【設例】
Xはフィリピン人女性である。
来日前にフィリピン人男性Aと結婚し、現在も婚姻中である。
Xはその後来日し、日本人Yと内縁関係になり子Zを生んだが、在留資格はない。
母Xと父Yは、子Zと3人で、日本で永住したい。
しかし、夫Aは怒っている。
どうしたらよいか?
【問】
問1 母Xと子Zが日本にいるために、それぞれどのような資格を取るべきか。
問2 子Zが日本にいるために、どのような手続を履践すべきか。
選択肢
①父Yの子Zに対する任意認知
②夫A・子Z間の親子関係不存在訴訟+父Yの子Zに対する任意認知
③父Yによる子Zの強制認知
【回答】
以下の回答が必ずしも正しいとは限りませんが、最初に考えるべき方策でしょう。
問1
子Zの実父Yは日本人なので、子Zに日本国籍を取得させることが考えられます。現国籍法3条によれば、出生をしたとき及び申請時に、認知をした父又は母が日本人であれば、その子は日本国籍が取得できます(その他にも要件はありますが割愛)。したがって、子Zに関しては問2で述べるように、父Yからの認知の手続きに入っていきます。
母Xについては、日本国籍をもつ子Zの親権者として「定住者」の在留資格(在留特別許可)を申請すべきでしょう。なお、母Xは夫Aと婚姻中であるため、これを解消しない限り、父Yの配偶者としての在留資格は取れません。
問2
子Zが日本国籍を取得するためには、日本人の実父Yからの認知を得る必要があります。
そこで選択肢①「父Yの子Zに対する任意認知」が考えられますが、これは不適当です。というのも、子Zには、母Xと婚姻関係にある夫Aの嫡出推定が及んでしまい、父Yが任意認知できないからです。すなわち、父Yが認知するためには、夫Aの嫡出推定を破る必要があります。
そこで選択肢②「A・Z間の親子関係不存在訴訟+父Yの子Zに対する任意認知」が考えられますが、これも不適当だと思います。なぜなら、夫A・子Z間の親子関係不存在訴訟は被告となる夫Aの所在地に管轄があるので(諸説ありますが原則)、フィリピンで裁判を起こさなければならなくなり、時間・労力・費用が膨らみます。
したがって、選択肢③「父Yによる子Zの強制認知」が最適な選択だと思われます。すなわち、子Z(親権者たる母X)が父Yに強制認知の調停・審判を起こせば、先決問題としてAと子Zとの間の親子関係も認定され、直接父Yの認知を得られるうえに、被告たる父Yが日本人にいるため、調停・審判も日本で出来るからです。
弁護士法人 川原総合法律事務所
弁護士 川 原 俊 明
ホームページ http://www.e-bengo.com
Xはフィリピン人女性である。
来日前にフィリピン人男性Aと結婚し、現在も婚姻中である。
Xはその後来日し、日本人Yと内縁関係になり子Zを生んだが、在留資格はない。
母Xと父Yは、子Zと3人で、日本で永住したい。
しかし、夫Aは怒っている。
どうしたらよいか?
【問】
問1 母Xと子Zが日本にいるために、それぞれどのような資格を取るべきか。
問2 子Zが日本にいるために、どのような手続を履践すべきか。
選択肢
①父Yの子Zに対する任意認知
②夫A・子Z間の親子関係不存在訴訟+父Yの子Zに対する任意認知
③父Yによる子Zの強制認知
【回答】
以下の回答が必ずしも正しいとは限りませんが、最初に考えるべき方策でしょう。
問1
子Zの実父Yは日本人なので、子Zに日本国籍を取得させることが考えられます。現国籍法3条によれば、出生をしたとき及び申請時に、認知をした父又は母が日本人であれば、その子は日本国籍が取得できます(その他にも要件はありますが割愛)。したがって、子Zに関しては問2で述べるように、父Yからの認知の手続きに入っていきます。
母Xについては、日本国籍をもつ子Zの親権者として「定住者」の在留資格(在留特別許可)を申請すべきでしょう。なお、母Xは夫Aと婚姻中であるため、これを解消しない限り、父Yの配偶者としての在留資格は取れません。
問2
子Zが日本国籍を取得するためには、日本人の実父Yからの認知を得る必要があります。
そこで選択肢①「父Yの子Zに対する任意認知」が考えられますが、これは不適当です。というのも、子Zには、母Xと婚姻関係にある夫Aの嫡出推定が及んでしまい、父Yが任意認知できないからです。すなわち、父Yが認知するためには、夫Aの嫡出推定を破る必要があります。
そこで選択肢②「A・Z間の親子関係不存在訴訟+父Yの子Zに対する任意認知」が考えられますが、これも不適当だと思います。なぜなら、夫A・子Z間の親子関係不存在訴訟は被告となる夫Aの所在地に管轄があるので(諸説ありますが原則)、フィリピンで裁判を起こさなければならなくなり、時間・労力・費用が膨らみます。
したがって、選択肢③「父Yによる子Zの強制認知」が最適な選択だと思われます。すなわち、子Z(親権者たる母X)が父Yに強制認知の調停・審判を起こせば、先決問題としてAと子Zとの間の親子関係も認定され、直接父Yの認知を得られるうえに、被告たる父Yが日本人にいるため、調停・審判も日本で出来るからです。
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