21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

<脱原発 市民ウォーク in 滋賀> の 活動報告、お知らせなど を掲載 ♪
ときどき、トピックも ~☆

山積する再処理工場の問題点

2020-03-05 11:03:57 | 記事
《次回の脱原発市民ウォーク in 滋賀についてのお知らせ》

来る3月7日(土)、
「原発のない社会2020びわこ集会」(大津市:膳所公園)がおこなわれます。
(ただし、コロナウイルス問題のためプログラムは大幅に変更され
12時~14時半に野外での集会だけがおこなわれます。デモは中止です)

このため三月の「脱原発市民ウォーク in 滋賀」は休みとし、
次回の第85回脱原発市民ウォークin 滋賀は4月4日(土)におこないます。
午後1時半、集合場所はJR膳所駅前の広場)。

まことに勝手なお願いですが、三月はご都合がつくようでしたら
上記の「びわこ集会」に参加なさってください。

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■■ 六ヶ所村・使用済み燃料再処理工場、規制委員会による審査最終段階へ ■■
■ 本格稼働に向けて:山積する再処理工場の問題点 ■

去る2月21日、NHKなどが、本格操業が大幅に遅れている青森県六ケ所村にある使用済み核燃料の再処理工場について、原子力規制委員会が新規制基準に適合しているかどうかを確認する審査の主要な審議を21日に終えたと報じていました(注参照)

再処理工場は全国各地の原発から出る使用済み燃料を集めて処理して、原子炉で運転中に生じたプルトニウムを取り出し、再び原発で使用できるようにするための施設、いわゆる国の「核燃料サイクル」計画の柱となる施設であり、原子力規制委員会は事業者である日本原電の申請を受けて6年前から審査をおこなってきました。
(注:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200221/k10012296181000.html

2月21日の会合では日本原電側が敷地近くの活断層の状況や地震の揺れなどの影響を説明したうえで、設備に問題はないとの評価を述べ、これに対して原子力規制委の委員からは大きな異論は出ず、日本原電の評価をおおむね妥当としたと報じられています。

規制委員会は放射性物質が漏れ出すような重大事故への対策などについての討議もすでに終えており、このため21日の審議で主要なテーマについての審議をすべて終えたことになるとされています。

今後、規制委は日本原電から安全系の設備の設計などをまとめた補正書と呼ばれる書類の提出を受け、これまでの議論の内容を踏まえて、合格かどうか最終的に判断する作業に入ります。日本原電は審査に合格したうえで、2021年前半に施設を完成させて本格操業に入りたいとしていますが、規制委の合格判断の時期も含めて、現時点では具体的なめどはまだ立っていません。

しかし21日の審議の結果は再処理工場の本格操業に向けての大きな一歩であることは確かです。

一方、六ヶ所再処理工場の建設費は、度重なる竣工の延期などにより、当初の予定を大きく上回っており、膨れ上がる一方です。六ヶ所再処理工場における試運転の終了は当初2009年2月に予定されていましたが、様々なトラブルが続発、このためこれまでに23回も延期されています。

このため、原子力規制委員会が施設稼働の前提となる安全審査を一端休止としたことがあります。これらの延期とあわせて、建設費用も、当初は7600億円とされていましたが、2011年2月には2兆1930億円とされ、2017年7月の時点ではさらに膨れ上がり2兆9500億円とされています。

一方、未だ本格稼働には至ってないものの、実際の使用済み燃料を用いた「アクティブ試験」と称される試運転が2006年から行われています。

◆山積する再処理工場の問題◆

 六ヶ所村の再処理工場では、1年間に約800トンの使用済み核燃料を処理し、約8トンのプルトニウムを分離するとされていますが、再処理工場には以下に示すように通常の原発以上に重大な問題点がいくつも存在しています。

★《問題点1》

再処理工場からは通常の原発から放出される放射能(放射性物質)とは比べものならないくらい大量の放射能が環境中(海洋と大気)に放出されます。

全国の原発から集められた使用済み燃料の再処理がおこなわれるため、再処理工程からは、たとえ事故は起きなくても「原発1年分の放射能を1日で出す」と言われるほど大量の放射能が環境中へ放出されます。大気中には希ガス(不活性ガス)のクリプトン、トリチウム、ヨウ素、炭素などの気体状の放射性物質が放出されます。

また六ヶ所再処理工場の場合は、沖合3キロに設けられている海洋放出管の放出口からは、トリチウム、ヨウ素、コバルト、ストロンチウム、セシウム、プルトニウムなど二十種類以上の放射性物質が再処理で生じる廃液に混ぜて海洋に放出されます。たとえば東海第二原発(沸騰水型、110万kw)と六ヶ所再処理工場とを比較した場合の環境中への各種放射性物質の放出量は以下のとおりです(注参照)

(注: https://cnic.jp/knowledgeidx/rokkasho :原子力資料情報室)。

放射能の種類          東海第二原発     六ヶ所村再処理工場

気体(クリプトンなどの希ガス) 1400         330000
気体(トリチウム)        -          2000
液体(トリチウム以外)     0.037          0.7
液体(トリチウム)        -          18000
プルトニウムなどアルファ線    -          0.0096
を出す放射性物質  
単位:兆ベクレル)

たとえば、前回の市民ウォークの案内でも記しましたが、2019年12月24日の朝日新聞によれば、事故前の2010年に福島第一原発から放出されたトリチウムは2.2兆ベクレル、、またこれまで福島原発内に保管されている汚染水約130万トンには860兆ベクレルのトリチウムが含まれているのに対して、六ヶ所再処理工場からは2017年の試運転中に(実際の使用済み燃料を用いた試運転)1300兆ベクレルものトリチウムが放出されていたとされていることからも、いかに大量の放射能が再処理工場から放出されるかが分ります。

六ヶ所再処理工場が本格稼働したならばこの数値をさらに上回る大量の放射能が放出されることになります。これらのことを考えると、「再処理工場」という施設は、常に危険な放射能を大量に環境中に垂れ流すという意味で、通常の原発以上の、最悪の核施設に他ならないと言わざるを得ません。

国や日本原電は「大量の海水で希釈されるから安全」と説明していますが、再処理工場がすでに30年以上運転されているヨーロッパからは、フランスのラアーグ再処理工場やイギリスのセラフィールド再処理工場からの放出された膨大な量の放射能物質により環境汚染や人体への影響が生じているとする報告がおこなわれています。

たとえば、ラアーグ再処理工場の周辺では、小児白血病の発生率がフランスにおける平均値の約3倍にのぼるというレポートが発表され、このため再処理工場の運転や放射能放出を規制する動きが出ているとされています。

一方、英国のセラフィールド再処理工場に関しては、再処理工場から放出された放射能による海洋汚染を巡って対岸のアイスランドの政府がイギリス政府を訴えるという事態に発展しています

また、青森県では、六ヶ所村再処理工場周辺での環境汚染と人体への影響が懸念され、このため1999年から「青森県小児ガンの調査」が実施されています。
(上記のラアーグとセラフィールド、青森についての記述は原子力資料情報室によるものです)

★《問題点2》

再処理工場で大事故が起きたならばチェルノブイリ原発や福島第一原発における事故をはるかに上回る破局的な事態が生じかねません。小さなトラブルの他に、実際に、ノルマンディ半島にあるラアーグ再処理工場において大事故寸前という事態に至ったことがあります。

1980年4月15日、大量の使用済み燃料が存在していたラアーグ再処理工場で電源喪失、工場はどこもかしこも暗闇に包まれなかで、あわや大核爆発という危険極まりない事態が発生しました。

事故の発端は変圧器のショートによる火災の発生であるとされており、この火災で制御盤が延焼、それが原因で全電源が喪失、非常用電源も作動せず、使用済み燃料が収められているプールの温度が短時間のうちに上昇、再処理による高レベル廃棄物の廃液が沸騰寸前となり、そのままいくと使用済み燃料や高レベル廃棄物がメルトダウン、核爆発となりかねませんでした。

急遽、電源を確保するため100キロ近く離れていると思われるノルマンディ半島の先端にあるフランスの原潜の母港でもあるシュルブール港の海軍基地にあった大型の電源車が再処理工場に向かい、その結果危機一髪で電源が回復、大核爆発はかろうじて回避されました。

しかし、事故が起きたのが冬季であったならば山間部を走る道路は雪が積もり凍結しているため、電源車の到着は間に合わなかったかもしれないとされています(注参照)。

(注:ウィキペディア「ラアーグ再処理工場」の項などによる)

再処理工場にあった使用済み燃料の量からすると、核爆発が起きていたならば、チェルノブイリや福島第一原発の事故とはくらべものにならないくらい広大な範囲に影響が及んでいたものと考えられ、ヨーロッパ一円はもとより半径1万キロにまで放射能がふりまかれていたであろうと推測する関係者もいました。まさに世界の終末とも言うべき破局そのものとなっていたかもしれません。

このラアーグの事故を考えるならば、また福島第一原発の大事故のことを考えるならば、六ヶ所村の再処理工場を本格稼働させることは絶対に止めるべきであると言わざるを得ません。

★《問題点3》

再処理工場は金食い虫の典型です。建設費以外の関連費用を加えると六ヶ所再処理工場のコストは11兆円にも達します。

先に延べましたが、建設費は、当初(1993年)7600億円とされていましたが、これまでに何度も見直されており、現時点では3兆円近くに達しています。その一方で、建設開始から十年後の2003年、電気事業連合会は突然、「再処理工場の総費用は11兆円」と公表しました。その内訳は、建設費約3兆3700億円、運転・保守点検費約6兆800億円、工場の解体・廃棄物処理費約2兆2000億円となっています。その後もコストが年々上昇しているため、2018年の時点では、13兆9300億円と見積もられています(注1)。

これは無事故で40年フル稼働を前提として推算値であり、実際にはこれ以上の額になるものと考えられます。

また、電気事業連合会は、2014年1月に、国内の原子力発電所で排出される使用済み核燃料の輸送・中間貯蔵・再処理、燃料への加工、ウラン濃縮工場のバックエンド費用、廃止に関わる費用など、核燃料サイクルにかかる総費用が、2006年の再処理工場の操業開始から廃止までの72年間で約18兆8000億円になるとの試算を発表しています(注2)。

日本はすでに47トンものプルトニウムを保有しているものの、国内の原発でMOX(ウランとプルトニウムの混合燃料)を用いたプルサーマル発電でこれまでに消費されたプルトニウムの量はわずかであり、今後プルサーマル発電において果たしてどの程度の量のプルトニウムが国内の原発で消費されるかはまったく不明です。このため、再処理をおこなうことにより得られたプルトニウムは場合によっては使い道がまったく無くなる可能性が少なからず存在しています。

つまり、上記の11兆円は使い道がないプルトニウムのために費やされることになりかねないのです。そして、将来、国民の一人一人がこの無意味な費用を負担することになるのです。

(注1:https://cnic.jp/knowledgeidx/rokkasho :原子力資料情報室)。
(注2:https://www.japanfs.org/sp/ja/news/archives/news_id023238.html )

★《問題点4》

MOX燃料はウラン燃料にくらべて経済的に高くつくため、MOXを使用することによる経済的メリットはありません。

MOX燃料(燃料集合体)の価格はウラン燃料の価格の数倍します。たとえば再稼動した高浜3・4号機でのプルサーマル発電に使用されるMOX燃料は1本9億円であるのですが(財務省の統計などから推測)、ウラン燃料の場合は1本一億数千万円のオーダーであるとされています(注参照)。

一方、ウラン鉱石は当初の推定を大幅に超えて世界各地に豊富に存在しており、このためウラン鉱石の価格は鉱山業者が意欲を失うほど下落しています。核燃料サイクルによる再利用することで生じる経済的メリットを追求してきたはずなのですが、上記のように、実際にはMOX燃料はウラン燃料にくらべ経済性に大きく劣っているのです。これでは再処理によりプルトニウムが得られても何の意味もありません。
(注:https://www.asahi.com/articles/ASJ2V44DQJ2VPLBJ001.html


★《問題点5》余剰プルトニウムをどうするのか?

プルトニウムは核兵器に用いることができるため、余剰のプルトニウムを保有することに
関しては、核不拡散条約(NPT)を締結している日本政府は、原発から出る使用済み燃料を再処理し、回収されたプルトニウムを活用する核燃料サイクル政策をとっている一方で、「余剰を持たない」ことを原則としているとされています。

しかし、実際に再処理で得られたプルトニウムのうち、これまでにMOX燃料の形で活用できたのはごく一部に過ぎず、このため現在日本は国内外に約47トンものプルトニウムを保有するに至っています。

このような状況にあるため、2018年7月に満期を迎えた日米原子力協定の延長に際して、核不拡散に神経を尖らしている米国から、日本が保有しているプルトニウムの削減策を示すよう求められました。しかし、これまでのところ政府は具体的削減策を示すことができずにいます(米国は2015年、米韓原子力協定の改定に際して、日本と同様に再処理を韓国にも認めるようにとの韓国側の要求を、核不拡散の立場から拒否しています)。

このような状況の中で六ヶ所再処理工場を本格稼働させれば、余剰プルトニウムがますます増えることになるのは明らかです。この意味からも六ヶ所再処理工場の稼動はまったく不要であると言えます。

★《問題点6》余剰プルトニウムの保有と核武装。

余剰プルトニウムの存在は核武装という深刻な問題を呼び起こします。余剰プルトニウムを大量に保有していることは、状況によっては核武装への道につながりかねないからです。

日本の核武装に関しては、たとえば1969年に外務省で作成された「わが国の外交政策大綱」という文書には「核兵器については、NPTに参加するか否かにかかわらず、当面核兵器を保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルを常に保持するとともにこれに対する掣肘をうけないよう配慮する」との記述が存在しています(注参照)。

この文書の上記の文言(「核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルを常に保持する」)は、核兵器保有が必要な状況になった場合に備えて、核兵器製造に必要とされる核関連技術を日本が保持しておくことを意味しています。

したがって、考えようによっては、六ヶ所再処理工場は「核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャル」の一つではないかと言うことができるかもしれません。この文書がどの程度政治的な影響力を持つものであるかは不明ですが、このような文書が存在していることは、必要ならば核兵器を保有したいという考えが、日本の政界や関係者などのなかに潜在的に存在していることを示唆しているのではないかとも考えられます。

このような核武装への潜在的欲求を抑えるためにも、もうこれ以上日本が余剰プルトニウムを保有しないよう、六ヶ所再処理工場の本格操業を回避することが必要ではないでしょうか。

(注 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku_hokoku/pdfs/kaku_hokoku00.pdf


以上、六ヶ所再処理工場の様々な問題点について述べましたが、これだけ大きな問題点が存在しているにもかかわらず、なぜ政府は六ヶ所再処理工場を必要としているのでしょうか。それは一言でいえば、再処理工場の使用を止めた場合には、原発から出る放射性廃棄物の最終処分の方法を根本から見直す必要に迫れられるからであると考えられます。

これまで国の原子力政策は使用済み燃料を再処理し、再処理後の放射性廃棄物を最終処分に供することを前提としてきました。しかし、再処理工場を本格稼働させない事実上核燃サイクルを完全に放棄することを事実上意味しているため、政府のこのような前提は成り立たなくなります。

そうなれば、いわゆる「ワンスルー」方式へ、すなわち、一度使用した核燃料をそのまま最終処分する方式(多くの国ではこの方式を採用しています)へ、原発政策を大転換しなければなりません。政府は先の見通しを何も持たないまま、ズルズルと政策の転換を引き伸ばし、なしくずしに再処理工場の稼動を目指しているに過ぎません。

しかし、一度稼働させてしまえば引き返すことは極めて困難になります。この意味から、今後再処理工場問題がどのような展開をたどるのか、私たちは六ヶ所再処理工場問題の今後を注視していかなければなりません。

2020年3月3日 

《脱原発市民ウォーク・イン・滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進

連絡先 520-0812 大津市木下町 17-41
電話/FAX:077-522-5415
Eメール:ssmcatch@nifty.ne.jp

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