今朝の出勤、池上線の最寄り駅の改札の電光掲示板に、「京浜東北線が人身事故…」の文字が流れていた。
これは五反田に出て、山の手で有楽町に行って…と頭の中の乗り換え案内が検索をはじめたが、
東急の駅員さんが、「京浜東北線はもう動いていますから」という声が聞こえて、蒲田に向かうことにした。
蒲田に到着すると、あららエライことに。
東急の改札すら出られなくて、JRの改札まで、人がギッシリと詰まっていた。
ホームに下すと危険ということで、改札、階段前、そしてホームへの入場制限ということで、三段階の関門
が用意されていた。
それでも、誰一人文句を言うことなく、黙って並んでいた。
千鳥亭も文庫本を読みながら、黙って並んでいた。
全身汗まみれだけど、短編小説にのめり込んで、丁度読み切ったときに列が動き出した。
ケイタイの時計を見たら、蒲田駅に着いてから40分が過ぎていた。
「七番目の男」
海岸に一緒にいた友人が波にさらわれてしまうという、村上春樹の短編小説。
3.11の津波のことを思い返し、朝から辛くなった。
これは、小説の最後の五行。
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私は考えるのですが、この私たちの人生の中で真実怖いのは、恐怖そのものではありません。
恐怖はたしかにそこにあります。それは様々なかたちをとって現れ、ときとして私たちの存在を圧倒します。
しかしなによりも怖いのは、その恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうことです。
そうすることによって、私たちは自分の中にあるいちばん重要なものを、何かに譲り渡してしまうことになります。
私の場合には―それは波でした。(村上春樹 『七番目の男』)