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心のたねを言の葉として

見せかけの豊かさ 虚飾の日本 安倍晋三の嘘   関川宗英

2021-12-31 16:52:42 | 新自由主義

見せかけの豊かさ 虚飾の日本 安倍晋三の嘘   関川宗英



 2021年12月、基幹統計の改竄がまた問題になっている。

 国交省が、基幹統計の集計に使う建設業者の受注実績の調査票を改竄したというものだ。

 その始まりは2013年からという。改竄は13年から8年間も続けられていたのだが、電子化して「永年保存」しているデータも、多くが書き換え後のものであることも報道されている。検証は極めて困難だという。



 複数の国交省関係者によると、書き換えは年間1万件ほど行われ、今年3月まで続いていた。二重計上は13年度から始まり、統計が過大になっていたという。

 同省建設経済統計調査室は取材に、書き換えの事実や二重計上により統計が過大になっていたことを認めた上で、他の経済指標への影響の度合いは「わからない」とした。4月以降にやめた理由については「適切ではなかったので」と説明。書き換えを始めた理由や正確な時期については「かなり以前からなので追えていない」と答えた。 (2021/12/15 朝日新聞)



データ改竄の検証は困難

 国土交通省が基幹統計の集計に使う建設業者の受注実績の調査票を書き換えていた問題で、同省が電子化して「永年保存」しているデータも、多くが書き換え後のものであることがわかった。書き換え前の正しいデータが行政側に残っていないことになる。政府は2013年から8年間続いていた「二重計上」の度合いや、GDP(国内総生産)への影響を検証する構えだが、ハードルは高い。 (2021/12/18 朝日新聞)



 国土交通省は20日の参院予算委員会で、国の基幹統計「建設工事受注動態統計」を同省が無断で書き換えて二重計上していた問題について、二重計上されていた2020年1月〜21年3月までの15カ月間の受注実績を新たに算出し直したところ、1月あたり1.2兆円の差額が生じたと明らかにした。 (2021/12/20 毎日新聞)



 2013年と言えば、第二次安倍政権が発足し、アベノミクスが始まったころに当たる。

 今回のように、基幹統計の改竄が、主要な経済指標であるGDP(国内総生産)の数字を上げようとする工作だったのではないかといった疑惑は、2018年の勤労統計の問題でも取り沙汰された。

 GDPといえば、その算出方式を見直したのは2016年のことだ。安倍政権は2016年12月に国際的なGDPの算出基準にならって、計算方法を変更した。それによって名目GDPは10%も大幅にアップした。その恣意的な数字を持ち出して安倍首相は「名目GDP過去最高」などとアピールしてきた。

 建設業受注統計や勤労統計など各種統計の改竄、GDP算出方式の変更など、公明党が務めてきた国交相の責任も含め、アベノミクスの成功を見せかけるための疑惑の追及は終わらないだろう。




1 2018年厚労省の統計不正問題

 統計法は統計を「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」と定めている。

 国の景気動向の判断、経済政策決定の指標となる重要な統計を「基幹統計」と定め、国勢統計や国民経済計算など、53の統計が指定されている。

 今回の国土交通省のデータ改竄は「建設工事受注動態統計」だが、これも基幹統計の一つである。

 

 2018年、問題になった統計は、厚生労働省の「毎月勤労統計」だった。やはりこれも基幹統計だ。

 毎月勤労統計の調査は全数調査すると定められているが、1/3しか実施してしていなかったことから始まり、続々と不正調査の実態が露見した。

 労働者の不正な賃金統計は、賃金レベルを雇用保険金等の支払いでは低めに、アベノミクスの成果では高めに算出するために利用されていたのではないか、賃金改善をアピールしたい政権の意向が働いたとの疑念、国会では次のような質疑があった。

 

国民民主党 玉木代表 

「自分たちに都合のいい統計手法に変更していく流れが作られているのではないか。まさにアベノミクスの成功を演出するための、統計改革という名を借りた恣意的な統計の操作を、官邸主導でやったのではないか。」

安倍首相

「今回の統計不正と、毎月勤労統計調査のサンプリングのやり方の変更は別の問題であるとはっきりさせておかないと。もちろん意図的に混同させようとしているのではないだろうが。(平成27年に)賃金について国会で質問を受けたので、答弁を準備する際に、その年の6月の賃金の伸びについて調査対象事業所の入れ替えの影響があった旨の説明を(秘書官から)受けたが、私からは何ら指示をしていない。」    ( 2019/2/18 衆議員予算委員会)

 

 安倍晋三は否定したが、統計が政権の都合に合わせて操作されていたという印象を多くの国民は持った。

 国の統計への信頼は大きく損なわれた。

 また基幹統計の改竄は、海外からの信用も失いかねない事態だったといえる。

 

 

2 名目GDPとアベノミクス

 2018年の年頭所感で、安倍晋三は次のように語っている。

「6年前、日本には未来への悲観論ばかりがあふれていました。しかし、この5年間のアベノミクスによって、名目GDPは11%以上成長し、過去最高を更新しました。生産年齢人口が390万人減る中でも、雇用は185万人増えました。今や女性の就業率は、25歳以上の全ての世代で、米国を上回っています。有効求人倍率は、47全ての都道府県で1倍を超え、景気回復の温かい風は地方にも広がりつつあります。あの高度成長期にも為しえなかったことが、実現しています」

 この年頭所感が発表された2018年の12月、厚労省のデータ改竄で国会は大きく揺れるが、内閣府はその渦中の12月13日、「2012年12月を起点とする景気回復の長さが17年9月時点で高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超えたと正式に判定した」(2018/12/13 日本経済新聞)と発表する。

 第二次安倍政権が経済政策「アベノミクス」をスタートさせた2013年から2017年9月まで日本のGDPは常に右肩上がりで、57カ月間続いた「いざなぎ景気」を抜いて戦後2番目の長さになったと言うのだ。

 

 そして、さらに「景気拡大」は続き、2019年1月には、戦後最長の小泉政権下での「いざなみ景気」も抜き、戦後最長になったと発表した。

 茂木敏充経済再生担当相は関係閣僚会議で、24年12月に始まった現在の景気拡大局面が今月で74カ月に達し、「いざなみ景気」(14年2月~20年2月、73カ月)を超えて「戦後最長になったとみられる」と表明した。 (2019/1/29 産経新聞)

 戦後最長の景気回復、とメディアは伝えたが、その際に使われる「名目GDP」に対する信頼も取り沙汰されてきた。

 というのは、2016年12月、内閣府はGDPを新しい算出基準によって計算すると発表した。その結果、名目GDPは約10%、50兆円も増えたからだ。 

 

 名目GDPとは、簡単に言えば「消費+投資+政府支出」なので、このうちどれかを増やせば数字が上がる。

 内閣府は、これまでは「経費」と見なしていた各企業などの「研究開発費」を「投資」と見なして名目GDPに加えることにした。これだけで年間約20兆円の「研究開発費」が名目GDPに上乗せされた。

 他にも、これまでは加算しなかった「特許使用料」や「不動産仲介手数料」なども次々と名目GDPに加算することにした。

 今まで名目GDPの計算に入れなかった項目を次々と上乗せする「水増し方式」に変更することで、安倍政権は、あたかもアベノミクスが成功して日本のGDPが成長しているかのように演出しているというわけだ。

 

 GDPの計算方法の見直しは、国際的な算出基準にならうものだという。その限りでは見直しをすることに問題はない。しかし、計算方法を変えたことで結果的にGDPが増えたとしても、実体経済は変わったわけではない。にもかかわらず、GDPの数字の変化を、あたかもアベノミクスの成果であるかのようにアナウンスすることは欺瞞だろう。

 

 





3 2021年大晦日

 2021年12月、国土交通省のデータ改竄問題。

 GDPの算出にこの統計データを使う。全国の都道府県の建設業の受注の数字が大きくなれば、その分GDPも増加する。「アベノミクスによってGDPが成長した」と安倍晋三は自らの経済政策を自画自賛してきたが、同じようなことが今回も明るみに出たわけだ。

 

 様々な疑惑、事件、嘘を繰り返してきた安倍晋三だが、第2次安倍政権は選挙で勝ち続け、8年近くの史上最長の政権となった。

 しかし、コロナ対策の渦中、2020年9月、任期途中でまたも政権を投げ出した。

 

 2021年は菅政権の迷走から始まったが、コロナ禍2年目、東京オリンピックを強行開催する。そのお祭り騒ぎのなか、満足な医療を受けられず自宅などで死亡したコロナ感染者が8月だけで250人いた(2021/9/14 朝日新聞)。

 

 2021年10月、今度は菅義偉が政権を投げ出した。岸田政権が誕生する。秋の衆議院選挙で自民はまたも圧勝した。

 

 2021年12月30日、東京証券取引所では年末の終値としては32年ぶりの高値水準、とメディアは伝えている。

 一方、「世界上位1%の超富裕層の資産が今年、世界全体の個人資産の37.8%を占めた」(2021/12/26  共同通信社)と、貧富の格差はさらに広がっている。新自由主義者たちの勢いは増すばかりだ。

 

 2021年の日本は、見せかけの豊かさの中、混迷をますます深めて暮れようとしている。

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