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世界のどこかで起きていること。

日本人の日常生活からは想像できない世界を垣間見たときに記しています(本棚11)。

賃金値上げ分を誰が負担するか?

2025-03-26 07:43:44 | 日記
世間は「賃上げ」で盛り上がっています。
春闘で名前が出てくる大手企業は軒並み「賃上げ」。

しかし中小企業では事情が異なり、
大手企業のようにはいかない、という声も聞こえてきます。

その大手企業も、伝家の宝刀「リストラ」が見え隠れ。
いったい日本では、賃上げできる社会状況にあるのでしょうか?

こんな記事が目に留まりました。

▢ だから政府や財務省への不満が高まる…「賃上げ」と言われているのに「生活が苦しい」本当の理由中小企業の経営者からは「賃上げは限界」の声も
磯山 友幸:経済ジャーナリスト
2025.3.25:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

▶ 雇用者の7割が働く中小企業の賃上げが進まない
 今年の春闘も大幅な賃上げで決着するところが増えている。連合が3月21日に発表した第2回集計結果によると、ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率は5.40%と、昨年の第2回集計時の5.25%を上回り、34年ぶりの高水準を維持した。
 一方で、組合員数300人未満の中小組合の賃上げ率は4.92%と5%に届かなかった。連合は今年の春闘では「5%以上の賃上げ」を要求すると共に、中小については「6%以上」の目標を掲げている。業績が好調な大企業の賃上げが進む中で、雇用者の7割が働く中小企業の賃上げが進まないことが大きな問題となっている。
 総務省が発表した2月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が前年同月に比べて3.0%上昇した。コメの価格が大幅に上昇するなど、食料品の値上がりが激しく、消費者の生活に打撃を与えている。
 もちろん、数字の上では、物価上昇を上回る賃上げが実現しているわけだが、生活者の感覚としてはますます生活が厳しさを増している。いったいこれはどうしたことなのか。

▶ 人件費を価格に転嫁できていない中小企業
 ひとつは大企業はともかく、中小企業や零細事業で働く人たちの給与がなかなか上がらないこと。連合の芳野友子会長も記者会見で「中小は労務費を含めた価格転嫁が重要だ」と述べていたが、大企業の下請け企業などが思うように納入価格を引き上げてもらえないという実態がある。値上げを受け入れてもらえても、原材料価格やエネルギーコスト分を上乗せするのが精一杯で、中小企業で働く人たちの人件費を価格に転嫁できていないわけだ。
 そうは言っても人手不足の中で従業員を確保するためには一定の賃上げは必要で、ここ数年は中小企業経営者も賃上げを進めてきたが、そろそろ限界だという声も聞こえる。
 政府は、発注者が不利な取り引き価格を一方的に決める行為を禁止することなどを盛り込んだ「下請け法」の改正案を3月11日に閣議決定した。発注者が受注者と協議をせずに受注者にとって不利な取り引き価格を一方的に決めることを禁止する内容で、物流業界での荷主企業と運送業者の間の委託業務も含めるとされている。

▶ 賃上げ分がそのまま手取り賃金の増加にはならない
 現実には発注者側が提示した価格を受け入れなければ、仕事をもらえないという力関係にある中小企業が圧倒的に多く、この法律がどれだけ効果を生むかは不明だ。さらに、この改正法案では「下請事業者」という言葉を「中小受託事業者」に、「下請代金」を「製造委託等代金」に変えることが盛り込まれているが、「下請け」という言葉を無くしたからといって「下請け」が消えるわけではない。中小企業庁や公正取引委員会が躍起になって下請けイジメの撲滅に力を注いでいるが、人件費分まで含んだ価格の引き上げはそう簡単ではない
 また、こうした価格転嫁ができたとして、大企業はそれを最終価格に転嫁するわけで、そうなると物価上昇に弾みがつくことになる。賃上げをしても物価上昇がさらに進めば、生活は楽にならない
 もうひとつ、大きな問題が、賃上げ分がすべて、可処分所得つまり手取り賃金の増加に結びつかないことだ。

▶ 「子ども・子育て支援金」に「防衛特別所得税」
 岸田文雄前首相が目玉政策として掲げた「子ども・子育て支援金」の原資は社会保険料へ上乗せすることに決まっていて、2026年度に月額平均250円、2027年度に350円、2028年度以降450円が上乗せされる。これはあくまで平均額で、会社員などは2028年度に月800円、年間1万円近くの負担増になる。しかも同額を雇用している企業なども負担することになっている。
 当時の岸田首相が、賃上げで所得が増えるので、実質的に負担は増えない、と強弁していたのが記憶に新しい。賃上げ分が社会保険料に回ってしまっては、一向に生活が豊かになるどころか、物価上昇の影響をモロに受け続けることになる。
 さらに、5年間で43兆円という防衛費を賄うための増税も決まっていて、2027年1月からは「防衛特別所得税」が課される方向だ。所得税に1%の付加税を課す一方で、時限的に導入されてきた「復興特別所得税」の税率を1%引き下げ、課税期間を延長することとなっている。つまりは、1%の付加税がほぼ恒久的に続くということだろう。加えて、たばこ税の段階的増税も予定されている。

▶ 「国民負担率」がなぜか低下した理由
 国民の負担はどんどん増えているわけだが、これを示す数値がある。「国民負担率」というもので、租税負担と社会保障負担の合計が国民所得の何%を示すかという指標だ。毎年2月に財務省が公表しているが、今年は予算成立が遅れた関係か、3月にずれ込んだ。
 実は、その「国民負担率」の2023年度の実績数値が8年ぶりに低下した。46.1%と、過去最高だった22年度の48.4%から低下したのだ。前年と同率だった年度はあったが、低下したのは2015年度以来だ。毎年、国民負担率が過去最高を更新し続けてきたことを考えると、画期的な出来事だと言える。
 だが、どうして負担感が増えているという消費者の感覚とは食い違った数値が出てくるのか。このズレは何が原因なのか。
 前述の通り、国民負担率の計算は分母が国民所得、分子が租税負担と社会保障負担だ。率が低下するには分子が小さくなるか、分母が大きくなるか、2通りの要因があり得る。
 実は、2023年度の実績で、国民所得は409.6兆円から437.8兆円に6.8%も増えているのだ。つまり分母の国民所得が大きく増えたことで、国民負担率は低下したのである。

▶ 「国民所得」には企業の所得も含まれる
 決して分子の租税負担と社会保障負担が減ったわけではない。租税負担は120.4兆円から122.1兆円に1.4%増加、社会保障負担も77.8兆円から79.6兆円に2.3%増えている。租税負担と社会保障負担の合計では198.2兆円から201.7兆円に1.7%、金額にして3.5兆円増えているのだ。つまり、国民負担「率」は低下したが、国民負担「額」は増えたということだ。3.5兆円と言えば、消費税1.5%分に相当する。
 もうひとつマジックがある。「国民所得」は個人の所得だけでなく企業の所得も含まれていることだ。企業の儲けが増えても、その分給与が払われなければ、見た目の国民負担率の低下と個人の実感はかけ離れたものになる。企業収益の何%を給与として払っているかを「労働分配率」と言うが、これは低下を続けている。

▶ 高まる政府や財務省への不満
 東京・霞が関の財務省の前には連日のように「財務省解体」を叫ぶ人々が集まる。その数は増え続けて1000人を超える規模になっている。SNSでの呼びかけが徐々に広がっていると見られるほか、亡くなった森永卓郎さんの著書『ザイム真理教』の影響もあると見られている。物価の上昇で人々の生活が厳しさを増している一方で、社会保障費の増額や増税を着々と進める政府・財務省への不満が高まっているのは間違いない。
物価が上昇すれば、同じものを買っても支払う消費税は増える。財務省にとっては物価上昇は税収増につながる追い風とも言える。本来は消費が落ちないように減税するなど対策を取るが、一部の野党が主張する消費減税などには一向に応える様子はない。「103万円の壁」引き上げやガソリン税の引き下げを求める国民民主党が大きく支持を伸ばしたのも、共通の「怒り」があるように見える。
 賃上げをするかどうかは本来、企業自身の問題で、政府が口を出す話ではない。「官制春闘」と言われて久しいが、政府が民間の賃上げに頼る一方、社会保障費増や増税に動くのは、政府として無策に等しいのではないだろうか。

・・・この記事を読んでも、
「原料価格の高騰が巡り巡って商品価格を上げている」
構造が見え隠れします。
ですから収益が伸びたわけではなく、
しかし給料を上げなくては生活苦感が解消せず、
人手不足の折、収益が変わらない中小企業でも昇給せざるを得ず、
結局、この構造が変わらない限り、
中小企業は息が切れて倒産し続けることになりそうですね。

政府がそれをサポートすると行っても、
その原資は税金ですから、
巡り巡って国民が負担することには変わりありません。

まあ、収益増の大企業が負担する、というのが落としどころでしょうか。


アメリカへの感謝が足りない?

2025-03-04 08:12:36 | 日記
トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が物別れに終わりました。
民主主義を守るためにウクライナを支援している西側諸国の中で、
トランプ氏は資本主義を振りかざしたのです。

会談中、トランプ氏の「アメリカへの敬意が足りない」との発言が気になりました。
そしてある場面を思い出したのでした。

もう数十年前、ジャーナリストである筑紫哲也氏のニュース番組があり、
その中で「異論・反論・オブジェクション!」という筑紫氏の意見をつぶやくコーナーがありました。

折しも、沖縄の米軍基地の兵士が、沖縄県民の少女を暴行したというニュースが話題。
そのタイミングで、筑紫氏は米軍基地司令官の文書を極秘裏に入手し、
その内容を公開したのです。

そこにはこんなことが書いてありました。
「我々は日本人のためにこんなに尽くしている、
 中国やソ連から守ってやっている、
 なのになぜ感謝せずに批判するのか?」
というジレンマ。

「〇〇してやっているのに・・・」という上から目線のコメントです。

それが今回のトランプ氏の発言と重なるのです。
アメリカが“世界の警察”をいう役割を担うことが崩れ始めていたことを示唆するエピソードです。
そしてアメリカがロシアや中国の側に回り、“力による支配”というスタンスにぶれていくような気がします。

ミツバチの大量死、再び。

2025-02-21 14:04:16 | 日記
しばらく前に、「ミツバチの大量死」が話題になりました。
関連番組を見たことがありますが、
一度は納得したものの、その理由は忘却の彼方・・・。
たしか「農薬説」や「ウイルス説」などがあったと記憶しています。

今回、また同じような記事が目に留まりました。
いったい、何が起きているのでしょう。

・・・読んでみましたが、原因究明はまだの様子。現状報告のみの記事でした、残念。
人間は、この謎を解けないのでしょうか。


▢ 50%以上のミツバチが原因不明の死、養蜂業界がパニック状態に 米国
Amy Feldman | Forbes Staff 
2025.02.09:Forbes Japan)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 米国の商業養蜂家たちは今冬、50%をはるかに超えるミツバチを失った。カリフォルニアでアーモンドのシーズンを迎え、続いてブルーベリーやチェリーなどの果物の季節が控えるなか、ミツバチが不足すれば食料品店での価格上昇につながる可能性がある。研究者たちは死滅したコロニーから花粉や蜜蝋を採取し、大量死の原因を究明しようとしている。
 養蜂業界団体が発表した調査によると、今冬だけで数百万匹のミツバチが死に、その損失率は50%を超え、経済的損失は1億3900万ドル(約210億7400万円)以上に上るという。この調査は234の養蜂家を対象としたもので、カリフォルニアのアーモンド栽培シーズン作業開始直前に公表された。これは全米の約300万のセイヨウミツバチのコロニーをトラックで運び、受粉させる必要がある大規模な作業だ。
 「いま何が起こっていて、どれほど深刻な事態になるのかを突き止めようと、まさにパニック状態です」と語るのは、調査に参加した団体の1つであるProject Apis m.(セイヨウミツバチのラテン名であるApis melliferaに由来する)のエグゼクティブディレクター、ダニエル・ダウニーだ。養蜂家たちは冬が明けて事業を再開した際、コロニーの半数以上のミツバチが死んでいるか行方不明になっていることを知り、1月下旬までには原因を探るため研究者たちに協力を求めていた。
 最も緊急性が高いのはアーモンドだが、その後もブルーベリー、チェリー、クランベリー、リンゴといった果物を受粉させるためにミツバチが必要になる。原因不明のミツバチ大量死は、消費者にとっては店頭の品薄や価格上昇というかたちで影響がおよぶ可能性がある。
・・・研究者らによれば、本年初めの損失を加えた今冬の損失として、多くの養蜂家のコロニーが70~100%に達する壊滅的被害を受けたという。そのため、一部の養蜂家は事業継続が危ぶまれ、作物を栽培する側は受粉用のミツバチを確保しようと奔走している。
・・・研究者によると、今回の症状は2007~2008年に起こった蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder)と似通っている。当時はミツバチが突然コロニーから消え失せる現象が報告されていた。最近の現地調査でも、豊富なハチミツが残されているにもかかわらず、卵や幼虫、蛹がわずかに残っているだけで、成虫のミツバチがほぼいなくなっているコロニーが多数確認されている
 シュックは「今回の損失は以前の蜂群崩壊症候群よりも深刻です」と述べる。「当時は平均損失率が15%だったのが突然45%に跳ね上がりました。今はその45%からさらに増えているのです」
 USDA-ARS Bee Research Laboratory(米国農務省・農業研究局ミツバチ研究所)の研究や養蜂家団体による聞き取り調査で、今回の損失が全米規模で深刻なものであることが判明しているが、原因はいまだ特定されていない。通常の大量死原因として知られるバロアダニなども、今回は主犯と考えにくいという。研究者らはウイルスや寄生虫、農薬残留物の検査をさらに進め、何が起こっているのかを探っている。
 ミツバチは他にも、Dalan Animal Healthがワクチンを開発しているアメリカ腐蛆病や、農薬中毒、栄養不足、長距離移動のストレス、そしてバロアダニなど、さまざまな病気に苦しむリスクがある。
 「これだけ多くのコロニーが失われた原因を明確に示すものは何もありません」とダウニーはいう。「毎年、少しずつ崖っぷちに近づいている実感があり、このままでは持続可能ではないことは明らかです。ミツバチは私たちの食糧を受粉させる要であり、もっと適切に保護する必要があります。「いま何が起こっていて、どれほど深刻な事態になるのかを突き止めようと、まさにパニック状態です」
 アーモンドや果物の品薄や価格高騰が最終的に起こるかどうかは天候などの要因にも左右されるが、ミツバチが減少している現状は大きなリスクとなる。「アーモンドを受粉するのに必要な数のミツバチがいないんです」とシュックは重ねて述べ「シーズン最初の受粉でこれですから、良い兆候とは言えません」と付け加えた。
 サウスダコタ州で40年以上養蜂業を営むティム・ホルマンは、昨年70%ものコロニーが死に、25万ドル(約3792万円)をかけて補充したにもかかわらず、今年も同様の大量死を目の当たりにしているという。妻と2人の息子とともに家族で経営しており、今後を案じている。「これまでにも養蜂の厳しい時期は何度も経験しましたが、今回は様相が違うように思います。私のような家族経営の養蜂場がすべて生き残れるのかはわかりません」
 さらにホルマンによれば、米国内で消費されるハチミツの約4分の3を安価な輸入蜂蜜が占めていることも経営を圧迫している。「たとえミツバチを生かし続けて蜂蜜を作れるようになったとしても、いろいろな面で打撃を受けています」
 ミツバチを必要とする栽培業者が増え続ける一方で、Project Apis m.のダウニーは、なかには他人のミツバチを盗むという「必死の手段」に出るケースもあると指摘する。実際、California State Beekeepers Associationの試算では、2013年以降、州内での巣箱盗難が87%増加し、被害総額は350万ドル(約5億3000万円)を超えるとみられている。同協会は今週、農業犯罪を専門とする私立探偵事務所との連携を発表し、ミツバチ盗難防止に向けた取り組みを強化するという。ダウニーは「夜間に果樹園へ入り込み、他人のミツバチを積み込み、それを貸し出しているのです」という。

武漢、新型コロナ発生の5年後。

2025-02-18 15:22:57 | 日記
あれからもう5年も経つのですね。
2019年末に「中国で新型肺炎が流行している」というニュースを耳にし、
「はて、今回のウイルスは何だろう?」
くらいに思っていたら、あれよあれよという間に全世界に拡大したCOVID-19。

その始まりは武漢でした。
当時のトランプ大統領が「中国ウイルス・武漢ウイルス」と呼んで物議を呼びました。
その後沈静化していましたが、
トランプ大統領が再登板し、またきな臭い空気が漂い始めました。


▢ コロナ「震源地」中国武漢の今を歩く。残された傷は  トランプ2.0発足で「中国ウイルス」の批判再来も、くすぶる両国間の火種
杉田正史:共同通信
2025/2/16:47NEWS)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 中国湖北省武漢市で、新型コロナウイルス感染症の発生が世界で初めて明るみに出てから5年がたった。中国の習近平指導部はロックダウン(都市封鎖)や人工知能(AI)を駆使したデジタル監視といった強硬措置を展開して、新型コロナ流行の抑え込みに「成功」したと誇示する。だが世界を未曽有の危機に陥れた新型コロナの流行「震源地」で危険と背中合わせの日々を過ごした武漢の市民らは、ポストコロナの国内経済の低迷もあって不満を募らせている。

▶ 指導部は”ロックダウン成功”を主張するが… 「震源地」武漢、不満募らせる市民たち
 さらに米国で第2次トランプ政権が発足したことで、トランプ大統領が第1次政権時と同様に新型コロナの起源を巡り「中国ウイルス」と呼んで対中国批判の材料にすることも予想され、米国と中国の対立が再燃する火種もくすぶる。
▽兵士が舞い降りた巨大病院
 中国内陸部の湖北省にある人口1千万人を超える大都市・武漢市。2019年12月30日、武漢市当局は何の前触れもなく、「原因不明の肺炎患者」が次々に確認されたと医療機関に通知を出した。翌31日には一般にも公表したが、当局が「人から人への感染」を認めたのは2020年1月20日になってからだった。  新型コロナという“見えない敵”との戦いが始まった武漢市。市中に患者はあふれ、一時は治療体制が追い付かずに医療崩壊が現実味を帯びていた。 
 混乱が続く中、武漢市政府は2020年1月23日、医療現場のひっ迫状況に対応するため、新型コロナ専用の臨時病院「火神山医院」の建設を決定した。突貫工事で約10日後には完成し、運用期間は約2カ月にわたった。 
 市中心部から西に約40キロ。2024年12月中旬、記者は「医療のとりで」として活躍した「火神山医院」の跡地を訪れた。総敷地面積は約7万平方メートル。建物面積は東京ドームよりやや小さい約3・4万平方メートルと巨大だ。
 「天から神の兵士が降り、1400人超の白衣の天使が一線で戦った」。関係者によると、土ぼこりをかぶった看板には、流行当初に急派された軍や医療従事者らを英雄視する言葉が並ぶという。 
▽放置されたままの設備
 プレハブ造りの病棟は感染者の隔離や重症者の治療、ウイルス検査といった目的別に分かれ、病床は千床に上る。関係者によると、窓の鉄格子はさび付き、「封印」の紙を張ったドアは開きっぱなし。「武漢加油(頑張れ)! 抗疫必勝!」。今でも防護服を着た人のイラストが入ったポスターも張られており、外部連絡用とみられる小型モニターや、「酸素」「吸引」と書かれた設備も残されたままという。 
 看板には「収容した3059人のうち96・8%が回復し退院した」との文言が続くが、市民の命を守ったという誇りを感じる一方、廃虚と化した建物から当時の活躍を想起することは難しかった。 
▽「危険だ」と店主は言った
 流行の最初期に多くの感染者が出た市内の「華南海鮮卸売市場」にも足を運んだ。近隣で普段使いされる「色々な食材がそろっている市場だった」(周辺住民)。
 外観は工場のよう。1階にあった市場は外壁がぼろぼろで、窓ガラスは一部ひびが入っている。中の様子は高いフェンスで囲われていて見えないようになっている。外付けのスロープから2階に上がると、2階部分には眼鏡の卸売店が30軒ほど軒を連ね、客はまばら。眼鏡をかけていたからか、次々店員らが売り込んできた。1階が「過去」、2階が「現在」。明確に世界が分かれているようだった。 
 世界保健機関(WHO)国際調査団は2021年1月末に「華南海鮮卸売市場」を視察した。しかし今もなおウイルスの起源は突き止められていない。 
 せっかくだから黒縁眼鏡を新調しようと思った。約20年前から眼鏡店を営む男性は雑談に愛想良く応じていたが、話題が新型コロナに及ぶと「実家に戻っており覚えてない」とぴしゃり。それでも聞くと「覚えていないんだって」と声を荒げ、表情が一変した。1階に下りることはできないのかと記者が聞くと、一言だけ忠告してきた。「1階には行くな。危険だ」 
▽トランプ氏復権、中国側の懸念
 トランプ米大統領と同じ共和党が多数を占める米下院の特別小委員会は2024年12月、新型コロナを巡り、中国武漢の研究所に関連した事故でウイルスが出現したとみられるとの最終報告書を公表した。第1次トランプ政権は新型コロナを「中国ウイルス」と呼び、「中国による武漢ウイルスの隠ぺいで世界的な感染拡大が起きた」と中国を非難している。第2次政権も、コロナ起源や流行拡大の責任論を持ち出して中国を攻撃する可能性がある。 
 これまでの科学研究はおおむね、野生動物を扱う武漢市の「華南海鮮卸売市場」で動物から人間にウイルスが広まったとする説を支持している。2024年9月、米国とフランスのチームが流行最初期に市場で採取された試料の遺伝情報の解析結果を米科学誌セルに発表した。タヌキやハクビシンなどが起点になった可能性が高いと指摘した。 
 一方で英科学誌ネイチャーによると、武漢の研究所の担当者は中国南部のコウモリからウイルスを収集したことは認めたが「新型コロナとは近くない」と主張した。
 中国外務省の林剣(りん・けん)副報道局長は記者会見で、米最終報告書は「中国を陥れる政治的な操作だ。信頼性はない」と反発した上で、「他国への侮辱」をやめるよう米側に要求した。 
▽習指導部への消えない疑念
 中国の習近平指導部は、新型コロナの流行を巡る情報隠しや初動対応の遅れから国内外の批判にさらされ、“汚名返上”とばかりに強硬措置を次々に実施した。 
 2020年1月23日に武漢市を封鎖したのを皮切りに、全市民へのPCR検査や、デジタル監視を使った厳格な「ゼロコロナ」政策を全国に拡大した。体制批判につながる言論の統制も強化した。こうした措置は経済活動の停滞、富裕層や若者世代の国外流出という“副反応”を生み出すことになった。 
 習指導部は新型コロナとの戦いで「大勝利を収めた」とアピールする。だが葬儀業の男性は「当時、近隣の団地だけでも死者が相次いで対応できなかった」と振り返る。 
 当局によると2024年11月までの中国の死者数は約9万人で、人口比では日本や米国よりも圧倒的に少ない。中国では実際の死者数がもっと多かったとの疑念が消えない。2022年12月には詳細な統計の発表も停止され、実態の把握は難しい。 
 新型コロナ禍の激動の日々がうそのように、武漢の街中ではマスクを着けた市民の姿は数える程度だ。飲食店の店内は客でにぎわい、ソーシャルディスタンスを訴えるポスターは破れて文字が見えなくなっていた。武漢市の20代の女性会社員は新型コロナ感染で親戚を亡くした。葬式は執り行えず火葬にも立ち会えなかった。コロナ禍は「悪夢だ」。悲しい思い出は消えない。
 中国経済の低迷は今も続いている。2年間の休業に追い込まれた武漢市の飲食店の女性は「中国の景気は低迷した。何をもって勝ったと言うのか」と不満を口にした。


グリーンランドは誰のもの?

2025-02-17 18:30:04 | 日記
大国の間で綱引きされる島々・・・たぶん、世界のあちこちに存在していると思われます。
今から40年くらい昔、北方領土について日本とソ連(現在のロシア)の若者達がテレビ会議をした番組がありました。
双方、「わが国の領土だ」と主張する中、
日本の女子高生が放った言葉が会場のみんなを黙らせました。
「北方領土は、北方領土に住んでいる人たちのものだと思います」

今回、トランプ大統領の発言からグリーンランドが話題になりました。
実は彼の提案、今回が初めてではないようです。

▢ 米国のグリーンランド購入、失敗の歴史 なぜ狙い続けるのか
再びの野心に「グリーンランドはグリーンランドの人々のものです」と自治政府首相
2025.01.28:National Geographic)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 米国は冷戦時代をピークに100年以上にわたり繰り返しグリーンランドに食指を動かしてきた。狙いは豊富な地下資源と、その戦略的な位置だ。しかし、グリーンランドの指導者たちはこうした野心を常に拒んできた。なぜこれほどまでにグリーンランドは狙われるのか、領土購入の試みや軍事基地を巡る交渉の歴史からひも解いていこう。

▶ 米国がグリーンランドに初めて関心を持ったのはいつ?
 米国が世界最大の島であるグリーンランドに関心を持ち始めたのは19世紀の後半。1867年に720万ドルでロシアからアラスカを購入した当時の国務長官ウィリアム・H・スワードが、領土拡大のための次の候補として関心を寄せたのがグリーンランドとアイスランドだった。
 スワードが1868年に作らせた報告書はグリーンランドの購入目的として、広大な漁場、野生動物、そして豊富な鉱山資源を挙げている。報告書はまた、グリーンランドを購入すればアラスカとグリーンランドの間に位置するカナダも米国の一部にならざるを得なくなるだろうと指摘している。スワードはカナダの獲得も視野に入れていたからだ。
 しかし、グリーンランドは単なる無人の氷山などではない。れっきとしたデンマークの自治領であり、何世紀もの間、イヌイットをはじめとする先住民族が暮らしてきた島だ。先住民たちは北極圏の厳しい自然環境を生き抜き、漁業や狩猟、土地への結びつきを中心とした伝統を育んできた。(参考記事:「氷に覆われてるのに「グリーンランド」、なぜ?」)
 こうした事実に米国はほぼ目を向けることなく、もっぱらグリーンランドの戦略的な重要性と天然資源に注目していた。こうした米国の姿勢はその後何十年も続く。
 「要するに米国の関心事は戦略的な位置と鉱山資源の2点に尽きるのです。それは今も変わっていません」と、デンマークの首都コペンハーゲンを拠点に活動するジャーナリストで、『Fury and Ice: Greenland, the United States and Germany in World War II(激情と氷:第二次世界大戦におけるグリーンランドと米国とドイツ)』の著者であるピーター・ハルムセン氏は言う。
 スワードのグリーンランド購入の試みは失敗に終わったが、米国の野心が消えることはなかった。1910年、当時の駐デンマーク米国大使だったモーリス・イーガンは、複雑な領土交換を提案する。
 それは、米国が植民地支配していたフィリピンのミンダナオ島やパラワン島などを、デンマークの植民地だったグリーンランドおよびデンマーク領西インド諸島と交換し、デンマークはそれらのフィリピンの土地を、当時ドイツに割譲されていた北シュレースビヒ地方と交換すればいいというものだった。しかし、この案も実現には至らなかった。

▶ 戦時にグリーンランドが果たした役割
 第二次世界大戦中、グリーンランドの重要性に注目が集まった。1940年にドイツがデンマークを占領すると、米国は南北米大陸を含む西半球にヨーロッパ諸国が勢力を拡大しないようけん制するモンロー主義に基づき、グリーンランドの確保に動いた。
 1941年4月、米国は駐米デンマーク大使と「グリーンランドの防衛に関する合意」に署名する。この合意によって米国はグリーンランドに軍事基地を置き、利用する権利を得た。グリーンランドのクリオライト鉱床は、航空機の製造に欠かせない重要な資源となった。グリーンランドの気象観測所も、連合国にとってヨーロッパの天候を予測する上で必要不可欠となった。
 1945年5月にナチス・ドイツが無条件降伏すると、デンマークは米軍がグリーンランドを去ることを期待したが、米軍は基地の維持を望んだ。
 「米国の安全保障上、グリーンランドに留まることが必要だと考えたのです」と、米国の元外交官で、今は米シンクタンク、ジャーマン・マーシャル財団のシニア・フェローであるブレント・ハート氏は言う。

▶ 戦後もグリーンランド購入を試みる
 第二次世界大戦が終わると、米国の関心はソ連という新たな潜在的な脅威に向かう。そして、冷戦が激化する中、軍上層部は米国とソ連の中間点に位置するグリーンランドの重要性を理解した。
 米国メイン州選出の上院議員だったオーエン・ブルースターは、グリーランドの購入は「軍事上の必要事項」だと述べた。軍事目的以外にもグリーンランドは探検や研究の機会にあふれていた。(参考記事:「過去と未来を結ぶ、前人未踏のグリーンランドの洞窟へ」)
 1946年、国務省の官僚だったジョン・ヒッカーソンは、軍首脳部がグリーランドを「米国の安全保障上、必要不可欠であると見ている」と報告した。
 その年、米国は秘密裏にデンマークに対し、グリーンランドを1億ドル相当の金(きん)で購入することを提案したと、のちにAP通信が報道している。またアラスカ州のバロー岬の石油資源が豊富な土地と、グリーンランドの一部を交換することも提案している。
 「米国は西ヨーロッパ諸国に対し、自分たちが卓越した価値観を支え、独立と自治を重んじる建設的な民主主義国だというイメージを作り上げようともしていたのだと思います」と、米フロリダ州立大学の准教授で『Exploring Greenland: Cold War Science and Technology on Ice(グリーンランド探究:冷戦の科学と氷上の技術)』の編者の1人である歴史家のロナルド・ドエル氏は言う。
 しかし米国の提案にデンマーク政府は衝撃を受けたと、ハート氏は言う。「米国には大きな借りがあるが、グリーンランドを譲らなければならないほどだとは思わない」と、デンマークの時の外務大臣グスタフ・ラスムセンは言っている。

▶ 今も続くグリーンランドへの関心
 1951年、米国とデンマークが新たな合意を結んだことで、米国は1949年に設立された北大西洋条約機構(NATO)が適当と判断した基地を開設、運営し続けることが可能になった。この取り決めによって、冷戦下にはグリーンランドの大西洋防衛における戦略的な役割が強化された。
 米国が第二次世界大戦後にグリーランドの購入を試みていたことが記された公文書は、1970年代に機密が解除された。しかし1991年にデンマークの新聞社が報道するまで、グリーンランドの主権と米国の野望を巡る論争に再び火がつくことはなかった。
 今日、北極圏の温暖化が進むなか、新たな海上輸送ルートが浮上し、新たな資源開発が可能になったことで、グリーンランドの重要性はますます増している。しかし「グリーランドは売り物ではない」というデンマークとグリーンランドの意思は固い。(参考記事:「北極で繰り広げられる壮絶な軍事演習、新たな冷戦の舞台裏 写真16点」)
グリーンランドはグリーンランドの人々のものです」と、グリーンランドのムテ・エーエデ自治政府首相はSNSに投稿した。「グリーンランドの未来と独立は自分たちで守ります」

トランプ大統領が「大国の流儀」を振り回し始めました。
これはロシアのプーチンと同じ手法です。

ウクライナ侵攻をアメリカが認めると、
中国は台湾へ侵攻して制圧し、
アメリカはカナダを手に入れる未来が見え隠れしてきます。