日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

中学生、高校生のための自由主義講座 8 -アメリカの新大統領-

2016年11月11日 | 日記

アメリカの新大統領 

 

A.アメリカの課題

 

1.アメリカの大統領選挙が終りました。

ヒラリー・クリントン氏が総得票数では僅かに上回ったものの(日本時間:2016年11月11日、18時15分現在、NHK NEWS WEB)、選挙人の獲得数では大差となり、アメリカ国

民はドナルド・トランプ氏を選択しました。

 

2.かつて、アメリカ人はアメリカ市民であることを誇りとすると言われて来ました。その市民像が崩れつつあるということを、今回の選挙は示したのではないかと私は思っています。メディアの映

も、かつてソ連邦が崩壊した時に映し出された手入れ(更新やメンテナンス)を疎(おろそ)かにされた工場とその設備の映像と同じものを、伝えていました。今後の新しいアメリカは、新しい市

民の姿をどう作り上げて行くかが、課題となるのだろうと思います。

 

3.共和党の指名は、トランプ氏が得るだろうと思っていました。しかし、大統領選挙ではアメリカ国民の理性が勝るだろうと思っていました。実際、トランプ氏が大統領となることを危惧する声

は、リベラルなメディアだけでなく、伝統的に共和党を支持してきたメディアからも、そして共和党の陣営からも上がりました。しかし、トランプ陣営の選対参謀は、崩れつつあるアメリカの市民像

=誇りを失いつつあるアメリカ市民層を、(結果として言えることですが)、実にうまく取り込み、選挙人の獲得数において勝ちました。この選対参謀は、選挙戦の途中でスタッフが2度変わり、2

度目はステファン・バノンという人物です。極右という報道もあります。もう少し知る必要があります。

 

4.大統領選挙でのトランプ氏の発言の数々は、私には、「トランプ氏はまるで奴隷解放前のアメリカの南部諸州の地主の代表者のようだ」と、思わせました。北部からは離脱しようとしていた一番

デンジャラスな白人層の代表です。そしてこの白人層に不満がたまっていました。トランプ氏は、“Make America Great Again!”というスローガンを掲げ、他民族、女性、そして対立候補であるヒラリ

ー氏へは排他的、侮辱的、かつ、脅しにも受け取れる発言をシャワーのように投げ掛け、同盟関係にある国にはその対価を取ることを公言して来ました。前者にはリベラルなメディアや知識人は眉を

ひそめ、後者には同盟国の政府は息をのみました。が、しかし、この層(先に掲げた層)の人達には乾いた土地に注がれる水のように吸い込まれて行ったのです。これが、今回の大統領選挙、上・下

院選挙の結果(共和党の勝利)として現れました。

 

5.2016年のアメリカ大統領選挙と、これからトランプ氏が行う政策によってもたらされる社会の変化は、“トランプ現象”と呼んで私達が歴史に書き留めるものとなるでしょう。しかし、歴史は

後ろ向きには回せません。前に進んできたのが私達の歴史です。TPPにアメリカが参加しないのなら、アメリカ抜きで進めば良いのです。米軍の日本駐留費の負担が重くなるなら、応分の負担額の

規模までアメリカ軍を縮小してもらい、また、アメリカ軍が日本から撤兵すると言うなら、(但し、軍隊を駐留させてその国から駐留費を得ることができ、軍隊規模を維持することができることを知

ているアメリカはこれをやりません)、日本が核武装すれば良いのです。トランプ氏もそう言っているのです。

 

B.アメリカは小国となるのか?

 

1.トランプ氏の発言は、スローガンとは逆にその兆候を示しています。少なくとも、「自由と民主主義」と「人権擁護」のトップリーダーたる地位は降りることを示唆しています。「ヒトラーの世

界を目撃せよ!」(『ブラックアース・上巻』の帯文)というキャッチコピーがあります。私達はこういう時代を作ってはいけません。しかし、イギリスは、大英帝国の繁栄を再び追い求めようとす

る選択をし、アメリカは、19世紀の南部諸州の保護主義に似た道を歩むように見えるリーダーが登場しました。このリーダーが、なおアメリカを大国たらしめようとすれば、彼は戦争を選択するか

も知れません。アメリカではトランプ政権に反対するデモが始まりました。このデモや市民の活動は新しい市民運動となって、トランプ政権が続く限り続くでしょう。このような時代に私達は何をす

るのか? 私達は、このような時代に生き、そして覚醒し、自由主義世界を作る事業に参加すること(生きるということは世界を作る事業に参加することなのです)のできることを、本当に幸せに思う

べきです。

 

2.自由主義と排外主義について考える格好のテキストを、今回のアメリカ大統領選挙は提供しました。これを考えてほしいと思います。そのため本記事を、「 中学生、高校生のための自由主義講座

8  -アメリカの新大統領-」とします。

 

              

             

             東大シリーズ 赤門     

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