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東野圭吾『容疑者Xの献身』あらすじと感想

2013-02-10 08:58:11 | 紙の書籍
文春文庫 東野圭吾『容疑者Xの献身』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
1-19


【あらすじ】
天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。
だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことに…。


【感想】
この作品はテレビドラマを観て、舞台を観てからの変則読み。全編ほぼ、会話と状況と心情の説明なので読みやすい。内容は別として。

作品そのものは、主要な登場人物の誰にも救いのない重く辛い話。人が人を想い、愛し、その人のためにならと信じがたい献身をする。死体遺棄と殺人を犯してまでも。これだけだと一見して、とても美しい話のように思えるが…。 本当にそうなのだろうか?
愛の始まりはまずは自分の気持ちから。そのときに、相手の気持ちはそこにはない。言い方が悪いがあえて書くと、それはエゴ。 
石神が、「こうしたい!こうしてあげたい!」という「愛」という名の正義(正論)のままに突っ走るさまは、冷静に論理的な計算と方法を用いていても、それはやっぱりエゴでしかなく。湯川が石神に話した「歯車」の件は、石神にそう言っているのだと思う。
石神にとって靖子は、生きる希望を与えてくれた女神のような存在だったのだろう。悲しいことにそのことを靖子はずっと知らないままでいて、最後の最後に湯川から聞かされ愕然とする。
これは、靖子の立場からしてみればどうなのだろう? 自分への愛の深さに感じいると同時に、その愛にはおそらく報いることはできないことへの罪悪感に苛まれないのだろうか? 靖子という女性もずるいといえばずるいと思うが。
靖子の娘の美里も、これからどうやって思春期の真っ只中をやり過ごし、大人になっていけばいいのだろう? 
最後の最後まで見事なまでに救いがなく、誰が悪いとか悪くないとか、そんな簡単な理屈で片づけられないことだらけなままこの作品は終わっている。
ラスト、石神の咆哮ともいえる慟哭には胸がつまった。


【余談】
昨年の春、キャラメルボックスの舞台を観劇したときに購入し、そのまま積読に。ようやく読了した。
今回原作を読んでみて、キャラメルボックスの舞台は原作に恐ろしく忠実、というより、そのままだったということに改めて気づいた。『スキップ』もそうだったな。脚本・演出が成井豊だからか?
読みながら舞台が浮かんできて、湯川は岡田達也に、石神は近江谷太朗にしか思えなかった。読んでいくうえで、邪魔にはならなかったからよしとしよう。