おじさん日記 ~Okinawa Self-Diving Log~

セルフダイビングのブログ。ログや写真や器材が中心ですが、その他ダイビングに関係ないことも好き勝手書いています。

エントリー直後のフリーフロー対策

2016-02-12 22:34:49 | リスクマネジメント
ダイビングでエントリー直後にセカンドステージからフリーフローすることは、ダイバーなら誰でも経験があることではないでしょうか。友人でこの件で困っている方がいたので、記事にまとめることにしました。

ビーチエントリーで、セカンドステージが水に浸かった瞬間にじゅぽぽぽーーってフローしたり、何かにセカンドステージをぶつけた瞬間やボートでのエントリーの衝撃でフローが始まったり。

このタイプのフリーフローは、器材の構造上、起こっても仕方がないもので、器材の欠陥やメンテナンス不足によるものではありません。今回は、このフリーフローについて扱っていきます。

それ以外のフリーフローは、器材自体に問題がある可能性が高いので、ここに書く内容では解決しません。


【フリーフローが始まる原因】

セカンドステージのカバーを外すと、ゴムで出来たダイアフラムと呼ばれる膜があります。


そのダイアフラムの下にはレバーがあって、このレバーが押されることによってセカンドステージから空気が出てきます。

普通は息を吸ったりバージボタンを押したりした時にこのダイアフラムがへこんでレバーが押され、それによって空気が出てくるので呼吸ができるわけです。息を吸う以外の何らかの原因でダイアフラムが押されても空気が出てきてしまい、それによってフリーフローが始まります。

ビーチエントリーでエントリー直後にフリーフローが始まる時は、まず間違いなくマウスピースが上向きになり、ダイアフラムが下側になってしまっている時です。セカンドステージが水に浸かった瞬間、下側に向いているダイアフラムが水圧によって押されてしまい、レバーが倒れてフローが始まります。なので、ビーチエントリーをする時は、セカンドステージが水に浸かる瞬間だけで良いので、マウスピースを下向きにしておきましょう。

大きな衝撃を与えた時も、フローが始まることがあります。これは、衝撃によってダイアフラムが波打って、一瞬レバーを押してしまうためです。セカンドステージを岩などにぶつけた時や、ボートダイブのエントリーの時がこれに当たります。

【フリーフローが止まらない理由】
フリーフローの原因は一瞬の衝撃。ちょっとダイアフラムを押してしまっただけで始まります。外からの衝撃なんて一瞬なんだから、フローも一瞬で止まってくれれば良いのですが、誰もが経験しているように一度フローが始まると放っておく限りずーっとフローが続きます。

これは、フリーフローによってダイアフラムが内側に引き込まれてしまうため


フリーフローしていないときのダイアフラム。


フリーフローすると、こんな感じでダイアフラムが内側に引き込まれます。写真ではちょっとした違いですが分かりますでしょうか。

フリーフローすると、ダイアフラムの内側では空気がかなりのスピードで流れています。それにより、ダイアフラムは流れがある方向、つまり内側へと引きこまれます。飛行機の揚力と同じ原理です。

衝撃で一瞬空気が出る→セカンドステージの中で空気の流れができる→ダイアフラムが内側に引き込まれる→レバーが倒れて空気が出続ける
という悪循環
によって、フリーフローが止まらなくなります。

【フリーフローを止めるには】
一旦フリーフローが始まってしまったら、上の悪循環を止めてあげる必要があります。
つまり、空気の流れを変えてやるか、ダイアフラムを力ずくで外側に戻すか。


まず、ダイアフラムを力ずくで戻すことは、結果から言うと無理です。セカンドステージを叩いたり振ったりするのがこの方法に当たりますが、この程度ではダイアフラムは元に戻ってはくれません。セカンドステージを叩いてフローが収まるのは、中に小石などのゴミが挟まってしまったときに限ります。エントリー直後のフローはそういった原因ではないのでやるだけ無駄です。

なので、空気の流れを変えてあげることになります。

一番簡単で、しかも効果があるのは、空気の出口、マウスピースを押さえること。手で押さえたり、ウエットスーツに押し付けたり。口でパクっとくわえても構いません。それによってダイアフラムの内側の圧力が上がり、ダイアフラムが外側に動き、レバーも戻ってフローが止まります。マウスピースを押さえるまでもなく、水中でマウスピースを下側に向けるだけで止まることもあります。

普通はこれで止まるはずですが、これでも止まらない時は別の手段も考えないといけない。この間もどんどん空気は失われていく。以下のTUSAのリンク先にあるように、排気口(マウスピースではなく、エキゾーストバルブです)を上に向けて、セカンドステージの中に水を入れてあげると止まるようです。
http://www.tusa.net/trouble/index04.html
個人的には、最初の方法でフローが止まらなかったことはないので、この方法を試したことはありません。すごい勢いでセカンドステージから空気が噴き出している最中に、果たしてこの方法で本当に水がその空気に逆らってセカンドステージに入ってくれるのか、正直なところ疑問は残ります。

それでもダメな時は、空気を止めるくらいしか僕には思いつきません。タンクバルブを閉めるとしたら、水面でスノーケルで呼吸しながら、他の人にやってもらうことになります。もちろん、空気を止めればフローは止まって、一旦フローが止まってしまえばバルブを開けても大丈夫です。タンクバルブを閉めると危険が伴うし、そんなことしている間にどんどん残圧は減っていくのでこの方法を使う前にフローを止めたいですね。

ちなみに、タンクバルブを閉めずにオクトだけの空気を止める特殊な道具もあるので、これは後で紹介します。

【フリーフローを防ぐ】
可能であれば、フリーフローを防ぐのが一番です。一度フローすると、ちょっと止めるのに時間がかかっただけで残圧がかなり減ってしまうので、とても損した気分。フローしないのが一番です。

とりあえず、陸上でやっておけることが3つあるので紹介します。

1.セカンドステージのフロー限界を上げておく
これはオーバーホールの時に依頼するしかないかもしれませんが。。フリーフローしにくい設定にすることができます。ただ、「フローしにくい=空気を吸いづらい」となるので、デメリットもあります。逆に言うと、フローしやすいレギュレーターが悪いというわけではなく、ちょっとしたことでフローするくらいのギリギリの設定が、吸気抵抗が小さくて吸いやすいレギュレーターということになります。

個人的には、オクトパスに軽い吸い心地を求めてはいなくて、吸えればそれで良いと思っているので、吸気抵抗を大きめの設定にしています。

オクトパスの吸気抵抗に関しては、「エアがなくなってただでさえ慌てている時にオクトパスが吸いづらいとパニックになってしまう危険性がある」と言って、オクトパスも吸いやすい設定にしておくことを勧めている人もいるので、その辺は個人の判断にお任せします。吸気抵抗に関しては、器材に詳しい人なら自分で調整できるし、そうでなくてもオーバーホールの時にお願いすれば好みの吸気抵抗にしてくれるはずです。

吸気抵抗の設定する場所はどのセカンドステージでも大体一緒で、以下のリンク先の中でAPEKSのXTXセカンドステージの調整方法は載せてありあます。
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/723ea4d84c2f856bccfcf80cf9de04ff

2.オクトパスのマウスピースを何かで押さえておく
フローしたらマウスピースを押さえるのですが、最初から何かでオクトのマウスピースのところを押さえておけば、フローしにくくなります。何かの衝撃が当たってエアが出ても、マウスピースが押さえられているのでフリーフローにならずにすぐにエアの流出が止まる。おそらく、これが一番簡単でなおかつ効果的な方法。

自分で作っても良いし、オクトパスホルダーとして市販もされています。


僕も、いただきもののオクトパスホルダーを使っています。


こんな感じで、オクトパスがブラブラしないようにBCにくっつけておく道具。必要な時はオクトを引っ張れば外れます。


マウスピースに詰め込む部品が付いていて、これによって空気の流出口を押さえてフリーフローを防ぎます。

このオクトパスホルダーはオススメ。フリーフローしないのはもちろん、オクトを引きずって砂が中に入るのも防げる。構造上、マウスピースの部分から砂が入りやすいので、それを防げるのはありがたい。

3.最終手段、インラインシャットオフ
それでもフローすることがあるときや、オクトから少しずつ空気が漏れて気になる時は、最後の手段があります。それがインラインシャットオフフリーフローコントロールデバイスという名で売っているお店もあります。


スイッチの切り替えで、空気が通るor通らないを変えることができる道具です。


こんな感じで中圧ホースとセカンドステージの間に装着します。

海外のお店だと安いもので千円くらいで売っています。
https://www.divegearexpress.com/inline-shut-off-valves

日本のお店だと五千円くらいするようですね。
http://www.ex-scuba.com/equipment/list/adapters/XS.htm

万が一フローしたら、スイッチオフで空気が止まるためフローも止まります。フローが止まったらまたスイッチを開ければOK。タンクの開け閉めよりずっとラクだし、この部分だけ空気が来ないようにすることができるので、プライマリーのセカンドステージで普通に呼吸しながら操作ができる。エアがちょろちょろ漏れるときは、普段は閉じておいて必要なときに開けるのもアリだと思います。

ただ、実際にオクトが必要になって吸った時に、万が一スイッチが閉まっていると全く吸えないので、やっぱり普段は開けておいた方が良いのかな。このように、万が一の時に閉じているとトラブルになるというのがデメリットです。

インラインシャットオフは反則技なので、普通の指導団体やメーカーで教えることはありません。フリーフローしたらダイビングを中止して浮上しましょうっていうのがお偉いさんの指導ですので。確かに本当にアウトなフリーフローだったらダイビングはもちろん中止だけれど、エントリー直後の器材自体には問題のないフリーフローでダイビング自体を中止するのなんてアホらしいので、場合によってはこういう反則技を使うのもアリだと思います。

以上、エントリー直後のフリーフロー対策でした。

一番簡単な方法をまとめると、
・ビーチエントリーの時はメインのセカンドステージが水につく瞬間にはマウスピースが下側になるようにしておく。オクトにまで気が回らないと思うので、オクトはオクトパスホルダーでマウスピースの部分を押さえておく。
・ボートエントリーの時は、メインのセカンドステージはくわえてながらエントリーするのでOK。オクトはくわえていないのでフローしやすいため、オクトパスホルダーでマウスピースの部分を押さえておく。
・それでもフローしてしまった時は、すぐに空気の出口であるマウスピースの部分を押さえてフローを止める。マウスピースをくわえてもOK。


以上が今の自分の知識の全てです。他にも良い方法があったり、僕の記載に誤りがあったりしたら、コメント欄からご指摘いただけると嬉しいです。


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