おじさん日記 ~Okinawa Self-Diving Log~

セルフダイビングのブログ。ログや写真や器材が中心ですが、その他ダイビングに関係ないことも好き勝手書いています。

統計上「単独潜水では死亡事故が多い」とは言えない

2016-09-22 19:04:32 | リスクマネジメント
さて、単独潜水は危険なのかを、自分にも手に入る統計資料から考えていきます。



まず紹介するのは山見先生という日本のダイビング医学でおそらく一番有名な方の資料。

詳しくは↓のリンク先を参考にしてください。
http://www.divingmedicine.jp/pdf/drown.pdf

単独潜水と潜水中にはぐれて1人になったのが70%を占めるというもの。文章でも「約70%(原因の第1位と2位の合計)のダイバーが、水中でひとりのときに死んでいるということです。単独潜水はいけないのは常識ですが、死亡者の大多数はひとりのときにしんでいるので。もしひとりで潜っていなかったら、器材のトラブルも発作的な病気も、バディに助けてもらえたかもしてません。(本文のまま引用)」とあります。

これが本当だとしたら「単独潜水はなんて危ないんだ!」と思っても仕方がない。でもこの資料、データ自体が間違っていると思う。この資料では「全死亡例132名」って書いてあるので、記載はないけれどどこかの10年分くらいの死亡者数をまとめたものだと思う。年にもよるけれど、日本での潜水中の死亡者数は年間15人程度なので。

にも関わらず、この山見先生のデータだけ単独潜水によるとされる死亡者の割合が高すぎる。後で表で示しますが、他の統計だと2割以下なのに、7割って数字はどこから出てきたんだろう。集計方法間違っていないか?

誤解のないように言っておくと、この先生はダイビングに関する医学的なことを素人にも分かりやすく紹介してくれており、とてもダイバー寄りで信頼のおける先生だと思っています。人物に対する批判ではない。ただこの資料については異論があるというだけ。

山見氏のものだけでなく、他のデータも参照してみる。

まず、下記のURL先でPDF形式で公開されている、DAN JAPANの野澤徹氏による、「潜水事故の傾向と対策について〜中高年ダイバーを中心に〜」からの引用です。ちなみにこのファイル、サイズが15MBもあってとても大きいので注意してください。圧縮してからアップしてくれればいいのに。
http://www.danjapan.gr.jp/20121120.pdf


事故の原因として、単独潜水や水中でのロストは下から3番目の「バディ不遵守」に相当する。具体的な数字がなく、目盛りから大まかに判断することしかできないが、全体における「バディ不遵守」の割合は1割未満。


これは事故の中でも死亡や行方不明になった数。これも目盛りからの大まかな判断になるが、全体における「バディ不遵守」の割合は2割弱

もちろん、「バディ不遵守」かつ「エア確認不注意」かつ「技量未熟」など、1件の事故でも原因が複数にわたる事例も存在するわけで、そういった事例をどのように扱ったか分からないのでこれだけで結論を出すことはできない。



次に、DAN JAPANの機関誌Alert Diver vol.61 2016年春号の14ページ、海上保安庁警備救難部救護課専門管の虻川浩介氏による「発生状況などを踏まえた安全潜水について」から引用します。平成17年〜26年の10年間における潜水事故を集計した上での記事です。

「過去10年の事故者456人中425人(死亡・行方不明者133人)が複数行動でした。」
「事故は少ないものの、単独行動も29人、うち死亡等が25人となっています。」
とあります。
ここから計算すると、事故者のうち単独によるものは6.3%で、死亡・行方不明者のうち単独によるものは15.8%です。

ちなみに、以下のリンク先のように海上保安庁がデータを出しているけれど、我々一般人が見られるデータは大して参考にならない。
http://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/kainan/marine/figure/H27diving.pdf

手元に2012年と2013年のダイビング事故報告を個別に紹介したものがあるので、そこから「単独になったため事故になった」と解釈される可能性がある事故の件数をピックアップします。この類の事故報告は毎年発行されていて、そろそろ2014年分の報告が一般人の自分にも届くはずだけれど、今のところ届いていない。今は2016年なのでだいぶタイムラグがありますが、一般人に情報がおりてくるのは毎年このくらいなのです。DANジャパンによると今まで年数回発行していた「Alert Diver」が廃止になって日本海洋レジャー安全・振興発行する協会誌「海洋レジャー」に統合されるらしいので、おそらくそこに掲載されるのでしょう。



まずは2012年の分から。これはDAN JAPANと日本海洋レジャー安全・振興協会が発行している「平成24年潜水事故の分析」から自分なりに集計してみると、
事故例の全48件中、単独潜水2件(うち死亡1件)、水中ではぐれたものは9件(うち死亡7件)。



次に、今自分が手に入る最新の2013年の事故報告について。これはDAN JAPANの機関誌「Alert Diver vol.59」2015年夏号からです。
レジャーダイバーの事故例の全46件中、単独潜水3件(うち死亡・行方不明3件)、水中ではぐれたものは6件(うち死亡4件)。

正直2年分だし一般公開されている限られた情報なので正確性に欠けるけれど、計算すると事故のうち単独によるものは5.3%で、死亡・行方不明者となる事故のうち単独によるものは12.1%です。

今までの4つの情報源から、潜水事故における単独潜水による事故の割合を表にしたのが以下の通りです。


山見氏以外の結果はだいたい似通っていますね。さすがに、山見氏のデータは誤りだと思います。潜水事故は実際の発生総数と把握できている件数に開きがあるため、誰がどのように調査したかによって数字は変わってきますが、減圧症や軽度の外傷ならともかく、死亡者数はさすがに海上保安庁などの公的機関が把握しており、どのソースでもそう大きくは変わらない

潜水事故の事例を1つ1つ見ると、「結局、状況も原因もよく分からない」というケースが正直言ってかなり多い。これらのよく分からないケースを集計する人がどこに分類するかで大きく結果が変わってくる。だからこそ実際に死んでいる人は同じなのにデータを出す人によって結果が変わってくるのだと思う。

事故事例を1つずつ読むのが一番正確に分かる。2012年と2013年のものに関しては、単独潜水によるものと分類されそうな事例をこの記事の最後にそれぞれ引用してあるので興味があれば見てみてください。

以上のデータを総合すると、潜水事故における単独潜水(はぐれ含む)による事故の割合は、
・事故全体の6%前後
・死亡者・行方不明者全体の15%前後

といったところでしょう。


以上のデータ4者とも海上保安庁が保有しているデータを元に計算されたものだと思います。自分は見ることができませんが、もし保険会社が集計しているデータだったら、事故全体における単独潜水の事故の割合はもっと下がってくると思います。ショップで潜っている時にゲストに怪我を含め何か症状が出たら、インストラクターが加入している保険から費用が出されます。なので、保険会社はそれらの事故の数を把握している。軽症例は海上保安庁が知ることなく医療機関に行くことになるため、海上保安庁のデータには含まれない。単独潜水の場合、インストラクターの保険から費用が出ることはないので、仮に病院へ行っても保険会社にも海上保安庁にも報告されることはありません。


少し話が変わります。よく「単独潜水は他の潜水方法に比べて事故の総数のうち死亡者数の割合が高く危険」とされることが多いですが、皆さまはどう考えますか?

確かに、事故の総数のうち死亡者数の割合が高いのは事実。

でも、それは単独潜水の場合、死んだり行方不明になったりしない限り海上保安庁に通報されないから。ボートでのファンダイビングで遭難や減圧症の症状や外傷や体調不良があれば船上から海上保安庁に通報されますが、陸上での単独潜水の場合はそんな症状があったら通報せず自分で病院へ行くため、海上保安庁に知らせが行くことなく事故として把握されずに終わる。単独潜水で、自分自身で通報することはまずない。全然帰ってこないって時に初めて、仲間や家族によって通報される。なので、単独潜水の場合は報告された事故の総数のうち死亡者数の割合は当然高い。

というわけで、少し考えれば分かると思いますが、事故総数のうちの死亡者数の割合で危険性を判断することはできない。それを判断理由に「単独潜水は危険」とする人は、単にデータの扱い方を分かっていない人か、単独潜水は危険だと主張したくて自分に都合の良いデータを不適切と分かっていて使っている人か、2つに1つ。どちらにせよ、信用に値しない。



また話は変わりますが、前述したDAN JAPANの機関誌Alert Diver vol.61 2016年春号の14ページ、海上保安庁警備救難部救護課専門管の虻川浩介氏による「発生状況などを踏まえた安全潜水について」によると、
「単独行動の死亡者のうち24人はパニックやエア切れが原因で、複数行動であれば対処できた事故であると考えられる」とのこと。このデータでの死亡等の数が25人だったので、そのうち24人がパニックやエア切れというのは9割以上ということになる。これはしっかりと心に刻むべきデータといえる。

正直、原因が分からない場合も数多くある潜水事故で、単独かつ死人に口なしの25人のうち24人もパニックやエア切れが原因だったと言い切れるのか?という疑問はあるのですが、きっと残されたタンクの残圧がゼロだったとかバルブが開いていなかったとか原因を想定できる情報があったのでしょうね。


実際、この記事の最後に引用してある個々の事例を見ていただければ分かりますが、タンクバルブの開け忘れやエア切れによる事故がまあ多いこと多いこと

確かにこんなミスをする人が単独潜水やってたらいつか死ぬだろうなと思う。自分の場合は水に入る前にレギュレーターをくわえてチェックするのは習慣になっているし、残圧計もちょくちょく見る習慣があるので残圧がゼロになっていてビックリなんてことは今までないし、今後もさすがにそれはないと思う。

そしてこの類の原因による死亡であればバディがいたら助かった可能性が高いので、その結果から単独潜水は危険という結論になるのは理にかなっていると思う。でも正直、これは単独かどうかというよりも習慣の問題じゃないかと自分は思う。

車を運転している人なら分かると思うけれど、シートベルトをすることが習慣になっている人は車に乗ったら誰に言われなくとも無意識でシートベルトをつける。それと同様に、命に直接関わるエアについての確認が習慣になっている人はそれを当たり前のように行っている。

残圧がゼロになるまで気づかないなんてどれだけ不注意なんだよ。自分も人間なのでタンクバルブを開け忘れて器材を背負ったことは何度もあるけれど、チェックするので必ず陸上で気づいて、水中で初めて気づくなんてことはない。

なので、この点で単独潜水が危険と判断するかどうかは、各々におまかせします。



またまた話は変わるけれど潜水事故の中で「単独潜水(はぐれ含む)」の半分以上は、最初から単独潜水なのではなく水中ではぐれたもの。これに関しては、単独潜水がダメというより、バディ潜水やグループ潜水のつもりが実際はできていなかった、ということの原因を議論するべきだと思っている。

そう、最初から単独潜水で潜っていて事故になっている割合は実は少ない。だからといって単独潜水が安全だというつもりはない。正確に言うと、母数が分からないので比較ができない。

分かりやすい例を1つ挙げてみる。
沖縄でアメリカ軍関係者による犯罪が起こると、県内メディアは過剰に報道するので、メディアリテラシーのない方がその報道を見ると「また米軍の犯罪か!」とかあたかも米軍の犯罪が多いかのような錯覚をする。でも沖縄県の人口や米軍関係者の人数は分かるのでそれを元に比較することができて、実は米軍関係者の方が犯罪率は低かったりする。これについてはとても長くなるので興味がある方は僕が以前に書いた以下の記事を参考にしてください。
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/5c8466d1ed06c580012ee35a36c7d7c8

対して、ダイビング事故ではグループ潜水・バディ潜水・単独潜水をする人のそれぞれの人数や延べ潜水数が分からなく、母数が不明なので上記の米軍の犯罪率と違って比べることができない。なので、単独潜水が危ないかどうかは統計の面では分からないというのが正確な言い方になる。

にも関わらず、単独潜水の事故のみピックアップして「単独潜水は危険」と結論をだしている記事が多い。また、毎年15人前後ダイビングで死亡者が出ていることを棚に上げて、単独潜水による死亡者が年に1〜2人出るとその度に「また単独潜水で人が死んだ。単独潜水は危ない。」って騒ぎ立てるのは沖縄県内メディアでの米軍関係者の扱いのように不公平で誤解を招く。

統計をどう扱うかによって統計を扱う人の主観がたっぷり入った結果となる。客観に見せかけた主観は、冷静に分析をできる人以外は盲目的に信じてしまい、とてもたちが悪いのです。そしてダイビングとは離れますが沖縄の県内メディアは意図的にこれをやっていて(最初から結論が決まっておりその説得力を高めるために自身に都合の良い数字を使う)、数社あるにも関わらずどの社も決まって同じ一方の立場に立った情報ばかり垂れ流しているので、「質がとても低い」と僕は常々思っています。
「とても」と書いたのは、記事における統計や取材内容の偏りだけでなく、本来ライバルであるはずの他の県内メディアの記事について批判的吟味も議論もせず、どの社も似たような主張を垂れ流しているからです。読んでつまらないことこの上ない。

なお、こういった記事を書くと「著者や出版社に許可を取ったの?無断転載はダメだよ。」って言う人が一人くらい出てきそうなので先に言っておきますが、転載と引用は違います。
今回に限らず、このブログの中で記事によっては様々な統計や著作物(インターネットサイトを含む)を引用しています。引用部分を明確にした上で、その後に誰のどの著作物であるかを表示すれば著作権者の許諾なしにその著作物を利用することができ、これは著作権法第32条で定められています。

さて明日は、今まで長々と書いてきたことを踏まえて、自分なりに単独潜水のメリットとデメリットをまとめます。


以下は上で扱った「単独になったため事故になった」と解釈される可能性が高いと僕が判断した事故の個別の記載の引用です。長くなりますが、興味のある方は参考にしてください。

****************
以下2012年の分の事故事例48件から、単独潜水もしくは途中で単独になって事故になったと分類される可能性がある事故を引用します。これはDAN JAPANと日本海洋レジャー安全・振興協会が発行している「平成24年潜水事故の分析」からの引用です。

18.事故者はBCを着用せずにタンクを装着し、2名でスキューバダイビングを開始した。約1時間半後、1人タンク非装着の状態で浮いているのを付近通行人に発見され、心臓マッサージ及び119番通報がなされ、救急車にて病院に搬送されるも、死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は冠状動脈不全による溺水と判明。もう1人も行方不明で、捜索の結果、水深約2mの海底に仰向け状態で沈んでいる状態で発見され死亡が確認された。
男と女1名ずつ、死亡、ビーチエントリー

19.事故者は、ボートを操船しダイビングポイントに到着した。1回目のダイビングが終了し、休息後、客の一部が2回目のダイビングを実施し、残りは船上で休憩。事故者は、暑くなったことから海に入りたくなり、1人でダイビングを開始した。海中での視界が悪く、潮流も激しいことから、すぐに浮上したがダイビング船から100mくらい離れた位置であった。目の前でダイビング客が浮上しており、同人と一緒になった。浮上していたダイビング客は、他のダイバーとダイビングしたが、海中の視界が悪くなってきたことから浮上を開始したところ、潮流の速い層に入り込み流された。流された後、前述の事故者と合流した。しばらくして、船から1kmくらい流されたことから、ブイに掴まり救助が来るのを待つことにした。約2時間後、当庁からの捜索協力で捜索していた船舶が漂流している2人を発見し救助した。
男2名、生存、ボートエントリー

20.事故者他友人と岩場からダイビングを開始。水中視界が悪く、友人は事故者の姿を見失ったが普段から各自単独でダイビングを行っており、また事故者はダイビング経験も豊富なため、特に危惧せず各自ダイビングを開始。約1時間後、事故者が海面に浮上せず、潜水開始から約3時間半後、消防潜水士により海底で事故者を発見、その後搬送先の病院で死亡が確認された。検死の結果、外傷なし。溺水吸引による窒息死とされた。事故者のタンクを検したところ、バルブが閉鎖状態であり、開放したところ、残圧計は200キロを示し、空気がほとんど消費されていないことが判明。
男、死亡、ビーチエントリー

21.事故者はボートダイビング前日夜遅くまで飲酒し、当日体調不良であった。体調について申告しなかった。ダイビングポイントに到着後、事故者は体調不良のまま、船尾のハシゴから入水。潜降ロープに掴まった後に潜降を開始したが、水深約1.5m付近で吐き気を催しレギュレーターを外し水中で嘔吐した。その後、BCに空気を入れ浮上しようとしたところ、空気を入れすぎて予想以上に急激に浮上し、その際、同船の船底に頭頂部を打ち付け負傷した。船上にいた者が事故者の負傷に気付き、船長が事故者を引き上げ、応急処置の上、入港後に救急車に引き継いだ。事故者は頭頂部に長さ5cmの裂創を負っており、病院にて治療を受け、全治約1週間と診断された。
男、水面、生存、ボートエントリー

25.事故者らはビーチダイビングを計画。一本目は全員異常なし。約3時間の休息後、水深10mのところで事故者がいることが確認されたが、さらに移動したところで事故者がいないことに気づいた。探したが発見できないため、残りのダイバーは浮上した。別のグループのダイバーが、水深約10mの海底に事故者がレギュレーターを口に含んだ状態で倒れているのを発見し、確保浮上。ダイビングサービスのスタッフが119番通報した。事故者は心肺停止状態で、救急車で病院へ搬送されたが翌日死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は溺水。器材は全てレンタルで異常なし。事故者のボンベ(10L)残圧は190キロ(元圧は200)。
女、水深-10m、死亡、ビーチエントリー

27.事故者は、ガイドを含む数名と共に潜降を開始した。事故者は水面6m付近で呼吸が苦しくなったため浮上した。その後、ガイドに対し潜水続行の意思を示し、ガイドが事故者の装備を確認したが、装備に不具合はなかった。事故者とガイドが水中に待機中のダイバーのところに戻ったところ、事故者とは別の者が見えなかった。ガイドはダイバーたちに浮上を指示し、行方不明ダイバーを捜索したが、その者は無断で上陸していたことが判明。ガイドが水面待機中のダイバーの人数を確認したところ事故者の姿が見当たらなかった。どのダイバーは別のパーティーによって海底でレギュレーターが外れた状態で発見された。翌日死亡。原因は溺死。
女、死亡、ビーチエントリー

28.事故者は友人とスキューバダイビング等のため、ボートでダイビングポイントまで移動し、単独でエントリーした。一人は付近浅瀬で素潜り、もう一人は波の穏やかな場所で錨泊待機していた。しかし2時間以上経過しても事故者が浮上してこないため、しばらく付近海域を捜索した後、118番通報した。通報から海上保安庁による捜索があったが事故者の発見に至らなかった。後日、漂流死体で発見された。司法解剖の結果、死因は溺水(疑い)。本件事故目撃者がおらず詳細不明であるが、解剖結果等から事故者は単独ダイビング中に何らかの自己トラブル(自過失、原因不明)による溺死したものと推定された。
男、死亡、ボートエントリー

34.事故者は、ダイビングスクールに参加し、受講者、インストラクターとともにダイビングを開始した。潜水開始直後、事故者のバディが事故者を見失ったため海面に浮上し陸に上がったところ、沖合7メートル付近から溺れているという声が聞こえた。直ちにインストラクター及び受講者数名が救助に向かい、受講者の1人が水深約1.5メートルの海底に仰向けで沈んでいる事故者を発見し、陸上へ引き揚げると共に119番通報を実施した。事故者は病院へ搬送されたが、翌日になっても、意識が戻っていない。事故者は今年3月にCカードを取得し、今回が初めてのダイビングであり、バディを見失ったことからパニックに陥り溺れたものと推察される。
女、生存、ビーチエントリー

35.事故者は、ダイビングツアーに参加し、地元のダイビングボート利用のうえ、ダイビングスポットにてファンダイビングを行っていた。底うねりがあり水中視界が不良となっていたことから、ガイド役のインストラクターが浮上の合図をした際、すでに姿が見えず、同行者ら全てが浮上した後も姿がなく行方不明となっていた。インストラクターらが海底捜索をしたところ、海底にレギュレーターを口から外し、仰向け状態で意識不明の事故者を発見し、ボート船上に引き揚げた。事故者は心肺停止状態であったため、CPRを実施しつつ漁港まで搬送され、救急車に引き継がれた。搬送先の病院で死亡が確認された。事故者が海底において何らかの理由によりパニックを起こし、レギュレーターを外したため溺水したものと思われる。
女、死亡、ボートエントリー

46.事故者は他のダイバーと入水したが、開始して約1時間後、同行者が、事故者が行方不明であることに気付き、118番通報して捜索の結果、岩場に潜水器具を装着したまま横たわっている事故者を発見するも心肺停止状態であった。その後、病院に搬送されるも死亡が確認された。検死等の結果、死因は溺死の可能性が高いと判明。
男、死亡、ビーチエントリー

48.事故者は、友人のダイビングインストラクターと共にファンダイビングを開始、イントラの残圧が少なくなったことから、事故者に対し先に上がる旨の合図をして陸に上がった。しばらくしても事故者が陸に上がってこなかったため探しに行ったところ見当たらなかったもの。捜索するも発見に至らなかった。翌日になって漁船が発見したが既に死亡していた。検視等の結果、死因溺死。
男、死亡、ビーチエントリー


「平成24年潜水事故の分析」からの引用終わり。

****************
以下、今自分が手に入る最新の2013年の事故事例46件から、単独潜水もしくは途中で単独になって事故になったと分類される可能性がある事故を引用します。これはDAN JAPANの機関誌「Alert Diver vol.59」2015年夏号からの引用です。作業ダイバーの事故も11件掲載されていますが、これに関しては状況が異なるので除外します。

3.意識不明で緊急浮上するも [死亡]
女性20〜24歳
事故者は、業者が企画するツアーに友人3名と参加し、ダイビング中のところ、意識不明状態になっているところを先行していたインストラクターに発見された。緊急浮上して海岸に搬送され、心肺蘇生を実施されたのち、ドクターヘリにより病院に搬送されるも、医師により死亡が確認された。

5.BCジャケットに海水が流入 [死亡]
男性20〜24歳
事故者はショップスタッフ2名と共にダイビングを行っていたところ、事故者のBCジャケットに海水が流入したことからパニックとなり溺水し、行方不明となった。その後関係機関等により捜索が実施され、海底で事故者が発見されたが、後に死亡が確認された。

9.単独ダイビングで [死亡]
男性40〜44歳
事故者は、海水浴場の波打ち際で1人ダイビングを行っていたところ、何らかの理由により溺死した。

33.捜索するも海底で発見 [死亡]
男性45〜49歳
事故者と連絡が取れない旨の通報により捜索が行われていたところ、水深12mの海底で、ウエットスーツを着用した事故者が発見され、死亡が確認された。

34.写真撮影に熱中し孤立状態に
男性50〜54歳
事故者はインストラクターガイド1名及び客4名と共にファンダイビングを行っていたところ、写真撮影に熱中し、他のメンバーからはぐれて孤立状態となった。その後自力でシグナルフロートを上げ、BCに空気を入れて海面浮上し、その後救助された。

35.単独で潜り [行方不明]
男性40〜44歳
事故者はボート所有者の器材を借りて、ボート所有者を船上に残して1人でボートダイビングを行っていたところ、行方不明となった。

40.途中で行方不明に [死亡]
男性65〜69歳
事故者はインストラクター1名及びレジャーダイバー2名と共にダイビングを実施していたが、途中で行方不明となった。その事故者は発見されたが、意識がなく、心肺蘇生を実施しつつ病院へ搬送されるも、後に死亡が確認された。

46.CPRの実施で自発呼吸を再開
男性35〜39歳
事故者は、仲間6人でビーチエントリーでダイビングを実施していた。シュノーケリングで沖合に向かって移動するも、仲間からはぐれたため、海岸へ戻ろうとし、岩場に寄った際、磯波にまかれて意識を失った。事故者はうつ伏せ、漂流状態で発見され、直ちに付近ダイバーらにより陸上に引き揚げられ、CPRの実施により、自発呼吸を再開した。その後、病院に搬送された。

50.確認時、すでに仰向けに [死亡]
女性70〜74歳
事故者は、インストラクター1名及び客4名でボートダイビングを実施していた。インストラクターが客の確認をした際、レギュレーターが外れた状態で仰向けに沈んでいる事故者を発見した。事故者は直ちにボートに引き揚げられたが、心肺停止の状態であり、心肺蘇生を実施しつつ病院に搬送された。後日死亡が確認された。


「Alert Diver vol.59」2015年夏号からの引用終わり。


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