奈落。

一度落ちたら、
二度と帰って来れない。

今、私は奈落の
淵ぎりぎりに
立っている。

一歩踏み外せば、
もう二度と戻れない。

どうしてこんな所に
来てしまったのだろう。

望んだ世界と
真逆の世界だ。
帰りたい、
元居た
明るい場所へ。

蜘蛛の糸が
降りてくるのを
期待するだけ無駄だ。

自力で
這い上がるしかない。


その力が、
あればの話だが。

失われゆくもの。

今時の若い子、
ラジカセなんて
使った事ないだろうな。
たまに伸びる
カセットテープで
BON JOVIとか聴いたな。

最近の若い子、
全自動洗濯機しか
知らないだろうな。
昔は二層式、
その前は洗濯板。

最近見なくなったね、
どこまでも
かけっこ出来る
広い野原。
雑木林に作った
僕たちの秘密基地。

クッキーの空き缶に、
折り紙たくさん入れてた。

煙草の空き箱で
おばあちゃが作ってくれた
紙のお人形。
どこ行っちゃったのかな？

みんな無くなってしまった。
お菓子の空き箱に
入れておいた
夜店で買ったルビーの指輪も。

大きな高層ビルが邪魔して
空も見えないんだ。
星なんて一つも無いよ。

みんなみんなもう、
帰ってこないものたち。

若い日。

色んなことした。

良いことも、
悪いことも、

真実の意味なんて
分からなかった。

淡い恋もした。
失恋して
泣いた夜もあった。

友人とカフェで
長時間、
夢を語ったね。

朝帰りも
何度もあったね。

挫折して
何度も悔しい思いをした。
次の日にはすぐに忘れた。

もう二度と取り戻せない
若かったあの頃。

私の心の小さな箱に
いつまでも
残っています。

愛も夢も思い出も
全部、プライスレス。

青色の隙間。

何だってこんなとこに
隙間があるんだ。

しかも、
これみよがしな
爽やかな青色を
しやがって。

俺は青色はあんまり
好きじゃないんだ。

よりによって
青色だなんて。
それは俺に対する
何か当てつけか？

今すぐ
塞いでやるよ。

冷たいグレーをした
コンクリート、
こねくり回して
すぐに埋めてやる。
青色の隙間。

埋まった隙間、
二度と会う事もないけど
案外青も悪くないって
思わせてくれて
サンキュー！　ByeBye Baby！

シャボン玉、空に消えた。

石鹸、水に溶かして
がしゃがしゃと
かき混ぜたよ。

これで材料は出来上がり、
後は飛ばすだけだ。
さあ、自由な
空中飛行の始まりだ。

プリズムに反応して
ときどき七色に光る。
ちょっとお洒落した気分。

シャボン玉、さあ
空に向って飛び立つよ。
どこまでもどこまでも。

ずっとずっと、
空高く飛べ。
飛んで飛んで飛んで、

シャボン玉、空に消えた。
シャボン玉、空に消えた。

その後は知らない。
残った石鹸水、
バケツに捨てた。