米軍バリスティックグラスＢＬＰＳ

米軍は色々な装備を開発・支給することで有名だが、その中にはサングラスも含まれている。
ということで今回はその中からＢＬＰＳを解説しよう。
サングラスというとパイロット用のランドルフなどが有名だが、このＢＬＰＳは地上部隊用に開発された。

開発は80年代後半と言われているこのＢＬＰＳ、開発の理由としてはこの頃からミサイルなどの誘導にレーザが使用され始めたことが挙げられるだろう。
レーザを用いることで命中精度が飛躍的に向上した反面、その強力な光（目に見えないが）が近くに味方がいた場合に網膜を傷つけてしまう恐れが生じたのだ。
訓練用には出力を弱めた「アイ・セーフ」モードを使うそうだが、いざ実戦となった場合には低い出力では本来の高い命中精度を損なう恐れがある。
そこで地上部隊将兵の目をレーザ光から保護する必要が生じたのだ。
また、それまで省みられていなかった砲弾の破片などから目を保護するという機能も併せて必要とされた。

ＢＬＰＳという名称は
Ｂａｌｌｉｓｔｉｃ　Ｌａｓｅｒ　Ｅｙｅ　Ｐｒｏｔｅｃｔｉｏｎ　Ｓｙｓｔｅｍ
の略で直訳すると「破片・レーザ用保護眼鏡」みたいな感じになる。
ＢＬＰＳの構成は
・本体
・ハードケース
・マニュアル
・ノーズパッド
・リテーナストラップ（脱落防止用ストラップ）
となっており、後者2点は市販品を流用しているようだ。
いかにもアメリカ的といえよう。

マニュアルによるとレンズには4種類あり
・クリアーレンズ（夜間用）
・グレーサングラスレンズ（可視光線８５％カット）
・グリーン対レーザレンズ（2種類のレーザ光から保護・夜間用？）
・ブラウン対レーザレンズ（3種類のレーザ光から保護・昼間用？）
となっている。
今回のものはグレーレンズだ。
レンズはＵＶカットとなっており紫外線から目を護ると共に厚さが２．５～３ｍｍもあるレンズは６５０フィート／秒の速度で飛んでくる15口径の鉄球を止めるほどの能力がある。
また、左右に大きく回りこんだレンズ部は広い視界を着用者に与えると共に小さめに設定された上下幅はヘルメット着用時の干渉を抑える優れたデザインとなっている。
材質は多分ポリカーボネイトではないだろうか？

同時期に似たようなデザインの「ＳＰＥＣＳ」と呼ばれるものも開発されているが、ＢＬＰＳのみの特徴として専用のフレームを装着すれば眼鏡レンズを内部に装着できる点が挙げられる。
眼鏡着用者の私としてはありがたい配慮だが、専用フレームの入手は困難だ。
なお、製造はパイロット用ヘルメットで知られるＧＥＮＴＥＸ社だ。

硬質の樹脂で作られたハードケースは背面にＡＬＩＣＥクリップ２個が付き、ベルト等に装着できるようになっている。
まさに至れり尽くせりだ。

しかし、この高性能なグラス、米兵が実際に使っている写真をあまり見かけない。
イラクやアフガニスタンでは砂が飛んでくるのでゴーグルやワイリーＸのような防じん機能がないと厳しいということだろうか？
ちょっと残念だ。

だが、日本で砂嵐の心配は低い。
米軍採用のこの高性能グラス、陽射しがきつくなってきた昨今、あなたも一ついかがだろうか？
無論、コレクションとしてでなく実用品として。


オー！捨てないと豆知識「Ｂａｌｉｓｔｉｃ」
マニアがいつも悩む単語がこの「バリスティック」だ。
直訳すると「弾道工学」となるのだが、そうすると「バリスティック・ゴーグル」が「弾道工学ゴーグル」となり意味不明となってしまう。
「弾道防護」とする場合もあるが弾道を防護するというのも不自然。
開き直って「防弾」としてしまう場合もあるが機能に対してちょっとオーヴァーな場合が多い。
「対衝撃」が正しいとする意見もあり、この辺りが無難なようだ。
今回は機能上「対破片」と訳しましたが、「適訳語なし」としたいのが実情です。