日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

社会主義の終焉

2013年12月13日 | 日記

社会主義の終焉

 

A.歴史の事実

 

1.本日は、歴史の事実を述べる文書となります。

 

2.中華人民共和国には13億の人口があります。そしてその内の実に8500万人が

共産党員です。そして、共産党員の人々は国家の指導者としての自覚を持ち、日々、自

分の役割に相応する国家と社会の在り方を考え、党として決定した任務を遂行されてい

ます。私は、この中国共産党の人々を前に、淡々と申し上げます。中国において、一党

独裁の党としての中国共産党の役割は終わりました。そして、世界において、この中国

共産党の中国における一党独裁の指導政党としての役割の終了を以て、社会主義という

歴史の壮大な実験の幕は閉じられます。

 

3.これは、何も大言壮語しているのではありません。マルクスの思考したものを考

え、人間が人間であることを考え、社会主義と称する国家が歴史の中で示してきた足跡

(そくせき)をたどるとき、この帰結に論理的に導かれます。私はそれを記そうとして

いるにすぎません。また、この短い一文は、中国の人々と、今なお、社会主義という言

葉に期待や思い入れを持つ人々のためにも書かれます。

 

4.言うまでもありませんが、ここで言う社会主義とは、19世紀にマルクスとエンゲ

ルスが提起した、人間が社会を生産する様式を、資本(所有)制、即ち、社会の基礎単

位として個人の人格と所有権を法の下に平等に認めることによって成立する社会とその

生産様式から、社会(所有)制、即ち、社会の土地と生産手段を社会所有へと変換し、

そしてこれが故に、個人の人格と所有権は法において制限を受ける生産様式へと変換す

る考え方と、その実施を言います。

 

5.先ず、上に書いた「資本(所有)制」と「社会(所有)制」のそれぞれの記述の

「即ち」の内容を比較してください。

 

a) 資本(所有)制:社会の基礎単位として個人の人格と所有権を法の下に平等に認め

ることによって成立する社会と生産様式。(マルクスは、これを認めることから出発し

ました)。

 

b) 社会(所有)制: 社会の土地と生産手段を社会所有へと変換し、そしてこれが故

に、個人の人格と所有権は法において制限を受ける生産様式。(結論のみを書きます。

これがマルクスの提出した社会です。この先にユートピア社会があります。しかし、そ

れはあくまでもユートピアでしかありません。人間にとって、b)の社会は、明らかに

a)の社会を改悪したものとなっていることがよく分かると思います。そして更に書き

加えるならば、これがマルクス主義の真実であり、限界です)。

 

6.a)は自由諸国の社会です。むろん、これは建前で矛盾は多く内在します。政策立

案者の周りに群がって甘い汁を吸おうとする者、その者たちから何らかの利益やポジシ

ョンを得ようとする政策立案者など、さまざまに存在することは世の常です。しかしこ

の社会の人々は、不正に対して、さまざまのチェック機能を働かせて、社会をクリーン

に保とうとします。そして、この社会の人々が常にそうあろうと心するものは、ヒュー

マニズムと公共の旗が高々と掲げられた社会です。そして社会は既にここに向かってい

ます。

 

7.b)は、現在の中華人民共和国が辿(たど)って来た社会です。自由諸国の人々と

は人間の自由度が異なります。この自由度を犠牲にして、社会主義社会の人々が受け取

るものは、豊かな分配なのですが、現在の中華人民共和国の人々は、その分配の平等

(この「平等」という言葉が、あまりにも原則的過ぎれば、「格差の少ない福祉的均

衡」という言葉を使うこともできます) さえ欠いています。それは中国を含む世界の

人々がよく知っていることです。

 

8.温家宝氏の一族の資産は27億ドルに及び(報道:ニューヨーク・タイムズ)、国

家主席就任前の習近平氏の一族は3億7500万ドルの資産を企業に投資している(報

道: ブルームバーグ)ことが報道されています。 (出典:ロイター)

 

9.こういった蓄財を可能にするものは、中華人民共和国という国家の構造にありま

す。即ち、共産党の一党独裁の権力機構と、各級政府は行政体でもあり企業体でもある

という構造のもとでは、行政府の役人はこれから展開しようとするプロジェクトに対し

て自由にそれを行う企業を選任することができ、その企業が自分の親族の場合、収益は

自分の近辺(きんぺん)に蓄財されて行きます。これは親族でなくても同様に行うこと

ができます。ここにはチェック機能が入り込む余地はありません。

 

10.但し、2012年12月17日の人民網を見ると、中華人民共和国の経済フォー

ラム(、「中国の構造調整」フォーラム)において、①.「政企分開」(行政と企業の

職責分離)、②.「政資分開」(行政管理者と国有資産所有者の職責分離)、③.「政

事分開」(政府と事業体の分離)が必要であるといった意見のあったこと、そして、

④.「経済活動の中で、政府が『選手』と『審判』の両方を務めてはならない。必要な

ときのみ手を出す。手を出すときも慎重でなければならない」と言った項目を挙げてい

る点も紹介しておきます。人々は改革が必要だと認識をしています。

 

11.中華人民共和国の土地は公有制です。生産手段は、国有、村有、集団有など言い

分けることはできると思いますが、それらはそれらの生産手段を調達運用するさまざま

な事業主体の所有と考えれば、資本主義諸国の所有制度と変らないと言うことができま

す。所得の基本は成果主義です。そしてまた中華人民共和国は、改革開放による市場経

済を導入することによって、自分たちが計画した経済政策を遂行できる外国企業(技術

と資金)を取り入れることができ、社会を大きく発展させることができました。

 

12.ここで一つの自問を行います。それは、「このような中華人民共和国は社会主義

国家か?」というものです。結論は否です。11月20日のブログ「希望について」で

は、中華人民共和国が社会主義社会であることを前提に記事を書きました。しかし果た

して本当にそうなのだろうかと思い直すところから始めてみると、社会主義は終焉した

という結論に至ります。

 

13.中華人民共和国の所有と分配は既に社会主義のそれではありません。しかし、同

時にまた、温家宝氏の一族の蓄財報道に見られるような例は、中国社会が共産党の一党

独裁という社会主義の残滓を抱えているが故に生じるということもできます。

 

14.つまり、中華人民共和国は、彼ら自身が言っているように「社会主義市場経済国

家」であり、経済は改革開放によって市場経済へと変換を遂げたにもかかわらず、社会

主義の残滓を抱えているということです。ではどこが社会主義なのでしょうか?それ

は、第一に、土地の公有(国有、集団有を含めて公有と呼びます)制度が該当します。

第二に、まさしくそれは社会主義の負の部分に他ならない中国共産党による一党独裁の

統治制度です。

 

15.この第二の負の部分の改革に、中国の人々はこれから向かいます。既にそれに向

かっている人々のあることは御承知の通りです。そして、何故、改革が必要なのかとい

うことを、中国の人々の分かりやすいであろう表現で言えば、現代中国の人々と、中国

共産党の一党独裁という力によって人々を抑え込む統治機構の間には、解決しがたい諸

矛盾が内在し、その解決のためには、二党以上による政党政治と議会による民主主義に

よって解決を図る衆人の知恵と政治制度が必要だからです。

 

16.中国共産党の人々は、彼らの「第18期中央委員会第三回全体会議コミュニケ」

を見ても分かる通り、「社会主義」という言葉にこだわります。何故なら、この「社会

主義」という言葉にこそ、彼らの存在を存在たらしめている「共産党一党による独裁統

治=社会主義の残滓」があるからです。しかし、この政治制度はその役割を終えまし

た。同格、同等、共に中国と世界の人々に責任を持つ二党以上の政党による政党政治へ

と、中国は道を開かなければなりません。

 

 B.新中国のビジョン

 

1.新中国のビジョンは、中国の人々の問題です。中国には、既に、零八憲章が存在し

ます。 新公民運動、人権活動、憲法運動を進める改革派の人々が存在します。中国民主

党の人々が存在します。自分たちの権利と、失った損失の回復を政府に要求する無数の

人々が存在します。チベットと新疆ウイグル自治区の人々は独立を求めています。そし

て中国共産党には改革派の人々が存在します。この人々によって新中国のビジョンは描

かれます。願わくば、①.新中国は「互恵・平和」の平和国家であってほしいこと、

②.その理念は、自由諸国が目指す「ヒューマニズムと公共の旗を高々と掲げた社会」

と同一のものであってほしいことを、付け加えさせてください。

 

2.土地の扱いについて

 

a) 現在、公有地となっている土地の扱いについては、相当の慎重さが必要です。現代

中国は富が偏在します。外国資本も参入します。農村部の共同所有地の場合、払い下げ

られた後、小規模土地所有者の土地が買い占められ、以前の地主と小作人のような関係

が生じては、それは改悪となります。また都市部の配分については、それを行う部門は

利権の巣窟となる可能性もあります。手に入れた土地を転売することによって巨万の富

を得ようとする者も現れるでしょう。こういう事態が生じた場合、改革は水泡に帰し、

持つ者と持たざる者との貧富の差は、今以上になる可能性もあります。この差は所有権

によって固定的なものともなります。広い中国でかかる事態が生じるに至った場合、そ

れはもう混乱以外の何物でもありません。

 

b) 零八憲章では、「最高民意機関に対し責任を負う国有資産管理委員会を設立し、財

産権改革を合法的に順序だてて展開し、財産権の帰属先と責任者を明確にする」と、書

いています。これだけでは不十分です。贈収賄に対する厳格な罰則と、上記委員会に対

する監視倫理委員会と売買追跡委員会を設け、各委員会は売買や転売を禁止する権限を

持つ、と言った措置まで必要です。それでも、外資や土地を取得することによって利益

を得ようとする人々を代弁する学者や政策提言者は出現するものなのです。土地の公有

を維持することも選択肢としてあります。これを決定するのは中国の人々です。討議は

その経済効果まで含めて、徹底して行われる必要があります。

 

 

C.結語

 

1.中国の社会主義は終焉しました。今後、中国の人々は、社会主義の残滓である政治

制度の改革に向かいます。そして改革者たちは、自らの行為を基礎づける信念に、「ヒ

ューマニズムと公共の旗を高々と掲げた社会」の建設を堅固に据えて進んで行きます。

彼らの信念は自由諸国の我々の信念と同一のものです。そして中国は更に発展します。

 

 

                イチョウ

 

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