21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

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福島第一原発トリチウム汚染水問題:風評被害による損害は賠償するから 汚染水を海に流してもいいではないかという 政府・東電合作の強引な手抜き汚染水対策

2021-09-09 20:20:01 | 記事
《第97回・脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内》

暑い夏が過ぎ少し涼しくなってきました。依然としてコロナ禍は続いていますが、97回目の脱原発市民ウォーク in 滋賀を9月11日におこないます(集合時間午後1時半、JR膳所駅前広場)。どなたでも自由に参加できます。ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。

福島第一原発トリチウム汚染水問題:
風評被害による損害は賠償するから汚染水を海に流してもいいではないかという政府・東電合作の強引な手抜き汚染水対策


みなさんもご存知のように、東京電力は去る8月25日、政府との合意の下に(注1)、問題になっていた福島第一原発のトリチウムが残存している汚染水について、海水により法定基準値の約40分の1のまで薄めて、原発の沖合1キロまで海底に配管(トンネル)を通し、海洋に放出する方針であることを発表しました。2013年春から海洋への放出を開始する方針であるとされています。また、政府の関係閣僚会議は前日の8月24日、汚染水を海に放出することに伴う風評被害に関する対策をとりまとめており、風評被害で値下がりした水産物の買い取りのための基金を政府が用意するなどとしています(注2参照)

福島第一原発の処理水(トリチウム以外の、ストロンチウム90など様々な放射性物質が除去できるとされている多核種処理施設ALPSで処理された汚染水:注3参照)は1日約40トンのペースで増え続けており、4月現在約130万トンに達しており、現在、敷地内の約1000基のタンクに保管されています。政府・東電がこのたび上記のような方針を決定したことの直接的な原因は、福島第一原発の敷地内に汚染水保管のためのタンクを設置する余地はもう存在しておらず、これ以上の処理水のタンクによる保管は無理であると政府・東電が判断したことにあります。

しかし、このたびに処理水を海洋へ放出するという方針は決定したことは、以下に述べる理由から根本的に間違いであると考えられます。海洋への放出という安易な方針を撤回し、当面、汚染水の陸上での保管を継続すべきです。

1 トリチウム汚染水をただ基準値以下にまで希釈して海洋に放流するという処分方法は放射性物質による環境汚染をただ単に拡散させ環境を悪化させるに過ぎず、有害無籍です。このため汚染水問題の根本的解決からは程遠いものであることは明らかです。

2 海洋に放流することが生体系へ影響を及ぼすという懸念が存在しています。福島原発の事故処理のために生じた汚染水は、通常の原発による事故を起こさず行われている日常運転により生じる廃水とは性質を異にするものであり、トリチウム以外に様々の放射性物質を含有しており(注3参照)、たとえ基準値以下に希釈して放流しようとも、これらの放射性物質が環境中に蓄積され、生物濃縮の現象が生じる可能性が考えられます。生物濃縮された海産物を摂取することによる内部被曝が懸念されます。

3 汚染水を海洋へ放出することは子供たちの将来的な健康リスクを高めます。今年の3月11日、東京電力福島第1原発の放射能汚染水に関して、国連の専門家が声明を発表しており、汚染水は環境と人権にとって重大なリスクをもたらすため、太平洋に放出するのは受け入れられる解決策ではないとしています。
https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/story/2021/03/17/50653/

4 福島の人々の合意がまったく得られていません。東電は2015年に汚染水を巡る福島県漁連の要望に回答した文書において「丁寧に説明し、関係者の理解が得られないいかなる処分も行わない」と明記されていることから(https://www.tokyo-np.co.jp/article/97727東京新聞、2021年4月13日)、このたびの東電による海洋への放出という方針は過去の約束を反故にするものであることは明らかです。また、4月7日に菅首相と会談した全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は「漁業者・国民の理解を得られないアルプス(ALPS)処理水の海洋放出には、JFグループとして断固反対」と申し入れ、慎重な判断を強く求めており、その後政府が4月13日に関係閣僚会議で海洋放出の方針を正式に決定したことに対して、「それにも関わらず本方針が決定されたことは極めて遺憾。到底容認できるものではない。今後とも海洋放出反対の立場はいささかも変わるものではない」との声明を出し強く抗議しています。(農業協同組合新聞、2021年9月1日)。また、福島県内の漁業関係者だけではなく、宮城県沿岸部の漁業者の団体や水産会社も反対の声を挙げており、また福島県内の45の市町村(県内市町村の約7割)も反対の意思表示をしており、あるいは慎重な対応を求めています(原子力資料情報室2021年4月10日)。このたびの東電による海洋放出という方針の決定は東電による「関係者の理解なくいかなる処分も行わない」とした約束を破る行為であり、現在のみならず将来における国・東電の約束に対する信頼を失わしめるものです。

5 汚染水保管用のタンクを陸上にさらに設置することは可能です。政府・東電がトリチウム汚染水を海洋へ放流する方針を採ることにしたより直接的な理由は、もうこれ以上の量の汚染水を保管するためのタンクを設置するスペースが存在していないことであるとされていますが、これは事実に反しています(注4参照)。また、たとえ敷地内に余地がないとしても、タンク建設のためのスペースを確保する手段は存在しています。たとえば、福島第一原発の敷地内には余分のスペースが存在していないということが事実であっても、原発敷地に隣接する土地を買い取り、それを保管用のタンクの建設用地に供するという手段が存在しています。陸上における汚染水の保管継続の方法については、様々な市民団体からすでに具体的な提案がなされています。

6 汚染水を陸上で保管した後、無害化して処分する方法が現実に存在しています。具体的な方法が原子力資料情報室や原子力市民員会などの市民団体によりすでに提案されています。たとえば、実際に米国の核関連施設において採用されている、汚染水をモルタルなどにより固化したうえで永久処分するという方法が原子力市民委員会により提案されています
https://www.foejapan.org/energy/fukushima/pdf/200330_kawai.pdf
また、アルミニウムを素材とした、水の中からトリチウム水の分子を分離するための濾過装置が日本で開発されつつあります(https://www.u-presscenter.jp/2018/06/post-39661.html 大学プレスセンター、近畿大学工学部・㈱日本アルミの共同研究)。海洋への放出を止め、陸上で保管を継続した後、これらの技術を生かして、汚染水を最終的に処分すべきであると考えられます。

(注1)政府はこのたびの東電の発表に先立ち、さる4月13日に、福島原発の多核種処理施設ALPSで処理した後の汚染水を海洋へ放出することを認める閣議決定を行っています。

(注2)トリチウム汚染水の海への放流による風評被害の賠償:被害の有無・程度を認定するのは東電とされており、被害者の意向がどこまで反映されるかは不透明です。東電はこれまでの福島第一原発の大事故に起因した被害に関して、十分な賠償を行ってきたとは言えず、賠償を拒むケースが目立っているからです)

(注3)トリチウム汚染水の欺瞞:事故を起こしていない通常の原子炉からの海洋に放流される廃水にはトリチウム以外は含まれていませんが、福島第一原発の場合は、事故処理の過程で生じる汚染水には事故により燃料棒から外部に漏れ出たストロンチウムなどの放射性物質も含まれています。当初東電は、ALPSにより処理されたいわゆる《処理水》にはトリチウム以外は残存していないとしていました。しかし2018年、この処理済みの汚染水のかなりの部分にセシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131などリチウム以外の放射性物質が検出限界を超えて存在していることが判明しました。しかしず、この事実を公表しなかったため、政府・東電の信頼は大きく損なわれ、海洋放出の決定は先延ばしになりました。このため東電はこれらの汚染水をもう一度ALPSで処理することによる二次処理を施すことによって、海洋放出が予定される二年後までにはトリチウム以外の放射性物質を基準値以下にするとしていますが、その実現性は不明です。各種の放射性物質が基準値以下に達しない場合は、トリチウムの場合と同様に基準値以下になるまで海水で薄めて放流されることになるのではないかと懸念されます(ニューズウィーク日本語版2021年4月16日)。

(注4)河北新報(2020年12月18日》は以下のように報じています。「たまり続ける放射性物質トリチウムを含む汚染水を巡り、原発敷地内には廃炉作業の予定がない《空白地帯》が存在することがわかった。東電は活用方針を決めないまま11日、現行計画に基づく処理水保管タンクの「設置完了」を宣言した。仮に空白地帯にタンクを置いた場合、満杯になる時期は一年先延ばしされる・・・・」

以上、汚染水を海洋に放出することに反対する理由を具体的に記しました。しかしながら、福島の漁業関係者を中心に海洋放棄に反対する声がいかに強くても、今後、政府・東電は海洋投棄の方針を強硬に貫こうとするものと考えられます。福島原発の汚染水問題は福島県に限らず全国民の問題であることを考えるならば、私たち市民も、海洋投棄に強く反対しなければならないのではないでしょうか。

この意味から、菅首相宛ての海洋放棄に反対することを文面に記したハガキを作ってみました。このハガキを同封いたしますので、よろしければご活用ください。もちろんご自分で手紙を書かれても結構です。ご自分で首相あてに手紙を出される場合は、以下に記すあて先にお送りになってください。

〒100-8968 東京都千代田区永田町 1-6-1 
内閣官房内閣広報室 内閣総理大臣 菅義偉 様

☆なお、トリチウム汚染水の問題については、今年5月の「第94回脱原発市民ウォーク」の案内文で、海洋に放流することの問題点などを説明しています。同じ内容の一文を脱原発市民ウォークのPR用のブログにも掲載しています。その内容はこのたびの案内文における内容と重複してる部分が多々ありますが、よろしければご覧になってください
https://blog.goo.ne.jp/datugenshiga/e/0588053f76f2510690ed440aea2a9360)。


2021年9月6日

《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41 
電話/FAX:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

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