21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

<脱原発 市民ウォーク in 滋賀> の 活動報告、お知らせなど を掲載 ♪
ときどき、トピックも ~☆

脱原発 市民ウォーク in 滋賀 7月の予定

2023-06-26 13:43:49 | 記事
老朽原発動かすな!
岸田政権の原発暴走反対、老朽美浜3号、高浜1・2号廃炉!
 
◆ 第114回 脱原発 市民ウォーク in 滋賀 ◆

以下、水上勉の著書から

「新しい戦争がはじまっているような気がしなくもない。」
「ぼくは云っておきますが、ぼくの故郷若狭のわずかな距離しかない海岸線に、
15基もの原発が密集するのを、多すぎると主張し、それほど安全なものなら
ほかへも廻した方がいいだろうといいつづけ、・・」
「広島を一瞬にして地獄に陥しこんだ原爆の何倍もの力のウラン燃料棒をつかって、
電力をつくるのだ。その発電所から出る廃棄物を受けとってくれるところがないため、
岬の1号炉、2号炉では、高校の雨天体操場のような倉庫をつくって、廃棄物を貯えている。村民はそれを知っている。古老ももちろん知っている。」
「このことはさいきん出版された中嶌哲演氏の『原発銀座・若狭から』に
詳細に出ています」
(水上勉著『若狭がたり・わが「原発」選抄』アーツアンドクラフツ刊、17年)


1450万人の近畿の水源=びわ湖と私たちの未来=子どもたち孫たちを守りましょう!
<とき・ところ> ご一緒に歩きましょう! 参加無料! 予約不要! 


<とき・ところ> 
2023年 7月15日(土)13:30  JR・京阪膳所駅前集合  

★コース = ときめき坂 ~ 元西武大津ショッピングセンター前 ~ 関電滋賀支社前~
       ~ びわ湖畔

☆主 催=21世紀 脱原発市民ウォーク in 滋賀 実行委員会

☆呼びかけ人・・・池田進(原発を知る滋賀連絡会 電話077-522-5415)
         岡田 啓子(ふぇみん@滋賀 電話077-524-5743)
         稲村 守(9条ネット・滋賀 電話080-5713-8629)

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<トピックス> 


6.7高浜現地行動・町役場前



町に申し入れ・・「人数絞って」課長が外で聞く!!
外でやるなら人数絞る必要ない。



福島県・相馬から滋賀県大津市湖西に避難の青田恵子さん



6.16、舞鶴市役所前抗議


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「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」 チラシのダウンロードは ⇒ コチラ

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「GX脱炭素電源法」が今国会で成立 / 原子力の憲法「原子力基本法」を「原発推進基本法」へ改ざん / 懸念される原子力規制委員会の独立性

2023-06-18 21:57:26 | 記事
《2023年6月:第113回 脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内》

雨の季節ですが、次回の脱原発市民を6月24日(土)にウォークをおこないます(13時半JR膳所駅前の広場に集合)。
誰でも自由に自分のスタイルで参加できます。
みなさんご多忙のことと思いますが、ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。


「GX(グリーン・トランスフォーメーション)脱炭素電源法」が今国会で成立
原子力の憲法「原子力基本法」を「原発推進基本法」へ改ざん/懸念される原子力規制委員会の独立性


去る5月31日、国会での審議を経て、原発に関連した一連の法律を改正することを内容とした「GX脱炭素電源法」が自民・公明・日本維新の会・国民民主党の賛成多数により成立しました。このたびの原発に関連した一連の法規の改正は、昨夏岸田首相が、ウクライナ情勢に伴いエネルギー価格が大きく変動していることなどにより安定した電力供給が懸念されるなどとして、福島第一原発の事故後のいずれの時期の「エネルギー基本計画」においても「原発への依存を最小限にとどめる」とされていた原発政策を実質的に放棄し、原発政策を大幅に変更して原発を最大限に活用すること(原発の新増設や建て替え、原発の運転期間の実質的延長、再稼働の加速など)を検討するよう、政府内の審議会に求めたことに端を発したものです。昨年8月に開かれた脱炭素社会を目指すとする第2回「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議」において岸田首相から提案が行われ、経産省の審議機関である様々な関係者や専門家による「原子力小委員会」において検討が行われた後、昨年12月に開かれた第3回GX実行会議で上記のような政策変更が取りまとめられました。次いで、この結果を受けて今年2月15日に開かれた閣議で政策変更に関連したいくつもの法律を一括して改正することを内容とする「GX脱炭素電源法案」(いわゆる「束ね法案」)として国会に提出することが決定され、今国会で審議されていました。国会では野党から様々な問題点・疑問点などが指摘されるなどしたものの、修正されることなく法案は成立しました。改正された法律は公布されてから2年後に本格施行されることになっています。

GX脱炭素電源法はその名称から分かるように表向きは脱炭素を促進することを意図したものと解されるですが、その実質的内容は以下に説明するように積極的な原発推進を意図するものです。脱炭素電源法の中心的な内容は、原発の運転期間を実質的に延長することを内容とした現行の原子炉等規制法と電気事業法の改正、ならびに長期にわたり原発を推進することを国の「責務」と位置付けることを内容とした「原子力基本法」の改正です。

【今国会で改正された原発関連法規における主な変更内容の概要】

改正の対象とされたのは原子力基本法、電気事業法、原子炉等規制法、使用済み燃料再処理法、再生可能エネルギー特別措置法の五つであり、変更内容の概要は以下の通りです。
原子力基本法の改正:電力の安定供給や世界的な脱炭素化の動きに貢献するために原発の活用を「国の責務」と位置付けることを原子力基本法第2条に明記する。
電気事業法の改正:これまで原子力規制委員会が所管していた原子炉等規制法に基づき決定されてきた原発の運転期間を経産省が所管している電気事業法に基づき決定できるように改正する。すなわち、原子力規制員会での審議に要した期間や裁判所の命令により運転が停止されていた期間などを現行の運転期間(40年、40年経過した後一度だけに限定して20年の延長が規制委員会により認められた原子炉に関しては60年)から除外することにより、最長60年とされている運転期間を60年を超えて延長することができるようにする。運転期間延長の認可は、安全性ではなく、利用政策の観点から経産相が判断する。この判断にあたっては、電力の安定供給につながるか、脱炭素に貢献するか、電力会社が自主的に安全性の向上や防災対策について努力しているかを審査する。
原子炉等規制法(原子力規制委員会所管の法律)の改正:一方、原子炉等規制法に、新たな安全規制に関する規定を設ける。すなわち、運転開始から30年を起点として、10年以内ごとに原発の老朽化や劣化の程度など安全性に関する認可を規制委員会から受けるよう事業者に義務づけるとする新制度を設ける。規制委員会は過去の運転期間に応じて、電力業者による申請に基づいて審査を行い、事業者に老朽化の程度に関する評価や管理体制の見直しを促す。
使用済み燃料再処理法の改正:核燃料サイクル事業を担う認可法人「使用済み燃料再処理機構」に廃炉に関する業務を追加する。また、廃炉に備えて必要な費用を拠出することを電力会社に義務付ける。
再生可能エネルギー特別措置法の改正:太陽光などによる発電に関して法令違反が見つかった場合は、固定価格買い取り制度(FIT)の交付金の支払いを停める制度を導入する。

【一連の原発関連法規の改正における問題点】

このたびの五つの原発関連法規の改正は、昨年12月に政府の審議会「GX実行会議」で取りまとめられ原発の新増設・建て替えや運転期間の実質的延長などを主な内容とする原子力政策の大幅な転換という方針を踏まえたものです。しかし、改正内容には以下に記すように様々な無視することができない重要な問題点が存在しています。

問題点1:原子炉等規制法と電気事業法の改正による原発の運転期間の実質的延長は「原発の利用にあたっては安全性を最優先する」という大原則を損なうものです

運転期間が関係したこのたびの法改正は、上記のように、これまでは原子力規制員会が所轄する原子炉等規制法に基づき規定されていた運転期間を今後は経産省が所轄する電気事業法に基づき規定できるようにすることを内容とするものです。

原発の運転期間に関する原子炉等規制法に基づく現行の規定(原則40年、条件が整っていれば一度だけさらに20年延長できる)は、福島原発事故後に民主党政権下で新設された、原発推進の体制と原発を規制する体制を明確に切り離すことを意図した「原子力規制委員会」により決められたものであり、当時野党であった自民党も公明党もこの規定に同意していました。運転期間が長くなればなるほど老朽化が進み、老朽化の程度が進むにつて事故が発生する確率が高くなることを考えるならば、運転期間に関する問題は、本来は規制委員会が所轄する原発の安全確保を目的とする「原子炉等規制法」の対象とされる科学技術的側面が極めて強い問題であると考えられます。しかしながら、このたびの改正では、運転期間の決定は、原子炉等規制法ではなく、経産省が所轄する、発電事業を円滑に進めることを目的としている「電気事業法」の対象がとされています。つまり運転期間のさらなる延長は、安全性という観点からではなく、主に電力の安定供給や供給量の適否などの観点から決定されることになります。つまり、本来は原発の安全性と深く関わっている運転期間が、今後は安全性の観点からではなく、安定供給という社会的経済的観点に基づいて決定されることになるのです。このことこそがこのたびの原子炉等規制法と電気事業法の改正における最大の問題点と言えます。より具体的には、改正された電気事業法に基づき、運転が休止されている期間をこれまでに規定されている運転期間から除外することにより運転が休止されていた期間に相当する期間だけ運転期間を延長するという考え方は、運転が休止されている期間中であっても、老朽化進行の程度がいかなるものであれ、原発の安全性に影響を及ぶす老朽化そのものは止むことなく確実に進行するという科学的な常識を無視したものであり、この意味で科学的な合理性をまったく欠いています。この点が、このたびの改正により電気事業法に基づき運転期間を延長することができるとしたことの根本的な欠陥であると言えます。

一方、運転期間延長の決定を電気事業法に委ねるかわりに、原子力規制委員会が運転開始から30年以降10年以内ごとに原発の老朽化に関係する様々な要因についての審査を行う制度が新たに原子炉等規制法に盛り込まれています。安全確保のためにこのようなこれまでになかった制度を新たに設けること自体は進歩であろうと考えられます。しかし、この規制委員会による審査の結果が運転期間の延長問題にどのような影響を及ぼすのかは定かではありません。常識的に考えれば、この審査に通らなければ経産省は運転期間の延長を認可できないことになるはずであるものと考えられますが、運転期間が60年に達する原発が出現するのは10年以上先のことでもあり、実際にどうなるかは定かではなく予断を許しません。

運転期間延長の問題に対する規制委員員会のあいまいな姿勢と規制委員会内の反対意見について
運転休止期間を運転期間から除外することにより運転期間を実質的に延長するという方針は昨年8月末に開催された第2回GX実行会議において政府から提案されたのですが、その後のこの提案に対する原子力規制委員会の姿勢は、私たち市民の目からすると、かなりあいまいなものでした。たとえば、原子力規制委員会発足当時は委員でなかったものの上記のGX実行会議の後の昨年9月27日に委員長に就任したばかりの山中伸介氏は、この問題に関して、「運転期間の上限を一義的に決めることは科学的・技術的に困難」としたうで、「原子炉法等規制法を所管する規制委員会は、運転期間の原則を何年にするかは『政策判断』として関与しない立場にある」と、消極的とも解することができる立場を表明し、同日の記者会見でも「(運転期間について)規制委が意見を述べることはない」として(以上は2022年10月6日付け東京新聞など)、早くも運転期間の実質的な延長に事実上賛成しているとも解釈することができる考えを述べていました。

しかし、原子力規制委員会が今年の2月15日に開催した委員会において、5人の規制委員の一人である石渡明氏(地質学者、元日本地質学会会長)は「運転期間の実質的な延長は安全側への改変とは言えない」として、政府の提案を受け入れることに反対しました(この発言は「運転期間の上限を科学的に明確に決めることは困難であるとしても、運転期間を延長することは、延長した分だけ老朽化が進み、事故の確率が高まる方向に向かうということ、いわばより危険な方向へ向かうことを意味しており、より安全な方向に向かうものとは言えない」ということを意味していると考えられます)。石渡氏はさらに「これまで原則40年、最長60年で、これ以上運転できないことになっていたのに、改正案の法文だけ読めば無限に延ばせる。それが規制緩和でないというのは常識的に納得できない」と指摘しましたが、山中委員長は「運転期間というのは安全規制ではない」と述べ、考え方の根本が食い違っているとして、多数決で改正受け入れに踏み切ったとされています(以上は朝日新聞2,023年2月16日による)。規制員会における重要な議題に関する多数決による決定は異例のことであったとされています。
現行の運転期間は福島原発事故後に通常の行政機関よりも独立性の高い機関として(国家行政組織法(第3条2項二基づく、いわゆる「三条委員会」と称される行政委員会)新設された原子力規制員会により決定された安全確保のための新たな規制対策であることは明らかですから、「運転期間は安全規制ではない」とする現委員長の言葉は事実を無視したものです。
以上のような経過を考えるならば、理由はともかく規制委員会は当初から原子炉等規制法と電気事業法を改正して運転期間の延長を図るという政府の案に異議を唱えないことにしていたのではないかと推測されます。しかしながら、程度はともあれ、運転期間が長くなればなるほど老朽化が進み(中性子浴び続けることにより原子炉を収容している圧力容器におけるひび割れなどの発生、電源用のケーブルなどの劣化、コンクリートの構造物の強度低下など)、当然老朽化が進んだ分だけ事故が起きる確率が大きくなることを考えるならば、上記の「運転期間というのは安全規制ではない」とする山中委員長の見解は科学技術的観点が欠落した強弁とも言うべきものであると言わざるを得ません。

世界で60年を超えて運転された原発は存在していません
4月に行われた衆議院経済産業委員会で配布された資料によれば、全国33基の原発における運転期間から除外される期間(=さらに運転延長が許される期間)は4年8カ月~12年とされており、このうち除外期間が10年以上の原発は20基あるとされています(以上は2023年6月1日付け朝日新聞による)。仮に12年の除外期間が認められた場合、運転開始から72年後(60年+12年)まで稼働させることができることになります。しかし、米国において80年までの運転が許可された例はあるものの、世界で60年以上運転された例はこれまでに存在していません。

問題点2 原発の運転期間を実質的に延長する問題に絡み、原子力利用に関する憲法とも言うべき「原子力基本法」の重要な部分までもが改正され、原発の推進が「国の責務」と規定されたことにより、原子力基本法の精神は歪曲され、そのため原子力基本法は「原発推進法」とも言うべき存在に転じてしまい、このため安全確保のための基盤が大きく揺らいでしまいました。

このたびの原発関連法規の改正に際して、上記のような運転期間の問題に直接関連した原子炉等規制法と電気事業法の改正だけではなく、原子力平和利用に関する基礎を成す法律である「原子力基本法」までもが改正されました。すなわち、原子力利用の基本的な哲学や方向性が示されている原子力利用に関する憲法ともいうべき原子力基本法に、新たに「原発推進は国の責務」とする規定が明記されたことにより、原子力基本法が有している基本的概念・精神が改ざんされ、そのため原子力基本法は実質的に原発推進を保障するための基本法に転じてしまいました。

原子力基本法というのは、英米などで発電用原子炉が開発段階にあった1955年(昭和30年、終戦から10年後)に、原発を日本へ導入することを主張していた故中曽根康弘らによる議員立法により作られた、原子力を平和的に利用することを法的に保障するための原子力に関する憲法とも言うべき基本法であり、原発だけではなく医療など様々な原子力の利用に関連した施策の根拠法であり、一般の法律の上位に位置する基本法です。この法律における最も大切な特徴は、原子力開発利用の基本方針(第2条)として「自主、民主、公開」の原則が掲げられていることであり、日本学術会議がこれらの原則を法律に盛り込むことに貢献したとされています。

原子力基本法改正の主な内容

現行の原子力基本法の最も重要な部分である第1条と第2条の条文は以下の通りです。
第1章 総則 (目的)
第1条 この法律は、原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し(注参照)、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。
基本方針
第2条 原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うもとする

上記の第1条に「将来におけるエネルギー資源の確保」と記されていることに関して、東京経済大の磯野弥生教授は(法学)は、「確かに原子力基本法は、原子力の平和利用、特に原発の普及が目的ではありました。ただ(原子力基本法が制定された)当時はまだ戦後10年。原爆によって多くの犠牲者が出た記憶から、世論は原子力に拒否感がありました。その中でどうしたら原子力の研究や利用ができるかを考えたときに出てきたのが、利用には一定の歯止めが必要という考え方です。原子力基本法は利用の条件を定めた法律であり、いわばおずおずとした推進です」と述べています(朝日2023年5月30日デジタル版より)

このたびの改正により、上記の第2条の規定のあとに、「国の責務」という項目が新たに設けられ、原発を選択肢として活用することによって電力の安定供給や脱炭素社会の実現に向けた非化石エネルギーの利用促進になどの貢献できるよう「国は必与な措置を講ずる責務を有する」と明記されています。さらに、そのための「基本的施策」として、原発を扱う技術の維持のための人材育成や産業基盤の維持など、電力会社などの事業者が安定的に原子力事業を行えるよう事業環境を整備することなどが列挙され、原発を維持するための環境整備も国の責任で取り組む姿勢を初めて法律で打ち出しています(以上の改正内容の概要は2023年2月28日のNHKニュース・デジタル版などによる)。

以上が改正内容の主な部分であり、その他に、東電福島第一原発の事故を「真摯に反省したうえで原子力事故の発生をつねに想定」して防止に最大の努力を払うとした評価に値する部分もあるのですが、このたびの原子力基本法の改正は全体的には政府が将来にわたり原発推進一辺倒で進むことを意味していると言うことができます。このため、原子力基本法はこのたびの「改正」により実質的に「原発推進基本法」に転じてしまったと言わざるを得ません。

これまでにも原子力基本法の内容の改正はたびたびおこなわれていますが、その内容は安全性を重視するものでした。たとえば原子力船「むつ」の放射線漏れ事故を機に「安全の確保を旨として」の文言が追加され、そのことにより原子力安全員会が創設されるに至りました(1978年)。また福島第一原発の事故後には、安全確保の目的が「国民の生命、健康、財産の保護、環境の保全ならびに我が国の安全保障に資すること」と明文化され、そのための新たな規制機関として原子力規制委員会の設置が盛り込まれました(このため原子力安全委員会は2012年9月に原子力規制員会に移行しています)。ところが、このたびの改正は安全性をより重視することを意図したものではなく、「脱炭素に欠かせないもの」と位置付けることにより原発を積極的に推進していくことを強く意図したものであることは明らかです。これは原子力基本法の目的から逸脱した大きな方向転換であり、「改正」ではなく「改悪」であると明らかです。

元原子力委員会委員長代理の鈴木達郎・長崎大教授は「今回の原子力基本の改正は、常識の範囲を超えている。基本法の改正を同時に行うことにより、運転期間に関する規定を原子炉等規制法から電気事業法に移すことの根拠ができたと考えているのだろうが、運転期間の延長などに法的な説得力と持たせるために『基本法』という上位の法律を変えるというのなら、まさしく本末転倒だ。結局は推進側を後押しするための強引な基本法改正ではないか」としています(以上は2023年2月28日付け朝日などによる)。結局は、この度の基本法の「改正」により大手電力会社をはじめとした原発推進を望む関係者は、自由化が進む電力市場において原発を推進するための「錦の御旗」を手に入れたことになります。

問題点3:福島第一原発事故後の原子力政策の根幹である、原発利用における「推進と規制」の明確な分離という方針に従い新設された機関「原子力規制委員会」の独立性が侵され、再び原子力を規制する側が規制される側に取り込まれてしまうという福島原発事故以前の状態に陥りつつあるのではないかと懸念されます。

このたびの原発関連の一連の法改正に際して、以下に示すような福島原発事故後に新設された原子力規制委員会の独立性が疑われるような事態が起きています。

・原子力規制委員会は委員会内での十分な検討・審議を経ることなく運転期間の実質的延長するという国の提案を受け入れていました

このほど上述のように一連の原発関連法の改正が国会で成立しましたが、国会への法案提出が閣議で決定されるのに先立ち、2月半ばに開かれた原子力規制委員会で、原発の運転期間を現行の60年を超えて延長することを可能にするという政府が提案した新制度を受け入れる決定が行われましたが、原子力規制委員会における新制度の可否に関する審議は政府による性急な原発政策の大幅な転換に急かされたものであり、果たして委員会内で十分な議論が交わされたのか疑問に思われます。政府側の勢いに押されて新制度を受け入れたのであれば、原子力規制委員会の独立性が疑われると言わざるを得ません。

規制員会での決定にあたっては、先に記したように、5人の委員のうちの一人が反対したものの多数決によって押し切るという異例のものでした(前述のように、反対した石渡明委員は「運転期間の延長は安全側への改変と言えない」としていましが、新制度では事業者側の不備で審査に時間を要した場合でも、その分だけ運転期間が延びることになる点についても異論を訴えていました)。また、賛成した複数の委員も「外から定められた締め切りを守らねばならないと感じで急かされて議論した」「運転期間が現行の最長期間60年を超える場合の審査手法など、重要な指摘が後回しになったのは違和感がある」と苦言を呈していたとされており、記者会見で規制員会における議論の進め方を問われた山中伸介委員長は「法案提出というデッドラインは、決められた締め切りであり、やむを得ない」と説明していたとされています(以上、原子力規制員のメンバーの発言内容は2023年2月16日付け朝日新聞による)。

・原子力規制員会の事務方を務める原子力規制庁が、原子力規制委員会に無断で、原発推進を方針とする経産省の資源エネルギー庁と法改正の具体的内容について、事前に早い段階から話しあっていました。

昨年8月末の「第2回GX脱炭素実行会議」において政府が原発の運転期間を更に延長する方針を示していたことを受けて、原子力規制委員会は昨年10月5日に、安全性を確認する制度の検討を原子力規制庁に指示していました。ところが、規制庁はこの指示が受ける以前に原発推進側の経産省と繰り返し面談し、一連の法改正の内容を先取りする形で、新たな制度に関する検討体制などを整えていたことが昨年12月になって明らかになりました。すなわち、規制庁は昨年12月27日、昨年7月以降(=政府が原発政策の大幅な変更を検討することを上記の第二回GX脱炭素実行会議で提案する以前に)、少なくとも7回にわたり原子力推進側の経産省資源エネルギー庁と新制度に関して面談を行っていたこと、面談の内容を記録に留めていなかったこと、面談を行っていたことを規制委員長に報告していなかったことを認めました(以上は2022年12月28日NHKデジタル版などによる)。これらの面談は規制と推進を分離するとした福島第1原発事故後の原則に反した「事前調整」だと市民団体に指摘され、調査が行われたことにより明らかになったものです(以上は共同とロイター、2022年12月27日:「市民団体」というのはNPO法人「原子力資料情報室」のこと)。

このような事実は原子力規制機関である原子力規制委員会・原子力規制庁の独立性を疑わしめるものであり、また規制機関としての組織のあり方に疑問を感じさせるものです。原子力資料情報室の松久保肇事務局長はオンラインの記者会見で「福島事故の反省で切り離した規制と推進が融合してしまっている。非常に由々しき事態だ」としています(東京新聞2022年12月28日による)。しかしながら、原子力規制委員会にはこのような問題意識にまったく欠けており、そのため昨年12月28日の会合では、今後は面談の記録を残し公表することを決定しただけであり、規制委員長は「これは規制員会の独立性云々という問題ではない」としていました。けれども、後に述べるように、経産省資源エネルギー庁との面談に際して、資源エネルギー庁が、運転期間の延長を意図した規制委員会所管の原子炉等規制法の改正などに関して極めて具体的内容を早い段階で規制庁に示していた事実を考えるならば、規制委員会の独立性が侵されつつあるのではないかと疑わざるを得ません。規制側に属しているはずの原子力規制庁と推進側の経産省資源エネルギー庁との上記のような癒着とも言うべき不透明なやりとりは、いわば談合とも言うべき闇取引であり、国民の信頼を裏切るものあることは明らかです。

・原子力規制庁のトップが経産省出身者に独占されるに至っているため、推進側である経産省の原子力規制委員会に対する影響力が大きくなっており、このため福島原発事故が起きた当時の原子力行政の状態すなわち規制側が規制される側に飲みまれるとう危機的な状態が再び現れつつあります。

福島第一原発の大事故が起きた後、2011年12月8日に原因解明のための政府から独立した強い調査権限を有している「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(国会事故調)が国会に設置されましたが、この調査委員会は、地震・津波が引き金になったとはいえ、事故そのものは安全対策を放置した人災によるものであり、福島原発事故の背景を成している根本的な原因はいわゆる「規制の虜」であるとしていました。「規制の虜」というのはノーベル経済学賞を受賞したこともある米国の経済学者ジョージ・スティグラーが提唱した経済学説であり、「国(規制当局)が国民の利益を守るために行う規制が、逆に企業などの規制を受ける側のものに転換されてしまう現象」を意味する言葉ですが、このたびの原発関係の一連の法改正における国の機関の動き、すなわち特に経産省と同省資源エネルギー庁、原子力規制委員会、原子力規制庁などの動きは、国民の目からすると、前述の内容から分かるように、まさに「規制の虜」と言わざるを得ない内容のものでした。このような状況が生じたことの大きな原因の一つは、原子力規制の裏方であるべき原子力規制庁のトップ(規制長官・次長・原子力規制監)がいつのまにかすべて推進側である経産省の出身者で占められてしまっていることです(規制員会が発足した当初は、規制庁のトップは推進側の経産省を影響を排除するために、すべて経産省以外の省庁の出身者で占められていました)。このため、結局は規制委員会の裏方であり規制側に位置すべき規制庁が実際には推進側の経産省に取り込まれているのです。すなわち、福島原発事故という未曽有の深刻な経験しにもかかわらず、再び規制側が推進側に飲み込まれつつあるのです。原子力規制委員会は、発足から11年、いまや危機的ともいうべき状態にあり、その存在意義が問われています。

おわりに:このたび原発に関連する法改正が一挙に行われたため、政府は福島第一原発の大事故を省みることなく今後ひたすら原発推進のための具体的施策を推し進めていくことになります。状況は非常に厳しいのですが、私たちは市民として、今後も粘り強く反対の声を挙げ続けていきましょう。

2023年6月17日

《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進
 大津市木下町17-41 
 TEL:077-522-5415 
 メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

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