おじさん日記 ~Okinawa Self-Diving Log~

セルフダイビングのブログ。ログや写真や器材が中心ですが、その他ダイビングに関係ないことも好き勝手書いています。

単独潜水のリスク(器材以外の面)

2016-09-21 15:49:12 | リスクマネジメント
今回は、器材以外の面でバディ潜水と単独潜水について考えていきます。
器材の面での考察については以下のリンク先の記事を参照してください↓
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/5c3ee9fecaaa1914857c916826c0145c

ダイビングの安全性についての議論ではどうしても器材のバックアップの話題が中心となりますが、器材の他にも故障するものがあります。それは人間。自分自身。フィジカルとメンタルと、どちらが故障しても大変なことになる。

これはなかなかやっかいな問題です。

人間は間違いを犯すもの。人間は病気にかかり怪我をするもの。
そしてオーバーホールもできないし、新品に買い換えることもできない。

器材面のリスクは予備を持つことによってゼロに近づけることができるけれど、身体的・精神的な理由による事故のリスクはどのような手段をとってもゼロにすることはできません。


【人間のミスについて】
人間は間違いを犯すもの。まずはこの視点から考えていきます。

1.経験不足や準備不足によるミス。
代表的なのはタンクバルブ開け忘れや浅場での溺水です。そんなの潜水前の確認をしっかりしてきちんとレギュレーターをくわえてさえいれば大丈夫だよと思うかもしれませんし、正直自分もそう思うのですが、ダイビングでの死亡事故は浅場でのものが多いのです。

万が一の溺水の際にも、もしバディがいればすぐに近づいて助けることができます。これがバディのメリット。ちなみに集団で潜るときならではの危険もあります。初心者や慣れていない方は、セッティングや陸上移動に時間がかかります。他の人が準備し終わっている中、急いで準備するなんてこともあるでしょう。そんな焦った時にバルブの開け忘れなどのミスは多くなる。ベテランの方がエントリーの時もしっかりと見ていてくれればいいですが、先に行ってしまっていたりすると、エントリー時の溺水に気づかないかもしれません。自分は居合わせませんでしたが仲間内でも、後から付いてきた経験の浅い方のバルブが閉まっていて溺れかけ、先に行ったベテランの方々はそれに気づかない、ということがあったようです(幸い大事には至っていません)。

2.ナビゲーション
これはバディを含め、集団で潜った方が安全のように思えますが、そうではないときもあります。何人で潜ろうが、進路を決めるのは1人だと思いますが、問題はその人とはぐれたとき。

自分で進路を決めていれば今どこにいるか分かりますが、他人についていった時は大体の方角くらいしか把握できないので、いざ一人になってしまうと正確な場所が分からないことが多い。

もちろん、何度も潜っているポイントなら問題なく場所は分かるでしょうし、潜水前にルートの打ち合わせをしておけば今どこにいるかイメージがつきやすいですが、そうでない場合は厳しいですね。

3.思いもよらない場所に行く
単独潜水の場合、自分の判断で行く場所を決めますが、集団で潜ると、「え、その水深に行っちゃうの?」「その穴に入るの?」「残圧けっこう少ないけれどまだ遠くにいくの?」って思いながら付いていくこともあると思います。危険だと思えばついていかないのが理想かもしれませんが、急にいなくなったら心配されて迷惑をかけるので、実際は付いていくことが多いかと思います。

以上、理想的なバディ潜水であれば問題にならないはずのものでも、現実では起こりうる問題たちでした。これらについては、単独潜水の方が安全になるケースが多い気がしています。当然、ベテランの単独潜水に限りますし、自ら進んで危険な潜り方をするような方の場合はあてはまりませんが。

【病気や怪我について】
自分の体に異常が起こった時。

ちょっとしたものだったら、自分だけでも帰ってこれるし、もちろんバディがいればより安心して帰ってこれる。問題はそれができないくらいのもの。

心筋梗塞や脳出血などで意識を失ったり、海洋生物に刺されてアナフィラキシーになったり、水中でパニックになったり。

水中で意識がなくなったり呼吸できなくなったら死にます。これはバディがいてもいなくても同じ。バディがいれば陸上に引き上げてくれるので、運が良ければ助かるかもしれません。

特に、単純な溺水の場合は救助が早ければ助かる可能性が高い。ただ、海水浴やスキンダイビングならともかく、常にレギュレーターをくわえているスキューバダイビングで単純な溺水といえば、浅場でのバルブ開け忘れやエア切れやパニックによる溺水くらい。経験が浅い方にありがちなトラブルなので、指導団体のソロダイビングコースで経験本数を100本以上としているのはこの面からも納得できる。もちろんベテランでも慣れによる過信や不注意はありえるので注意は必要です。

でも、単純な溺水でなく他の原因によって意識を失って結果として溺水するような場合は正直厳しい。経験者の溺水で考えるのはこっちなんですよね。特に高齢者。どこかに頭をぶつけて脳震盪で意識を失うくらいだったら十分助かりますが、アナフィラキシーや心筋梗塞や脳出血などは難しい。持病にてんかんや不整脈があって意識を失った場合は救助が早ければ助かる可能性が高いですが、そもそもそんな持病がある人は単独潜水どころかダイビングをしてはいけないことになっているのでそれは除外して考えます。

ではバディがいた方がいいか。これは難しいところです。死にかけの人にとっては引き上げてくれる人がいた方がありがたいですが、問題はバディへの二次被害です。

助ける際に急浮上になって減圧障害にならないか、パニックの人に巻き込まれて溺水しないか。自分のせいで、罪のないバディが危険な状況に追い込まれてしまう可能性もあるわけです。

また、前述した通り水中で意識を失うような場合は、バディが適切な処置をしても助からないことが多いです。仮に水中でバディが亡くなるような事故があった時、その方はその後もダイビングを続けられるでしょうか。救助によって怪我をしなくても、そのせいで救助者がダイビング生活を終えるようなことになったら、それも二次被害になります。

なので、水中で体に異変が起こった時に、近くに仲間がいた方が良いとは言い切れない。仲間が割りきって、「自分自身に危害が及ぶ可能性があれば助けない」という判断をすれば二次被害は起こらないし、実はそれがレスキューの鉄則なのですが、実際に助けない人はなかなかいないでしょう。自分だったら、少し浮上速度が早くなってしまっても仲間を早く水面まで引き上げてあげたいと思ってそういった行動に移ると思います。良い悪いは別として。

唯一確実に言える単独潜水のデメリットは、万が一水中で死んだ時に誰にも気づかれず、後になって大がかりな捜索が必要になる可能性が高いことです。自分としては、多くの人に迷惑をかけるのが嫌なので、このことが単独潜水の最大のデメリットです。

ちなみに、水中で体に異変が起こる可能性ですが、幸いなことに今の自分にはリスクを高くする要素はありません。周りの方々、ご安心を。

持病があったら、それぞれの病気によってリスクは異なる。持病がなくても、高齢で肥満体型の喫煙者はリスクが高いです。正直、器材メンテナンスさえしっかりしていれば、器材トラブルよりも人間自身のトラブルの方が致命的で恐ろしい。実際、中高年の健康問題に起因する事故は年々増加しています。

もし仮に自分が高齢・肥満の喫煙者だったとしても、ダイビングは続けていると思います。他の人より体のトラブルで水中で死ぬ確率は増えますが、その類の病気は陸上で発症してもなかなか助かりません。人間いつかは死にます。それがたまたま趣味のダイビング中というのも悪くはない。それを恐れて趣味のダイビングを辞めるなんてことはしないと思います。万が一の時に周りに迷惑をかけるのは申し訳ないけれど。

また、前にも触れましたが初心者や慣れていない方は水中でパニックを起こしやすいです。水中で快適に過ごせて、緊急手順を含めて自分で行う自信がないのであれば、単独潜水をするべきでないし、しようとも思わないと思う。

この辺、ショップの方々は大変だなと常々思っているところです。もしゲストの高齢ダイバーが水中で突然体調を崩したら、すぐに浮上して応急処置をして通報するわけですが、原因にもよるとはいえ死ぬ確率は決して低くない。初心者ダイバーがパニックを起こすこともあるでしょう。インストラクターは全く悪くなくても、水中で何かあったことによってゲストが亡くなったら、「事故を起こしたショップ」という風評が流れるでしょうし、いろいろと大変なことになるでしょうね。これはロシアンルーレットみたいなものなのでおそろしい。

今回は人間自身のトラブルについてでした。どんなに理想的な潜水の仕方をしても、この可能性は避けられない。正直、この部分で単独潜水とバディ潜水とどちらが安全とは言い切れず、個別のケースによって異なるとしか言えない、と「自分は」思っています。個人の価値観によって大きく変わる部分でもある。

なお、今回の記事と言っていることが矛盾するようですが、以下のようなデータがあります。
・ダイビング中の事故のうち単独潜水の場合は死亡に至る割合が高い
・過去10年の単独潜水による事故の死亡者は25人でそのうち24人はパニックやエア切れで、バディがいれば対処できた原因だったとのこと

データの詳細や解釈については以下の記事で扱っていきます↓
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/149fb0b48784caa4a58a95c0bab613cf
数字の扱いについて、言いたいことがたくさんある。


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