画家 辰野登恵子さんの新作個展が銀座資生堂ギャラリーで始まった
今回の展覧会名はなんと「抽象ー明日への問いかけ」
マチスやピカソも利用したパリの石版の版画工房IDEMでの滞在制作と今年描かれた新作油彩の展示
版画も良かったけどやっぱり辰野さんは「色」の人。油彩が素晴らしい
今はリアリズム絵画やキャラクター系の絵画が主流の日本の美術界にとってまさに異端の?いや孤高の存在
僕が学生だった頃見た竹橋の近代美術館で見た個展(当時至上最年少の個展だそうです)はインスタレーション一色の美術シーンにおいて「オレも絵画でいいんだ!ド絵画で行こう!」と決意した展覧会だった。
時はあれから16年も経ち今もなお絵画の本質を追求されている。
僕もあの時の決意を変えずに絵画をつらぬき通している。
「抽象」という言葉は難しかったり敷居が高そうだったりして煙たがられる
しかし抽象概念が生まれたのは、ものの表面やうわべだけでモノやコトを判断せず
その本質、真の姿を捉えたいという欲求からだと思う
抽象にはちょっとした哲学性があるのです。 モノを見て考えたり想像したり驚くことが面白い
アートにとって抽象性は無くてはならない絶対必要条件だと僕は信じています。
辰野さんは抽象でありながら明暗や量感を保った絵画を描いている。(今回の油彩は比較的明暗は控えめになっていましたが)
抽象をやる画家にとって明暗をともなった表現(キアロスクーロ)というのは非常に困難なことである
アメリカ型の抽象の歴史は簡単に言えば単純化と平面性にあった。
モダニズム絵画を見れば誰でもそう思うでしょ?
しかしグリーンバーグの目指したモダニズムやフォーマリズムでは絵画はミニマリズムに行き着き終了してしまう。
かといって間違いだとは思えない どこかに「たられば」で戻れるならもっと優れた絵画が20世紀後半ー21世紀に生まれていただろうと(僕は)想像する。
辰野さんの場合それはセザンヌでありマチスであり俵屋宗達。
近代絵画の父をしっかり捉え、そこから21世紀に生きる自分が感じたり出来る事を考え描いている。
いつまでも憧れの最高の画家です。
分かりやすいだけが良い事ではない ちょっと困難な山に挑む方が達成感を得られる
近年の分かり易すぎる絵画ブームに対して あえて「抽象ー明日への問いかけ」というタイトルを選んだのでしょう
銀座 資生堂ギャラリーにて 10月16日まで