世界のどこかで起きていること。

日本人の日常生活からは想像できない世界を垣間見たときに記しています(本棚11)。

精子バンクと卵子マーケット〜生殖医療の現在

2020-09-21 15:29:35 | 日記
NHK-BSドキュメンタリー「オーダーメイド・ベビー
(2017.10.12)



<内容紹介>
目の色から身長まで、親が望む特徴を備えた“理想の赤ちゃん”をカスタマイズ?生殖医療が飛躍的な進歩を遂げた結果、SFさながらの現実が目前に。技術と倫理の境界を追う。
不妊や遺伝性疾患治療のために研究が進んだ生殖医療を応用して、親が求める特徴を持つ赤ちゃんを作り出すことが可能になってきた。3万人の精子が保存されているデンマークの精子バンクでは、提供者の写真や学歴はもちろん、声や筆跡も確認できる。子供の性別や目の色の選択ができるクリニックや、3人の親の遺伝子から子どもを作る「ミトコンドリア置換」など、オーダーメイド化が現実のものに。人類の英知は技術に追いつけるのか?
原題:Bébés à la carte
制作:ARTE  France / Scientifilms(フランス 2017年)

随分前に録画した番組です。
シルバーウィークの予定を何も立てていなかったので、
ステイ・ホームしてツラツラ見てみました。

生殖医療は日進月歩の世界。
ついこの間までタブー視されていた技術が、気がつくと実用化されています。

当初は病気の子どもを治療するという発想だったはず。
それが時代と共に「病気を持つ受精卵を見つけて排除する」という方向へ。
さらには正常と異常の境界の分かれ目が定かでなくなり、
理想の赤ちゃん(デザイナーズ・ベビー)を望む声に応える産業も発生しました。

もはや一線を越えるのは時間の問題と思われます。

しかし、新しい技術には光があれば闇もあります。
失敗して遺伝子異常を抱えながら生まれた赤ちゃんは、存在を否定されるのでしょうか。
理想の赤ちゃんを授かるはずだったのに、期待と異なるところがあったらどうするのでしょう?

人間界には多様性があり、それを認め合うことで豊かな社会になるはずですが、
皆、容姿端麗で頭脳明晰になったら・・・。

古今東西、人間は不老不死を求めて医療が発展してきましたが、
一番長生きできている日本人の高齢者は世界一幸せでしょうか。

デザイナーズ・ベビーが当たり前の未来には、
同じような答えが用意されているような気がします。

番組中で驚いたこと。

【その1】3人の親からの遺伝情報
ミトコンドリア病という疾患がありますが、
細胞質内にあるミトコンドリアの遺伝情報は、
細胞核とは独立して母親から女の子に受け継がれる性質があります。
つまりミトコンドリア病は女性を介して遺伝するのです。

そしてその治療として、以下のようなことが行われているそうです。
1.母親の卵子から核を抜き取る
2.正常なミトコンドリアを有するドナーの卵子から核を抜き取る
3.母親の卵子から取り出した核をドナーの卵子に挿入する
すると、ミトコンドリア病遺伝子を持たない子孫が生まれるという仕組み。
この赤ちゃんは3人の親の遺伝情報を有する、不思議な存在になりますね。

【その2】クリスパー・キャスナインCRISPR−Cas9
元々は昆虫が持っている遺伝子を切るハサミ作用を持つ物で、侵入してきたウイルスの複製を阻止するための武器でした。
それを発見した科学者が、人間の遺伝子を切ることに応用してしまったのです。
つまり、遺伝情報を操作することが可能になったわけ。
とうとう人間は、神の領域に手を染めることになった・・・当然、世界の倫理学者達は反対しました。
現在でもその使い方に関して論争中。

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