-------前回の続き-------
「でも不思議だわ。私がこの屋敷で見た物は、近年に揃えた物がたくさんあったわ。 電子レンジやガス台は、あなたの時代には無いはずだわ。」
「わしは動けない身体なので、最近の道具などについては全くわからんが、もしかして奴が・・・。」
「えっ?、奴って、他にもこの屋敷にいるの?」
「ああ、それが確かならば、恐ろしい事じゃ。
古い昔、大理石からある成分を抜き出そうとしていたときに、大理石の下敷きになって学者は死んだのだが、
その時までに出来上がっていた特効薬を、持ち逃げした奴がいたのだよ。
その後は、行方を眩ましてしまったのだが、ある日、村人が奴をこの古屋敷の入り口で見かけたらしい。
そしてその時、口からは何か小動物でも食べたらしき血の滴りがポタポタとたれて、
”俺は不死身になったのだ。ゲヘヘッ・・”と言いながら、この屋敷に入っていったらしいぞ。
村人は怖くなり、それ以上は追うことも出来ず、村中の噂になるのもいけないと思い、知り合いの一部にしか、その話はしていないという。
村中に広がると噂されていた伝染病も、結局は流行らずに良かったのだが、もしかして奴がその伝染病にかかり、なおかつ学者の特効薬に手を加えて、不死身の身体を手に入れたとしたら、大変なことじゃ。」
「ああ、なんてことなの。ここに来る間にも、魔物が出てきたのよ。」
「そうか。それは奴が作り上げた怪物かもしれないぞ。」
「どうにかならないの?」
「ああ、まずはこの屋敷の未確認の所を探索するしかないだろう。
噂だが、学者はすでに伝染病の試薬を完成させて、どこかに隠していたという話がある。今はそれを信じて、先に進むことじゃ。」
「この先は、どうなっているの?」
「それは、わしにもよくわからん。どうじゃ、ここでわしと取引をしないか?」
「えっ、取引って?」
「わしはこんな動けない身体になってしまったが、一つだけ見たい物がある。それは高価な指輪だ。
この青いドアの先に隠されているらしいのだが、一度で良いから見てみたいのじゃ。
おまえがその指輪を取ってきてくれたら、向かいの赤いドアの鍵を開けてあげようぞ。
この先に何があるのか分からないが、進むしかなさそうだぞ。どうするのじゃ?」
静恵は少しためらったが、早く武を捜さないとならないし、決心をした。
「分かったわ。何とか探してみるから、もし指輪が見つかったら、赤いドアを開けて下さい。」
「そうかそうか、決心をしたようだな。わしもその指輪が見れれば、もう思い残すことはない。では、気を付けて行って来るのだぞ。」
「必ず、探し出してくるわ!」
静恵はそう言い残すと、青いドアを開いて入っていくのであった。
-------次回へ続く-------