キャハハ
「スゴーーイ」
澄んだ夜空に、空音の甲高い声が響く。ロケット花火を発射する度に、おれ達は歓声をあげた。細い花火は、パシュ―ン、という高い音をたてて、次々に、真っ暗な海に吸い込まれていく。
おれ達は、マナの花火を見届けたあと、海辺で手持ちの花火をしていた。みんなで金を出しあって、コンビニで買った花火セット。花火を始める頃には、京一や刃も仕事を終えて、リズも京太郎を連れてやってきた。
「ビール飲むか花火するか、どっちかにしなさいよ」
岩陰で1人、こっそりとビールを飲みつつ、片手で皆にあまり人気のない線香花火をしていたら、せいあに声をかけられた。
「じゃ、ビール飲む」
そう答えたとき、線香花火の火の玉が、ポテッと落ちた。
「あ」
かすかな明かりが消えて、辺りは真っ暗になった。
「もー。今から打ち上げ花火するから、武蔵、呼んできてくれってさ」
「なんでここにいるって分かったの」
「『どーせ、そこら辺で酒飲んでんだろ』って、ヨースケが。『せいあちゃんが行くと、武蔵、喜ぶだろーから』って」
「あ、バレバレ?」
おちゃらけて笑うと、ふと気づいた。
こいつの声、顔が見えないと、余計、感情が読みとりにくい。
「あれーー?打ち上げ、ねぇぞー。あっ、ラウ、テメー、返せっ」
岩陰から出て、みんなの方を見ると、マサキが打ち上げ花火の筒をくわえたラウを、慌てて追いかけていた。
「あーらら。ありゃ当分捕まんねーぞ」
おれはラウにタバコを取られたときのことを思い出して、笑いながら言った。横を見ると、せいあも笑っている。
「せいあー、武蔵なんかと何してんの。こっち来なよー」
「うっせ、樹里」
「うん。じゃー、あたし行くわ」
「あ、待って」
おれは、せいあを呼び止めて、岩陰から棒の花火を2本拾い上げると、
「せっかくだから一緒にやろーよ」
と、言った。
するとヤツは例のごとく、
「…何、そんな持ってきてんの。あんたネクラ?」
と、しらけた声を突き刺した。
「ばかやろう」
お前の名前の頭文字は、サドのSか。
ちなみに、おれの名前の頭文字は、断じてマゾのMではない。
100円ライターで火をつけると、花火は勢いよく火を噴き出した。
「ねぇ」
「ん?」
せいあが隣で、自分の花火を見つめたまま、言った。
「あんた、なんでこの街に帰ってきたの」
「へ!?」
思いがけない問いに、ちょっと考えた。
少し離れた場所では、みんなが思い思いの花火をして、はしゃいでいる。ラウは逃げ回るのに飽きたのか、今はもう、何も口にくわえていなかった。
≪つづく≫
★最後まで読んでくれて、ありがとうございます!★
人気blogランキングへ←ランキング、参加してます♪よかったら、応援クリック、お願いします☆
「スゴーーイ」
澄んだ夜空に、空音の甲高い声が響く。ロケット花火を発射する度に、おれ達は歓声をあげた。細い花火は、パシュ―ン、という高い音をたてて、次々に、真っ暗な海に吸い込まれていく。
おれ達は、マナの花火を見届けたあと、海辺で手持ちの花火をしていた。みんなで金を出しあって、コンビニで買った花火セット。花火を始める頃には、京一や刃も仕事を終えて、リズも京太郎を連れてやってきた。
「ビール飲むか花火するか、どっちかにしなさいよ」
岩陰で1人、こっそりとビールを飲みつつ、片手で皆にあまり人気のない線香花火をしていたら、せいあに声をかけられた。
「じゃ、ビール飲む」
そう答えたとき、線香花火の火の玉が、ポテッと落ちた。
「あ」
かすかな明かりが消えて、辺りは真っ暗になった。
「もー。今から打ち上げ花火するから、武蔵、呼んできてくれってさ」
「なんでここにいるって分かったの」
「『どーせ、そこら辺で酒飲んでんだろ』って、ヨースケが。『せいあちゃんが行くと、武蔵、喜ぶだろーから』って」
「あ、バレバレ?」
おちゃらけて笑うと、ふと気づいた。
こいつの声、顔が見えないと、余計、感情が読みとりにくい。
「あれーー?打ち上げ、ねぇぞー。あっ、ラウ、テメー、返せっ」
岩陰から出て、みんなの方を見ると、マサキが打ち上げ花火の筒をくわえたラウを、慌てて追いかけていた。
「あーらら。ありゃ当分捕まんねーぞ」
おれはラウにタバコを取られたときのことを思い出して、笑いながら言った。横を見ると、せいあも笑っている。
「せいあー、武蔵なんかと何してんの。こっち来なよー」
「うっせ、樹里」
「うん。じゃー、あたし行くわ」
「あ、待って」
おれは、せいあを呼び止めて、岩陰から棒の花火を2本拾い上げると、
「せっかくだから一緒にやろーよ」
と、言った。
するとヤツは例のごとく、
「…何、そんな持ってきてんの。あんたネクラ?」
と、しらけた声を突き刺した。
「ばかやろう」
お前の名前の頭文字は、サドのSか。
ちなみに、おれの名前の頭文字は、断じてマゾのMではない。
100円ライターで火をつけると、花火は勢いよく火を噴き出した。
「ねぇ」
「ん?」
せいあが隣で、自分の花火を見つめたまま、言った。
「あんた、なんでこの街に帰ってきたの」
「へ!?」
思いがけない問いに、ちょっと考えた。
少し離れた場所では、みんなが思い思いの花火をして、はしゃいでいる。ラウは逃げ回るのに飽きたのか、今はもう、何も口にくわえていなかった。
≪つづく≫
★最後まで読んでくれて、ありがとうございます!★
人気blogランキングへ←ランキング、参加してます♪よかったら、応援クリック、お願いします☆