21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

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原発のテロ対策は どうなっているのか?

2019-05-16 11:20:48 | 記事

《脱原発 市民ウォーク in 滋賀 のご案内》

5月19日(日)に関西電力本社前で「関電包囲全国集会」が予定されていますので、
5月の「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」のデモはお休みさせていただきます。

このため次回、第78回の脱原発市民ウォークは
6月29日(土)(JR膳所駅前広場:13時半)におこなうことにいたします。
まことに勝手ですがご了承くださるようお願いいたします。


■■ 原発のテロ対策はどうなっているのか? ■■

◆遅れている日本の原発のテロ対策

原子力規制員会が4月24日に、設置が遅れている原発のテロ対策施設について、決められた設置期限に間に合わない原発に対し、電力会社が求めていた期限延長を認めず、運転停止を求める方針を確認したことが朝日新聞など全国紙で報じられていました
https://www.asahi.com/articles/ASM4S3GSYM4SULBJ006.html

テロ対策施設というのは正式名称が「特定重大事故等対処施設(略称:特重施設)とされる、原子炉建屋から一定の距離を置いて設置され、たとえばテロリストによる攻撃で大型旅客機が衝突したような非常時であっても、原子炉を遠隔操作で冷却できるようにすることを目的にしたものです。4月25日の朝日新聞によれば、スイスやドイツの原発ではすでに同様の設備を備えており、日本の規制員会はこれらの例を参考にしたとされています。この施設には遠隔操作できる緊急制御室のほか、原子炉を冷却し続けるための発電機・ポンプなどの一連のバックアップ設備を備えるよう求められており、建設費は原子炉1基あたり500億~1200億円が見込まれるとされています。

この施設は東電福島第一原発事故後に強化された新たな規制基準により設置が義務づけられたものであり、再稼動に必要な安全対策工事の審査を終えてから5年以内に設置しない場合は新基準に適合していないとして、規制員会は運転停止を命じることができるとされています。このため、このままではすでに再稼動されている関電、九電、四国電力の5原発の9基の原子炉は設置期限を迎える2020年以降、順次運転停止を迫られることになります。停止を命じられても設置が完了すれば再稼動できるのですが、これまでのところ全国の他の原発も含めてテロ対策施設の設置が完了しているところは皆無です。原発の大事故を起こしたことがないスイスとドイツの原発で既にこのような施設が設置されていることを考えると、日本の原発のテロ対策が大幅に遅れていることは明らかです。

テロ対策施設の設置期限をめぐっては、規制員会は2015年の時点で、当初の新規制基準から5年以内、すなわち2018年7月までとしていたのを原発ごとに審査終了後5年以内に先のばしすることに決めていたのですが、電力各社は「当時と状況が変わった」として、再起動している6原発12基で1~2年半ほど設置期限を超える見通しになったとして規制委員会に期限延長などの「配慮」を求めていました。しかし、規制委員会側は「状況に変化はない、不適合状態の原子炉の運転を看過することはできない」として電力会社側の意向を退けたとされています。規制員会によるこのたびの設置期限の延長と認めないとする措置は、すでにこれまでに一度期限の延期を行っているのですから、当然であると言えるでしょう。

◆ベールに包まれている原発のテロ対策

 ところで、原発のテロ対策については、治安上の秘密保持を理由として具体的な情報はほとんど開示されていません。このため、テロ対策の具体的内容については、私たち市民は事実上知ることはできないに等しいというのが現状ですが、2016年6月発行の「東洋経済」が原発のテロ対策の問題を取りあげ、「日本の原発はテロに対する防御が甘すぎる」と題した記事を掲載しており https://toyokeizai.net/articles/-/123296、以下のように記しています。

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《航空機衝突などのテロ問題について原子力規制当局はどう対処しているのか。原子力規制委員会の田中俊一委員長(当時)は(2016年)6月15日の記者会見で、「(テロなどで炉心に著しい損傷が起きた場合に格納容器の破損による放射性物質の著しい放出を抑制するための施設としての)特定重大事故等対処施設(特重施設)の審査を厳密に実施している」と説明した。そのうえで「テロの問題については、情報公開によってよけいテロの危険性が高まるということもあり、特重施設の審査については非公表でやっている」「(審査を厳格に行っていることについては)お任せいただくしかない」とも述べている。
「航空機落下や意図的な衝突によっても原子炉が安全に止まって冷却機能が維持されることについては、(特重施設に関する審査の中で)基準への適合を求めている」とも田中委員長は説明している。ただし、「どういう飛行機がどのくらいの確度で、どのくらいのスピードなどといったことは申し上げられない」としている。》

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この記事で述べられているように原発のテロ対策は厚い秘密のベールに包まれており、市民は規制委員会に「お任せする」しかない状態に置かれています。このためこのような状況の下では、果たして「特別重大事故等対処施設」なるテロ対策の手段が実際にどの程度有効に機能するか、国民が伺い知ることはできません。原発のテロ対策については、上記のようなテロ対策施設に限らず、テロ対策に関する様々な情報は原発を保有している国では秘密にされがちなであると推測されますが、この東洋経済の記事において、関係者は日本の場合は情報公開を行ってもほとんどが黒塗りにされていると述べていると報じられています。しかし、公正で的確な情報公開が行われなければ、国民は電力会社が実際にどの程度安全性向上対策に取り組んでいるか否か、その実態を確かめることはできません。

◆裁判であいまいにされている電力会社によるテロ対策の可否についての判断

原発関連の裁判に際して、電力会社によるテロ対策の内容がどの程度開示され、裁判官によりどの程度突っ込んだ検討が行われているのかは不明です。原発裁判についての報道でもテロ対策に焦点をあてた報道は少なく、このため裁判においてテロ対策について正しい情報に基づいてきちんと審理や検討が行われているのか否か市民には分りかねるのですが、場合によっては裁判所の判断は極めて曖昧なものになっていますです。たとえば、2016年3月10日、関電高浜原発3、4号機の運転を差し止めるとする、画期的な仮処分の決定が大津地裁により下されましたが、原発のテロ対策についての判断は、判決書においてわずか10行足らずでごく簡単に以下のように記されているに過ぎません(判決書から引用)。

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「4 その他の争点 (2)争点5(テロ対策)について」
《債務者(関電)は、テロ対策についても、通常想定し得る第三者の不法侵入などについては、安全対策を採っていることが認められ、一応、不法侵入の結果安全機能が損なわれるとは言えない。もっとも、大規模テロ攻撃に対して本件各原発が有効な対応策を有しているといえるかは判然としないが、これについては、新規制基準によって対応すべき範疇(はんちゅう)を超えるというべきであり、このような場合は、わが国の存立危機に当たる場面であるから、他の関連法規に基づき国によって対処されるべきものであり、またそれを期待できる。したがって、新規制基準によってテロ対策を講じなくても、安全機能が損なわれるおそれは一応ないとみてよい》  (以上)

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この判決文は全体として原発におけるテロ対策に大きな問題はない、妥当なテロ対策が講じられていると裁判所が判断していることを意味しているのではないかと推測されるのですが、皆さんはこの判決文をお読みになってどのようにお感じになるでしょうか・・・・

上記の判決書の内容は何とも意味内容が曖昧で定かではない部分が多く、これでは司法機関としての明確な判断を示すという裁判所の責任を回避しているのではないかと考えざるを得ません。外部からの侵入者に対して、たとえば米国では軍が原発に常駐しているとされていますが、日本ではどのような対策が具体的に講じられているのかという点にはまったく触れずに、判決書ではいきなり、「安全対策が講じられているから、一応、不法侵入の結果、安全機能が損なわれるとはいえない」と極めてあいまいな表現で結論が示されているに過ぎません。「一応」とは一体どのような意味なのでしょう?これでは外部からの侵入に対してほんとうに安全であると言えるのか、疑問を抱かざるを得ません。

また、「大規模テロ攻撃」に関しては新安保法制でいうところの「わが国の存立危機」にあたる事態だから国による対処が期待できる、だから新規制基準に基づきテロ対策も講じなくても「安全機能が損なわれるおそれは一応ないとみてもよい」としていることも、電力会社の責任を国に転嫁する何ともご都合主義の乱暴な論理です。国による対処が期待できても期待通りに事前に危機が回避されるとは限らないからです。また、この点に関しては、この判決書が示された2016年3月とほぼ同時期の同年6月に行われた規制委員会の田中委員長(当時)が行った記者会見で、先に示したように田中氏が航空機衝突などのテロ問題、すなわち判決書でいうところの「大規模テロ攻撃」に対する対策としての「特別重大事故等対処施設」について言及しているにもかかわらず、判決書でこの施設についてまったく触れていないことは何とも奇妙であると言わざるを得ません・・・


2019年5月15日

《脱原発 市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進

連絡先:大津市木下町17-41 電話/FAX:077-522-5415


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