20080303発売
谷川俊太郎 和合亮一
「世界の中の微細な力を信じて (特集 詩のことば)」
『ユリイカ』 40(5) (通号 550) pp.171-183 青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%BB%ED%A4%CE%A4%B3%A4%C8%A4%D0
谷川俊太郎 和合亮一
「世界の中の微細な力を信じて (特集 詩のことば)」
『ユリイカ』 40(5) (通号 550) pp.171-183 青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%BB%ED%A4%CE%A4%B3%A4%C8%A4%D0
現代のフローとは?
(略)
谷川 (略)
一方で歴史的な経緯を踏まえた、思想的な詩の評論とか詩を『現代詩手帖』なんかに書く詩の専門家の一群がいて、他方で自費出版で詩集を出している相当な数の詩人たちがいるわけです。それの象徴がこないだ潰れた新風舎だったわけですけど、最盛期は二百何十人もの社員を抱えて、赤坂に大きなビルを構えていました。僕は社長の松崎義行さんと会ってよく話をしてたんですけど、彼は自費出版というのが詩の基本だ、という信念を持っていて、それは僕にとって盲点だったんです。自費出版で出る詩なんてどうせ大したことないっていう思いこみをちょっと正されたような気がして、僕はわりと肩入れしていたんです。それでオフィスに行ってみるとあまりに巨大で、詩のマーケットってこんなに広かったんだと思って驚いたんですね。そうしたら潰れかたもまた本当に早かった。でも、松崎さん自身の個人的な資産って皆無なんですよ。普通、急激に成長した青年実業家なんて、いい車に乗って、六本木あたりに出没して高い店をハシゴしたりするじゃない? そういうのが一切なくって、見た目も本当に詩人としか言いようがない感じで。僕はそこも感心したんだけど、商売的にはそれが裏目に出たんだね。要するに彼はフローでだけ商売してたわけで、フローは集まるのも早くて多いけど、なくなるときもあっという間なんです。そこでフローってものがいかに脆いかを知ったところはありますね。
―― 現代の詩の状況を考える上で、ひとつの象徴的な出来事だった気はします。
谷川 そうですね。新風舎は潰れたわけだけど、文芸社は相変わらずがんばってるし、また老舗の出版社がみんな自費出版の部門を設けつつありますよね。商業出版という枠組自体がすごく危機に瀕してるってことがあるから、これからどうなるのかよくわからないところはありますけど、ああいう形態で書かれる詩がなくなるってことはないでしょうね。
何兆歩下がって誰かさんが天才詩人だったとしても、「自費出版で出した詩集はたいした詩集じゃない」なんてどこにも書いてないし、むしろこの文では谷川さんは自費出版をある程度称揚しているでしょう。
それに究極とか真とか、そういうことを言って自己を高踏化した時点で、あなたの論理に従えば、あなたも社会の典型形式にドップリ漬かってます。