おじさん日記 ~Okinawa Self-Diving Log~

セルフダイビングのブログ。ログや写真や器材が中心ですが、その他ダイビングに関係ないことも好き勝手書いています。

APEKS XTX セカンドステージの分解と仕組み

2016-02-11 21:34:19 | オーバーホール
随分と遅くなりましたが、オーバーホールのセカンドステージ編。APEKSのXTXセカンドステージを分解していきます。

せっかく分解するので、APEKSセカンドステージの仕組みやそれぞれのパーツの意義についても考えていきます。なので、文章はかなり長くなります。てっとり早く分解したい方はメカニズムについての文章は無視してください。

APEKSセカンドステージのXTXシリーズは値段が高い順にXTX200, 100, 50, 40, 20と5種類あります。


右出し、左出しのものが混ざっていますが、4種類のセカンドステージ。


XTXのどれにあたるかは、XTXロゴの下(この写真では上)の数字で分かります。XTXの部分に出っ張った部品が付けられているか、その部品にメッキがされているかどうかの違いがありますが、それは単なる見た目の違い。

5種類あるといっても中身はほとんど同じなので全てこのページに書いてしまいます。XTX200, 100, 50についてはメッキの色や場所など、見た目の違いのみで性能は全くもって同じ。XTX40, 20は吸気抵抗を調整するノブがなくなり、XTX20はヒートエクスチェンジャーがなくなり寒冷地仕様じゃなくなります。どのように違うかについてはそれぞれの部品を分解したところで説明します。

DIYでのオーバーホールについて、注意事項などはこちら↓
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/5388556c7160e1e6e517387ba32111de
分解だけでなく、オーバーホール全体の手順についてはこちら↓
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/723ea4d84c2f856bccfcf80cf9de04ff
組み立て手順についてはこちら↓
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/8c22374b8a5d672ad8b5095fb4cd091d
ファーストステージについてはこちら↓
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/e8c4ed2d6a2cae1ef31b60b17576161c
メンテナンスマニュアル(英語)をダウンロードできる外部サイトはこちら↓
http://www.frogkick.dk/manuals/apeks/


最終的に分解できればどういった手順でも良いのだけれど、一応メーカーのメンテナンスマニュアルの通りに進めていきます。メンテナンスマニュアルの中で、少なくとも分解図は印刷して全体像と部品の位置関係を把握しておいた方が良いと思います。

手順はマニュアル通りに進めますが、工具は手持ちの工具を使用します。例えば、メンテナンスマニュアルではモンキレンチを使っている場所は1つもありません。サイズごとの純正のスパナを使うことになっています。でも多くの種類のスパナを揃えることは効率的ではないので僕はモンキレンチを使っているし、教えていただいた器材店でもモンキレンチを使っていました。


では分解していきます。

【フロントカバーの取り外し】


さて最初にフロントカバーを取り外します。ここのデザインが種類によって違う。機能には関係ないのでデザインだけ。左側の、一番表面の部品にメッキバーツが含まれていてデザインもちょっと違うのがXTX200と100。真ん中の、ダイアフラムをおさえる部品がメッキパーツになっているのがXTX50。右側の、デザインがXTX50と同じでメッキパーツを使っていないのがXTX40と20。


フロントカバーは、手のひらを当てながら反時計回りに回すだけで外せます。滑るようならゴム手袋つけたり、三点支持オープナーなどで2箇所以上の場所を引っ掛けて回せば大丈夫。それでもどうしても外せない場合は、一応セカンドステージオープナーという開け閉めの道具がメーカーから出ています。


フロントカバーを外して裏返した様子。真ん中の4つの出っ張りを押すと、バージボタンが分解できます。


パージボタンを分解した様子。ちなみに、ここには交換部品がないし重要な場所でもないので、教えていただいた器材屋さんではパージボタンは分解していませんでした。一応マニュアルには分解するように書いてありますが、面倒だったらそのままでも良いかと思います。


フロントカバーの内側には、ダイアフラムカバーというダイアフラムを押さえる部品があるのでそれを外し、ダイアフラムも外します。


外した様子。これで中が見えます。XTX50の場合、写真のようにダイアフラムカバーにメッキがされているのだけれど、メッキとダイアフラムが強くくっついているので、どちらかを壊さないように注意が必要。慎重に剥がします。

【バルブ一式の取り外し】

モンキレンチを使って反時計回りに回し、ヒートエクスチェンジャーを外します。中圧ホースとつながっていたところ。


XTX20以外は左のように金属でできたヒートエクスチェンジャー。XTX20はその部分が右のようにプラスチックでできていてコストダウンしている。

<コラム:ヒートエクスチェンジャー>
気体の圧力が下がって膨張することによって、ファーストステージやセカンドステージの内部は外の気温より低くなり、寒冷地ではこれが凍結の原因となる。内部で凍結するとそれがバルブとシートの間に挟まってフリーフローしてしまうので、それを防ぐために内部の温度を上げてあげたい。

外の水の方が温度が高いので、外との熱交換をしやすくすることによって、凍結を予防する。それが、このヒートエクスチェンジャーの役割。金属でしかも凹凸を作り表面積を多くすることで、熱交換をしやすくしているみたい。水温10℃未満で潜るときは、内部の凍結の可能性があるので寒冷地仕様を使った方が良いらしい。

沖縄でぬくぬくと潜っている僕にとっては不要な機能です。将来伊豆で潜ることになっても不要かな。水温10℃未満って相当ですからね。


ヒートエクスチェンジャーを外してしまえば、バルブ本体が外れるようになります。レバーを押さえて、横から引っ張り出すだけ。


引っ張り出しました。


空っぽになったケースから、ブランキングピースという名前の部品とOリングを外します。ヒートエクスチェンジャーの内側にある部品。



ブランキングピースは、ただの隙間埋めのリングのように見えるけれど、他にも結構重要な役目も果たしています。


ちょっと分かりづらいけれど、こんな感じでバルブスピンドルが回転しないようにしつつ、レバーが外れないようにおさえているわけです。


ブランキングピースの反対側にある、ベンチュリーレバーを外します。このベンチュリーレバーは、空気の出口を覆ったり開いたりして吸気抵抗を簡単に調整する部品。レギュレーターを口にくわえていない状態でエントリーしてマウスピースが水面側を向いているとフリーフローすることがあるので、エントリーまではこのレバーを閉めてフローしにくくしておいて、水中で呼吸を始めたときにレバーを開けてあけてあげると良いです。細かな吸気抵抗を調整するようなレバーではないので、ON or OFFで使うレバーですね。


参考までに、このレバーを開けておくとこうなります。


このレバーを閉めておくとこうなります。分かりにくいけれど、バルブの中心(バネが見えるところ)から空気が出た先に、黒のベンチュリーレバーがフタをするように覆いかぶさる。

このレバーはさらに2つに分解できるけれど、分解しなくてもOKとマニュアルにも書いてあります。このセカンドステージはホースを右出しにも左出しにもできるのだけれど、ホースを出す方向を変えたい時に一度分解して向きを変えて組み立てます。


さて、次に移ります。流量調整ノブをゆるめてあげると、


ささっていたピンが外れます。このピンは、流量調整ノブを緩めすぎor締めすぎないようにするためのピン。このピンをなくさないように注意。流量調整ノブがないXTX20と40にもこのピンがあるのでなくさないようにしましょう。


ピンがない状態だと、流量調整ノブをどんどん緩めると最終的に外れます。


XTX200, 100, 50は金属でできた流量調整ノブで、水中でも外から吸気抵抗を調整できるようになっています。XTX40, 20は代わりに写真の下の黒の部品になっていて、水中では吸気抵抗を変えられません。六角レンチで回すことができるので、陸上であれば簡単に吸気抵抗を変えられます。特にオクトパスの場合は水中で吸気抵抗を調整する必要がないと思うので、このXTX40,20で良いかと思います。


XTX200, 100, 50の場合、流量調整ノブを分解します。黒のフタを、マイナスドライバーなどでパカっと外します。


そうすると黒の芯が出てくるので、そこに付いている2つのOリングを外します。教えていただいた器材店では、流量調整ノブは分解していませんでした。正直ここは内外の圧力差がほとんどない部分で、仮にOリングにキズがついたとしても大して問題になる部分ではないので、分解しないという選択肢もアリだと思います。
個人的には、Oリングという消耗品が使われている部分で、そのOリングも交換キットに含まれていてどうせ部品もあるので、面倒くさがらずに交換してあげて良いんじゃないかと思っています。


バルブスピンドル(中心の芯)に残っているOリングを外します。


さて、いよいよ中心部の分解。ホースが繋がっていた側から割り箸などを入れて、シャトルバルブ一式を押し出します。


押し出されたシャトルバルブたち。


それぞれのバーツを分解します。
一番右にあるゴムのパーツがラバーシーティング。低圧シートと呼ぶ人もいます。セカンドステージの最重要部品で、ゴムでできているため消耗品で交換が必要。このシートの真ん中に穴が開いているのがバランスタイプのセカンドステージの特徴。

横長の黒のシャトルバルブは呼吸をするときに動く部分。レバーの根元がここに引っかかっていて、シャトルバルブを動かして吸気が始まります。

一番左の白っぽいプラスチックの部品が、カウンターバランスシリンダー。バランスタイプのセカンドステージの中心部品です。


中圧ホースが付いていた側から内側をのぞくと、こんな感じ。奥に金属でできたシートの底が見える。ここのくぼみにセカンドステージ調整ツールを入れて、反時計回りに緩めていくとそのうち外れます。調整ツールといってもただの板なので、専用工具がなくてもちょうど良いサイズのマイナスドライバーで十分。


本当はスナップリングプライヤーのような道具で内側から広げるように力をかけて引っ張りだすようにマニュアルには書いてあって、もちろんそうやって刃に直接触れずに取り出せれば一番良いのだけれど、そういう特殊な道具がなければ最後の一押しは割り箸などの柔らかいもので優しく押し出してあげればOK。教えていただいた器材店でもこの方法を使っていました。万全を期すのであれば、使い終わったラバーシーティングを間に挟めば完璧です。もともとラバーシーティングと接している部分なので、ラバーシーティングで押してあげれば決して傷つけることはありません。金属の刃はとても重要な部品なので、傷つけないように注意しながら、優しく、優しく。


こんな感じに外れます。


これが黒のゴムで出来たラバーシーティングと金属でできたシート。この2つが密着してファーストステージから来た中圧の空気を制御します。


左が使用後、右が新品のラバーシーティング。使用後の方には金属のシートの刃で押された痕があります。


黒のプラスチックでできたスピンドルカバーを外します。手で広げるようにすると外れる。これは、ホースの右出しor左出しを変えるときに向きを変えて空気の進行方向を調整する部品。
教えていただいたお店ではこの部分は外さずにそのままにしていた。今回は説明書通りに外したけれど、正直ここは外さなくても良いかもと思いました。このカバーは薄いためヘタしたら壊しそうだし、Oリングも含まれていないし、取り付けのときに向きで迷わなくて済むし。洗浄のときに厳密に金属とそれ以外の部品を分けるのであれば分解が必要ですが、そうでなければあえて外さなくてもよいかと個人的には思います。次回はそのままにしておこうかな。



ちなみに、バルブスピンドル(中心の芯)には写真のように両側に穴が空いていて、スピンドルカバーはそのうちの1つを塞ぐための部品です。常に1つの穴を塞いでいるだけの部品で、精密な動きを求められる部品ではないことが、あえて外して厳密に洗浄しなくてもいいかなと思う理由です。

ちなみに、金属のレバーは取り外し不要です。マニュアルにもそう書いてあります。同じ金属だし、隙間も十分にあるため、このままでも問題なく洗浄可能です。

<コラム:セカンドステージのレバー>

セカンドステージのレバーの根元は、このように垂直のツメになっています。オーバーホールではここまで分解する必要はありません。


バルブスピンドル(中心の芯)の中にあるシャトルバルブに、レバーのツメがちょうど引っかかる場所があります。


こんな感じで、垂直のツメのところにシャトルバルブの出っ張りが当たっています。


レバーが倒れると、ツメの部分も倒れて、写真の黒のシャトルバルブ&ラバーシーティングは少しだけ左側に動いて、ラバーシーティングと金属のシートの間にわずかな隙間が空いて、その隙間からファーストステージからの空気が出てきます。

シャトルバルブはわずかな動き。シートの隙間もわずか。
正直、こんなに小さな動きと知ってびっくりしました。

<コラム:セカンドステージのバランスタイプとは>
セカンドステージは、ダウンストリームバルブといって、上流からくる10気圧くらいの中圧を、黒のゴムで出来たラバーシーティングを使って、下流側から金属でできたシートにバネの力で押さえつけるようにして止めています。


バランスタイプのセカンドステージでは、そのラバーシーティングの真ん中に穴が空いています。


ファーストステージから来た空気は、その真ん中の穴を通って、黒のシャトルバルブの中に空いている穴を通って、灰色のカウンターバランスシリンダーにたどり着きます。このカウンターバランスシリンダーは、先が行き止まりになっているため、中圧の力で、写真の右方向にシャトルバルブを押し返します。


それによってどうなるか。本来バネの力だけで写真でいうと右方向の力で中圧の空気を押さえなけれはいけないところを、上で説明した押し返される力が手助けします。それによって、バランスタイプのセカンドステージのバネは、より小さな力で済むことになる。

ちなみに、この写真の一番右側にあるのが金属のシートで、そこに面しているのが真ん中に穴が空いたラバーシーティング。

この2つが密着しているとき、つまり空気が流れていない時は、左方向に流れてくる中圧の空気を、バネの力+押し返された中圧による力で押さえます。

息を吸うと、上で説明したようにセカンドステージのレバーが倒れて、シャトルバルブが左方向に動き、シートの部分に隙間ができて(バルブが開いて)、空気が出てきます。この時、バネの力は同じく右方向にかかっているんだけれど、例の押し返される力は小さくなります。なぜ小さくなるかというと、押し返す力を生み出す圧力が中圧ではなく周囲圧になるから。

バルブが開いた瞬間に、押し返す力の生み出していた中圧の空気は外に逃げて、周囲圧と同じになる。これにより、空気に抵抗する力が下がる。

以上の理由により、空気を吸っている最中に必要な力は、バランスタイプのセカンドステージの方が小さくなります。ちなみに、バルブを開ける力、つまり吸い始めに必要な力はバランスタイプであってもそれなりに必要になります。

<コラム:吸気抵抗について>
吸気抵抗を決めるものはいろいろあるので一言では言えないけれど、1つの要因として、セカンドステージのレバーを倒しやすいものは軽い力で吸うことができます。

どうすればレバーを小さな力で倒せるか。

レバーは上の方で説明したようにテコの原理を使っているので、レバーが長い方が小さな力で倒せる。また、ダイアフラムを大きくするほど、息を吸った時の圧力が同じでもレバーに大きな力をかけることができる。なので、レバーが長く、ダイアフラムの面積が大きいセカンドステージ、つまり大きなセカンドステージの方が吸気抵抗を小さくすることができます。

ただ、デカイと邪魔で、今はコンパクトな器材が人気なので、バランスがとれたサイズにする必要がありますね。APEKSのレギュレーター(Flightシリーズを除く)はコンパクトにしようという今の流行に流されずに、それなりに大きく重いけれど性能が高くて堅牢なので、個人的には好みです。僕はレギュレーターにコンパクトさを求めていません。

よく宣伝されているとてもコンパクトなセカンドステージは、上で説明したバランスタイプを採用することによってバネの力を小さくすることができ、小さくてもそれなりの吸気抵抗で吸えるようになりました。逆に言うと、いくらバランスタイプのセカンドステージでも、コンパクトなものはそのメリットをサイズを小さくすることに使っているため、そこまで吸気抵抗は低くありません。それなりの大きさで、なおかつバランスタイプのセカンドステージが、一番吸気抵抗が低くなることになります。

話が随分と脱線しました。分解の手順に戻ります。


真ん中のボタンを押しながら、エキゾーストティーを外します。


こんな感じで、横にスライドするようにして外せます。ゴムでできたエキゾーストバルブはそのままでOK。キズが付いていた時だけ取り替えるようにと書かれています。


結束バンドを切って、マウスピースを外せば分解終了。


分解しました。この後は洗浄へ。


2 コメント

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すごっ! (かとー)
2016-02-12 13:26:44
文章は難しすぎて、ほぼ読み飛ばした(←正直 笑)
けどさすが!!
ボートダイビングでジャイアントとか、バックエントリーとかしてオクトパスが少しの衝撃でもフローしてしまうんだけど、これは水面に向いちゃってるからかな?
ちなみにタンクのバブル閉めるまでフロー止まらず、、

器材もオペできるのはゆきおくんくらいだわ~!
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フリーフロー (diving-snowman)
2016-02-12 16:03:31
オクトがある程度の衝撃でフローしてしまうのは正直仕方がないことなんだけれど、フローした時にマウスピースを押さえたり口にくわえたりすると普通は止まるよー。それでも止まらない時は…面倒だけれど2つほど方法あり。

もちろん、ビーチではマウスピースを下に向けてゆっくりエントリーすればフローしないよ。でもボートだとそんなの無理だよね。

そもそも、フローしないのが一番。陸上でできる、オクトをフローしにくくする方法が3つほどあるんだけれど、長くなるので本文の方に書くねー。たぶん今日中に。

明日潜るときに全ての方法を尽くしてフローを防ごう。笑
小道具も持っていくねー。
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