では囲いをするなど。

デザインワークを楽しみにしてきた人には申し訳なかったですがその分時間があったので話したいことをすべて話すことができました。ありがとうございました。

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