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フランスの原子力発電所立地とワインとの関係?

2011-05-30 06:11:28 | 社会
 日経新聞コラム欄「春秋」の05/11記事でドイツ文学者池内紀が、原発大国として有名なフランスではゲンパツとワインがかさなり合ってくるのだ。という趣旨のエッセイを書いています。私もこの記事は読みましたが、いくつかのブログでも紹介されています。
http://sn-factory.jp/incidents/?p=2617
http://blog.goo.ne.jp/tora6yoshi/e/23f4fd71c9503242106a5e37e265d423

 池内氏のエッセイは、事故の時にも「影響が及ぶのは主に嗜好品のワイン」であり、米や海産物、農産物など広範囲に多大の影響が及ぶわが国とまるきり事情がちがうと結論しています。私の知らなかったおもしろい視点だと感心もしましたが、懐疑主義者たる私はさっそく検証を試みました。

 フランスの原発については例によって原子力百科事典が良いまとめをしています。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-05-02-01
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01) <更新年月>2007年08月

 この記事でフランスの原子力発電所立地が紹介されています。(なお核燃料サイクル関連施設の立地も示されている)[リンク訂正と文追加(2018/01/01)]。もちろんワインとの関連はこの地図では不明ですが、一見して大河のそばに立地していると見えます。例外は北海岸の4カ所ですが、結局冷却水の確保できる場所ではないかとの考えが浮かびました。

 さてワインの産地についてもいくつかの地図がウェブ上で見ることができます。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/voyage-du-vin/sub9.html
http://www.franceshoku.com/pages/wine/index.html

 確かに重なっていますが、北海岸にはワイン産地はありません。どうも、原発もワインも大河のそばにある、というのが真相である可能性が高いのではないでしょうか。ワイン産地が大河のそばにある理由は農地用水の便というよりは水運の便があるのかも知れません。温泉饅頭本舗の記事「ボルドーワイン」(2011/5/6)記載の「河川により運ばれた土壌が、ブドウ栽培に適した砂利などが多く含む」という理由もそのひとつなのでしょう。

 また事故の時にワイン畑以外への影響がどれほどかは調べ切れませんが*)、そばの河川に流出すれば下流域には影響はおよぶでしょう。ただ、日本と比べて平地が広い点では条件が有利であるとは言えそうです。上記の原発立地点などは縮小された地図では載っていない地点が多いのですが、グーグルアースで見てみると、パリに最も近く見えるパリュエル(Paluel)がパリから200km以上、先頃G8が開かれた北海岸のドーヴィル(Deauville)からは約120kmと随分余裕のある感じがします。日本だと安全性の面からは山奥に作らざるを得ませんが、それでは冷却水が確保できないということなのでしょう。

 水力発電なら山奥が適地なのですが。

 しかしドイツやルクセンブルグとの国境に近い原発など隣国を刺激したりしないのでしょうか? まあ昔のように武力衝突の恐れなどないということでもあり、電力の顧客であるということでもありということなのでしょう。そしてベルギーが国土面積に比べると結構な原発大国であるのは私にはひとつの発見でした。

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*) 農林水産のフランスの農林水産業概況によれば、「国土面積に占める農用地面積の割合は約54%で、そのうち、耕種作物が約6割、永年採草・放牧地が約3割」で、農用地以外の46%の多くは未使用地でしょうから、そこへ作ってもいいようにも思えます。あるブログ記事の中の "DOMINANT LAND USE"を見ると100%農用地にも見えますが、全体の土地利用図として見つかったのはこの地図だけでした。"Market Gardening" が結構まとまっていますね。

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