《 第83回 脱原発市民ウォーク in 滋賀 の ご案内 》
新年最初の脱原発市民ウォークを1月25日(午後1時半)におこないます。
集合場所はJR膳所駅前の広場です。
寒いなかですがご都合のつく方はぜひ足をお運びください。
どなたでも自由に参加できます
■■ 福島原発事故の汚染水処理問題 (1) ■■
トリチウムは大気や海洋に放出せずに、新たな分離技術の開発による除去を目指すべき
福島第一原発では事故処理のために放射能に汚染された水が一日に100トンのペースで現在も増え続けており、現時点ですでにおよそ130万トンが敷地内の約1000基のタンクに溜められており、「日本経済研究センター」の試算によれば、最終的には200万トンにも達するのではないかと予測されています。
https://www.jcer.or.jp/jcer_download_log.php?post_id=43790&file_post_id=43792
現在、汚染水の処理は、「サリー」(東芝)と「キュリオン」(米国キュリオン社)という装置によりセシウムとストロンチウムを除去し、次いでALPS(多核種除去設備:東芝)にかけて他の放射性物質を除去するという方法が採られています。しかし、このような現行の方法や技術では水素(H)の放射性同位体であるトリチウム(三重水素:3H)から構成されている水すなわち「トリチウム水」はほとんど除去することができません。
(注参照)。
注:普通の水の分子は2個の水素原子と1個の酸素原子から構成されており、分子式H2Oで示されますが、この2個の水素のうちの一個がトリチウムと置き換わったものが「トリチウム水」でありHTOという式で示されます(Tはトリチウムの元素記号)。トリチウムは原子炉での核反応などにより生じます。
このため他の放射性物質は除去されていてもトリチウム水が残存している汚染水を最終的にどうように処分するかが大きな問題となっていますが、この問題について、2019年12月24日付けの朝日新聞が「汚染水放出:海洋か大気か 福島第一 専門家ら提言」と題した記事を掲載していました。
https://www.asahi.com/articles/ASMDR53F2MDRULBJ00R.html
この記事によれば、昨年12月23日、処分方法を専門家らが社会的観点から検討する場である経済産業省の小委員会に対して、経産省側から海洋放出と大気放出、両者の併用の三案を内容とする取りまとめ案が示され、この案について議論されたが大きな異論は出なかったとされています。その主な理由として、福島原発の敷地内での汚染水の長期保管や敷地外への移送は困難であるということなどが挙げられています。また、とりまとめ案ではタンクにためられている全量を1年間で処分しても住民の被曝は自然に受ける放射線量の
1000分の1以下におさまり、十分に低いと評価されています。
小委員会によるとりまとめ案は政府への提言となり、これを受け政府は地元など関係者の意見を聴き、最終的な方針を決定するとされていますが、おそらくこの取りまとめ案が政府の方針とされるのではないかと考えられます。しかし、この案に従えば、トリチウムを構成成分とするトリチウム水はほとんど除去されずに海洋中あるいは大気中に放出されることになります。このため前述の記事によれば、「福島県内では、取りまとめ案で困難とされている敷地内での長期保管を求める声が強く、海洋中に放出された場合の風評被害を懸念する漁業関係者は「処分方法を決めるのは時期尚早、陸上保管を続けるべき」だとしており、また長期保管してその間に解決策を考えるべきだとの声もある」とされています。
トリチウムは水素の3倍の質量を持つ、半減期が12年の水素の放射性同位体であり、微量ではあるものの自然界にも存在しています。地球環境においては酸素と結びついた「トリチウム水」の形でとして水に混在しており、また大気中ではトリチウム水蒸気の形などで存在しています。海水中のトリチウム濃度は通常、数ベクレル/リットル以下です。トリチウムは宇宙線と大気の反応で生じますが、この他に、過去に行われた核実験により環境中に大量に放出され未だに残存しているトリチウムや原子力発電所または核燃料再処理施設などの核関連施設から大気圏や海洋中にトリチウム水の形で放出されたトリチウムが、地球上に存在しているトリチウムの起源になっています(たとえば事故前の2010年における福島第一原発からの放出量は約2.2兆ベクレル、米スリーマイル島原発事故では約24兆ベクレルを2年以上かけて放出、六ヶ所村再処理工場からは2007年度に約1300兆ベクレルを放出。ちなみに現在福島原発のタンクに貯められている汚染水の放射能の総量は約860兆ベクレルとされています:以上は前述の記事による)。
トリチウムから構成されている水すなわちトリチウム水の分子と通常の水の分子の化学的性質は極めて似ているために、水中に存在しているトリチウム水を水から分離して回収することは極めて困難です。また、汚染水のなかのトリチウム水の濃度が極めて低い(5.7×10億分の1%)ことも分離が極めて難しいことの原因です。このためかつて稼動していたすべての原発からトリチウがすでに大量に環境中に放出されており、また現在稼働しているいずれの原発と再処理工場からもトリチウムが放出され続けています(日本では原発関連施設からのトリチウムの排出基準は6万ベクレル/リットル以下とされているため、基準値以下に薄めてから排出されています)。結局、トリチウムの除去が技術的に非常に困難であるため、これまで核発関連施設はトリチウムを事実上「垂れ流して」きたことになります。
このたび経産省の小委員会がトリチウムを海洋か大気中に放出するとする取りまとめ案を了承したことの背景には、すでに核関連施設から大量のトリチウムが環境中に放出されているものの、そのこと自体がこれまで大した問題を引き起こしていないと判断したこと、ならびにトリチウムも含めて現行の技術により汚染水中のすべての放射性物質を完全に除去するとなると膨大な費用を要すること(前述の「日本経済研究センター」の試算によれば汚染水200万トンを完全に処理するには40兆円)があるのではないかと考えられます。
しかし、放射性物質であるトリチウムを環境中に放出してほんとうに大丈夫なのでしょうか?国や関係者などは「トリチウムの放射線エネルギーは紙一枚で遮ることができるほど小さい」「体内に入ってもすぐに排出されるため健康への影響は少ない」としています。
https://www.sankei.com/life/news/181130/lif1811300031-n1.html
しかし、このような主張に対する反論もあります。たとえば分子生物学を専門とする元名古屋大学教授の河田昌治氏は「トリチウムには生物へのリスクがあることは生物学では常識。トリチウム水と通常の水の性質は同じ。水として取り込めば体外にすぐに排出されるが、場合によっては、血液などを通じて細胞の代謝反応にかかわり、トリチウムが通常の水素の代わりにDNAの構成成分として取り込まれて長期にわたり体内に存在することが考えられる。そのような場合はトリチウムが半減期を迎えて崩壊するときにDNAの鎖が切れてしまい、その結果、がんなどの遺伝的リスクが高まる可能性がある」としています。
https://information.pal-system.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/2019031_radiationreport.pdf
また、トリチウムが魚類などにより生物濃縮されることはないので安全とする主張も見受けられますが、生物濃縮されて魚の体内で濃度が高まるというリスクが存在すると指摘する専門家もいます
上記のようにトリチウムの生物や人体への影響については様々な専門家がそのリスクの存在を論じており、まだトリチウムがもたらすリスクについて確定的なことが言える段階にはないかもしれません。しかし、福島原発から環境中に放出されたトリチウムのリスクが将来顕在化してしまってからでは、完全に手遅れとなります。
ある新たな技術が環境に何らかのリスクをもたらすか否か、リスクの有無が未だ科学的に明確ではない段階では、たとえば電磁波の人体への影響や遺伝子組み換え作物の安全性、地球温暖化などの問題の場合は、いわゆる予防原則(注参照)にしたがい法的規制など何らかの対応策がとられています。このことを考えるならば、トリチウム問題の場合にも予防原則的な対処をすべきなのではないでしょうか?
(注:予防原則というのは、新たな化学物質や遺伝子組換えなどの新技術が、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合に、科学的に因果関係が十分証明されていない状況であっても、何らかの規制措置を可能にする制度や考え方のことを意味しています)
すなわち、予防原則的に考えるならば、トリチウムの環境中への放出は避けるべきであると言えます。そのためには、まず陸上での保管という現実に実現可能な手段をとり、かつタンクにためられた汚染水からトリチウムを分離するという選択肢を採るべきです。国はトリチウムの除去を選択肢とすることを考えていないようですが、トリチウムがもたらすかもしれないリスクを考えるならばトリチウムの除去を選択肢として考えるべきです。
現時点ではトリチウムの除去は困難であるものの、トリチウムの除去技術に関しては、現実に米国や日本で研究開発が行われつつあり、有望な技術が誕生する可能性が高まっています。
たとえば、日本では、近畿大学工学部と東洋アルミニウム㈱などのチームが、放射性物質を含んでいる汚染水の中から「トリチウム水」を分離・回収する装置を開発したことが、2018年6月に「大学プレスセンター」
https://www.u-presscenter.jp/index.html#tab2
から発表されています。これは直径5ナノメートル(ナノ=10億分の1)以下の極めて小さな穴が無数に開いているアルミ製フィルターをトリチウム水除去のために用いる技術であり、トリチウム水が含まれている水をこのフィルターに通すとトリチウム水だけが小さな穴のなかに残り、水だけがフィルターを通過するとされています。フィルターを加熱することにより穴に残ったトリチウムを回収することができ、フィルターは繰り返し使用可能とされています。
この技術はまだ実験・開発段階のものですが、もし実用化されたならば、トリチウム水を環境中に放出することは回避することが可能となるのではないかと考えられます。今後、この他にも内外からトリチウム除去ための有望な技術が現れる可能性は十分に存在しているものと考えられます。
現時点では汚染水からトリチウム水を除去する技術は存在していないとして、トリチウム水除去することを放棄して大気や海洋へ放出するというのは極めて安易な汚染水対策です。海洋に放出された場合は、人々の健康と海洋の環境へ何らかの影響が及びかねず、また国や東電がどのような方策を講じようとも福島の漁業関係者が懸念する風評被害を回避することは決してできません。これらのことを考えるならば、経産省の小委員会による大気あるいは海洋へトリチウム水を放出するという取りまとめ案はどう考えても受け入れ難いものであると言わざるを得ません。このため、トリチウム水を含んでいる汚染水の陸上での保管を当面継続し、一方において、陸上保管が行われている間に国が全面的にトリチウム水除去のための技術開発を支援し、一日も早く実用化を目指すという選択肢を国は考えるべきです。
2020年1月19日
《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進
〒520-0812 大津市木下町17-41
電話/FAX:077-522-5415
Eメール:ssmcatch@nifty.ne.jp
脱原発 市民ウォーク in 滋賀 次回1月の予定 → 見る
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新年最初の脱原発市民ウォークを1月25日(午後1時半)におこないます。
集合場所はJR膳所駅前の広場です。
寒いなかですがご都合のつく方はぜひ足をお運びください。
どなたでも自由に参加できます
■■ 福島原発事故の汚染水処理問題 (1) ■■
トリチウムは大気や海洋に放出せずに、新たな分離技術の開発による除去を目指すべき
福島第一原発では事故処理のために放射能に汚染された水が一日に100トンのペースで現在も増え続けており、現時点ですでにおよそ130万トンが敷地内の約1000基のタンクに溜められており、「日本経済研究センター」の試算によれば、最終的には200万トンにも達するのではないかと予測されています。
https://www.jcer.or.jp/jcer_download_log.php?post_id=43790&file_post_id=43792
現在、汚染水の処理は、「サリー」(東芝)と「キュリオン」(米国キュリオン社)という装置によりセシウムとストロンチウムを除去し、次いでALPS(多核種除去設備:東芝)にかけて他の放射性物質を除去するという方法が採られています。しかし、このような現行の方法や技術では水素(H)の放射性同位体であるトリチウム(三重水素:3H)から構成されている水すなわち「トリチウム水」はほとんど除去することができません。
(注参照)。
注:普通の水の分子は2個の水素原子と1個の酸素原子から構成されており、分子式H2Oで示されますが、この2個の水素のうちの一個がトリチウムと置き換わったものが「トリチウム水」でありHTOという式で示されます(Tはトリチウムの元素記号)。トリチウムは原子炉での核反応などにより生じます。
このため他の放射性物質は除去されていてもトリチウム水が残存している汚染水を最終的にどうように処分するかが大きな問題となっていますが、この問題について、2019年12月24日付けの朝日新聞が「汚染水放出:海洋か大気か 福島第一 専門家ら提言」と題した記事を掲載していました。
https://www.asahi.com/articles/ASMDR53F2MDRULBJ00R.html
この記事によれば、昨年12月23日、処分方法を専門家らが社会的観点から検討する場である経済産業省の小委員会に対して、経産省側から海洋放出と大気放出、両者の併用の三案を内容とする取りまとめ案が示され、この案について議論されたが大きな異論は出なかったとされています。その主な理由として、福島原発の敷地内での汚染水の長期保管や敷地外への移送は困難であるということなどが挙げられています。また、とりまとめ案ではタンクにためられている全量を1年間で処分しても住民の被曝は自然に受ける放射線量の
1000分の1以下におさまり、十分に低いと評価されています。
小委員会によるとりまとめ案は政府への提言となり、これを受け政府は地元など関係者の意見を聴き、最終的な方針を決定するとされていますが、おそらくこの取りまとめ案が政府の方針とされるのではないかと考えられます。しかし、この案に従えば、トリチウムを構成成分とするトリチウム水はほとんど除去されずに海洋中あるいは大気中に放出されることになります。このため前述の記事によれば、「福島県内では、取りまとめ案で困難とされている敷地内での長期保管を求める声が強く、海洋中に放出された場合の風評被害を懸念する漁業関係者は「処分方法を決めるのは時期尚早、陸上保管を続けるべき」だとしており、また長期保管してその間に解決策を考えるべきだとの声もある」とされています。
トリチウムは水素の3倍の質量を持つ、半減期が12年の水素の放射性同位体であり、微量ではあるものの自然界にも存在しています。地球環境においては酸素と結びついた「トリチウム水」の形でとして水に混在しており、また大気中ではトリチウム水蒸気の形などで存在しています。海水中のトリチウム濃度は通常、数ベクレル/リットル以下です。トリチウムは宇宙線と大気の反応で生じますが、この他に、過去に行われた核実験により環境中に大量に放出され未だに残存しているトリチウムや原子力発電所または核燃料再処理施設などの核関連施設から大気圏や海洋中にトリチウム水の形で放出されたトリチウムが、地球上に存在しているトリチウムの起源になっています(たとえば事故前の2010年における福島第一原発からの放出量は約2.2兆ベクレル、米スリーマイル島原発事故では約24兆ベクレルを2年以上かけて放出、六ヶ所村再処理工場からは2007年度に約1300兆ベクレルを放出。ちなみに現在福島原発のタンクに貯められている汚染水の放射能の総量は約860兆ベクレルとされています:以上は前述の記事による)。
トリチウムから構成されている水すなわちトリチウム水の分子と通常の水の分子の化学的性質は極めて似ているために、水中に存在しているトリチウム水を水から分離して回収することは極めて困難です。また、汚染水のなかのトリチウム水の濃度が極めて低い(5.7×10億分の1%)ことも分離が極めて難しいことの原因です。このためかつて稼動していたすべての原発からトリチウがすでに大量に環境中に放出されており、また現在稼働しているいずれの原発と再処理工場からもトリチウムが放出され続けています(日本では原発関連施設からのトリチウムの排出基準は6万ベクレル/リットル以下とされているため、基準値以下に薄めてから排出されています)。結局、トリチウムの除去が技術的に非常に困難であるため、これまで核発関連施設はトリチウムを事実上「垂れ流して」きたことになります。
このたび経産省の小委員会がトリチウムを海洋か大気中に放出するとする取りまとめ案を了承したことの背景には、すでに核関連施設から大量のトリチウムが環境中に放出されているものの、そのこと自体がこれまで大した問題を引き起こしていないと判断したこと、ならびにトリチウムも含めて現行の技術により汚染水中のすべての放射性物質を完全に除去するとなると膨大な費用を要すること(前述の「日本経済研究センター」の試算によれば汚染水200万トンを完全に処理するには40兆円)があるのではないかと考えられます。
しかし、放射性物質であるトリチウムを環境中に放出してほんとうに大丈夫なのでしょうか?国や関係者などは「トリチウムの放射線エネルギーは紙一枚で遮ることができるほど小さい」「体内に入ってもすぐに排出されるため健康への影響は少ない」としています。
https://www.sankei.com/life/news/181130/lif1811300031-n1.html
しかし、このような主張に対する反論もあります。たとえば分子生物学を専門とする元名古屋大学教授の河田昌治氏は「トリチウムには生物へのリスクがあることは生物学では常識。トリチウム水と通常の水の性質は同じ。水として取り込めば体外にすぐに排出されるが、場合によっては、血液などを通じて細胞の代謝反応にかかわり、トリチウムが通常の水素の代わりにDNAの構成成分として取り込まれて長期にわたり体内に存在することが考えられる。そのような場合はトリチウムが半減期を迎えて崩壊するときにDNAの鎖が切れてしまい、その結果、がんなどの遺伝的リスクが高まる可能性がある」としています。
https://information.pal-system.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/2019031_radiationreport.pdf
また、トリチウムが魚類などにより生物濃縮されることはないので安全とする主張も見受けられますが、生物濃縮されて魚の体内で濃度が高まるというリスクが存在すると指摘する専門家もいます
上記のようにトリチウムの生物や人体への影響については様々な専門家がそのリスクの存在を論じており、まだトリチウムがもたらすリスクについて確定的なことが言える段階にはないかもしれません。しかし、福島原発から環境中に放出されたトリチウムのリスクが将来顕在化してしまってからでは、完全に手遅れとなります。
ある新たな技術が環境に何らかのリスクをもたらすか否か、リスクの有無が未だ科学的に明確ではない段階では、たとえば電磁波の人体への影響や遺伝子組み換え作物の安全性、地球温暖化などの問題の場合は、いわゆる予防原則(注参照)にしたがい法的規制など何らかの対応策がとられています。このことを考えるならば、トリチウム問題の場合にも予防原則的な対処をすべきなのではないでしょうか?
(注:予防原則というのは、新たな化学物質や遺伝子組換えなどの新技術が、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合に、科学的に因果関係が十分証明されていない状況であっても、何らかの規制措置を可能にする制度や考え方のことを意味しています)
すなわち、予防原則的に考えるならば、トリチウムの環境中への放出は避けるべきであると言えます。そのためには、まず陸上での保管という現実に実現可能な手段をとり、かつタンクにためられた汚染水からトリチウムを分離するという選択肢を採るべきです。国はトリチウムの除去を選択肢とすることを考えていないようですが、トリチウムがもたらすかもしれないリスクを考えるならばトリチウムの除去を選択肢として考えるべきです。
現時点ではトリチウムの除去は困難であるものの、トリチウムの除去技術に関しては、現実に米国や日本で研究開発が行われつつあり、有望な技術が誕生する可能性が高まっています。
たとえば、日本では、近畿大学工学部と東洋アルミニウム㈱などのチームが、放射性物質を含んでいる汚染水の中から「トリチウム水」を分離・回収する装置を開発したことが、2018年6月に「大学プレスセンター」
https://www.u-presscenter.jp/index.html#tab2
から発表されています。これは直径5ナノメートル(ナノ=10億分の1)以下の極めて小さな穴が無数に開いているアルミ製フィルターをトリチウム水除去のために用いる技術であり、トリチウム水が含まれている水をこのフィルターに通すとトリチウム水だけが小さな穴のなかに残り、水だけがフィルターを通過するとされています。フィルターを加熱することにより穴に残ったトリチウムを回収することができ、フィルターは繰り返し使用可能とされています。
この技術はまだ実験・開発段階のものですが、もし実用化されたならば、トリチウム水を環境中に放出することは回避することが可能となるのではないかと考えられます。今後、この他にも内外からトリチウム除去ための有望な技術が現れる可能性は十分に存在しているものと考えられます。
現時点では汚染水からトリチウム水を除去する技術は存在していないとして、トリチウム水除去することを放棄して大気や海洋へ放出するというのは極めて安易な汚染水対策です。海洋に放出された場合は、人々の健康と海洋の環境へ何らかの影響が及びかねず、また国や東電がどのような方策を講じようとも福島の漁業関係者が懸念する風評被害を回避することは決してできません。これらのことを考えるならば、経産省の小委員会による大気あるいは海洋へトリチウム水を放出するという取りまとめ案はどう考えても受け入れ難いものであると言わざるを得ません。このため、トリチウム水を含んでいる汚染水の陸上での保管を当面継続し、一方において、陸上保管が行われている間に国が全面的にトリチウム水除去のための技術開発を支援し、一日も早く実用化を目指すという選択肢を国は考えるべきです。
2020年1月19日
《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進
〒520-0812 大津市木下町17-41
電話/FAX:077-522-5415
Eメール:ssmcatch@nifty.ne.jp
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