chuo1976

心のたねを言の葉として

「空の嘘」   谷川俊太郎

2013-02-05 05:18:59 | 文学
「空の嘘」   谷川俊太郎




空があるので鳥は嬉しげに飛んでいる

鳥が飛ぶので空は喜んでひろがっている

人がひとりで空を見上げるとき

誰が人のために何かをしてくれるだろう



飛行機はまるで空をはずかしめようとするかのように

空の背中までもあばいてゆく

そして空のすべてを見た時に

人は空を殺してしまうのだ



飛行機が空を切って傷つけたあとを

鳥がそのやさしい翼でいやしている

鳥は空の嘘を知らない

しかしそれ故にこそ空は鳥のためにある



<空は青い だが空には何もありはしない>

<空には何もない だがそのおかげで鳥は空を飛ぶことが出来るのだ>
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