日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

中学生・高校生のための自由主義講座 4 -社会契約-

2016年07月16日 | 日記

 社会契約

 

1.6月19日に書いた格差の記事で、世界の中の富の偏在について述べました。この時、この世界の現状を報告したNGOのオックスファムの政策責任者であるウェイン・クリプケ氏が述べられて

いる次の言葉を紹介しました。それは、「ルールに則って一生懸命働けば報われる、という社会契約が破たんしている」というものでした。ここに「社会契約」という言葉が出てきました。今回から

「社会契約」について考えます。

 

2.EUに留まるか、離脱するか、イギリスが6月23日に実施した国民投票で、離脱票が残留票を僅差で上回りました。その結果、保守党の党首がキャメロン氏からテリーザ・メイ氏に代わり、メ

イ氏は、7月13日、イギリスの首相に就任されました。メイ氏の就任演説の一節を引用します。それは次のように述べられています。「少数の特権者のためではなく、われわれ全てのための国にす

る」(ロンドン時事)。これは、社会主義国のリーダーの発言でも、社会主義者の発言でもありません。自由と民主主義の国であるイギリスの保守党の新党首であり、新しい首相の言葉です。とは言

え、イギリスの行方はまだ分かりません。スコットランドや北部アイルランドはイギリスから分離するのか、その場合、イングランドはどのような選択をするのか、イギリスはイングランド地方のみ

となり、孤立主義的な高福祉国家を目指そうとするのか、その働き手はどう確保するのか、再びEU残留を問う国民投票、若しくは、議会採決を行うのか、或いは、他の道を選ぶのか、まだ何も分か

りません。EUを去るにあたって、メイ新首相は、国民(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の絆(きずな)と団結を訴えられています。時として、民主主義による投票

行動は、それが二者択一(今回のイギリスでは残留か離脱)の選択である場合、その結果は、投票を提案したリーダーの意志とは異なったものとなることを、今度のイギリスの国民投票は示しまし

た。このイギリスの国民投票と、これからイギリスが、どように振る舞い、何を決定し、どのような国になって行くかは、歴史の壮大な学習の場となります。中学生・高校生の諸君にとっても、こ

れ以上の政治と歴史の学習の機会はありせん。是非、注意深く見守ってください。 

 

3.メイ首相は、就任演説において、国民の団結とその団結によって実現しようされるイギリスの社会像を示されました。そこには、社会正義の実現、不公平と闘うこと、特権階級とは実社会におい

て様々な差がある人々と対話し、政策に吸い上げること、そして、イギリスが世界で新しい力強い役割を築くこと、が述べられています。これは、メイ首相が国民に向けて発せられた約束です。そし

てイギリス国民がこれを是認すれば、ここに暗黙の合意が成立します。私たちは、これを社会契約と言われているものだと解して良いと思います。

 

 

    

       夏雲

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする