名前を忘れた罪

―忘れてもいいこと、
 そして忘れてはいけないこと―

秋のおしゃべり。

2013-11-24 19:07:12 | 
蛙と土竜と蝙蝠と
啄木鳥が雑談してるよ。

「今年の秋は、随分早く
 行っちまったな。」

「挨拶する暇さえ、
 無かったな。」

秋はいつの時だって気まぐれで、
声も掛けずに素通りしてゆく。
会いたいと思ってるのは
どうやらこっちだけみたいだ。

それでも毎年、この季節になると
会いたくなるんだよな。

無口な友達、一声もかけない。

でも蛙と土竜と蝙蝠と
啄木鳥はそんな事おかまいなし。

元気でいればそれでいいよ。

蛙時限爆弾。

2013-11-15 18:05:17 | 
悪戯な蛙、
時限爆弾抱えて
笑ってるよ。

次は何時にセットするか
奴の考えてる事なんて
俺には分からないけど、

必ずセットしてくんだよ。
にやにや笑いながら、
それ見るだけで俺は
軽くドン引きだけどな。

毎日毎日、
必ず何所かで爆発する。
意地悪な蛙の仕掛けた、
意地悪な時限爆弾が。

あいつには何を聞いても
無駄さ、あいつ両耳
聞こえないんだ。
爆弾の使い過ぎで。

自業自得だけど、でも
なんか笑えないんだ。
何となくあいつが
可哀想に思えてさ。

日常。

2013-11-11 13:43:21 | 
ヒマだから、公園で
石ころ蹴飛ばして
ベンチに座って
空を見上げた。

何の変哲も無い青い空。
雲ひとつない快晴。

はじゃいでる子供達、
大変そうなお母さん達。

杖ついてる
おじいさんおばあさん、
見ても何とも思った事
無かったなぁ。

今度からは、
よく注意して
見ようかな。

日常の中にある
大切なものたち。

左足の破けた網タイツ。

2013-11-05 23:19:40 | 
変な女を見かけたんだ。

踵の折れた黒いヒールに
左足の破けた網タイツ。

ちらちら見てたら
目が合ってしまった。
女はこちらを見てこう言った、

「前にもあったこと、
 覚えている?」と。

俺にはそんな覚えがないけど
女はそう言う。


続けて言った
「昔はよく手を
 握ってたじゃないの。」

さっぱり意味が分からなかったが
女に聞くとどうやら、
前世を見ることが出来るらしい。

俺と彼女の前世は
深海魚だった。
光を見ようとして、
そして死んだらしい。

俺は彼女を部屋まで
連れ帰った。

前世で話し切れなかったこと
伝えるために。