制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

障がい者制度改革推進会議が初会合、夏頃までに基本方針を取りまとめ

2010年01月14日 09時43分11秒 | 自立支援法・障害
内閣府は、12日に「障がい者制度改革推進会議」の初会合を開いた。この推進会議は、鳩山首相を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」の下部組織で、メンバー24人のうち、14人は障害がある人やその家族。自立支援法が当事者不在のまま検討が進み、法案成立時には気づかなかったことに施行直前になってようやく気づき、抗議が広がったことへの反省からの当事者参加となった。
障害者施策を担当する福島大臣が「改革の具体的な検討を進めていくための、いわばエンジン部隊」との位置づけを表明するなど、まずまずのスタートである。

当面の方針として、今年の夏頃までに自立支援法を「廃止」した後の制度の骨格を示すこと、障害者の差別を禁じた障害者権利条約を批准するための法整備を目指すことなどが明らかになった。具体的には、障害者基本法を抜本改正すること、自立支援法を廃止して「障がい者総合福祉法(仮称)」に改正・改題すること、障害を理由とする差別などの禁止を定めた法制度を検討することの3点である。また、障害者の教育や雇用などについても議論していくことになった。

内閣府参与の東俊裕室長(事務局トップ)が提示した論点は、障害者制度の基本的な在り方、差別の禁止、虐待の防止、教育、情報の入手・利用、地域社会での自立した生活、保健医療など100項目近く。議論すれば簡単に解決策がみつかるものばかりではない。論点のなかには、いくら議論を重ねたとしても出口が見つからないものも、多様な障害当事者の全てから同意が得られるような解決策が見つからないものもあるだろう。当面5年間とされる改革の集中期間は、あっという間に過ぎ去ってしまいそうである。
論点として、すべてを洗い出すことは大事なことである。網羅性を確保できるし、これだけの課題が山積しているとアピールできる。しかし、重要度と優先度が高いもの、具体策を講じられるものなどの基準を設けて絞り込まないと、議論を繰り返すばかりで何も決められない、貴重な時間が過ぎ去り、実際に困っている障害当事者に必要な支援を届けることができない(遅れる)ということになってしまいかねない。かといって、対症療法的・パッチワーク的な対策では、推進会議で議論する意味がない。(おそらく、このようなことをわかってのうえでの約100の論点の提示だと思うが)現実的なアジェンダのセッティングをお願いしたい。

山井政務官(厚生労働省)からは、自立支援法の違憲訴訟を巡って7日に原告団・弁護団と基本合意に至ったことの報告があった。具体的には、住民税非課税世帯には利用者負担をさせないこと、介護保険の優先原則を廃止すること、実費負担を早急に見直すことなどの原告からの要求事項を厚生労働省が検討していくことである。今後は、当事者が参加して十分に議論し、新たな制度に移行するまでの間の措置を講じていく方針も明らかにされた。ただし、今回の内閣府が開催する推進会議などでの議論と、厚生労働省でなされる議論との関係性が十分に整理できているとは思えず、2つの検討結果を合わせ読んで、今後の動きを追いかけなければならなくなるだろう。

「障がい者制度改革推進会議」が初会合-夏めどに基本方針
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25879.html

なお、推進会議は、月に2回程度のペースで開催される。事務局の資料準備は大変だろうが、これだけの期待が集まっているのだから、頑張っていただきたい。また、傍聴のために内閣府まで行かなくて済むように、会議の模様をインターネットで配信することになった。詳細が判明したら、このブログでも紹介したい。

障がい者制度、改革会議が初会合 障がい者や家族も参加
http://www.asahi.com/politics/update/0112/TKY201001120481.html?ref=goo


2 コメント

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コメントありがとうございます (e-wel&gov)
2010-01-15 00:42:58
確かに集中して議論したほうが効率がいいですね。
会議に提出する資料をつくって、関係者への事前説明に回って、修正して... なんてやっていると2週間なんてあっという間なのかも。最近は、議員説明が大変だとの噂をよくききます。

夏までに基本方針をとりまとめるためには、2週間に1度では十分な議論ができないかも。春には、コメントでいただいたような運営もありうるかもしれませんね。
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Unknown (正己)
2010-01-14 19:28:25
「今後は月2回程度の協議」なんですよね…。2回目の協議は前の協議の復習から始まって…かな?自民党政権時代と一緒かも。協議が月2回というペースは妥当なのだろうかと疑問に思いました。
私がリーダーなら何日か続けて集中して議論して、煮詰まったら1ヶ月くらい各自に考えてもらったり他の人の意見を聞いてきてもらったりして、また何日か集中して議論する。そんな感じで運営するような気がします。
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