世界のどこかで起きていること。

日本人の日常生活からは想像できない世界を垣間見たときに記しています(本棚11)。

ジャレド・ダイアモンド「ヒトの秘密」

2018-08-10 06:16:35 | 日記
ジャレド・ダイアモンド「人の秘密」
2018年1〜3月:NHK-Eテレ

昔から、ヒトの問題行動で悩み、立ちゆかなくなったら「動物はどうしてきたか」を観察するとヒントがもらえることを実感してきました。
特に臨床現場で「子ども虐待」に出会ったとき、中川志郎氏の著作は参考になりました。

ダイアモンド博士も「動物を見つめる」という同様の視点を持っていて共感できます。
それ以上に、グローバルな視点を持って物事を分析し、捉えようとする姿勢は哲学的でさえあります。

以前、ダイアモンド博士の代表作である「銃・病原菌・鉄」をDVDで見たことがあります。
見終わって、昔から疑問に思ってきたことが氷解しました。
それは、“狩猟採集生活から農耕生活への移行をどうとらえるべきか?”です。
博士は「メリットもデメリットもある」ことを冷静に分析しています。

このシリーズでも、素朴な疑問に答える一方で、現在世界が抱える諸問題を独自の視点で語っています。
特に興味深かったのが“格差”について。
その始まりは“農業”。
これは人間の役に立つよう改良可能な植物と、人間の役に立つよう改良可能な動物の両方が揃うことにより発生しました。
世界でたった9カ所です。
“人間の役に立つよう改良可能な動物”、つまり家畜は、4000種類いる哺乳類の中で14種類しかいません。
特に重要なベスト5は、牛・馬・豚・羊・山羊です。

そして、それが発達・発展していくためには地理的条件が重要でした。
南北に広がるのではなく、東西に広がる広大な土地が有利なのです。
同じ気象条件なら、同じ農業が伝達しやすいから。

これを実証しているのがヨーロッパ。
世界の他の地域より先んじて農業が発達・拡大し、それが文明を育み、世界を支配する時代につながったというカラクリ。

ああ、こんな授業を高校生時代に聞くことができたら、進路が変わっていたかもしれないな、と思わせる内容です。







<内容紹介>
ダイアモンド博士は、「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した進化生物学者。人間の進化によって現代社会を考察する博士の特別授業を12回にわたって放送する。ユニークな発想で生物の進化を見つめるジャレド・ダイアモンド博士が、疑問を解き明かす。


1.「チンパンジーからヒトへ 1.6%のドラマ
 第1回は、ヒトは「どこまで動物なのか?」を考える。ヒトとチンパンジーの遺伝子的な違いは 1.6%。しかし生活は大きく異なる。その進化を考えることによって、人間の本質がわかる!?
 チンパンジーと極めて近いDNA構造を持つホモ・サピエンス。チンパンジーとヒトの遺伝子の違いは、わずか1.6%。それだけの違いで、両者はまるで違う生活を送っている。
 しかし進化の過程を探ると、意外な類似点も。ヒトは、動物に限りなく近い存在。ヒトと動物の違いと共通点。動物から人間へ進化して行く過程。


2.「動物のコトバ、ヒトの言語
 第2回は、ヒトが作り出した最も古くて重要な「言語」について。動物は鳴き声で仲間に危険を知らせる。人間の言語も、単純な単語から始まった。言語は自己表現。人類は、言語と共に発展してきた!?
 ヒトは進化の過程で言語を手に入れ、高度の文明を築くことができた。では、動物には言語は無かったのか。ヒトは、どのようにして複雑な言語を獲得したのか。


3.「芸術(アート)のジョーシキを疑え
 第3回は「アート」について。芸術は人間だけのものなのか。実は、芸術的な巣を作る動物もいる。そもそも芸術とは、異性を引き付けるためにある!?
 ヒトは自分たちが作り出した芸術を、進化の象徴だと考えている。芸術は人間だけのものなのか?
 しかし動物もヒトに負けない見事な作品を作り出すと言う。実は、芸術的な巣を作る動物も居るのだ。
 ヒトは何を求めてアートを生み出すようになったのか?
 そもそも芸術とは異性を惹き付けるためにある?


4.「性と出会いのメカニズム
 第4回は「性と出会いのメカニズム」について。動物は、生存に有利なように進化してきたと言われる。しかしより良い異性 に出会うため、あえて生存に不利な進化を遂げる本能も!?
 ヒトや動物は、異性と出会い、惹き付ける技能をどのように進化させたのか?
 よりよい異性に出会うため、敢えて生存に不利な進化を遂げる本能も !?
 また、より多くの子孫を残そうとして選び取って来た、その仕組みはヒトと動物でどのように違うのか?


5.「夫婦の起源 性の不思議
 第5回のテーマは夫婦関係について。ヒトや動物は、パートナーを見つけ、できるだけ多くの子孫を残そうと手を尽くす。
 中でもヒトは、他の動物とは大きく異なる夫婦関係を築いて来た。果たして、その関係はヒトの発展にどのように貢献したのか?


6.「不思議いっぱい ヒトの寿命
 第6回は寿命について。ヒトの人生、そして動物の一生の長さは、どうやって決まるのか?
 なぜヒトは人生の半ばで子供を産まなくなるのか?
 そこには、進化によって緻密に設計された生と死のメカニズムがあると言われる。


7.「農業は人類に何をもたらしたのか
 第7回のテーマは「農業」。狩猟採集の生活から農業への移行は、ヒトの暮らしを大きく変え、文明発展の基礎となった。
 一方、農業はヒトの体や社会に、大きな問題も引き起こしてきた。農業は人類をどう変えたのか。ダイアモンド博士が生徒たちと明らかにする。


8.「“進化”から見た文明格差
 ヒトは、狩猟採集の暮らしから少しずつ農業に移行してきた。しかし、そのタイミングとスピードには、地域によって大きな違いがあった。
 どのような条件が、その差を生んだのか。また、それは、後の人々の暮らしに、どのような影響を与えたのか


9.「地球外生命体も進化する?
 ダイアモンド博士の講義9回目は、地球から宇宙の話に飛び出す。地球の外にも、私たちと同じように進化と発展を遂げた生物がいるかもしれない。
 そんな地球外生命体=エイリアンについて、みんなで議論する。エイリアンについて自由に考えることで、このシリーズで学んできた動物からヒトへの進化を見つめ直す。
 今回の講義の場所は、宇宙への好奇心を刺激し続けてきたウィルソン山天文台。


10.「集団虐殺(ジェノサイド)はなくせるのか
 第10回のテーマは、戦争と集団虐殺(ジェノサイド)。同じ種である人間を抹殺しようとするこの残虐な行為。これは人間が動物から進化する中で引き継いできたものではないか、とダイアモンド博士は考える。
 「人間同士の争い」……ヒトの歴史の中で繰り返されてきたこの行為を無くすことはできないのか? 博士が進化をキーワードに、集団虐殺の本質に迫る。


11.「文明崩壊 人類史から学ぶもの
 今回は環境破壊と文明の危機について。これまでヒトは、気づかないうちに生態系を破壊し、資源を使い果たし、自らの文明を崩壊させたこともあった。
 地球規模の環境破壊と文明の危機を避けるために、私たちは過去の失敗から何を学べばいいのか。ダイアモンド博士が、進化の視点から解き明かす。


12.「“格差”をのりこえて
 12回シリーズの最終回は、拡大する文明格差について。今、世界の富は一部の富裕層に集中し、貧困層との隔たりが大きな社会問題となっている。また、国家間の経済格差は、国際社会をきわめて不安定にしている。ダイアモンド博士は、ヒトの社会が抱える大きな矛盾を示しつつ、未来を担う生徒たちにメッセージを託す。


コメントを投稿