新・仏像ワンダフル!

千年の時を超えて仏像との新しい出会い
いやいや街を見渡せばよく似た人がいたような・・

食堂(観音堂)の炎上

2015-11-27 22:51:03 | 京都・東寺(教王護国寺)
 食堂の巨大な木炭のような四天王を見上げて
なぜか穏やかな感じがすると書きました。

 ですが国の重要文化財を解除されてなお、そのままの姿で
食堂にたたずむのにはどんな訳があるのでしょう?

 東寺に関連した書物にも詳細はほとんど触れられていないので、
少しさかのぼって探してみると「芸術新潮 1995年7月号」
の記事に顛末が書かれていることがわかりました。

 

 20年前の平成7年まさにこの時、昭和5年に燃えた4体のうち2体の
持国天と多聞天が修復されて「東寺国宝展」に出品、
もう2体はまだ資金集めの段階だということだったんですね。
実に60余年陽の目を見ることが無かったようです。

 

 向かって一番右側、「持国天」の見たままの印象です。 

 表面を樹脂で加工し風化を防いでいるのですが
じっと見つめていると中からまだ熱が放出しているかのように
膨張してくる感じがしました。

 昭和5年12月21日、弘法市の法要の最終日の夜に火鉢を
食堂内にしまった際、炭が燃え残っていて座布団に引火し
それが瞬く間に燃え広がり本尊の千首観音と四天王も炎上
してしまったというわけでした。

 なお壁の方から火が回り、中心部にあった千首観音は全焼を
免れて黒焦げにはならなかったので、昭和40年に修復され
現在は宝物殿に安置されています。それも後ほど観ていきます。

  さて四天王は憤怒の表情で本来おっかないのですが、
平安の世から平成の時を迎えて炭になっても高楊枝、
達観にも似た泣き笑いの顔のように見えてきますね。