名前を忘れた罪

―忘れてもいいこと、
 そして忘れてはいけないこと―

鏡の中のファントム

2019-05-25 22:20:24 | 
銀色のナイフ、落ちたその瞬間

私の中の何かが壊れた。

次の瞬間、私は見た事も無い場所に居た。

ここはどこだろう、まさか死の国?

思い出せない 銀色のナイフは

私の胸を貫通したのだ、その瞬間に

割れた鏡の中、閉じ込められた。

鏡の中に映るそれは私であり、

また私では無い別の生物だったり。

私の胸には血が流れた跡があり、

しかし痛み、痛覚も感覚も無い。

思い出した、私はあの時

悪魔と契約したのだ。

生きる意味を覚えずただ無為に過ごす

苦痛から解放して欲しいと。

すると私は既に死んだ事になる。

ここは天国か地獄か、果たしてそれとも…。

割れた鏡の隙間から声を出してみても

鏡の外に届かない。

私は全てを悟りそして全てを放棄した。

ただ1つの心残りは臨月の妻のことだけだった。

思い出した、どうして私が今この場所に

いるのかを。どうか元気でいてほしい、

妻よ、これから生まれてくる息子よ。

私は鏡の中のファントム、鏡の迷宮に

閉じ込められた魂の欠片。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿