エコヴィレッジ鶴川は一日にしてならず

鶴川某地にて展開する自然志向のコーポラティブハウス「エコヴィレッジ鶴川」。
住民の手で心地よい暮らし、現在進行形。

パーマカルチャー講座 第4回

2006年01月29日 | パーマカルチャー公開講座
日時:2006年1月29日 11:00~13:30(午前の部)
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパシモリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 アンビエックス 相根さん

酒匂さん講義

【今日のテーマ】
・あけましておめでとうございます。新年の挨拶が遅くなりましたが、でも今日はちょうど旧暦の元旦にあたります。いつもは家で感謝の気持ちをどぶろくでお祝いしています。
・今日のテーマは「ベランダで作物を育てる」です。ベランダで作物やお花を育てたことがある方はいっしゃいますか?(大勢手をあげる)皆さんすごいですね今日は楽勝ですね。
・では、なぜ作物を育てるのしょうか?
(受講者)「アスパラガスを育てています。新鮮なものが食べられます。」
(受講者)「将来自給生活したいので予行練習と思っています。」
  ⇒大切なことですね。将来に備えて今のうちから植物と関係を作ることは意味あることです。
(受講者)「ベランダは日当たり良いし目の前にあると成長が確認できる。」
  ⇒都会の限られたスペースを生かすという意味もありますね。
・まさか食費をうかせるためにと思って育てている人はいますか?
(受講者)「ラズベリーのお茶を飲むために育てている。買うと高い。」
  ⇒特別の付加価値のものは別にして、食費の足しにすることはあきらめてください。道具をそろえるだけでもお金がかかります。でも作物を育てることはいろんな意味で気付かせてくれることがあり、癒しを与えてくれます。経済的なものだけではありません。

【作物が育つために必要なものは何か】
・畑でないところで育てるために何が必要ですか?
(受講者)順に、「土」「容器(⇒空間)」「水」「種」「肥料(⇒養分)」「水」「日光」「風」。
  ⇒米は風速1mで理想的な光合成ができるそうです。温度もないと育てられません。
・丸の内ビルなど東京では人工的な空間で植物を育てていますが、そういうところでは何を代用しているでしょうか?
 日光・・・電気、水・・・水道水、土・・・化学繊維、養分・・・化学肥料、種(苗)・・・F1、空間・・・人工、風/温度・・・コントロールしている。
・では、都会でパーマカルチャー目指す人はどう準備したら良いでしょうか?ベランダではある程度人工にならざるをえませんが、なるべく安全、自然なものでローコストにするにはどうすれば良いでしょう?都会の空間(コンクリートジャングル)に少しでも緑を増やす活動をする人達のことをニュージーランドでは、グリーンゲリラと呼んだりしています。英語の本に「緑のゆび」という本があります。最初の講座でお話した”飼い(買い)ならされるな”ということにも通じます。本では、少年1人が管理社会の象徴(病院、学校・・・)などを緑にするために立ち向かいます。最後は戦争に立ち向かい戦場や兵器を緑にします。グリーンゲリラの人たちの作戦は植物を使って管理社会を少しでも開放しようということです。先ほどの丸の内ビルが管理をおしすすめる帝国なら、パーマカルチャーが目指すのはグリーンゲリラですね。

【作物が育つために必要なものを、パーマカルチャー(グリーンゲリラ)ではどう準備するか】
 ◎日光・・・太陽を最大限生かすパッシブソーラーデザインという考え方があります。太陽の高度差と軌道を考えて私達が太陽に合わせることが大切です。6時間日照があれば植物は順調に育ちます。ベランダで6時間日照があるところを探します。1mの壁があって日光があたらなければ棚を作るという手もあります。夏は暑すぎるのでどう防ぐかが課題になります。
 ◎水・・・植物は水道水が好きではないので雨水が良い。種はちょっと弱酸性のほうが良いので雨水は丁度良いです。ビニールシートで集める方法もあるし工夫はいくらでもできます。雨水がない時は汲み置きの水が良い。おふろの残り水でも天然の石鹸であれば問題ない。米のとぎ汁なども良い。どうしても水道水を使う時はせめてあっためてください。
 ◎土・・・生産者のを分けてもらうことができればそれが良いです。河川敷から持ってくる方法もあります。最終的には買いますが、できるだけもらいます。
 ◎養分・・・うちでは液肥を使っていますが、さすがに都会の人には言えません。残飯は4人家族で1日あたり500gが日本の平均です。最初に良い土であることが前提ですが、残飯を毎日ちゃんと土に返せば20㎡の野菜が育てられます。その他には可能であれば豆腐屋でおからをもらってくる、米屋で米ぬかをもらってくるなどの方法もあります。都市で暮らすからにはその土地での循環を考えたい。排気ガスなどの問題もありますが落ち葉も利用できます。河川敷の土手草など植物の有機質も土に有効です。このように都市でも充分栄養分が補給でき可能性があります。
 ◎種・・・前回も話ましたが、できれば在来種が良い。もしくは自分のところで取れるのが良いです。
 ◎空間・・・プランターが使えますが、一番良いのは木製です。EV鶴川では外装に焼杉を使うそうですが、焼杉の切れ端を使うことも考えられます。60cm×60cmのプランターであればいろんなものが育てられます。焼杉は雨にも強いのでプランターに向いています。木だけだと通気性は悪いので、あまり人工的なものは使いたくないですが寒冷紗(かんれいしゃ)を内側にします。これだと水は流れるが土は流れない。木がなければビールケースに寒冷紗(かんれいしゃ)という手もあります。でもできれば自然素材が良い。麻袋もそのまま使えます。劣化しますが土にかえります。麻袋がなくてもゴミにする肥料袋などを切って使ってもよい。どうしようもなければ最後にプラスチックを選ぶ。その場合でも木でカバーしてやれば保温性なども随分違います。
 ◎風・・・アンケートでもベランダは風が強すぎるという回答がいくつかありましたが、風が大好きな植物もある。代表的なものはインゲンです。ベランダの外側にすれば風を遮ることができます。風は50%ぐらい遮るのが良いので蔓性ものを風除けにするのは丁度いい。
 ◎温度・・・温度は難しい。コンテナは地温が上がり易く下がり易い。手間ですが、1週間に一度(できれば毎日)、日当り面と日陰面をまわして入れ替えるのが良い。根の生え方が変わります。直置きにはしないほうが良い。果樹は特にしないほうが良い。それに直置きにすると根が外に出ようとします。出た根は生きられません。鉢が浮いていると外に出てはこない。
 ◎水・・・農家では水遣り3年という言葉があります。うまくいかないときは水が原因のことが多い。自然環境では広い畑の中で部分的に足りなくても全体としてうまくまわっているが、ベランダでは常に管理しないといけないので大事です。失敗するときは回数をやりすぎることが多い。1回にドバーとあげるのが良い。自然環境では常に少し湿った地面に雨がふります。それと同じ環境が良い。常に少しづつあげるとプランターの上のほうだけ水がある状態になってしまいます。1番大事な一番先の根っこに水がいかない。自信がない人はバケツにプランターごと入れる手もあります。じょうろであげる時も植物に直接かけない。雨のあたり過ぎが嫌いな植物が多い。また、水分が均質に保たれるためには最初に有機質の良い土を入れるのが大前提。均質に保つためには敷き藁などの有機質のマルチをしてあげることも大事。そうすると蒸散しない。水をあげる時は、1回に土の80%に対して、水は20%やります。3~4日に1回ぐらいが良い。ドバーとやって染み込ませる。潅水の方法を他にも紹介しておきます。少しづつ染み込ませる環境を作り出す一番手間がかからない方法は、下に穴が空いていない素焼き鉢を植え込んで、そこに水をやるのが理想的です。オーストラリアにはウエットポットという製品があった。それぞれの鉢に素焼き鉢を埋めホースの管を通って上のバケツから水が落ちます。ウエットポットは素晴らしい商品でしたが今は売っていません。ぜひ誰かビジネスにしてくだいさい。コンテナ栽培の本にも潅水のやり方がのっているが一番エコロジカルなのはウエットポットだったと思います。もしかしたら手作りできるかもしれません。

 【質疑応答】
(受講者):素焼き鉢でじわじわ水をやる方法と、ドバーと水をやる方法の両者のバランスが良く分からない?(矛盾していないか?)
(回答) :素焼き鉢は充分な水があるところに素焼き鉢を埋めて適湿な条件保つ方法です。ドバーと水をやるのは適湿な条件を一気に作ってなるべくそれを持続させようということです。少しづつ水をあげながら適湿な条件を保つのはすごく難しい。表面にちょこちょこ散水するのは良くない。

(受講者):汲み置きの水は夏は熱すぎないか?
(回答) :お湯はダメです。夏は70%の日射角度がある。家か日陰に汲み置きするのが良い。ホースの水も熱いのはダメ。熱いお湯よりは冷たい水のほうがましです。でも常温が一番良い。

(受講者):季節によっても水のあげ方が違う?
(回答) :季節にもよる。土によっても違う。プランターの深さでも違う。何日に1回とはいえない。でも夏でも1日に1回以内が良い。朝が良い。

(受講者):水をあげすぎるとどうなる?
(回答) :根が働けず養分が吸いきれないことになる。状況によるので良く見てつきあうことが大切だが、やりすぎになる傾向が強い。

(受講者):マルチは炭でも良いか?
(回答) :良い。直射日光があたりすぎると熱すぎるので注意は必要です。

(受講者):マルチの種類は何が良いか?
(回答) :できれば土にかえるもの。新聞紙はよっぽど工夫しないとすぐに乾燥する。インクの問題もある。

(受講者):素焼き鉢のサイズは?
(回答) :0.3m×0.6mなら良い。
 そんな感じで、なるべく自然なものを使うと人工的な管理でも可能性が出てきます。

【実例についてスライド上映】
・建物際の例・・・建物際は温度変化も少ないので壁際のスペースは有効です。霜もおりません。反射を利用すればトマト、ブドウなど熟し方も違います。実は建物の軒下は畑より作物が育つことがあります。
・沢の上に木を組んだ例・・・畑のとなりの沢に木を組んでかぼちゃなどの栽培することもできます。田舎はいくらでも土地があるように思いますが、昔は皆な小作でしたのでこういう工夫をしました。例えばベランダや屋上で応用できます。
・壁面の例(複数)・・・典型的な例はキヅタをはわせる。ヨーロッパでは、壁面の植物で冷暖房費3割削減できるというデータあります。ただ、ヨーロッパは石の建物です。日本の木の建物だと痛めてしまう。でも家を傷めるのはキヅタの場合です。別の蔓性のものは可能性あります。キヅタは断熱性は優れるが他に使い道がないのでパーマカルチャー的には芸がない。ツタは夏と冬で日射角度を自分で調整するのですぐれた断熱効果があります。壁面で可能性があるのはフルーツ。柿やブドウなど。ニュージーランドで20年パーマカルチャーをやっている人はパッションフルーツを使ってパッシブソーラーデザインを植物で実現している。スギカズラは繁殖力が強い。茎や葉はお茶になる。花は薬草になる。多目的に使える。蔓細工としても使える。マタタビは薬草になる。アブラ虫がつきやすくその天敵のクサカゲロウを呼び寄せてくれるので畑のとなりに植えると良い。お茶にもなるし食べられる。アケビは食用になるし花もきれい。若い蔓や葉も食べられるしお茶にもなる。薬草にもなる。実も食べられる。お酒のつまみにもなる。蔓細工にもなる。仲間のムベは常緑でアケビは落葉です。
・コンテナ栽培の例・・・ポットで育てられないものはない。果樹も育てられる。3mぐらいまでの木は育てられる。リンゴは20個ぐらいは取れる。相性の良いハーブを一緒に植えるとスペースも利用できる。
・小さい鉢の例・・・自宅(酒匂さん)のキンカンの例です。柑橘類は日陰でも大丈夫です。やはり甘くするには日向が良いですが、木は日陰でも大丈夫です。最近はお店でアボガド、フェージュなどが売られています。トロピカルフルーツも意外と半日陰でも大丈夫です。
・コンテナ栽培リンゴの例・・・ワイン樽の半分でできます。これはアルプスおとめという姫りんごです。最近は、果樹のコンテナ栽培はプロもやっていてます。さくらんぼなどはコンテナのほうが管理がしやすい。
・ブドウ棚の例・・・プランターから伸びてはわせることで日陰とかアプローチができます。
・古タイヤでジャガイモの例・・・まず、きれいな堆肥をひいてジャガイモを植えます。育ってきたら上に古タイヤを順番に足します。一般的にジャガイモは大量の土が必要と言われますが、土が少なくても育ちます。ただこの方法は高温多湿でないところで考えられたもので、日本では6月~7月で枯れてしまうので上にいかない。これは岩手の葛巻で試した例です。
・ビニール袋でヤマトイモの例・・・袋に入れてフェンス際に並べています。ヤマトイモは多年生で管理しやすくい。失敗が少ないです。
・デザインの例・・・プランターを立体的に利用している。日光の関係で段々にするとスペースを有効利用できる。ベランダの外側に蔓性の植物をはわすこともできる。グループワークのベランダのデザインの参考にしてください。

【相根さんからEV鶴川の概要説明】
 300年もつ住宅を目指しています。外壁は焼杉を予定していて住民の皆さんと有志で焼く予定です。自然素材にあふれた建物になりますベランダは6m×1.5mあります。住民の皆さんが実際にどう使われるか楽しみにしています。敷地には地主さんの古民家や土蔵もあります。土壁を直したり茅葺の屋根を直したり、田んぼを一緒にやりたいということも地主さんとも話しています。

【今日の演習について】

---フォレストガーデン ----------------------
           【例】
高木(5M~    ⇒果樹。りんごなど
低木(~5M    ⇒ブルーベリー
かん木(~3M   ⇒ピーマン
草本類(~2M   ⇒ニラ
地衣植物      ⇒サツマイモ
根菜類       ⇒大根
つる性植物     ⇒ヤマトイモ
野菜 (一)    ⇒インゲン、きゅうり、かぼちゃ、エンドウ
   (多)    ⇒ヤマトイモ、ハヤトウリ、アピオス
樹木 (落)    ⇒キウイ ブドウ、サルナシ、アケビ、マタタビ、フジ
   (常用)   ⇒ムベ、ツルグミ、スイカズラ、ツタ
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・パーマカルチャーでは空間を最大限生かすための1つの方法論としてフォレストガーデンというものを提唱しています。フォレストガーデンとは名前の通り林のような庭です。私達が暮らしているところの雑木林は(上記のような)7つの形態の植物がお互いの日光や水分をシェアしているのが自然の安定した生態系です。この形態を私達がデザインできると空間を最大限生かせるのではないかということが提唱されています。これは広い土地だけの話ではない。ベランダなどの空間でも同じことが言える。考え方は林、果樹園、畑でも通用する。
・パーマカルチャーでは作物を育てるとき食料生産だけでなく見た目も美しいことを考えている。エディブルランドスケープ、食べられる景観作りと言います。
・植生の多様さが害虫のコントロールになることが良く知られているが、色によっても虫の好き嫌いがあることがだんだん分かってきている。例えば、黄色が好きな虫が多い。アブラムシは赤いものが嫌いな傾向がある。昨今では色の多様性が重要ということが言われている。今回の演習ではフォレストガーデンの7種類の植物と7つの色を入れてください。
・デザイン例を4つ紹介しますので演習の参考にしてください。(資料の絵で紹介)ブドウのまわりにブッシュ状のトマトを植える、レモンのまわりにアブラムシがつきにくいスタチュームを植える。ブルーベリーのまわりにシキナリイチゴを植える。両方とも酸性が好きです。リンゴのまわりにニラ植える。1つのプランターにいろいろ植えることができます。
・野菜の一覧を見て余裕があれば前回やったコンパニオンプランツも取り入れてください。

【質疑応答】
(受講者):(土について質問)
(回答) :できればプランターの土を取り替えることが必要。生ゴミ:2、土:1にしてサンドイッチにして作る。野菜⇔果樹⇔堆肥で土を循環させるのが良い。野菜は養分を3割ぐらいしか使わないので野菜の次に果樹に使う。終わったのを堆肥にまわします。

(受講者):建築基準法では、幅60cmぐらいの通路は確保する必要があります。両脇は物を置かないでください。
(回答) :一応そういう法律はありますが、皆さん工夫してみてください。

(受講者):穀類はプランターでやる現実性は?
(回答) :例えば米は加工する手間があるので難しい。小麦は一番現実的。

(受講者):アマランサスは穀類?
(回答) :アマランサスは葉を食べる用と穀類用などいろいろな種類がある。

(受講者):(生ゴミ堆肥についての質問)
(回答) :生ゴミ堆肥作り方は次回のミミズの話の時にできればやりたい。参考文献を後で紹介します。(「ベランダで作るコンパクト堆肥」)

(受講者):エゴマは他の作物との相性はありますか?
(回答) :昔はサトイモのカブ間に植えた。どちらかというと大きな面積で育てる。

【演習の発表】
2グループが発表。
◎1グループ目の酒匂さんのコメント
 ・姫りんごは直列型でせまい場所には良い。
 ・麻袋で蔓性の植物を植えるのはすばらしいと思います。

◎2グループ目の酒匂さんのコメント
 ・サツマイモは蔓がはってスペース取る難しいという話があったが、壁際に植えて蔓を下に垂らす手もある。
 ・普段日があたらない場所でも冬はあたるので冬なら大根などが充分育つということがあります。季節ごとに育てるものを変える手もある。

【終わりの挨拶】
 農的暮らしの準備として、家でもワークの続きをしてみてください。ベランダ堆肥についてはいろいろ質問を頂きました。自分にとってはベランダ堆肥についてはミミズで作るのが一番お勧めです。詳しくは「動物を飼う」の回でやりたいと思います。堆肥についてはいろんな本でも紹介しています。果樹の作り方や、コンテナ栽培の本もあります。限られた時間ですが一番必要なことをお話しできればと思っています。次回は樹木のことについてやります。アンケートでは新月に木を伐採することについて質問がありました。バイオダイミックとの関連の中で次回お話したいと思います。来月もぜひ参加してください。ありがとうございました。

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