Deeps World

自作音楽、CG、その他いろいろな話題♪
日記と関係ない画像を掲載する事もあります^^;
*更新は不定期です*

祟られ村(たたられ村)連載最終話

2008-11-01 14:58:37 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

静恵は、老人に一言別れの挨拶をすると、開けてもらった赤いドアの中に入っていった。

(あら、ここも不思議な部屋ね。)

その部屋は、正面に十字架のような飾り物があり、床には何か重いふたのような物がある。

(う~ん、重くて空かないわ。何か別の方法があるのかしら?)

そして左右にも部屋が付いているのだが、左の部屋は真っ暗で何も見えないので、とりあえず右の部屋へ入ってみた。

(あらっ? これは、何のボタンかしら?)

壁には、10個のアルファベットのボタン「D,N,H,T,E,P,S,A,O,W」があり、その下には、「文字に願いを込め、己の道を開くのだ・・・」

と、書いてある。

静恵は、いろいろな順番でボタンを押してみたが、何も起こらないのだ。

(文字に願いといっても、何の事かしら? そうね、今の願いは先に進んで武を見つけることだから、あの床のふたを開けてみたいわね。まさかこれじゃ?)

おもむろに、4文字のアルファベットを押してみたところ、床のふたがゆっくりと開いた。

(ああ、やはり「OPEN」だったのね。簡単な英単語で助かったわ。)

そして、ふたの横の壁も開き、そこからアクアラングセットが出てきた。

ふたが開いた床には、水面が覗いているのだ。

この先は、アクアラングセットを使い、進んで行くしか無さそうだ。

(なんて仕組みの多い屋敷なのかしら...仕方がないわね。他には行けそうな場所も無さそうだから、これを使って潜ってみるわ。)

静恵はアクアラングセットを身につけ、ゆっくりと水に入っていったところ、
うっすらとした明るさがあり、何とか水中の様子は見えるようだ。

水中を少し進んでみたところ、そこは不思議な光景だった。

水面には、古ぼけたカバンが浮いているが、手が届きそうで届かない位置にあるとともに、ゆらゆらと動いていて簡単には取れない。

そして正面には、3つの入り口があるのだが、左右の2つには刃物のスクリューが取り付けてあり、誰かが餌食になったであろう、うっすらと血痕が残っている。

しかし、真ん中の入り口だけは、何もなく通れそうだ。

(水が無ければ、簡単にカバンが取れるのに・・・。カバンの中に何か入ってそうだけど、今は取るのが難しそうだわ。
それに、あのスクリューに巻き込まれたら終わりだし。まずは真ん中の部屋に入ってみましょう。)

静恵はそう考え、真ん中の部屋に入っていったが、とんでもないことが起こった!
強烈に部屋の圧力が変化して、酸素ボンベが使用不能になってしまったのだ!!
目の前には、ボタンがいっぱい付いた壁があるのだが、いろいろと考えている暇はない。

(ああ、苦しい!! さっきの入り口に戻って水から出ないと・・・)

静恵は、急いで戻った。

(良かった。何とか窒息せずに済んだわ。でも、あのボタンは何なのかしら?
きっとどこかを押すのだろうけど、あの部屋の中で考えている時間はないし。とりあえず、もう一度潜ってみよう。)

静恵は、もう一度潜り、ふと壁の上部を見た。すると、何か記号のようなものが書いてあることに気づいた。
そこには、「6L12H」と書いてある。

(6L12H、どういうことなのかな?もし、この記号がボタンの位置を示しているとしたら、6番目と12番目?

でも、LとHは何だろう?え~っと、位置に関係した単語から考えたら・・・。

あっ、もしかして、LeftとHightかも!そう考えたら、左から6番目、上から12番目だわ!

そのくらいの時間だったら、息を止めていても大丈夫かも知れない。やってみるしかないわね。)

静恵はすぐに、ボタンの部屋に潜っていった。

部屋に入ると圧力が変化して、息が出来なくなったが、左から6番目、上から12番目のボタンを探し当て、すぐに押してみた。

すると、圧力は元に戻り、酸素ボンベが普通に使用できるようになったが、
部屋の中で、何か変わったことはなかった。
ただ一つ気づいたのは、壁に小さな鍵穴があること。

(何の鍵穴だろう? でも今は鍵など持っていないし、とりあえず部屋の外に出てみるわ。)

しかたなく、部屋の外に出てみると、左の部屋を遮断していたスクリューが止まっていたのだ。

(そうか、このスクリューを止めるボタンだったのね。これで中に入れるわ。
あらっ、スクリューの真ん中の色が、なぜか青色に変わってるわ。)

静恵は不思議に思ったが、とりあえず左の部屋に入ってみた。

(ああっ、また圧力が!!)

そうなのだ!また酸素ボンベが使えなくなってしまったのだ。

薄れゆく意識の中で見たものは、部屋の壁で点滅している、不思議な色付きボタン。

そして、その中で、色が変わらないボタンがあった。それは青色のボタンだ。

(もう、駄目かも・・・。お願い!!私にチャンスを・・・)

半分あきらめながら、青色のボタンを押してみた。すると圧力が戻り、ボンベから酸素が送られてきた。

(あー、助かったのね。何て恐ろしい仕掛けなのかしら。)

静恵は恐怖に勝ったのだ。愛する弟を捜すために、強い心に変わってきている。

部屋を出ると、右の部屋を遮断していたスクリューが止まっていた。

すぐ右の部屋に入ってみると、茶色のレバーが取り付けてあったので、レバーを下げてみると、
充満していた水がどんどんと減っていき、すべてが排水された。

それと同時に、ゆらゆらと浮いていたカバンも床まで下がったのでふたを開けてみると、鍵が入っていた。

(あっ、たしか真ん中の部屋に鍵穴があったわ。)

そう思うと、すぐに真ん中の部屋に行き、鍵穴に鍵を差し込んで回したところ、
どこか遠くで、「バチバチッ」と、電気の接触するような音がした。

(おかしいわね。この地下では何も変わっていないわ。さっき水に入ってきた上の部屋に戻ってみましょう。)

静恵は水面の入り口だった所のはしごを登り、上の廊下に戻った。

すると、先ほど真っ暗だった部屋に、灯りがついている。

(なるほど、水中の鍵は、ここの部屋の照明を点ける鍵だったのね。あらっ、レバーがあるわ。)

正面の左上に、小さいレバーが取り付けてあるので、ゆっくりとレバーを下げてみた。

すると、新しい廊下への入り口が開いたのだ!

奥の方では、たいまつのような物が灯っているので、周りの様子はよく見えた。

(また少し進んだみたいね。がんばらなくっちゃ!!)

静恵は自分に気合いを入れ、新しい廊下を進んでいった。

奥に進むと、たいまつらしき物の上部に、一枚の張り紙があった。そして、こう書いてあったのだ。

”よくぞここまで来れたものだ。しかし、安心してはならぬ。残された謎を解かない限り、この屋敷から脱出する事は出来ないだろう・・・”

ああ、なんと言うことなのだ! これだけ危険な目にあったというのに、まだ先があるなんて・・・。

(あ、あのレバーは何かしら?)

静恵は、右上にあるレバーを下げてみた。すると、正面に隠し庫が現れた。

(あら、鍵があるわ。)

その鍵が置かれた台座には、こう書いてあった。

”出口の鍵”

(ああ、とうとう出口の鍵を見つけたわ! これで出られるのね! でも、武を見つけないと・・・)

すると、少しの時間をおいて、右の隠し扉が開いた。

(この中には、何があるのかしら?)

静恵は、扉の中に入っていった。

そこは小さい灯りが灯してあり、壁には異国の絵が飾ってある。

そして、右には小さい窓のような物があり、そこから誰かが呼んでいる!

「おねえちゃん!僕だよ、武だよ!!」

「あっ、武!どこにいたの?心配したのよ。大丈夫だった?」

「僕、カミナリが落ちたときにビックリして、走って屋敷の裏に行ったの。
そうしたら、小さい裏口を見つけたので、入っちゃったんだ。
でも、自動で鍵が掛かってしまって、仕方なく屋敷の中を探検していたんだ。」


とうとう、姉弟が、この屋敷で巡り会えたのだ! しかし・・・

「そうだったのね。でも、元気で安心したわ。こっちの部屋には来れないの?」

「おねえちゃん、ここには鉄格子がはまってて、そっちに行けないんだ。」

「あなたは男の子でしょ、がんばってほかの道を探すのよ。きっと、会えるところがあるはずよ。」

「うん。僕、がんばって探してみるよ! お母さんに飲ませる薬も探さなきゃいけないし。」

武はそう言うと、二人が会える場所を探すため、鉄格子の向こうの部屋から消えていった。

静恵は、辛く悲しい思いと戦いながら、武の身の安全を願うのであった...

-------

-------大変申し訳ありませんが、先日のブログに書かせていただいたように、この先を小説化していない為、連載終了になります。-------

祟られ村(たたられ村)第二十三話

2008-10-28 18:13:44 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

廊下を進むと、突き当たりにはレバーが取り付けてあった。
罠かも知れないという恐怖に怯えながらレバーを下げると、先ほどのように壁の一部が開き、隠し部屋が現れた。

(あ、この部屋は・・・)

なんと、そこはお面の部屋であった。ちょうどグルっと一周してきたことになる。

(やはり、このお面に何かがあるのね。さっきの部屋で取ってきた石を、お面の眼にはめてみよう。)

静恵はポケットから石を取り出すと、慎重にお面の眼にはめてみると、思った通り石はぴったりとお面の眼にはまったのである。
そして、それと同時に、お面の口が開いたのだ!

(あっ、これは!)

お面の口から出てきた物は、なんと綺麗な指輪ではないか。

(これが老人の言っていた指輪なのね!本当に綺麗だわ。早速、戻って手渡しましょう。)

静恵はすぐに、老人のいる部屋に戻った。

「指輪を見つけてきたわ!」

「なにっ、それは本当か?すぐに見せておくれ!」

静恵は、指輪を老人に手渡した。

「おおっ、これはまさしく探し求めていた指輪じゃ。この素晴らしき輝きを求めていたのじゃ。本当にありがとう。
約束通り、赤いドアを開けてあげよう。この先に何が待ち受けているか分からないが、自信を持って行動するのだぞ。気を付けて行きなさい。」

「ありがとう。私、がんばるわ!」

「ああ、がんばりなされ。」

「さようなら・・・。」

静恵は、老人に一言別れの挨拶をすると、開けてもらった赤いドアの中に入っていった。

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第二十二話

2008-10-04 21:03:35 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

このままでは、静恵は針の餌食になってしまう・・・

(どうすればいいの~!!助けて~!!)

どんどんと天井が降りてきて、あとわずかで静恵の頭上に近づこうとしたその時!
正面のドアから、不思議な物が現れたのだ。

それは、色の付いたボタンと、数字の書いてあるボタンだ。

(あっ、もしかしてこれは・・・)

静恵は、先ほどの茶色に変わった4枚のパネルの事を思い出した。

(茶色と4ね!)

とっさに茶色のボタンと4番のボタンを押すと、
降りてきた天井が戻り、牢屋の鉄格子が解除された!

(ああ、助かったわ。やはりパスワードだったのね。これからは行動するのにも、良く考えてからでないと怖いわね。
あらっ、あそこのドアが開いているわ。)

先ほどまで閉まっていた部屋の隅にあるドアが開いているのだ。

(今のパスワードが、あそこのドアを開けることも出来たのね。ここの部屋は物騒だから、他に行ってみよう。)

開いたドアの外に出てみると、そこには穴が空いていた。
のぞき込むと、先ほどの太い針のような物が上を向いていて、誰が餌食になったかは分からないが、針先に血がこびりついている。

(どうしよう、正面のドアに行くには、ここを渡らなければならないけど、失敗して落ちたらもう終わりね。何かないかしら?)

静恵は、辺りを見回した。すると、灯りの下に何かあるのが分かった。

(あっ、これはボタンのようだわ。どうしようかしら・・・。へたに押したら、何か恐ろしい仕掛けがあるかも知れないし。
でも、どうしても指輪を見つけて持っていかないと、あの赤いドアを開けてもらえないし。よーし、押してみよう。)

決心をして、ボタンを押してみた。すると、壁の一部が開き、隠し部屋が出てきたのだ。

(ああ、良かった。罠じゃなかったようね。この部屋は何かしら?)

隠し部屋に入ると、そこにはレバーが取り付けられていた。

(このレバーは何かしら?どうか罠でありませんように・・・)

静恵は、半ば神頼み的に、レバーをおろした。

すると穴の方から機械のような音がしたかと思うと、針の穴を渡るための橋が出てきたのだ。

(まったく凝った作りだわ。これじゃ、なかなか進めないはずね。)

針の穴に掛かった橋を慎重に渡り、正面のドアを開いた。

そこは狭い部屋で、正面に不思議なオブジェがある。
それらは、綺麗な色をした石だが、一つ一つが違った色合いなのだ。

(あら、これはさっきのお面の目玉にはめた石と似てるわ。そうだわ!あれと同じ色の石に、何かがあるのね。
どの色だったかしら?あっ、この右端のがそうだわ。)

静恵は石を手に取ると、ポケットにしまった。

そして、横にあるドアを開くと、そこは廊下になっていた。
わりと明るいので奥まで見渡せたが、何もない普通の廊下だ。

廊下を進むと、突き当たりにはレバーが取り付けてあった。
罠かも知れないという恐怖に怯えながらレバーを下げると、先ほどのように壁の一部が開き、隠し部屋が現れた。

(あ、この部屋は・・・)

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第二十一話

2008-08-11 01:19:01 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

「そうかそうか、決心をしたようだな。わしもその指輪が見れれば、もう思い残すことはない。では、気を付けて行って来るのだぞ。」

「必ず、探し出してくるわ!」

静恵はそう言い残すと、青いドアを開いて入っていくのであった。

青いドアを入ると、そこは狭い部屋であった。たいまつで照らされているので、様子はよく分かった。
正面には、どこかの部族がかぶるようなお面が置いてあり、そのお面の眼の部分は、ポッカリと穴が空いていた。
静恵は、お面に近づき、色々と触って確かめてみた。

(あらっ、この眼の部分には、何かがはめられそうだわ。)

そう考えながら、ふとポケットに手をやると、村のおばさんから貰ってきた綺麗な石の事を思い出したので、手に出してみた。

(この石は、お守り代わりに貰ってきたものだけど、よく見ると、目玉のようにも見えるわね。試しにお面のくぼみにはめてみようかな? まさかね~。)

静恵は、馬鹿馬鹿しい考えだと思いながらも、石をお面のくぼみにはめてみた。
するとどうだろう、ぴったりとはまってしまい、取れなくなってしまったのだ。

(そうなんだ!この石は、ここにはめる物だったのね!!。でも、何も変わったことは無いわ。だとしたら、もう一つの眼になる物を探してきて、はめてみれば良いのかもしれないわ。)

部屋の左側には、ドアがある。

(よーし、この先に何かがありそうだから、行ってみましょう。)

静恵は、ドアをそーっと開けて、中を確認しながら入っていった。

その部屋は、実に不思議な部屋である。
小さい噴水のような物があると思えば、ほかに色つきの板などもある。
そして、一番目に付いた物は、牢屋であった。

(ここで何が行われていたのかしら?。考えただけでゾッとするわ。)

静恵は牢屋があることに、不思議な感じを覚えたので、まずは安全そうな噴水に近づいてみた。
噴水は静かな音を立て、綺麗な水を滴らせていた。

(あらっ、この数字は何かしら?)

よく見ると、滴る水が、7の数字を揺らしているのだ。

(なにか、謎に関係があるのかしら?)

そう思いながら、噴水の左にある、不思議な板を調べてみた。

(あっ、この小さい板は、押せるようだわ。何かのスイッチかしら?)

静恵は、一つ二つ押してみたが、何も起こらない。

(よく見ると、電話のボタンに似てるわね。あっ、さっき噴水で7の数字が揺らされていたわね。もしかしたら・・・)

小さい板を電話のボタンに置き換え、7にあたる板を押してみた。
すると、板の色と数が変わったではないか!!

(あらっ、茶色の板が4枚になったわ。どういうことかしら?)

静恵は、そのほかにも色々と触ってみたり調べたりしたのだが、それ以上は何も進展しなかった。

そして、ほかの部屋に行けそうなドアがあるのだが、そこはロックされていて、静恵の力では開けることは出来なかった。

(仕方がないわ。やはり牢屋も調べないとならないようね。)

そう考え、牢屋の扉を開けてみた。

(ああ、この中を調べるのは嫌だけど、他に調べようが無さそうだから・・・)

入りたくない気持ちを抑えながら、とうとう牢屋に足を踏み入れてしまった。

すると、その時!!「ウィーン、ウィーン!」
けたたましいサイレンのような音と共に、扉が自動で閉まったのだ!!

(あっ、どうしよう!!扉が開かないわ!!)

そしてふと上を見ると・・・

(キャーッ!!)

なんということだろう!天井が徐々に下がって来るではないか!!
そして、天井には太い針のような物がいくつも取り付けられていたのだ!!

このままでは、静恵は針の餌食になってしまう・・・

(どうすればいいの~!!助けて~!!)

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第二十話

2008-07-15 23:25:41 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

「でも不思議だわ。私がこの屋敷で見た物は、近年に揃えた物がたくさんあったわ。 電子レンジやガス台は、あなたの時代には無いはずだわ。」

「わしは動けない身体なので、最近の道具などについては全くわからんが、もしかして奴が・・・。」

「えっ?、奴って、他にもこの屋敷にいるの?」

「ああ、それが確かならば、恐ろしい事じゃ。
古い昔、大理石からある成分を抜き出そうとしていたときに、大理石の下敷きになって学者は死んだのだが、
その時までに出来上がっていた特効薬を、持ち逃げした奴がいたのだよ。

その後は、行方を眩ましてしまったのだが、ある日、村人が奴をこの古屋敷の入り口で見かけたらしい。
そしてその時、口からは何か小動物でも食べたらしき血の滴りがポタポタとたれて、
”俺は不死身になったのだ。ゲヘヘッ・・”と言いながら、この屋敷に入っていったらしいぞ。

村人は怖くなり、それ以上は追うことも出来ず、村中の噂になるのもいけないと思い、知り合いの一部にしか、その話はしていないという。
村中に広がると噂されていた伝染病も、結局は流行らずに良かったのだが、もしかして奴がその伝染病にかかり、なおかつ学者の特効薬に手を加えて、不死身の身体を手に入れたとしたら、大変なことじゃ。」

「ああ、なんてことなの。ここに来る間にも、魔物が出てきたのよ。」

「そうか。それは奴が作り上げた怪物かもしれないぞ。」

「どうにかならないの?」

「ああ、まずはこの屋敷の未確認の所を探索するしかないだろう。
噂だが、学者はすでに伝染病の試薬を完成させて、どこかに隠していたという話がある。今はそれを信じて、先に進むことじゃ。」

「この先は、どうなっているの?」

「それは、わしにもよくわからん。どうじゃ、ここでわしと取引をしないか?」

「えっ、取引って?」

「わしはこんな動けない身体になってしまったが、一つだけ見たい物がある。それは高価な指輪だ。
この青いドアの先に隠されているらしいのだが、一度で良いから見てみたいのじゃ。
おまえがその指輪を取ってきてくれたら、向かいの赤いドアの鍵を開けてあげようぞ。
この先に何があるのか分からないが、進むしかなさそうだぞ。どうするのじゃ?」

静恵は少しためらったが、早く武を捜さないとならないし、決心をした。

「分かったわ。何とか探してみるから、もし指輪が見つかったら、赤いドアを開けて下さい。」

「そうかそうか、決心をしたようだな。わしもその指輪が見れれば、もう思い残すことはない。では、気を付けて行って来るのだぞ。」

「必ず、探し出してくるわ!」

静恵はそう言い残すと、青いドアを開いて入っていくのであった。

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第十九話

2008-06-28 05:00:04 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

「誰かいるの? もしいるなら、返事をしてちょうだい!!」

静恵は、いたたまれなくなって叫んだのである。
すると、奥の方から、しわがれた声が聞こえてきたのだ。

「そのまままっすぐ進むがよいぞ。そしてドアがあるから、開いてくるのだ!!」

「だれ!!誰なの??」

「わしのことは、ここまで来てから話を聞かせようぞ。とにかく来るのだ。」

「分かったわ。そっちに行くから待ってて!!」

そこで誰が待っているのかは分からなかったが、落ち着いた話し方に、静恵は少しだけホッとした。
聞いた感じでは、魔物ではなさそうな話し方なのだ。

少し進むと、ドアのような物に手が触れた。
そしてノブが見つかったので、少しずつ回しながら、この先に誰がいるのかを考えていた。
それは、普通の人間なのか、まさか魔物がだましておびき寄せているのか、
何とも言えない不安を感じてきたが、それに負けずとドアを開いたのであった。

ドアを開けそっと覗くと、なにやら人影のようなものが見えた。それは人影にしては、不思議なシルエットだった。

「驚かなくてもいいぞ。わしはおまえに危害を加えるようなことはない。よ~くみてごらん、わしの身体を。 もうほとんど動くことは出来ないのだ。」

それは、かなりの老人であったが、身体全体が灰色を帯びていて、ほとんど骸骨に近い状態だ。

「あなたは誰なの?どうしてこんな所にいるの?」

「ああ、これからゆっくりと話をしてあげようぞ。わしは古い昔に、薬品関係の仕事をしていた。
そしていつ頃かは忘れたが、この村に不思議な伝染病が流行るのではないかという情報を得たのだ。

あのころ経営不振だったわしは、その情報を聞いて、こう考えた。
たしか前に古屋敷には学者がいて、その伝染病の特効薬を開発していたという。まあ、不幸な死に方をしたらしいが・・・。
ならば、その学者の研究を盗み、自分の物にしてしまえば良いのではないかと。そう考えたわしは、夜中にこの古屋敷に忍び込んだのだ。
しかし、この屋敷には色々な仕掛けがあって、なかなか奥へは進めなかったのだ。
わしは喉が乾いたので、台所の蛇口をひねったのだが、水が出てこない。
しかたなく隅に置いてあった水瓶の水を飲んだのだが、それは学者の罠だったのだ。
時間がたつにつれて、どんどん身体に異変が起きて、気づいたときにはこんな身体になってしまっていた。

しかし不思議なことに、身体は骸骨化しているのだが、寿命というものが無くなったらしい。
まあ、動けない身体になってしまったら、生きていても仕方がないのだがね。」

「でも不思議だわ。私がこの屋敷で見た物は、近年に揃えた物がたくさんあったわ。 電子レンジやガス台は、あなたの時代には無いはずだわ。」

「わしは動けない身体なので、最近の道具などについては全くわからんが、もしかして奴が・・・。」

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第十八話

2008-06-14 10:15:08 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

下り階段は、何年も使われていなかったのか、こけが生えて滑りやすそうだ。
静恵は、一歩一歩、足下を確かめながら、暗い階段に飲み込まれていった。

階段の壁は、手で触ると異様にじめじめしていて気持ちが悪かったが、滑りやすい階段のため、仕方なく壁に手を添えながら下っていった。
20段ほど降りると、前がふさがってしまったようで、行き止まりになっていた。

(おかしいわね。これ以上は行けないのかしら?)

そう思いながら、暗い中、前の壁を手探りしていると、その壁は鉄の様なものであることが分かった。
そして再び手探りすると、短い棒のような物が手に触れた。

(これ、ノブのようだわ。下ろしてみよう。)

静恵は、短い棒を握り、力まかせに下ろしてみると、「ガコン」という音と共に鉄の扉が開いた。
そして扉をのぞき込むと、そこは3畳ほどの狭い部屋になっていたのだ。

部屋の隅には、たいまつが置かれていて、部屋の中は思ったほどは暗くなかった。

(ここは安心できそうだわ。少し休みましょう。)

静恵は部屋に入り、休息しながら部屋の中を見渡したが、これといって何もなく、あるのはもう一つのドアだけのようだ。

(このドアから、どこかに行けるのね。あっ、あれはなにかしら?)

横の壁に、なにか紙で出来ている物が貼ってある。
静恵はそれに書かれている内容を読んで、背筋に悪寒が走った。

そこには、こう書かれてあったのだ。

「必ずや、ここに誰かが来ることは、私には分かっている。そう、私はここのあるじの学者だ。
ここに来たということは、逃れられない運命を選んでしまった訳なのだ。

頼む、生きているうちに私が出来なかった、恐ろしい物たちの抹消を引き受けてくれ。
それしか、ここから出る方法は無いのだ。
私は他の部屋にも、大切な伝言を残している。それを頼りに何とか奴らを・・・」

そこまでで、学者の伝言は終わっていた。

(ああ、なんということなの。武も探さなければいけないのに、他にも怪物がいるなんて。
でも、もう遅いのね。ここまで来てしまったのだから、この屋敷から出るには学者の遺言を引き継ぐしかないのね。)

静恵は意識が遠くなりそうな気がしたが、なんとか持ちこたえて現実に戻った。

(そうと決まれば、次はこのドアの先に行くしかないわ。)

静恵はピストルを構えると、ノブを廻し、ドアを開いたのであった。

そっと中を覗くと、そこは真っ暗で、どうなっているのか分からない状態だ。
しかし勇敢にも、静恵は少しずつ足を踏み入れていった。

一つ分かったことだが、そこは廊下のようで、手探りで両側に壁があることを確認した。
だが真っ暗なために、この先に何があるのかは判断できない。

しばらくすると、遠くの方で何か聞こえた。
それは、何かがきしむ音なのか、まるで断末魔のうめき声のようにも感じるのだ。

静恵は、背中から水をかけられたような嫌な感じを覚えたが、恐怖を振りほどきながら先に進んでいった。
そして、先ほどの音が、段々はっきりと聞こえてくるようになった。

「誰かいるの? もしいるなら、返事をしてちょうだい!!」

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第十七話

2008-05-19 13:10:44 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

自分に気合いを入れ、一階へ向かう静恵だったが、果たして、ピストルは使い物になるのか。
また、あの鍵は重要なアイテムなのか、それはこれから、静恵が答えを出してくれるだろう。

静恵は心を決め、一階のあの忌まわしい寝室の前まで来てみたが、
さすがにすぐにはドアを開けることが出来なかった。

(がんばるのよ静恵! 武のことが心配だから、こんな所で時間を無駄にしないためにも・・・)

そう自分に言い聞かせながら、とうとうドアを開けたのだ。

右手にピストルを構え、いつでも撃てるようにして、そっと中を覗いた。
さきほどの魔物は見あたらないが、たぶん鍵を取ろうとすると出てくるのだろう。
まるで番人のようだ。

ベッドの上には、先ほどと同じように鍵が置いてある。

(さあ、鍵を取るわよ。忌まわしい魔物め、出ていらっしゃい!!)

そして鍵の置いてあるベッドに、一歩一歩近づき、とうとう鍵に手をかざしたのだ。

「ウ~~ッ、ウォ~~ッ!!」

「出たわね、!! これでも喰らいなさい!!」

「パン、パン、パーン!!」

静恵はピストルを魔物に向け、3発おみまいしたのだった。

「アグッ、アググッ、ウ~・・・」

ピストルの弾が、魔物の急所に命中したのか、その場に崩れ落ち、そして灰に変わってしまった。

(ああ、なんとか助かったようね。このピストルは魔物にも効き目があるようだわ。学者さんに感謝しなければ・・・)

静恵は、ベッドに置いてある鍵を手に取り、灰になった魔物をしばらく眺めていたが、ふと、あるものに気が付いた。

(あら、メモのようだわ。何かしら?)

灰の中から出てきたメモらしき物を手に取り、そこに書かれた不思議な文章を読んでみた。

「月日に眠る、閉ざされしドア」

(あっ、もしかして、月日というのは、あの日めくりカレンダーのことね!ということは、この鍵は、あそこの鍵なんだ。)

それに気づいた静恵は、素早く寝室を出ると、日めくりカレンダーのあったオーディオルームに向かった。
オーディオルームに入ると、すぐにカレンダーの所へ行き、奥に隠された鍵穴に先ほどの鍵を差し込んでみた。

(あ、ぴったりだわ。思った通りね。でも、この鍵を廻したら、どういうことが起こるのかしら?)

あの寝室の魔物の事もあるので、すぐに鍵を廻すことにためらいを感じるのは、仕方のないことだろう。
しかし、今、静恵に出来ることは、この鍵を廻すことしか無いようだ。

(さあ、何でも出ていらしゃい!! このピストルでやっつけるわよ!!)

静恵は、ピストルを構えながら、とうとう鍵を廻したのだ。

「ゴゴッ、ゴッ、ゴ~~~ッ」

どこからともなく、地響きのような音が聞こえてきた。

(あっ、あれは・・・)

静恵は、不思議な光景を目の当たりにした。
ステレオの置いてある床が陥没をし始め、その奥の壁に、入り口のような物が出てきたのだ。
しばらくすると、地響きのような音が消え、床の陥没もおさまったようだ。

静恵は恐る恐る、隠されていた入り口に向かい、そして中をのぞき込んだ。

(あっ、下り階段があるわ。地下室にでもつながっているのかしら?)

そうなのだ。暗くて下までは見えないが、まさしくそれは、地下へ続く階段であった。

(ここまで念入りに隠してあったのだから、大切な何かがあるに違いないわ。暗くて怖いけど、降りてみるしかなさそうね。)

下り階段は、何年も使われていなかったのか、こけが生えて滑りやすそうだ。
静恵は、一歩一歩、足下を確かめながら、暗い階段に飲み込まれていった。

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第十六話

2008-04-09 20:41:18 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

(さあ、二階へ戻って、カンの中身を確かめなきゃ。)

また、得体の知れない魔物が出ると困るので、静恵は走って二階部屋に向かった。

階段を駆け上がり、二階のドアを開け、テーブルの上に置いてあるカンを取った。
そして、古いために錆び付いている缶切りを上手く使って、なんとか開けることが出来た。

(わあ、これ、ピストルじゃないの。)

そうなのだ。カンから出てきたのは、小さいピストルだった。
たぶん、ここに住んでいた学者が、護身用に使っていたのだろう。

しかし、それほどまでに、この館は危険なのだろうか。静恵は、そこまでは考える余裕はなかった。

(とにかく、持っておこうかな。使った事なんて一度もないけど、無いよりは安心だから・・・。 それと、もう一度この部屋を、くまなく探してみなきゃ。)

静恵は、もう一度部屋の隅まで探し回ったが、やはり気になる様な物は出てこなかった。

(仕方ないわ。やっぱり、あの寝室のベッドにあった鍵が、何かに関係してそうだから、もう一度行ってみるしかないようね。そうだ、このピストルは、あの魔物に効果はあるのかしら? よ~し、いちかばちか、やってみよう。)

人間というのは、武器を持つと気が大きくなるようで、この静恵も例外ではなかった。
この状態では、武器の一つでもなければ、行動は無理であろう。

(さあ、あの部屋に行くわ。がんばるのよ静恵!!)

自分に気合いを入れ、一階へ向かう静恵だったが、果たして、ピストルは使い物になるのか。
また、あの鍵は重要なアイテムなのか、それはこれから、静恵が答えを出してくれるだろう。

-------次回へ続く-------

祟られ村(たたられ村)第十五話

2008-03-18 18:35:08 | 祟られ村(たたられ村)自作小説
-------前回の続き-------

静恵は鍵を取ろうと、ベッドに近づいた。しかしその時・・・

(きゃあ~~っ!!!)

ベッドの上あたりに、恐ろしい顔の仮面が現れたのだ!!

(あああっ・・・)

静恵は、恐怖のあまり身体が硬直したように動かなくなり、その仮面を見入ってしまった。
よく見ると、大きく裂けた口の様なものがあり、そこから赤い液体が、静恵に向かって飛び散ってきた。

(ああ、どうにかしなきゃ・・)

幸いにも、ドアまで距離がなかったので、なんとか重くなった身体を動かして、ドアの外に逃げのびた。
得体の知れぬものは、廊下までは追いかけてくることはない様で、静恵は救われた。

(あれは何だったの?この館はどうなってるの?ああ、武が心配だわ。
もしあの子がすでにこの館に入っているとしたら、ああ、どうしよう・・・。
でも、あの鍵が大切な物だということは分かったわ。なにしろ、あんな魔物が守っているのだから。
とにかく、あと一部屋残ってるから、根性出して入ってみなきゃ。)

静恵は、恐怖に襲われていたが、それよりも愛する弟「武」の事が気がかりだったのだ。
早く見つけなくては、さっきの魔物などにやられてしまうかも知れない。

恐怖を押し殺して、最後の部屋のドアを開けた。
やはりオートロックは解除されていたが、さっきのこともあり、逆にそれが恐ろしい気がした。

(今度は、何もでてきませんように・・・)

願いがかなったのか、部屋に入っても先ほどの様な魔物は出てこなかった。

(いまのうちに、色々探してみなくちゃ。)

この部屋は、キッチンのようだ。
流し台、ガス台、レンジなどがあり、流し台に付いている蛍光灯が、明るく照らしている。
使われていなかった割には、きれいに掃除が行き届いている方だ。
昔は、これほどの設備は無かったはずなので、近年に揃えたのだろうか・・・。

静恵は、ガス台の下に付いている、開き戸を開けてみた。

(あっ、これは・・・)

そこから出てきたのは、古くはあるが、缶切りに違いはない。

(これで、二階部屋にあったカンを、開けてみることが出来るわ。)

静恵は嬉しさのあまり、さっきの恐怖など吹き飛んでしまった。やっといつもの静恵に戻ったようだ。

(さあ、二階へ戻って、カンの中身を確かめなきゃ。)

また、得体の知れない魔物が出ると困るので、静恵は走って二階部屋に向かった。

-------次回へ続く-------