goo blog サービス終了のお知らせ 

金山のまぼろし

全力で生きる!!

109 3人で根利へ

2021-06-19 14:55:32 | 幻の走り屋奮闘記エピソード2

 

 

ファミコンショップを辞めた次の日、僕はいつもの2人と根利へ行くことになっていた。

 

日光へ向かう山際の道を180SXで走っていた。

左手は山で右手は谷になっていて下の方に川が流れている。

 

岡ちゃん 「面白い所だから。」

 

嶋田 「ほう。」

 

坂本 「期待してるよ。」

 

岡ちゃんが攻めに行く所はどんどん遠くなっている。

 

 

途中までは一般的な広めの峠道を走って上って行ったが、途中、左に曲がり凄く狭い道を走り出した。

 

ぽつんとある民家のすぐ真横の私道みたいな道を上っていく‥。

 

坂本 「大丈夫?人んちに入っていきそうだけど‥。」

 

岡ちゃん 「大丈夫っさー。」

 

坂本 「すれ違いはできない感じじゃない?」

 

岡ちゃん 「乗ってる人がマンカラな人じゃなければすれ違えるよ。」

 

坂本 「マンカラって何?」

 

岡ちゃん 「あぁ、マンカラは〝使えない〟って意味だよ。あれ?この言葉使わない?」

 

坂本 「使わないよ。」

 

嶋田 「マンカラという言葉がマンカラだな。」

 

岡ちゃん 「はっはっは。山言葉っていうんだけど、知らないかな?」

 

坂本 「山言葉なんて知らないよ。」

 

そういえば、最近、岡ちゃんの言葉遣いが少し変化してきていることに何となく気付いていたが、この辺りは黒保根と言って土地で使われている言葉らしい。

 

 

しばらく峠道を走っていると少し開けてきた。

 

 

入ってしばらく進むと道端に物凄く大きな獣がいた。

 

嶋田 「おお!」

 

坂本 「なんだあれ!」

 

岡ちゃん 「鹿だよ!デカい!」

 

坂本 「角もある!」

 

物凄く大きな鹿が山の中にスーッと消えて行った。

 

奈良でせんべいを食べてる鹿しかイメージなかったので面食らった。

 

 

坂本 「やべぇ!やべぇぞ!今夜は何か起こる!!」

 

岡ちゃん 「何が?またふざけてるの?」

 

嶋田 「はっはっはっはっは。」

 

 

話していると急に開けたコーナーに差し掛かった。

 

左側に走り屋たちが列を作って待機していた。

 

岡ちゃん 「ここだよ。」

 

かなり広い。

 

路面が綺麗でまるでサーキットのようだ。

 

コーナー部分では黒いタイヤ痕が路面におびただしいくらいに付いていた。

 

 

坂本 「広いね‥。」

 

岡ちゃん 「広いよ。」

 

嶋田 「ひれーなー。」

 

岡ちゃん 「ここがコース上りのスタートで、ここから攻めていくんだよ。」

 

岡ちゃんは走り屋の列の最後に付いた。

 

嶋田 「こんな所があるんだなぁ。」

 

坂本 「すごいね。」

 

列の先頭は走り出し、僕たちも走り出した。

 

先頭集団は皆ドリフトしていてる。

 

岡ちゃんはとりあえずグリップで走ってくれた。

 

 

岡ちゃん 「ここでコース終わりだよ。」

 

岡ちゃん曰く「短い」と言っていたがホントに短かった。

 

坂本 「短いね。」

 

岡ちゃん 「短いよ。」

 

嶋田 「短小極太だな。」

 

岡ちゃん 「わっはっは。」

 

坂本 「ここで走ってるんだ。」

 

岡ちゃん 「そうだよ。」

 

坂本 「じゃあ、今夜も走りなよ。どこでギャラリーしたらいいかな。」

 

岡ちゃん 「コース最初の広い場所あったでしょ。あそこで降ろすから、ガードレールの外で見てなよ。」

 

 

コースの最初で最大の見せ場のコーナーのようだ。

 

なぜこんなに山奥なのに路面が良くて広い道路が作ってあるのか気になった。

何も使い道なさそうだけれど、何か必要があってこんな豪華な道路を作ったのかもしれない。

走り屋の為に道路を作っているように感じたが、国民の税金を走り屋の為に使うわけないだろう。

 

以前、赤城南面道路でもギャラリーをしたがこちらでは古すぎる車はいなかった。

180SX・S13・S14・R32タイプMが多かった。

もちろん、AE86も走っていた。

中にはGTOがグリップで走っていた。

四駆なのでドリフトはしづらいと言われている。

 

あんな重い車で良く走るな、と思った。

と言っても僕の趣味なので、あのGTO乗りの人はきっと見た目と3リッターツインターボな加速が好きなんだと思う。

僕は軽くてコンパクトな車が好きなのだ。

だってここは日本だから。

 

軽いといえばレックス(軽自動車)も列には混ざっていた。EG6(シビック)もいた。

 

岡ちゃんも赤城の時のようにドリフトに果敢に挑戦していた。

 

岡ちゃんの走りを見ているとなんとなく無理をしてドリフトに持ち込んでいるように感じるが、コーナーでドリフトをきちんとしていた。

 

上りだけでなく下りも岡ちゃんはドリフトしていた。

 

列の中には自然にドリフトに入っていく車がいた。あの車は上手いな、と思った。

 

たまにスピンする車がいるので後続してくる車にギャラリーがペンライトを小刻みに合図を送っていた。

 

面白い世界だ。

 

 

岡ちゃんが戻って来た。

 

岡ちゃん 「ギャラリーしてみてどうだい?」

 

坂本 「岡ちゃんドリフトしてたね!すごいよ!」

 

嶋田 「すごいよ。」

 

岡ちゃん 「そんなことないって。」

 

坂本 「そういえば、友達がここ走ってるんでしょ?」

 

岡ちゃん 「いつもいるんだけど今日は来ないのかな。ヨシさん来てないな。NAのセフィーロに乗ってて凄く速いんだよ。」

 

坂本 「そうなんだ。凄い友達がいるんだね。」 

 

 

 

男の人 「こんばんはー!」

 

男性2人組のうちの1人が話しかけて来た。

 

岡ちゃん 「こんばんはー!」

 

男の人 「さっき走ってましたね。」

 

岡ちゃん 「どもっす。走ってたっす。」

 

男の人 「上手いもんですね。」

 

岡ちゃん 「いえいえいえいえいえ。まだまだっす。」

 

男の人 「どこから来たんすか?」

 

岡ちゃん 「群馬の太田っす。そちらはどこから?」

 

男の人 「埼玉っす。いやー結構時間かかったわー。」

 

岡ちゃん 「遠いっすね。」

 

男の人 「俺、GTO乗ってんすけど、皆速いっすね。」

 

さっき走ってたGTOだ。

 

岡ちゃん 「まだ来てないっすけど、もっと速い人いるっすよ。」

 

GTO 「ほんとっすか。FRで凄いっすね。」

 

岡ちゃん 「さっきGTOが走ってたっすね。相当バワーあるんじゃないっすか。」

 

GTO 「3リッターでタービンが2つ付いてるんすから。まぁまぁ出てると思います。」

 

岡ちゃん 「すげーっすねー。しかも四駆っすよね。」

 

GTO 「そうっすよ。」

 

岡ちゃん 「コレがAE86乗ってるっす。」

 

岡ちゃんは僕を親指で指した。

 

GTO 「AE86乗ってるんだ、キミ。」

 

坂本 「ええ、まぁ‥。」

 

岡ちゃん 「イニシャルDのパンダトレノっすよ。」

 

GTO 「えー、すげぇ。パンダトレノ、バリバリのチューニングしてるの?」

 

坂本 「今日は180SXに乗せてきてもらいました。AE86はほぼノーマルです。車高調も入ってません。」

 

GTO 「テンロクは加速いいの?」

 

坂本 「加速は悪いですね。」

 

GTO 「頑張って走りなよ。」

 

坂本 「はい‥。」

 

GTO 「じゃあ!どうもっすー。」

 

岡ちゃん 「どもぉー。」

 

 

 

坂本 「なんでさっきの人、僕にため口なん?」

 

 

嶋田 「はっはっはっはっは。」

 

岡ちゃんは含み笑いをしていた。

 

 

僕たちの夜は更けていった。