21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

<脱原発 市民ウォーク in 滋賀> の 活動報告、お知らせなど を掲載 ♪
ときどき、トピックも ~☆

脱原発 市民ウォーク in 滋賀 8月の予定

2024-06-27 21:59:23 | 記事
地震が来るぞ!! 
老朽原発高浜1・2号機&美浜3号機うごかすな!
使用済み核燃料の行き場はないぞ!
福島第一原発事故放射能汚染水流すな!
止めろ!岸田政権の原発暴走!

第123回脱原発市民ウォークin滋賀

「13年前の福島や、たった5カ月前の能登半島の地震・津波の災禍が
あたかも無かったかのように、「国策民営」の原発推進勢力は息を吹き返し、
暴走している。

若狭の廃炉を免れた7基の原発群をすべて再稼働し、
あまつさえ使用済み核燃料の乾式貯蔵施設や中間貯蔵施設の建設を画策、
その延命を図ろうとしている。

「原子力村」は、原発立地地元・立地県議会や首長の事前了解や同意を得て、
放射能まみれの原発マネーをばらまき、もの言えぬ強権支配を強めてきた。
美浜・おおい・高浜町の年間歳費6割は原発関連収入で占められている。

しかし、全国で約30地点の住民・自治体は、原発・核燃サイクル施設の建設を
拒否してきた。かの珠洲市民は3度目の正直の市長選で10基の原発基地化を阻止した。
若狭・小浜市もしかり。

東京都知事選で、さらに暴走・亡国政権の現首相をきたる国政選挙で変えよう。
地震も事故も待ったなし。原発だけでなく、平和、いのちとくらしに関わる
あらゆる分野で、国民の我慢は限界に達している。
「あとから来るもののために」決意を皆さんと分かち合いましょう」
中嶌哲演さん:原子力発電に反対する福井県民会議、
** 24.6.9大阪うつぼ公園大集会主催者挨拶より ** 

1450万人の近畿の水源=びわ湖と私たちの未来=子どもたち孫たちを守りましょう!
ご一緒に歩きましょう! 参加無料! 予約不要! 

<とき・ところ>
2024年8月10日(土)13:30~
JR・京阪膳所駅前集合 老朽美浜3号、高浜1.2号機再稼働NO!

★コース=ときめき坂~元西武大津百貨店前~関電滋賀支社前~びわ湖畔
☆主催=21世紀脱原発市民ウォークin滋賀 実行委員会
☆呼びかけ人・・・池田進(原発を知る滋賀連絡会 電話077-522-5415)
         岡田 啓子(ふぇみん@滋賀 電話077-524-5743)
         稲村 守(9条ネット・滋賀 電話080-5713-8629)


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<トピックス>



写真上は、2024年6月9日の
「とめよう!原発依存社会への暴走大集会~地震も事故もまったなし」集会後、
大阪うつぼ公園からのデモ行進。
向かって左から:
◇フクイチ原発放射能汚染水流すな世界行進を続ける韓国からのイ・ウォニュンさん、
◇志賀原発を廃炉に!「訴訟」原告団長・北野進さん、
◇名古屋の老朽原発40年廃炉訴訟市民の会・草地妙子さん

<催し案内>

☆「さよなら!志賀原発 全国集会in金沢」
6月30日(日)12:00~16:30 集会は14:00から、15:30デモ

☆「実弾演習反対!日米合同軍事演習反対!憲法改悪阻止!7.6あいば野集会」
7月6日(土)14:00、高島市今津町・住吉公園(JR湖西線近江今津駅から徒歩3分)、
15:10デモ出発~16:00JR近江今津駅まで

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「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」 チラシのダウンロードは ⇒ コチラ

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能登半島地震で露呈した 原子力防災計画の欠陥を 置き去りにして原発推進に突き進む 岸田政権

2024-06-18 12:12:05 | 記事
《第122回脱原発市民ウォーク・イン・滋賀のご案内:2024年6月》

雨の季節になりましたが、次回の脱原発市民ウォークを6月22日(土)におこないます
(午後1時半JR膳所駅前広場に集合)。どなたでも自由に自分のスタイルで参加できます。
ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。

■■能登半島地震で露呈した原子力防災計画の欠陥を置き去りにして原発推進に突き進む岸田政権
■■原発再稼働の促進:運転期間20年延長の容認:原発の新増設を盛り込む次期エネルギー基本計画


今年の元旦に起きた能登半島地震では、いたるところで道路が寸断され、家屋・建築物などが倒壊したため、住民が安全な場所に避難することも自宅や自宅以外の建物内に留まることも容易でない事態が生じました。震源地はかつて原発の建設が計画されたことがある能登半島先端の玖珠市であり、志賀町に設けられている北陸電力の志賀原発は、大事故にはいたらなかったものの様々なトラブルに見舞われました。地震によりこのような深刻な事態が生じたため、志賀町が震源地であったならば、あるいは玖珠に原発が設けられていた場合は、大規模な原発事故が起きた際、住民は避難することも屋内に退避することもできない極めて危険な状態に陥りかねないことが明らかになりました。大地震に見舞われ原発の大事故が起きた場合、石川県が講じている原子力防災対策は大きな欠陥を有しており、実効性に極めて乏しいものであること、すなわち原子力防災対策は住民が事故の被害を避けることに役立たないものであることが明らかになりました。

日本の原発の大半は海岸線に沿った地形が険しく道路事情に恵まれない地域に立地されています。このため、原発が立地されている地域が激しい地震に見舞われたならば、大半の地域はこのたびの能登半島地震で起きたのと同じような事態に、すなわち住民は避難も屋内への退避もできない事態に陥る可能性が大きいと考えられます。このことは大地震により原発の大事故が起きたならば、自治体による原子力防災対策がほとんどの場合役に立たず、住民は避難も退避もできず大量の放射能に曝される危険性が極めて大きいことを意味しています。このため、このたびの能登地震は原発防災計画が実効性に著しく欠けるものであることを露呈させ、原発推進の動きに冷や水を浴びせるものとなりました。

この意味から、原発を保有し活用しようとする限りは、本来であれば、政府は自らの責任において、能登地震を機会に、原子力防災計画のあり方に関して徹底的な見直しを行うべきであると考えられます。しかしながら、これまでのところそのような動きは、政府機関にも、大手電力会社にもほとんどありません。また、大地震を経験した石川県や東電の原発が存在している新潟県などいくつかの自治体を除き、原発が立地されている自治体にも具体的動きほとんどありません。原子力防災計画は原発が立地されている自治体が策定するものとされており、国の関係機関(内閣府の原子力防災担当相など)は自治体による計画策定に際して当該の自治体に助言や支援を行うことに留まっています。一方、原子力防災に一番関連が深いはずの原子力規制委員会のこのたびの能登半島地震に関する対応は極めて消極的であり、能登地震で生じた事態に対して、「原発事故が起きた際の退避や避難の時期や期間については今後見直しの検討を行うけれども、(道路の寸断や建物の倒壊などの)自然災害そのものへの対策は規制委員会が対象とすべき範疇には入らない」としているだけであり、能登地震で露呈された、事故がいったん起きたならば場合によっては住民が避難も退避もできない危険な事態が生じる可能性が明らかに存在しているという現行の原子力防災対策の致命的欠陥を是正することに取り組もうとはしていません(このため、東電柏崎苅羽原発が立地されている新潟県の花角英世知事は、原発事故が起きた際の屋内退避のあり方に関して、能登半島他地震の教訓を生かして見直し、道路の改修などに関して新潟県への支援を行うよう、規制委員会の事務局である原子力規制局の長官に要望しています:2024年6月6日東京新聞デジタル版)

このように政府は能登半島地震で露呈した原子力防災対策の深刻な欠陥を無視し放置していますが、一方において、原発推進のための政策を強力に推し進めようとしています。すなわち、1)福島原発事故の後運転が停止れている原発の再稼働を強力に促進すること、2)原則40年とされている原発の運転期間を20年延長することにより運転期間を実質的に60年とすること、3)福島原発の大事故後「原発への依存度を可能な限り最小限に留める」としていたエネルギー基本計画における大原則を投げ捨て次期のエネルギー基本計画に原発の新・増設や建て替えを盛り込むこと、この三つの政策を強力に推し進めようとしています。以下に政府による上記の三つの原発推進政策の現状とその問題点について説明します。すでに皆さんも承知しておられる事柄も多いかと思いますが、原発推進の動きに反対するための一助にしていだければと思います。

Ⅰ:運転休止中の原発の再稼働促進による原発利用の推進

 東日本大震災が起きた時点では国内に54基の原発が存在していましたが、震災後には、大事故を起こした東電福島第一原発と東電福島第二原発の10基に加えて、7つの原子力発電所の11基の原子炉が廃炉とされることが決まっており、このため現存する再稼働の対象となる原発は33基となっています。この33基という数値は、原子力規制委員会による再稼働の審査に通るためには電力会社は地震や津波のなどに関する安全対策に1基につき数千億円を投じる必要があり、そのために発電能力や今後運転できる年数などの経済的観点から原子炉の選別が行われたことの結果です。

これら33基の原発の内訳は以下のとおりです(2024年5月現在)。
現時点で稼働済み原発(合計12基):関電の美浜原発3号機、関電美浜原発の1~4号機、関電大飯原発の3,4号機、四国電力伊方原発3号機、九電玄海原発の3,4号機、九電川内原発の1,2号機
現時点で再稼働の基準をクリアしており近い将来再稼働されることになるものと予想される原発(合計5基)::東電柏崎苅羽原発6,7号機、東北電力女川原発2号機、日本原電東海第二原発、中国電力島根原発2号機3号機、
再稼働申請中あるいは未申請の原発(合計16基):北海道電力泊原発1~3号機、東電柏崎苅羽原発1~5号機、東北電力東通原発発1号機、東北電力女川原発3号機、中部電力浜岡原発3~5号機、日本原電敦賀原発2号機
  
上記のようにすでに再稼働されている原発が12基、これに加えてさらに5基が近い将来再稼働されると、
合計17基もの原発が福島原発事後に再稼働されることになります。すなわち福島原発事故が起きた時点で存在していた54基の原発のおよそ3分の1もが稼働されることになります。

再稼働を申請中の原発(北海道電力泊原発1~3号機、日本原電敦賀原発2号機、中部電力浜岡原発など)のうち、果たして何基が再稼働を認められることになるかは今のところ定かではありません。しかしながら、日本原電の敦賀原発2号機のように原発敷地内の断層が動く可能性を巡って規制委員会側と電力会社の見解が分かれて審理が長引き中断されている例があるものの、北陸電力志賀原発2号機や東北電力東通原発のように「将来断層が動く可能性がある」とした専門家会議の結論が覆り、「動く可能性はない」として電力会社の主張を規制委員会が了承したという例も存在しています。このため、申請中の原発の大半は最終的には再稼働を許されることになるのではないかと考えられます。また、未だ再稼働の是非が定まっていない上記の敦賀2号機のような例は存在するのですが、再稼働を申請して最終的に不許可になった例はこれまでに存在していないのではないかと思われます。このため、将来的には合計20基以上、場合によっては30基近くが再稼働されることになる可能性が考えられます。原発推進を促進するための最も容易で確実な手段は原発の新増設や建て替えではなく再稼働を促進することであることは明らかです。このため、政府は今後再稼働に向けて様々な対策や手段を強力に推し進め、場合によっては原子力規制委員会に何らかの圧力をかけるという事態も生じるのではないかと懸念されます。

Ⅱ 運転期間の延長:原則40年とされている原発の運転期間を実質的に20年延長し60年とすることによる原発利用の推進

《福島原発事故後の原発の運転期間に関する経緯》
東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転期間は「運転開始から原則40年」と決定されました。これは福島原発の事故後、国内で原発反対の世論が強まる中、当時の民主党政権が事故の翌年、米国における例などを参考に原発の運転期間を原則40年と定める法改正を行ったことによるものです。この法改正は運転期間を明確に限定することにより「脱原発」の動きを推進することを狙ったものでした。

《運転期間20年延長の制度が導入された経緯と例外的とされていた運転期間延長の実態》
しかし、その後、自民党が政権に復帰すると、再稼働の見通しがつかないという状況の中で運転開始から40年が過ぎた原発を順次廃炉にしていくと電力供給に不安が生じる可能性があると懸念する政府の下で、原子力規制委員会が安全であると認めれば1回だけ20年間の運転延長を認めるという制度が設けられました。当時、政府は「運転期間の20年延長が認められるのは極めて例外的」としており、規制委員会の田中俊一・初代委員長も「運転期間の延長は相当困難」としていました。つまり、運転期間延長の申請があっても、認められることはほとんどなく、例外的にしか延長は認められないものと考えられていました。ところが、現時点では、これまでに20年間の運転延長を申請した4つの原子力発電所の7基の原発(関電美浜原発3号機、関電高浜原発1~4号機、日本原電東海第二原発、九州電力川内原発1号機と2号機)は、いずれも一年程度の審査を経て運転期間の20年延長を認可されています。

《形骸化している「運転期間は40年」という原則》
規制委員会による運転期間延長の審査は原子炉容器の点検や各種設備の劣化程度の評価などに審査項目が限られているため、再稼働に関する審査よりもハードルが低いとされています。このため、電力各社が(再稼働のために巨額の費用を投じた原発に関して)運転期間の延長も申請するのが通例になっています。その結果として、これまでの運転期間延長の申請は上記のようにすべて認められています。このような現状を見るならば、今や「運転期間は原則40年」という方針は完全に形骸がしていると言わざるを得ません。この現状に関して、規制委員会の山中伸介現委員長は「(運転期間の延長が)例外的かどうかにコメントするつもりはない」としています(2024年5月30日付け朝日新聞による)。上記の運転期間の延長が認められている7基の原発の外に、すでに再稼働の基準をクリアしている原発と審査中である原発は合計17基存在していますが、これらの原発の大半はいずれ運転期間の延長を認められることになるものと予想されます。また、今後10年で運転開始から40年を過ぎる原発が14基現れることになりますが、これらの原発もすべて20年間の運転期間延長を認められることになるのではないか考えられます。

《運転が休止されていた期間は運転期間に算入しないという、さらなる運転期間延長策》
また、運転期間を一回に限って20年延長することを認めるという制度以外に、2023年5月に、岸田内閣が原発推進のために一連の関連法規を改定する際(電気事業法や原子炉等規制法、原子力基本法など5本の関連法:注参照)に、規制委員会による審査などにより運転が休止されていた期間は運転期間に算入しないことが決定されています。この措置に対して規制委員会の一人が、「より安全な側に立って考えるべきだ」として反対していました。しかし、規制委員会はこの措置を受け入れています。この結果、60年を超す運転が可能になりました。運転停止期間が実際にどの程度のものになり、その結果、60年を超えてどの程度延長されることになるかは現時点では定かではありません。
(注:この改訂による新たな法律は「GX(グリーン・トランスフォーメーション)脱炭素電源法」として来年6月に施行されます)

《原発の運転期間の延長を押し進めて、運転期間を実質60年とすることを主導したのは経産省》
「動かすことができる原発は最大限に活用したい」として原発の運転延長を実質的に押し進めてきたのは岸田政権下の経産省です。福島原発の大事故後、原発の再稼働が国の思惑通りに実現しない事態を前にして、経産省が窮余の策として運転期間延長の推進を打ち出したのです。2021年に国が改訂した現行の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度時点における電源構成における原発が占める割合を20~22%に定めていました。しかし、現時点ですでに再稼働している原発は12基に過ぎず、2022年度の実績では、総発電量に占める原発の割合はわずか5.6%に留まっています。経産省は「電力安定供給のために、運転期間の延長により少しでも見通しが立つことにより安心感がもたらせられる」としていますが、運転期間の延長は原発推進のための暫定的な手段であり、運転期間延長の本当の狙いは、その間に再稼働をもっと急速に進行させることであり、さらには原発の新設・建て替えなどにつなげることであると考えられます。

《運転期間が60年を超えてさらに延長される可能性》
再稼働の促進や原発の建て替え・新増設などに関する見通しが立たない場合は、さらに運転期間を延長しようとする動きが出てくるかもしれません。これまで運転期間を80年まで延長した例は世界に存在していませんが、最近になって、米国で初めて最長80年の運転を認められた原発(フロリダ州のターキーポイント原発)が出現していることが報じられています(共同通信:2024年5月5日)。日本の原子力規制に関する方針は、大筋において米国における方針を踏襲してきたものであることを考えた場合、今後日本でも運転期間を60年からさらに大幅に延長する動きが出てくる可能性は否定できません
(注)米国では運転期間は40年と定められていますが、これは技術的な理由ではなく公益事業の独占を禁止する観点などからの規定であり、規制当局の審査に合格すれば20年の延長が認められ、延長の回数に制限はないとされています。資源エネルギー庁によると、米国で60年を超える運転延長を認められた原発は94基あり、このうち6基は80年 を超える運転も認められているとのことです。ただ、古い原発は経済性の観点から相次いで廃炉になっており、実際に60年を超えて運転するかは電力会社の判断になるとされています。またイギリスとフランスの場合は、運転期間に制限はないものの、10年毎に審査を行うとされています(この運転期間に関する米国の事情は2022年11月7日NHKの「原発の運転延長 なぜ今?リスクは?」と題された報道によります)

《運転期間延長による老朽化の進行に起因した事故の危険性を認めない司法の判断》
運転期間の20年延長が認められているいわゆる「老朽化原発」の安全性を争点とする裁判は福井県内外で起こされています。しかしながら、運転期間の延長による老朽化の進行により事故が起きる危険性が存在しているために運転を認めることはできないとする判決がこれまでに下されたことはありません。たとえば、福井県にある関西電力の美浜原子力発電所3号機と高浜原発の1号機~4号機について、住民らが老朽化の進行により事故が生じる危険性があるとして仮処分による運転中止を求めて提訴していましたが、福井地方裁判所は、2024年3月29日、老朽化した原発の危険性に関して、「経年劣化を保守的に想定した上で耐震安全性評価を行っていて、規制委員会の判断は合理的だ」とする判断を下し、住民による運転停止の仮処分の要求を退けています。これは一審の判決であるため、最終的にどのように決着するかは定かではありませんが、今後、同様の趣旨の裁判でも、運転期間の延長による事故の危険性は否定されることになるのではないかと懸念されます。この裁判結果を受けて、官房長官「地元の理解を得ながら再稼働を進める政府方針に変わりはない」としています。

Ⅲ:東電福島第一原発事故後から掲げられてきた「原発への依存度を最小限にとどめる」という大原則を投げ捨て、原発の新増設・建て替えなどの原発推進策を正面に掲げることになるものと予想される次期(第7次)エネルギー基本計画

【次期エネルギー基本計画に関する経済産業省の有識者会議が5月に開始されました】
「エネルギー基本計画」は2002年に制定されたエネルギー政策基本法に基づき経産省が中心になって策定されます。現行の計画は2021年に決定された第6次エネルギー基本計画ですが、基本計画は少なくとも3年に一度見直され更新されることになっているため、今年は計画見直しの年に当たっています。このため見直しに向けての議論が去る5月15日、経済産業省の有識者会議で始まりました。第6次基本計画が決定された2021年10月当時の政権は第一次岸田内閣であり、岸田首相は原発推進を表明していませんでした。しかし、その後、第二次岸田内閣は「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議」を通じて、原発の新設・建て替え(リプレース)、次世代型原発の導入など、今後は原発を推進する方針を明確に打ち出し、閣議決定を経て関連法規を改定しました。
東電福島原発の事故後、2014年の計画改定に際して「震災前に描いてきたエネルのギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する」と宣言し、エネルギー政策を再構築するための出発点として、この基本方針はその後の計画改定に際して一貫して維持されてきました。しかし、上記のように、岸田政権はこの方針を反故にしてしまいました。原子力基本法など一連の関連法規を改正することにより、原発推進に向けて原発に関する基本方針を「最大限に活用する」と大転換し、福島原発事故後の歴代政権がタブー視してきた原発の新増設にも踏み込んでいます。このため、このたび経産省の有識者会議における議論を通じて決定されるエネルギー基本計画の内容はこれまでとは大きく異なり、原発推進を正面に掲げたものになることは確実です。第6次基本計画では、原発は「可能な限り依存度を低減する」と明記する一方で、「必要な規模を持続的に活用する」と新たに明記されていました。しかし、新基本計画では「依存度を可能な限り低減」という文言はなくなるものと考えられます。

【現行の第6次エネルギー基本計画(2021年から3年間)の内容と2022年度、2023年度の実績について】
 新たなエネルギー基本計画である第7次エネルギー基本計画を取り巻く状況や新基本計画に関する予想される内容や問題点について記す前に、現行の第6次エネルギー基本計画(2021~2024年)の内容とその実績(2021年度と2022年度)などについての説明を以下に記します。第6次計画はCOP26(国連気候変動枠組み条第26回約締約国会議)より以前に策定された計画です。
 現行の第6次エネルギー基本計画は2021年10月の閣議で決定されました。この計画では2050年に地球温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするというCOPの目標を念頭に置いて、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電源を現状から倍増させること目指すことにより、再生可能エネルギーを「主力電源」化することを「最優先の原則」で取り組むとされていました。一方、原発は脱炭素の電源として重視し再稼働を進めるとされていたものの、原発の新増設の方針は(自民党内など様々な関係者から求める声がありました)第6次基本計画には盛り込まれませんでした。第6次計画における総発電量に占める電源別の割合(%)(実績と2030年度における目標値)は以下のとおりです。



(注1) 再生可能エネルギー:内訳は太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱。第6次計画の2030年度目標は風力5%、太陽光14~16%、水力11%、バイオマス5%、地熱1%。
(注2) 再生可能エネルギーの中で伸びが期待される風力と太陽光の実績:太陽光は2020年度に9.3%だったが2021年度は9.9%、風力は2020年度は0.88%だったが2021年度は0.85%に留まっている。
(注3)原子力の30年度目標を達成するには、原発36基(建設中の3基を含む)のうち30基程度を稼働させることが必要だが、実現は困難な状況にあると言わざるを得ない。
(注4)上記の各目標の外に、第6次計画では総発電量を省エネにより1割程度削減するとされている。
(注5)第6次基本計画では、原発の活用に関して「万が一事故が起きた場合は、国は関係法規に基づき、責任を持って対処する」とされている。
(注6)第6次基本計画の2021年度、2022年度実績は環境エネルギー政策研究所のデータによる

上記の表に示した数字から分かるように、第6次エネルギー基本計画(2021~2024年)は2021年度と2022年度の実績を見る限り、電力構成の内容に大きな変化はありません。すなわち原発への依存度は5%前後に留まっており、2019年の実績(6%)と大差ありません。一方、再生可能エネルギーの場合も、第6次基本計画において「再生可能エネルギーを《主力電源化》することを「最優先の原則」で取り組むとされており、脱炭素化の電源として重要視されているはずであるにもかかわらず、今後大幅に増やすべき太陽光+風力に関しては2021年度も2022年度も約10%台に留まっています(水力・バイオマス・地熱が将来的に大きく伸びるとは考えられません)。また第6次基本計画では、特に洋上風力発電は大量導入が可能として再生可能エネルギーの「切り札」と位置づけられているものの、風力は2021年度と2022年度は0.8%台に留まっています。また、地球温暖化の主な原因である化石燃料の場合も大きな変化は認められず、2019年度の実績76%(石炭32%+天然ガス37%+石油7%)に対して2021年度と2022年度は72%前後であり、その減少量がわずかなものです。すなわち、電源構成は2019~2022年度にかけて大きく変わってはいないと言えます。このように電源構成の変化のペースは遅いものであるため、このままでは2030年度の目標を達成することは、化石燃料・再生可能エネルギー・原発のいずれに関しても極めて困難であると考えざるを得ません。つまり、2030年度目標値はいわば「絵に描いた餅」に過ぎません。

【新エネルギー基本計画を取り巻く状況】
「原発は必要」の声が目立つ経産省の有識者会議
5月15日に開催された経産省の有識者会議(分科会長:隅修三・東京海上日動火災保険相談役)では、「脱炭素社会も実現に向けて、原子力を使わない手はないのではないか」「原発の新設・建て替えも含めた原子力技術の安全利用の拡大を強く要請する」という意見など、原発を巡る意見が相次いでおり、メンバーの大半は経済界や業界に詳しい学者が占めており、このため電力安定供給のために原発は必要との声が目立ったとされています(以上は2024年5月15日付け朝日新聞による)。

「原発の増設・建て替えは不可欠」とする電気事業連合会会長
電力会社の業界団体である電気事業連合会の会長に今年の4月に就任したばかりの林欣吾・中部電力社長は、5月17日の記者会見で、脱炭素の機運が高まっていることや地政学的リスクを挙げ、「原発への依存度を低減するという(エネルギー基本計画における)表現は削除してほしい」と明言したうえで、原発の新増設や建て替えの必要性を次期のエネルギー基本計画に明記することを求め、また国による財政的支援を必要とするという考えも示していました。また、同会長は新聞記者のインタビューに対して「既存の原発は安全性が確保できたら再稼働すべきだ。それだけでは足りないため、各新型原子炉を含めて原発が必要だ」と明言しています(2024年5月3日付け朝日新聞)。しかし、電力各社の姿勢は必ずしも一致しておらず、関電のように原発の増設・新設などに積極的な電力会社もありますが、原発の建設にはこれまでの倍あるいはそれ以上の多額の費用を要するために原発の新増設や建て替えなどに関しては政府による資金援助など欠かせないとする声も電力会社の間に存在しています。

【新基本計画は国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の結果を反映したものでなければなりません】
 上記のように次期エネルギー基本計画に関して、早くも原発の積極的推進の声が関係者から上がっていますが、次期の基本計画は昨年(2023年)の11月30日~12月13日にアラブ首長国連邦のドバイにおいて開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の結果を踏まえた内容のものであることが必要とされるものと考えられます。
COP28の成果文書では、2050年までに世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑えることを目標としています。COPによる当面の目標の内容は「温暖化ガスを2035年に世界全体で2019年比で60%減らすことが必要である」とするものです(第6次エネルギー基本計画では、日本の目標は2030年までに2013年度比で46%削減するとしていました。このCOP28の目標に関しては、政府部内には、「あくまで世界全体で」ということであり、日本単独で目指す必要はないとする声もあるとされています。しかし、このような声は日本がCOPの目標を達成する自信がないために予防線を張ったものであろうと思われます)。

この目標に関連して合意文書には以下の事柄が盛り込まれています
1 化石燃料から脱却する。(初めてCOPで化石燃料を減らすことが明確に言及されました)。
2 再生可能エネルギーの設備容量(発電能力)を2030年までに世界で3倍にする。
3 原発の活用(COPの合意文書で気候変動の解決策の一つして原発の利用が初めて記載されました)

一方、COP28の会期中に、アメリカ政府が中心になって、気温の上昇を1.5度に抑えるためとして、2050年までに世界の原子力発電所の発電容量を3倍に増やすことを目指すとする宣言を発表しており、日本を含む20か国以上が賛同しています(2023年12月2日NHKのニュス:「COP28 米政府 世界の原発の発電容量3倍へ宣言 日本など賛同」)
(注)今年1月1日現在で稼働中の原発は世界で413基あり、全発電量の約10%を占めていますが、発電容量を現在の3倍にするには今後約1000基を新設することになります。しかしエネルギー分野の国際専門家グループは、5月5日までに、「過去のデータや現状からして実現不可能」とする分析結果をまとめています(以上は2024年5月5日付け共同通信による)

また、2024年3月21日には、ベルギーのブリュッセルでベルギー政府と国際原子力機関(IAEA)の主催で「原子力サミット」が開催され(日本からは日本原子力産業協会が参加)、「この会議はCOP28 の合意文書に原子力の活用が初めて盛り込まれ、他のエネルギー源とともに原子力の導入を加速させることを求めていることを受けて開催されるものであり、この会議は参加国の首脳に対してネット・ゼロの達成と持続可能な開発の推進における原子力の重要な役割について、その可能性を十分に活用するための国家計画も含め、ビジョンを共有する機会を提供する」という内容の開催趣旨が公表されています。しかし、原子力利用を活性化しようというこの原子力産業の動きに対して、世界の620以上の団体が共同で、反対声明を出しています(以上は原子力資料情報室通信2024年5月1日による)
COP28で脱炭素のための原発の活用が初めて合意文書に盛り込まれたことや、原発の大幅な推進に向けての米国を中心とした動きなどが次期エネルギー計画の策定に影響を与えることは確実であろうと考えられます。特にCOP28の合意文書に原発の活用が初めて盛り込まれたことは日本が原発利用を推進することの強い追い風になるものと考えらえます。しかし、一方においてこの合意文書に「脱化石燃料」ということも盛り込まれているために、化石燃料への依存度が極めて大きい(70%前後)日本は、脱化石燃料のための具体的方策を用意することを迫られることになります。また、再生可能エネルギーの発電量を2030年までに世界で3倍にすることが合意されているため、欧米などに比べて再生可能エネルギーの発電量が大きく劣っている日本は、再生可能エネルギーによる発電量を現状よりも大幅に増加させるために、風力、特に洋上風力発電による発電量を飛躍的に増大させるための具体的方策を講じることを迫られることになるものと考えられます。

【次期エネルギー基本計画に関する予想される問題点】
経産省が中心になって策定される次期エネルギー基本計画は2024~2026(あるいは2027年)を対象にしたものと予想されますが、以下に示すように次期基本計画には様々な問題点の存在が予想されます

1《原発利用の推進・最大限の活用》について
現在、「原発を最大限に活用する」ことを目指すGX脱炭素電源法に基づき、再稼働の促進と運転期間の延長を軸にして原発推進策が実行に移されようとしていますが、より積極的に原発を推進するために、次期エネルギー基本計画に「原発の新増設・建て替え」や「次世代原発の導入」という内容が盛り込まれることはほぼ確実です。しかしながら、原発の新増設や次世代原発の導入が実際にどの程度の実現可能性を有しているか、また2050年までに原発の新増設などが脱炭素化に実際どの程度に役立つのかは、さまざまな不確定要因が存在しているため明確でありません。疑問に思われる点が多々存在しています。

原発の新増設・建て替えや次世代型原発の導入の実現は長期間を要するため、2050年に地球温暖化排出量ゼロという目標の達成に大きく貢献する可能性は小さい
たとえば美浜1号機(廃炉作業中)の後継機設置に向けた調査に関して、福島原発事故で原発の稼働を中断した経験を有する関電の森望社長は、2024年1月に行った住民との意見交換会において、「原発の新増設・建て替えという次に段階に向けての検討を行うタイミングに来ている」と発言しています。しかし、原発を新設する場合、計画立案から実際に稼働させるに至るまでに15~20年近くを要します。すなわち計画立案を今開始しても完成し稼働させるには早くて2040年代前半~半ばごろにしかならないものと考えられます。一方、建設途中の原発も含めて全35基が稼働し、かつ運転期間を60年に延長したとしても、2040年代後半からは、運転期間が過ぎるなどの理由により稼働できる原発は急激に減り、2050年には10基程度に留まると予想されます(以上は2024年5月30日付け朝日新聞による)。すなわち現時点で再稼働されている原発の数(12基)と同レベルに留まることになりそうです。たとえ今から原発の新増設・建て替えの計画をスタートさせたとしても、これまでの2倍以上の建設費用を要すると考えられる原発を2040年代後半に至るまでにいったい何基建設できるかは定かではありません。このため、原発の新増設は長期的に安定したエネルギー源を確保するという点においては役立つとしても、2050年にカーボン・ニュートラルを実現するという脱炭素化の目標の達成に大きく貢献するとは考えられません。すなわち「脱炭素化のために原発を活用する」という看板は偽りであり、原発の新増設・建て替えという方針は、2050年までに脱炭素化を実現することを目的としたものというよりは、エネルギー安全保障の観点から、より長期的に確実性の高いエネルギー源を確保することを目的としたものであると考えられます。

次期基本計画で設定される原発に関する目標がどのようなものなるかは定かではありませんが、例えば第6次基本計画と同様に電力構成における割合が20~22%程度に設定されるとした場合、2021年度と2022年度における再稼働済みの12基の原発による実績が全発電量の5~6%に留まっていることを基本にして考えるならば、単純計算で現在の3倍程度の原発すなわち36基程度をさらに稼働させなければ目標は達成できないことになります。現時点で再稼働を申請中の原子炉は合計16基ですが、これらの原発がすべて稼働された場合でも目標に達成することは不可能です。一方、原発の新増設は、計画されても稼働までに長期間を要するために、次期計画の目標達成には間に合いません。結局、原発の活用に関して、次期基本計画で現行の基本計画と同様の20~22%という値が設定された場合、実現不可能の絵に描いた餅に終わる公算が大であると考えられます。

次世代型原発導入の先行きは極めて不透明:
次期エネルギー基本計画には原発の新増設や建て替え以外に、次世代型原発の導入という方針が盛り込まれるのではないかと予想されます。第6次基本計画の策定に際しても、次世代型原発として、具体的に「小型モジュール」(SMR)と称される原子炉の導入を進めるべきだとする声が自民党など周辺の関係者などからありました。SMRというのは発電能力が50万キロワット程度(従来の原発の半分か3分の1程度の発電能力)の原子炉であり、事故時の対応がしやすく安全性が従来の原子炉よりも高く、工場で設備を製造し現場で組み立てるために建設費も安いとされているため、世界的に注目されている次世代型原発です。SMRは「コスト競争力がありクリーンエネルギ」であるとして、米国などで研究開発が行われてきました。しかし、最近になって(2023年11月8日)開発を行っていた米国の企業「ニュースケールパワー」社が建設計画を中止すると発表しています。2029年に米国初となるSMRを稼働させる予定でしたが、建設費の値上がりなどで経済性が見込めなくなったとされています。米原子力規制委員会がこれまでに設計の認証を済ませているSMRは現在同社のものだけです。同社には米国内の石炭火力発電所に跡地への建設計画や、カナダ、韓国、ポーランドなどでの建設計画があるとされており、日本からは重工大手のIHIや原子力プラント大手の日揮ホールディングスが出資しており、中部電力も昨年9月に出資を発表していました。しかし、次世代型原発の本命とされていたSMRの先行きはこのように不透明です。
また、次世代型原発として、SMRの外に、「革新軽水炉」、「高温ガス炉」、「高速炉」、「核融合炉」と称されているものがありますが、これらの原子炉は未だ開発段階にあるか研究段階に留まっている原子炉であるため、次期基本計画にこれらの原子炉の導入を盛り込むことは時期早尚と言わざるを得ません。
いずれの次世代型原発が次期エネルギー基本計画に基づき導入されることになっても、日本で実際に建設され稼働されるに至るまでには、既存の原発による原発の新増設などよりは長期間を要するものと考えられるため、2050年の温暖化ガス排出量ゼロという目標にはたいして寄与しないものと考えられ

2 再生可能エネルギーに関する次期エネルギー計画における問題点について
 第6次基本計画では、計画策定当時の再生可能エネルギーを最大限に導入するとされており、その電源に占める割合は2021年当時18%でしたが、2030年度の目標値は36~38%とされていました。再生可能エネルギーは脱炭素化のための重要な電源とされており、風力、とりわけ洋上風力発電は再生可能エネルギーの切り札とされていましたが、2022年度と2023年度の実績(発電量に締まる割合)は以下のようなものでした



2022年度の再生可能エネルギーの実績は合計22.6%であり(第6次計画の策定時の2021年は18%)、2023年度は25.7%です。太陽光+風力が現状より早いペースで伸びていけば、30年度の目標は達成されるかもしれません。しかしながら、温暖化現象の原因である石化燃料(日本における現在の石化燃料への依存率は70%)を大幅に減らすことが急務であることを考えるならば、30年度における再生可能エネルギーの目標値は低過ぎると言わざるを得ません。このため第7次基本計画の策定に当たっては再生可能エネルギーの目標値を大幅に引き上げる必要があると考えられます。

再生可能エネルギーのうち、水力・地熱・バイオマスは今後大幅に伸びていくことは期待できず、これらの電源による発電量は現状維持に留まるものと考えられます。このため再生可能エネルギーの切り札は、今や発電コストが原子力よりも安いレベルに到達しようとしている太陽光と風力なのですが、太陽光の場合は狭い国土で大型発電施設のための用地が今後どの程度確保できるかという問題があり、今後これまでのとおりに発電量における太陽光の割合が伸び続けるか、定かでない面が存在しています(このため、最近は設置場所を増やすために建物の屋根や壁面などへの設置を増やすなどの方策が考えられており、また海上での太陽発電の試みも行われつつあります)。特に用地問題を考えるならば、国土は狭くても海岸線の長い日本は、風力発電(海岸付近あるいは洋上での発電)が一番適しているものと考えられます。ところが上記のデータからも明らかなように、総発電量に占める風力の割合は、未だ1%程度のレベルにしか達していません。

3 化石燃料に関する次期エネルギー基本計画の問題点
化石燃料の発電量に占める割合は依然として最大であり、60%台後半~70%台という極めて高い値です(2021年度が71.7%、2022年度が72.4%でしたが、2023年度は66.6%)。化石燃料を用いる場合、発電所から排出される暖化ガスに対処するためのひとつの方法は、何らかの手段により火力発電所からの排ガス中に含まれている温暖化ガス(炭酸ガス)を分離して回収し、何らかの形で処分することです。このため火力発電所からの排ガスから地球温高ガスである炭酸ガスを除去して処分するという方法に関して以下に簡単に記します。

1990年代に米国政府はMITなどの著名な大学に温暖化ガスである炭酸ガスのついてどのように科学技術的対処の仕方が最も適切であると考えらえるか、その方法について研究するよう依頼しました。その結果導き出されたのは、火力発電所の排ガスに含まれる炭酸ガスを何らかの方法で分離し、回収された炭酸ガスを液化して、深海に沈めるという方法でした。その後、米国などでこの方法について研究開発が行われてきましたが、実は、低圧・低濃度のガスから低コストでの炭酸ガスの分離回収を実用化した例は、世界においてもまだ存在していません。日本にも火力発電所の排気ガスから炭酸ガスを回収する方法を研究するための実験施設が存在していますが、この技術はまだまだ研究開発段階に留まっており、近い将来、脱炭素化のための有力な手段になるとは考えられません。

火力発電における水素・アンモニアの利用
一方、水素あるいはアンモニアを化石燃料に混ぜて燃焼させることにより炭酸ガスの排出量を削減するという技術の研究開発が進められており、このため現行の第6次エネルギー基本計画においても全発電量の1%を水素・アンモニアを混ぜた化石燃料で賄うとされています。また、石炭火力にアンモニアを20%混ぜて燃焼させる実証実験が現在進められているとされています。しかしこの技術が果たして脱炭素化に大きく貢献するかは定かではありません。たとえば京都大学大学院工学研究科の藤森真一郎教授らは、世界全域を対象としたエネルギーシミュレーションモデルを用い、脱炭素化に向けた水素・アンモニア発電の役割について分析した結果、水素・アンモニア発電が世界の発電電力量に占める割合は、最大でも1%程度に留まることが示されたとしています。少なくともこの技術は未だ発展途上の技術であり、このため2050年にカーボン・ニュートラルという目標の達成に役立つとは考えらえません。

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(おわりに)
以上、実効性に著しく欠けている原子力防災計画、政府が進めつつある原発推進策の実態、経産省の専門家会議で開始された次期エネルギー基本計画の問題点などについて記しました。説明不足の点も少なからずあるのですが、次期エネルギー基本計画では、福島第一原発事故後一貫してきた「原発の利用を最小限に留める」という大原則が反故にされ、原発の新増設・建て替えなどの方針が盛り込まれることになるのは間違いありません。原発の大事故を起こした国の市民としては、脱炭素を表向きの看板にして原発の新増設などを実行することにより原発を最大限に利用するという政府の方針を認めるわけにはいきません。このため、今後、第7次計画の立案に関する経産省の専門家委員会などの動きに注目し、原発推進の動きに対して、市民としての強い反対の意思を政府に対して明確に示していかなければなりません。

2024年6月17日

《 脱原発市民ウォーク in 滋賀 》呼びかけ人の一人:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41
電話:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp
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脱原発 市民ウォーク in 滋賀 6月の予定

2024-05-19 17:24:52 | 記事
■地震が来るぞ!! 
■老朽原発高浜1・2号機&美浜3号機うごかすな!
■使用済み核燃料の行き場はないぞ!
■福島第一原発事故放射能汚染水流すな!
■止めろ!岸田政権の原発暴走!

◆ 第122回脱原発市民ウォークin滋賀 ◆

「老朽原発うごかすな!原発回帰への暴走をとめよう!~という声と行動が、
若狭・福井と関西・中京の都市圏をむすんで広がりつつあります。
・・・「一食断食」をよびかけます。少しひもじさを体感しながら、
フクシマの被災者に心を寄せ、自らの子孫の未来に想いをはせるために、
いつでも、どこでも、だれでも、ひとりでもできる実践です。」
(中嶌哲演・『はとぽっぽ通信』2023.6) 

1450万人の近畿の水源=びわ湖と私たちの未来=子どもたち孫たちを守りましょう!
 
ご一緒に歩きましょう! 参加無料! 予約不要! 
老朽美浜3号、高浜1.2号機再稼働NO!

<とき・ところ>
2024年6月22日(土)13:30~
JR・京阪膳所駅前集合 


★コース=ときめき坂~元西武大津百貨店前~関電滋賀支社前~びわ湖畔
☆主催=21世紀脱原発市民ウォークin滋賀 実行委員会
☆呼びかけ人・・・池田進(原発を知る滋賀連絡会 電話077-522-5415)
         岡田 啓子(ふぇみん@滋賀 電話077-524-5743)
         稲村 守(9条ネット・滋賀 電話080-5713-8629)

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<トピックス>

<写真は2024年4月20日の第31回脱原発市民ウォークinしが近江八幡2021>














<2023年春の老朽原発うごかすな!リレーデモで米原市・平尾道雄市長の激励挨拶、
 JR米原駅前>



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「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」 チラシのダウンロードは ⇒ コチラ

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高レベル放射性廃棄物 最終処分場の 候補地選定問題

2024-05-05 10:04:21 | 記事
《第121回脱原発 市民ウォーク in 滋賀のご案内:2024年5月》

新緑のさわやかな季節になりました。
次回の市民ウォークを5月11日(土)におこないます(JR膳所駅前広場:午後1時半)。
どなたでもご自分のスタイルで自由に参加できます。
ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。


■■高レベル放射性廃棄物最終処分場の候補地選定問題■■
■■北海道寿都町・神恵内村、佐賀県玄海町■■■■■■■

◆すでに交付金をほぼ使い切った北海道の神恵内村と寿都町は
 果たして次の段階の調査に応じるのか?◆

◆原発が立地されている佐賀県玄海町で町議会が文献調査受け入れの請願を採択◆



皆さんもご存知のように、現在「原子力発電環境整備機構」(注参照)を中心に、経産省など政府の機関が一体となって、使用済み核燃料を再処理した後に生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分場に関して候補地選定の作業が進められています。選定作業は以下に記すように三つの段階を経て行われ、その結果に基づいて最終処分場を建設する場所が決定されることになっています。
(注:以下、NUMOと記します。2000年6月に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が公布されたのを受けて同年10月に設立された法人。NUMOは英語の名称Nuclear Waste Management Organization of Japanの略称)

第一段階:文献をもとに火山や断層の活動などを調べる「文献調査」、調査期間は約2年
第二段階:実際にボーリング調査を行い地質や地下水の状況を調べる「概要調査」、調査期間は4年程度
第三段階:地下に調査用の施設を設け、岩盤や地下水の特性などが最終処分場として適しているかを調べる「精密調査」、調査期間は14年程度

これらの各段階の調査への応募の決定は自治体(市町村)の首長が行うものとされています。また第二段階と第3段階の地質に関する調査に応じる場合は、自治体の首長の同意だけではなく、当該の自治体が存在する都道府県の知事の同意も必要とされることになっています。

上記の第一段階の調査である「文献調査」に応じた自治体には20億円が交付され、第二段階の「概要調査」に応じた自治体には最大70億円が交付されることになっています。最終段階の「精密調査」に応じた自治体には70億円をさらに上回る多額の交付金が国から出されることになるものと考えられますが、現時点では詳細は不明です。
これまでに第一段階の文献調査に対して応募したのは北海道の寿都町と神恵内村の2町村だけです。この2町村の外に、かつて2023年9月に長崎県対馬市では応募を求める動きがあり、議会で文献調査に応募する請願が採択されましたが市長が反対を表明したため、応募するには至りませんでした。一方、最近になって玄海原発が立地されている佐賀県玄海町で応募を求める動きが具体化しており、去る4月26日に、応募を求める請願が議会で採択されるに至っています。

《文献調査に応募したことによる交付をすでにほぼ使い切ってしまっている北海道の2町村》

 これまでに北海道の二つの町村、寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が第一段階の調査に応募しており、2020年に全国で初めての文献調査が開始されました。そのため「電源立地地域対策交付金」がすでに2021年と2022年の両年度に分けて交付されており、2町村とも計20億円を受け取っています。調査は現時点ですでに完了しています。2024年度の当初予算の規模は神恵内村(人口750人:2024年2月現在)が28億円、寿都町(人口2679人:2024年2月現在)が54億円ですから、この交付金は両町村にとっては財政的に無視できない重要な位置を占めるものであると言えます。この交付金はすでに別の類の補助金を受けている事業や自治体の人件費、役場の改修費などには使うことができませんが、一回限りのものであるため、「いわば補償金のようなもの」とも言われています。
 交付金の使途は、神恵内村の場合、近隣の3町村へ各1億5千万円、漁港の荷さばき施設の建て替えに約8億円が使われています。その他に診療所の人件費や医療機器の整備や村道の維持管理にも使われており、2024年度には温泉施設に4億円余が用いられることになっているため、国からの交付金の残高はゼロになる見込みです。
 一方、寿都町の場合は、1億5千万円を近くの岩内町に渡し、残りの18億5千万円を主に公共施設の維持管理に用いています。24年度は温泉施設に1730万円、体育館・プールに1700万円、観光交流センターに890万円を使う予定です。また24年度には看護師住宅の建設に2億円、町営住宅の改修に7千万円を当てる見込みであり、このため25年度には交付金をほぼ使いきってしまう見込みとされています。

《北海道の2町村と北海道知事は第二段階の「概要調査」実施の要請にどう対応することになるのか?》

上記の北海道に2町村における「文献調査」はすでに完了しており、現在、調査報告書がNUMOの手で取りまとめられている最中であり、すでに今年の2月14日に報告書原案が公表されています。原案には、2つの自治体それぞれに関して次の調査(概要調査)に進める候補地が示されています。このため、今後はこれらの町村が最終分場選定のための第二段階の調査であるボーリングによる地質調査を内容とする「概要調査」に応じることになるのか否かということが焦点になります。これらの町村が応じればNUMOによる最終処分場の選定作業はさらに一歩進むことになります。しかし、応じなければ調査の作業は行き詰り、候補地選定の作業は、新たに他の候補地を探すなど、振出に戻ることになりかねません。そのような事態に至るのを回避するために、今後NUMOと経産省は、これらの町村における第二段階の「概要調査」の実現に向けて、様々な働きかけ行うものと予想されます。
第二段階の概要調査の実施に至るためには、以下の条件が必要とされます。1)調査報告書において、文献調査の段階で活断層や火山が存在するなど処分場として避けるべき場所が存在していないと認められること 2)当該の自治体の首長が概要調査に同意すること、3)当該の自治体が存在している都道府県の知事(上記の2町村の場合は北海道知事)が概要調査の実施に同意すること。

NUMOによる調査報告書原案の内容について

報告書の内容に関しては、NUMOが公表した原案では、寿都町については町内全域を次の段階の概要調査の対象とすることを適切としています。ただ活断層や火山の活動記録など「概要調査を避けるべき基準」に該当する場所が存在している可能性があるため、今後の調査で留意すべき事項も示しています。その1つが「白炭断層」と呼ばれる断層であり、寿都町の南にある黒松内町で地表に露出した断層の調査などから比較的最近の活断層と考えられています。報告書の原案では断層の傾きによっては寿都町の地下に分布している可能性があるとしています。また火山の噴火に関しては、寿都町の南端の深さ30キロほどの場所で、体に感じない「低周波地震」の震源が分布していることが確認されています。低周波地震は地下のマグマなどの動きを示すとされ、現在の文献では、新たな火山が噴火する可能性が高いとは言えないものの、留意すべきとしています。一方、神恵内村に関しては、報告書の原案では、村全域ではなく、村の南端の一部の区域が調査対象の候補地とされていますが、今後の調査で留意すべき事項があるとしています。このうち火山の噴火に関して、神恵内村の隣の泊村にある「熊追山」が比較的新しい時代の火山の可能性があり、その場合、山の中心から半径15キロメートル圏内に村内の候補地の陸域がすべて含まれるため、今後の調査において評価が必要だとしています。
報告書原案に関する専門家の見解:たとえば北海道の地質に詳しい北海道教育大学の岡村聡名誉教授は「活断層があるという指摘を全く無視して、ないという立場で概要調査に進むということは決してしてほしくないと非常に強く感じている」としており、これらの地域が第二段階の「概要調査」を行うに値するものであるのか否か、専門家により意見が分かれる可能性があるのではないかと考えられます(以上、NUMOの報告書原案についての説明は2月14日のNHKの報道によるものです)

今後の北海道2町村の対応、現時点での町村長、知事の姿勢:

報告書原案は今後、専門家で構成される国の審議会で議論されたうえで正式の報告書が取りまとめられることになっていますが、おそらく原案の内容は大筋において審議会で承認されるものと予想されます。正式の報告書が取りまとめられた後、地元などで説明会が開かれることになるものと考えられ、報告書に対する意見を広く受け付けた上で第2段階のボーリングによる「概要調査」の計画が策定されることになっています。しかし、概要調査の受け入れに際しては地元の首長(町長、村長)の同意だけではなく知事の同意が必要とされているため、今後はこれらの同意が得られるか否かが大きな焦点となります。

〈町村長の姿勢〉:寿都町の片岡春雄町長は概要調査に前向きですが、概要調査に応じるかどうかを住民投票で問うことを考えているとされています。また、同町長は住民投票を行う前に町民を対象とした勉強会を開催するとしていますが、他の調査地域が現れるまでは、勉強会も住民投票も実施しない方針であるとされています。一方、神恵内村の高橋昌幸町長は、概要調査について明言は避けていますが、何らかの形で住民の意思を確認する機会を設けたいとしています。前述のように寿都町も神恵内村も第一段階の文献調査に応じたことによる交付金20億円をすでにほぼ使い切っています。この事情を考えるならば、寿都町長も神恵内村長も、第二段階の概要調査に応じた場合の交付金(70憶円)を期待する方向に傾くということも考えられます。

〈北海道知事の姿勢〉:一方、北海道の鈴木直道知事は、最終処分場を受け入れる意思がないとの趣旨で作られた道の条例(注1参照)などが存在していることを理由に、現時点では反対の意向を表明しており、2月13日に「仮に概要調査に移行しようとする場合には現時点では反対の意見を述べる考え」とコメントしています。この点に関して知事は2月15日に「現時点で反対の意見を述べると私は繰り返し申し上げているにもかかわらず報告書原案にはそのことが何にも書いていない」と不満を表明しています。ただ、知事はこれまでの立場を崩してはいないものの、意見表明に当たっては、道議会や当該の2町村、さらに道民の意見を踏まえて「適切に対応したい」との意向も示しています。また、北海道は報告書の完成後に予定されている説明会を重視しています。昨年末、NUMOに対して、説明会を道内のすべての振興局(注2参照)ごとに聞くだけではなく、ほかに希望する自治体があれば同様に対応するよう要請しています。
(注1:北海道は、全国で唯一となる“核のごみ” の地層処分の研究施設がありますが、施設を受け入れたことで不安の声があがり、“核のごみ”を「受け入れ難い」とした条例が2000年に制定されています)
(注2:北海道は、明治時代に配置された「支庁」に由来する行政区分である「総合振興局・振興局」に分かれており、全部で14あります)。
(上記の北海道知事の姿勢に関する説明は朝日新聞デジタル版2024年2月13日などによるものです)

「概要調査」に寿都町と神恵内村、あるいはこのいずれかが応じることになるのか、両者あるいは一方が応じた場合には北海道知事はどのように対応するのか、寿都町も神恵内村も応じなかった場合に政府はどのように対応するのか、これ以上の候補地選定の作業を進めることを断念することになるのか、先行きはかなり不透明です。しかし状況がどうであれ、最も注目されるのは、概要調査へ応じるか否かを決定する前に、寿都町の町長と神恵内村の村長がどれだけ真剣に住民の意見に耳を傾けるか、また北海道知事がこれら2町村の住民だけではなく道民全体の意見に十分に耳を傾けるかという点です。

次に原発が立地されている佐賀県玄海町で最近「文献調査」に応じようとする動きが現れているため、玄海町における動きとその問題点などについて記します

【佐賀県玄海町議会が核廃棄物最終処分場の候補地選定のための「文献調査」の受け入れを容認】


 九州電力の玄海原発が立地されている佐賀県玄海町(人口5131人:2024年3月1日現在)の本会議で、4月26日、経産省とNUMOが中心になって現在進められている高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地の選定作業の第一段階である「文献調査」を求める請願が、賛成6、反対3で採択されました。原発立地自治体の議会がNUMOによる文献調査を容認するのは初めてであり、注目を集めています。
文献調査に応じるには自治体の首長である玄海町長の同意が必要とされるため、今後は脇山伸太郎町長の判断が焦点となりますが、同山長は報道陣に対して「議会で採択されたので大変重く受け止めている」と述べ、5月の中旬にも判断する考えであることを示しました。

玄海町内の商工団体による請願の内容:「調査受け入れは原発立地自治体の責任」

請願は、今年の1月から3月にかけて町内の旅館、飲食店、建設関連の3つの団体から出されたものです。請願書では「文献調査に応じることは(原発がある)自治体の責任」と主張されています。これは全国の原発が立地されている自治体に調査受け入れを促すことを狙いとしたものではないかと考えられ、他の市町村の判断に影響を与える可能性があります。また請願理由において、2020年に北海道の二町村が文献調査に応じて以降新たに手を挙げる自治体が現れていないことを念頭に置いて、「処分場選定に苦労している国に協力すべきと考える」とも主張しています。4月25日に開かれた議会の特別委員会では、「最終処分は原発立地自治体には避けて通れない問題だ」「電気は受け取る,後は知りません,では駄目」という発言があるなど、文献調査に賛成する議員からは、現在の原発立地自治体こそが議論を起こして国策を前進させるべきだとする意見が相次いでいました。上記のように玄海町は国の姿勢に理解を示していますが、玄海町が国の原子力政策に協力的なのは今に始まったことではありません。たとえば、MOX燃料(プルトニウムの酸化物とウランの酸化物を混合した核燃料)と通常のウラン燃料を併用するいわゆる「プルサーマル発電」を行うことを全国で初めて受け入れており、また東電福島第一原発事故後の原発の再稼働も全国で最初に認めています(プルサーマル発電に関しても原発の再稼働に関しても,受け入れた原発立地自治体には、国から特別の交付金が支払われることになっているため、玄海町はこれらの交付金をすでに受け取っているものと考えられます)。

原発関連の交付金で財政が豊かな玄海町

文献調査を受け入れた前述の北海道の寿都町と神恵内村では、また町長が調査の受け入れを拒否した長崎県対馬市でも、財政状況が厳しいなかで交付金を受け取ることの是非も問われました。一方、玄海町の場合は、たとえば今年度当初予算100億円のうち6割を原発関連の収入が占めており、貯金に相当する基金が187億円(2022年度末)もあるなど、財政に恵まれており、そのため佐賀県で唯一の地方交付税の「不交付団体」となっています。玄海町が財政的のこのように豊かなのは原発立地を受け入れたことに伴う電源三法に基づく交付金をはじめとした原発に関連した様々な交付金が国から支払われていることによるものであることは明らかです。

玄海町における文献調査に関する今後の見通し

最終処分場候補地選定の第一段階である文献調査の受け入れの可否は当該の自治体の首長のみの判断によるものとされています。このため玄海町長の判断が注目されますが、玄海町議会が4月26日に「文献調査」を求める請願を採択したことを受け、経済産業省・資源エネルギー庁の幹部が玄海町の脇山伸太郎町長を5月1日に訪問するということが報じられていました。この訪問は玄海町長に調査受け入れるよう国として正式に申し入れることを目的としたものです。より直截に言うならば、町長に圧力をかけることを目的としたものであることは明らかです。玄海町長が調査受け入れに応じない場合は、文献調査に手を挙げる動きに水を差すことになりかねないと経産省は考えているものと推測されます。玄海町の脇山伸太郎町長は前述のように5月中に最終判断を下すとしていますが、上記の経産省幹部による申し入れは判断材料のひとつにされるものと考えられます。

調査受け入れに否定的な佐賀県知事

前述のように、最終処分場候補地選定の第一段階である文献調査の受け入れの可否は当該の自治体の首長の判断だけで決めることができますが、第二・第三段階の調査に関しては当該の自治体が存在している都道府県の知事の同意が必要です。佐賀県の山口祥義(やまぐち よしのり)知事は、調査受け入れの請願が町議会に出された時点で「新たな負担を受け入れる考えはない」と明言していましたが、「町の議論を見守りたい」との考えも示しています。

各種の商工団体などの共同による町議会への調査受け入れの請願は経産省などによる事前の働きかけがあったことによるものではないかという疑問

玄海町では文献調査の受け入れの請願が町内の商工拠団体(旅館、飲食店、建設業の業界団体)により議会に出されたとされていますが、なぜ住民団体や市民団体ではなく、これらの業種の関連団体がわざわざ調査受け入れの請願を行ったのか、その事情は明らかではなく、理解に苦しみます。また、なぜ請願に際して唐突に「文献調査に応じることは原発立地自治体の責任」と主張していたのか、この点に関しても何か不自然なものが感じられます。一方、前述の対馬市の場合も、同様に市内の各種の商工団体から請願が行われていました。2023年6月に賛否両方からの請願が市議会に8件出され、そのうち調査受け入れを求める請願2件が議会で採択されたのですが、この2件の請願団体は長崎県建設業組合対馬島支部と対馬市商工会でした。商工団体がわざわざ請願を行い、その請願が議会で採択されという経過は、対馬市と玄海町は共通しています。このように当該自治体に存在している商工団体などによる議会への請願を議会で採択させることにより受け入れの可否に関する権限を有している首長に圧力をかけるという、調査受け入れを推進するための構造の背景には、国の機関からの各種団体などへの事前の働きかけが存在していたのではないかと疑われます。

 上記の私の推測は、最終処分場候補地の選定問題が遅々として進まないために、すこし以前から、経産省はこの問題をNUMOにだけ任せるのではなく経産省全体として取り組むとする方針を打ち出しており、今年の4月26日にも、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」なるものを閣議決定したことを国が公表していることを根拠にしたものです。
この閣議決定の内容を知らせる文書には「2020年11月に、北海道の寿都町と神恵内村において、処分地決定プロセスの最初の段階である『文献調査』を開始して以来、最終処分事業に関心を持つ地域は未だ限定的な状況である。こうした中、国としては、最終処分の実現に向けて、政府一丸となって、かつ政府の責任で取り組んでいくべく、『特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針』を決定した。今後これに沿って、最終処分に向けた取り組みを強化する」と記されており、具体的な方針として、関係省庁連携の体制構築」「国・NUMO・電力会社の合同チームの新設と全国行脚」「国から自治体首長への直接的な働きかけの強化」「国と関係自治体との協議の場の新設」「関心地域への国からの段階的な申し入れ」などを挙げています。このたびの長崎県対馬市と玄海町における文献調査受け入れ問題にはこのような政府の方針が影響しているものと考えられます。すなわち、前述の対馬市と玄海町で市内・町内の商工団体による調査受け入れを内容とする請願の議会への提出は経産省の機関による事前の働きかけがあったことによるものではないかと考えられ、また玄海町の請願団体が「調査の受け入れは原発立地事態の責任」と唐突に主張しているのも、経産省の機関による言わば「入れ知恵」によるものではないかと疑われます。

(おわりに)

 核廃棄物の最終処分の問題は決して避けて通ることができない問題です。たとえドイツのように脱原発が実現されるに至っても、また福島第一原発の廃炉が順調に進んだとしても依然として存在する、科学技術的にも社会的にも解決が極めて困難な、原発に関連した最も厄介な問題です。今後、政府は最終処分場選定の作業をこれまで以上に強力に押し進めようとするのは眼に見えています。この意味から、今後も最終処分場問題について私たち市民は十分な関心を持ち、強引な政府の進め方には強く反対していかなければなりません。

2024年5月5日

《 脱原発市民ウォーク in 滋賀 》呼びかけ人の一人:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41
電話:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp
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脱原発 市民ウォーク in 滋賀 5月の予定

2024-04-21 23:47:04 | 記事
■地震が来るぞ!! 
■老朽原発高浜1・2号機&美浜3号機うごかすな!
■使用済み核燃料の行き場はないぞ!
■福島第一原発事故放射能汚染水流すな!
■止めろ!岸田政権の原発暴走!
 
◆ 第121回 脱原発 市民ウォーク in 滋賀 ◆

「老朽原発うごかすな!原発回帰への暴走をとめよう!-という声と行動が、
若狭・福井と関西・中京の都市圏をむすんで広がりつつあります。
・・・「一食断食」をよびかけます。

少しひもじさを体感しながら、フクシマの被災者に心を寄せ、
自らの子孫の未来に想いをはせるために、いつでも、どこでも、だれでも、
ひとりでもできる実践です。」(中嶌哲演・『はとぽっぽ通信』2023.6) 

1450万人の近畿の水源=びわ湖と私たちの未来=子どもたち孫たちを守りましょう!
ご一緒に歩きましょう! 参加無料! 予約不要! 

2024年 5月11日(土)13:30  JR・京阪膳所駅前集合  

★コース = ときめき坂 ~ 元西武大津ショッピングセンター前 ~ 関電滋賀支社前~
       ~ びわ湖畔


☆主 催=21世紀 脱原発市民ウォーク in 滋賀 実行委員会
☆呼びかけ人・・・池田進(原発を知る滋賀連絡会 電話077-522-5415)
         岡田 啓子(ふぇみん@滋賀 電話077-524-5743)
         稲村 守(9条ネット・滋賀 電話080-5713-8629)

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<トピックス>


3.29福井地裁前・・不当な2つの仮処分却下を許さない!



3.31老朽原発うごかすな!美浜全国集会・デモ



3.31老朽原発うごかすな!美浜全国集会・デモ

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「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」 チラシのダウンロードは ⇒ コチラ

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