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CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

第107回ジロ・デ・イタリアが始まる

2024-05-05 10:32:15 | ジロ・デ・イタリア
 いよいよ第107回目のジロ・デ・イタリアがトリノで幕を開けます。私がグランツールを初めて目にしたのはランス・アームストロングの全盛期でした。癌を克服してからの彼の強さは圧倒的なものでした。後にドーピングで全てのタイトルを剥奪されることになるのですが、私の中では当時彼の走りに魅せられていたという事実は変わらない。

 決してドーピングを擁護している訳ではありませんが、癌と戦い抜いて勝利を手にした彼がドーピングで全ての勝利を剥奪されたというのは大いなる皮肉でしょう。ランス・アームストロングがツール・ド・フランスを7連覇したのは1999年から2005年にかけてのことでした。その後、引退と復帰を繰り返していましたが、私が彼を観ていた頃はまだ噂程度に過ぎなかったのです。勿論、その頃の私は彼がクリーンだと信じていました。そして、彼が全米反ドーピング機関 (USADA)からドーピング容疑で告発されたのは、2012年のことだったのです。ツール・ド・フランス7連覇達成という偉業から7年も経過していたのです。

 この頃は大好きだったアルベルト・コンタドールにもドーピングの疑いがかけられ、グランツール完全制覇やUCIワールドランキング初代王者にもなった偉大なるスペイン人もドーピング有罪となり、2010年のツール・ド・フランスとともに、2011年のジロ・デ・イタリアの総合優勝も剥奪されることになったのです。
 ランス・アームストロングの走りに魅せられロードレースを観始め、ランスの後もアルベルト・コンタドールという若き才能に魅了されてきた私も、自分のこれまでの感動が全て奪われてしまったような気持ちになり、ロードレースを観ることから離れて行きました。
 それから、10年以上が経過し、70歳を目前にした私も、雪道での転倒で右脚脛骨を骨折して、自転車に乗れない心を癒すため、久々にロードレースを観初めたのです。情報としては色々と知ってはいたものの、久々に観るロードレースはメンバーも大幅に入れ替わり、新しい時代に入っていることを実感させれれました。

 ストラーデ・ビアンケではポガチャルの独走、ロンド・ファン・フラーデレンやパリ~ルーベでのファンデルプールの強さ等々、私が観て来たのは一昔前の選手たちだったことを改めて知らされました。骨折から3ヶ月、ようやく自転車には乗れるようにはなったものの、未だ10km程度のポタリングがやっとという状況でジロ・デ・イタリアが開幕します。

 今回のジロ・デ・イタリアの注目はなんといってもタディ・ポガチャルの参戦でしょう。2020年に若干20歳でツール・ド・フランスを征し、翌21年も連覇、ここ2年はヨナス・ヴィンケゴーに敗れたものの、クラシックレースを勝ちまくり、モニュメントの完全制覇も目前なのです。2018年のクリス・フルーム以来となる3大ツール制覇に向けたスタートでもあるのです。エディ・メルクス、ベルナール・イノー、アルベルト・コンタドール、・ヴィンチェンツォ・ニバリといった限られたスパースターしか成し遂げていない大記録なのです。
 現在ツール・ド・フランス連覇中のライバル、ヨナス・ヴィンケゴーが骨折の為不参加の今回が最大のチャンスで、チームはともかく本人は本気でマリア・ローザを取りに来ているのは間違いないでしょう。強さと脆さを併せ持つポガチャルですが、早々とジロ・デ・イタリアの参戦を表明し、レースを絞ってコンディション作りをしているところをみても。このレースにかける本気度が伝わって来ます。
 
 
 
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ジロ・デ・イタリアを終えて

2013-05-31 08:33:16 | ジロ・デ・イタリア

 山岳が厳しいことで有名なジロ・デ・イタリアではあるのだが、今年は例年にはないほどの雨や雪の影響でさらに過酷なものとなってしまった。ご承知の通りニーバリの圧勝という結果に終わったが、度重なる悪天候と寒さなの中を完走した選手達全員に心からお疲れ様と云いたい。Giro2013_final_01

 また、あれだけのタイム差がありながら最後迄攻めの姿勢を崩さなかったニーバリのファイトには賛美を送りたい。ブエルタ・ア・エスパーニャでの総合優勝こそあったものの、ジロ・デ・イタリアでもツール・ド・フランスでもポディウムの頂上が遠い選手のように感じていたのだが、チーム移籍が見事に功を奏したのか、今までのひ弱なイメージはすっかり影を潜め、レース後のコメントにも静かな闘志が感じられたほどに成長していた。
Giro2013_stage20_01
 昨年まで在籍していたリクイガス(現cannondale pro cycling)はサガンのためのチームという色合いが濃くなり、新天地を求めてアスタナへ移籍した格好だが、それが見事に嵌ったようだ。特に今年のニーバリのTTの成長は著しいものがあった。第8ステージの個人TTではウィギンスとのタイム差を11秒に、抑えエヴァンスには14秒の差を付けるという驚きの結果でマリアローザを獲得してしまったのだから。
 戦前の予想ではこのTTでウィギンスが圧倒的なタイム差を稼ぎ、そのまま強力なチーム力に守られて昨年のツール・ド・フランスのようなレースに持ち込むものと見られていた。ウィギンスの不調もあったことは確かだが、このステージでの結果がニーバリに自信をもたらしたことは確かだろう。Giro2013_stage18_01

 その後は雨や雪という過酷なステージが続いたが、一度もマリアローザを手放すことはなかったのである。圧巻だったのが第18ステージの山岳TTだった。ここまで一度もステージ勝利のないままマリアローザを守って来たニーバリだったが、2位のサミュエル・サンチェスに31秒ものタイム差を付けてステージ優勝をしたのだ。グランツールでの後半のTTは選手達にとって最もキツイステージとなるのだが、この勝利には王者の風格さえ感じられた。
 確かに優勝候補筆頭のウィギンスが早々とレースを離脱してしまったたため、プレッシャーはかなり減っていたことは確かだが、イタリア人としてジロ・デ・イタリアに勝つことのプレッシャーは少なからずあったはずである。それを克服しての圧勝劇には価値があると思っている。この後、ツール・ド・フランスはスキップするようだが、ブエルタ・ア・エスパーニャを圧勝するようなら、来年のツール・ド・フランスでは確実に優勝候補の筆頭に名が挙がるだろう。
Giro2013_stage21_01
 また、今年のジロ・デ・イタリアでは新人賞争いも熾烈で、アージェードゥゼールのべタンクールがサクソ・ティンコフのマイカを最後の山岳ステージで逆転し、マリアビアンカを確定させた。マイカは昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでコンタドールのアシストとして活躍し、昨年のジャパンカップにも参戦したこともあり、密かに応援していたので、個人的には残念な結果となってしまった。マイカにはツール・ド・フランスでコンタドールのアシストという役割があるので、ツール・ド・フランスでの活躍に期待している。Giro2013_stage02_01

 それにしても、エースを早々と失いながらもウランが総合2位でチーム総合では1位というチーム・スカイの強さには舌を捲かざるを得ない。ウィギンスがツール・ド・フランスへも参戦することになれば、チーム内の不協和音は大きくなるだろうが、フルーム・ウィギンス・ポートの3枚看板は強烈なものとなるだろう。特に今年調子がなかなか上がらないコンタドールはかなり苦しい戦いを強いられることになるだろう。
 サクソ・ティンコフはコンタドールがドーフィネへ、クロイチゲルがツール・ド・スイスに参戦して来ることになるようだが、ここでもコンタドールの調子が上がらないようなら今年のツール・ド・フランスもチーム・スカイの独壇場になってしまう可能性が高くなる。そのドーフィネの開幕が今週末に迫っているのだ。
 今年のコンタドールの走りを見る限り、正直ツール・ド・フランスでの勝利はかなり厳しいと云わざるを得ない。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでも感じたことだが、出場停止から戻ってからのコンタドールの走りに以前のようなキレが感じられないのだ。気持は前面に出ているのだが、身体がそれに付いて来ないといった感じがずっと続いている。TTにも以前のような速さがない。個人的には復活を信じたいところだが、正直、今の状態ではかなり厳しいと云わざるを得ない状況だ。
 いずれにしても、今年のツール・ド・フランスに向けての前哨戦が早くも幕を開けようとしている。今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネにはコンタドールVSフルームに加え、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでコンタドールを苦しめたホアキン・ロドリゲスやバルベルデも参戦を予定している。本番を前にラルプ・デュエズでどんな闘いを見せてくれるのか、今から実に楽しみである。

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ジロ・デ・イタリア開幕に想うこと

2013-05-06 17:06:52 | ジロ・デ・イタリア
 ジロ・デ・イタリア2013が幕を開けた。ただ、今年のジロはTTが3度も組み込まれたり、コースにガリビエ峠やテレグラフ峠が登場したりと、どこかツール・ド・フランス化してしまった印象が強い。Giro2012_map

 確かに山岳コースの厳しさは相変わらずだが、ツール・ド・フランスでさえ近年組み込まれることの少なかったチームTTを組み込み、距離の長い個人TTや山岳での個人TTはランス・アームストロング時代のツール・ド・フランスを彷彿とさせる。
 山岳コースがツール・ド・フランスとは比べ物にならないので、ツール・ド・フランスほどTT能力が総合争いに直結することはないかもしれないが、第2ステージのチームTTと第8ステージの55.5kmという長丁場の個人TTが総合優勝争いを有利にすることだけは確実だろう。
Giro2013_stage02_01
 ウィギンスが第8ステージまでに大きなリードを奪えれば、昨年のツール・ド・フランス同様な展開で逃げ切ることが濃厚だし、ニーバリはここまでのタイム差をどこまで抑えられるかが勝利のカギとなるはずである。
 ツール・ド・フランスはTTが強くなければ総合優勝は難しいが、ジロ・デ・イタリアやブエルタ・ア・エスパーニャは登りが強ければ勝てるレースだったのだが、近年のグランツールはTTを含む総合力が問われる傾向が強くなりつつあるようだ。勿論、マルコ・パンターニのような突出したクライマーがいなくなったこともあるのだが、本来、総合優勝争いがレースの山場であるはずのクイーンステージ、つまり厳しい山岳ステージでではなく、50km程度の個人TTにゆだねられてしまっている感が非常に強くなっていることに少々不満を覚え始めているのである。Giro2013_stage01_01

 グランツールの王者として総合力を問われるのは当然のことではあるのだが、近年はTTで得たタイム差を山岳で守るという消極的なレース展開が非常に目に付くようになってしまっているように感じている。また、○分以内ならTTで逆転できるから、無理に山岳では勝負に出ないというケースもある。勿論、それも勝つための作戦ではあるのだが、正々堂々・真っ向勝負というスポーツ精神が徐々に薄まってしまっているような気がしてならないのである。
 今年のチーム・スカイの布陣は強力である。ひょっとすると全てのグランツールをスカイが全部征してしまうのではないかと思わせてしまうほどなのである。特に前半に2つのTTがある今年のジロでは、第8ステージ終了時点でウィギンスが他の有力候補に対し2分以上のタイム差を付けていることも十分に考えられるのである。ライバル達にとって今のチーム・スカイ相手に山岳で2分ものタイム差を逆転するのは容易なことではないだろう。
 内部のゴタゴタもあるようだが、ウィギンスがジロを勝ってしまうと、ツール・ド・フランスはフルームで狙うという作戦が出来上がってしまうだろう。ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの間隔が1ヶ月ほどしかない状況で、ウィギンスのWツール制覇は難しいというより不可能だと見ている。となれば、チームもフルームをエースにしてツール・ド・フランスに臨まざるを得なくなるはずなのだ。加えて、スカイには今年のパリ-ニースを征したリッチー・ポートまでいるのだ。この布陣は相当に強烈である。
Giro2013_stage01_02
 ジロはまだ始まったばかりだが、ライバル達は果敢なアタックでスカイの牙城を揺さぶり続けるしかないだろう。こうした状況では想わぬ伏兵が蟻の一穴となることもある。優勝候補たちの牽制を尻目に果敢な逃げやアタックを見せて欲しいものである。第1ステージでウルフが逃げて、ヴィヴィアーニがゴールスプリントに絡んだcannondaleやエース不在のサクソ・ティンコフなどが台風の目になってくれることを期待して止まない。

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コンタードールのいないグランツール

2012-05-27 13:09:55 | ジロ・デ・イタリア

 今年のジロ・デ・イタリアの最大のクライマックスとして期待していた第20ステージでしたが、最大勾配22%という超難関のモルティローロの登りでも、チマコッピのステルヴィオでも、優勝候補たちは全く動きを見せないまま、残り17kmで先頭グループからアタックしたデヘントがチマコッピの頂上ゴールを征してしまいました・・・コンタドールが序盤から果敢なアタックを見せた昨年とは雲泥の差だと思います。やはり王者のいないグランツールは盛り上がらないということなのでしょうか?
 勝ちたいという気持ちより、自ら仕掛けて失敗したくない気持ちが先に立ち、優勝候補者たちが互いに牽制をし合うケースも少なくありませんが、TTが得意とはいえないホアキン・ロドリゲスがこのステージで2位のヘシダルとの差を最低でも2分程度に開いておかなければ、普通に考えてホアキンのジロ制覇はありえないと誰もが思っている状況で、ゴール前だけちょっと仕掛けて4位入選でポイント賞を手に入れるというのはいかがなものかと思ってしまうのは私だけではないはずです。
 自ら動いて勝負する気迫のない選手には天も味方にはついてはくれないものです。これはディフェンディング・チャンピオンのスカルポーニや過去2度の覇者バッソにも言えることだと思っています。バッソには自ら仕掛ける力もないように見えましたが・・・個人的にはニーバリが出ていれば彼が総合優勝するだとうと予想していましたが、どうやらツール・ド・フランスへ回るような気配です。
 ツール7連覇後半のランスのように自分の体力的なことも考慮して勝つための作戦を緻密に計算している訳でもなく、コンタドールのように常に勝つために全力でアタックを見せる訳でもないレースを延々と見せられるファンの身にもなって欲しいと思います。
 それに引き換えヘシュダルはエヴァンスのような選手になれる可能性を感じました。エヴァンスも駆け引きはあまりせず先頭を黙々と走り続け、TTで差を付けて勝つタイプの選手で、昨年はコンタドールやアンディ・シュレクを破ってのマイヨジョーヌで表彰台ポディウムの頂点に立ちました。おそらく、ここまでのタイム差なら今日のTTの結果でヘシュダルがマリアローザという可能性が非常に高くなりました。昨日チマコッピに入っても先頭で黙々と走り続けた彼の姿に、おそらく天も味方してくれるに違いありません。
 昨年はコンタドールと共に積極的に動いていたアンディがコンタドールのいないツールで果たして昨年のような走りができるのかどうか?今年絶好調のニーバリがツールでどこまでやれるのか?という興味はありますが、やはりコンタドール不在のツールは見る気にはなれません・・・

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サイクルロードレースに見るエースとアシストの関係

2011-05-29 12:59:34 | ジロ・デ・イタリア

 サイクルロードレースではどうしてもエースに注目が集まりますが、決して個人競技ではありません。中には個人TT(タイムトライアル)のように個人競技に近いものもありますが、サイクルロードレースはチームとしてエースをいかに勝たせるかという団体競技なのです。Jiro2011_12
 ジロ・デ・イタリアの第19ステージはパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がステージ優勝を飾りましたが、これがプロ初勝利だったようです。2000年にプロ入りして以来、アシスト一筋で生きてきたティラロンゴにとっては嬉しい嬉しい1勝だったことでしょう。いくらエースをサポートすることが仕事だとはいっても12年間のプロ生活で1勝もできないというのはどんな気持ちなのでしょう?見方を変えると1勝もできない選手が12年間もプロとして生活していける、ある意味特殊な世界でもあるといえるのかも知れません。
 ティラロンゴといえば昨年までコンタドールのアシストでした。昨年のツールではダニエル・ナバーロ等とともに苦しむコンタドールを懸命に支えていた選手という印象があります。ナバーロはコンタドールとともにサクソバンクへ移籍しましたが、ティラロンゴはアスタナに残り、今年のジロはクルイジガーのアシストとしての参加となりました。
 マクニャーガの山頂手前6.5km地点でティラロンゴが飛び出すと、ダニーロ・ディルーカがすかさずチェックに動き、ものすごい形相で睨み付けて引き戻しました。ダニーロ・ディルーカといえば嘗てはマリアローザを獲得し、2008年の大会ではコンタドールと総合優勝を争うほどの大エースでした。その彼が今年はカチューシャでホアキン・ロドリゲスのアシストというのですからなんとも贅沢な話です。
Jiro2011_11  ディルーカに睨まれて一度は集団に戻ったティラロンゴでしたが、ディルーカが仕事を終え下がって行くとふたたびアタック。タイム差が徐々に開いていきました。後続はサクソバンクのアシストたちがコンタドールを守るように先頭を牽く形になりました。残り3kmのゲートの辺りでコンタドールがするすると先頭に上がって行くシーンがあり、直後にデュポンとホアキン・ロドリゲスが飛び出して行きました。この時は静観していたコンタドールが2kmを切ったあたりで何とアタック!!え~~っと思ったのは私だけではないでしょう?スカルポーニとニーバリのマークに徹するだろうという予想は見事に裏切られてしまいました。
 何でここで仕掛けるかな・・・ホアキンとのタイム差は10分以上あるのに・・・逃げているのはティラロンゴだよ~♪相変わらず次元の違う走りであっというまに先を行くガドレとホアキンを捕らえるコンタドール。このままだとティラロンゴも抜いてしまう・・・ティラロンゴに追いついたコンタドールはティラロンゴに声をかけあっさり前へ・・・しかしコンタドールのペースが上がらない。ニーバリが必死の形相で追いすがって来ているとうのに・・・まさかコンタドールがティラロンゴを牽いている・・・残り100mでティラロンゴが前へ。目頭がジンと熱くなった瞬間でした。Jiro2011_13
 後で知ったことですが、何と「今がチャンスだ、行け」と2度目のアタックを促したのは他でもないコンタドールだったというのです。ディルーカが仕事を終え、サクソバンクのアシストがコントロールに入っている状況でしたから、最も確実なアタックのタイミングでした。
 団体競技であるはずのサイクルロードレースでライバルチームのアシストにエスケープのタイミングを教えるなんて「八百長」じゃないかと思う人がいれば、それはサイクルロードレースを良く知らない人ということになるでしょう。日本にも「人情相撲」という言葉があったのですが、今では「無気力相撲」という味もそっけもない言葉に飲み込まれようとしています。
Jiro2011_14  コンタドールにすれば自分と云うエースがいた間は自由に動くことができなかったアシストが一度目のアタックで自由を得ていると知れば、何としても助けてあげたいという気持ちになったのでしょう。USポスタル時代のランス・アームストロングが何度か自分のチームのアシストをステージ優勝に導いたことはありましたし、ゴール前で総合優勝争いに絡まない選手に先頭を譲ることはありましたが、アタックのタイミングを教えたという話は聞いたことがありませんでした。
 確かに優勝をプレゼントされない選手たちから不満の声があがるのではという心配もありますが、連日ここまでハードなステージを共に戦い続けているとチームと云う枠を越えた強い連帯感が生まれても不思議はないでしょう。勿論、これはコンタドールの独断ではないはずです。ティラロンゴの逃げが決まるとコンタドールはサクソバンクのアシストをあっさり開放していますから、リース監督との相談の上のことだと思います。
 してみると第19ステージのコンタドールのアタックはライバルたちとのタイム差を広げることが目的ではなく、ティラロンゴを勝たせるためのものだったのではと思えてしまうのです。「少し前を引いて、ボクに一息つく暇さえ与えてくれたほどさ」というレース後のティラロンゴのコメントからも十分推測が可能だと思います。それほど昨年のツール・ド・フランスでの彼らアシストの働きはコンタドールにとって大きなものがあったのでしょう。レース後コンタドールは「ティラロンゴは、去年、ボクために多くを尽くしてくれた。彼のおかげでたくさんの勝利が手に入れられたし、ツールも勝てた。」とコメントしています。エースとアシストの関係はチームを超えても存在するものなのかもしれません。

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