晴れときどき化学、ところにより雑想

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リン

2012年03月23日 20時41分13秒 | 元素のお話
リンの元素名は「光をもたらすもの」という意味のギリシア語からきています。
(空気中で発光することからその名前が与えられました)。
  
リンの発見については、ドイツの錬金術師ブラントによって、ヒトの尿を蒸発させて得られた残留物から分離されたのが最初と言われています。

天然には質量数31の安定同位体が100%存在しており、リン灰石などのリン酸塩の形で産出されます。


リンの同素体の主なものとしては、以下のものがあります。

○白リン(黄リン)

不純物(赤リンの薄い皮膜など)で黄色く見えるため、黄リンと呼ばれることが多いです。

リンの同素体の中では最も反応性が高く、空気中で発火するため、水中で保存します。

また猛毒であり、致死量は0.15gです。

経皮吸収されて中毒を起こすこともあるので、使用時には換気が必要になります。
(大気中の濃度は0.1mg/m3以下であることが定められています)。


○赤リン

暗赤色の粉末で、白リンを空気のない条件で300℃に加熱すると得られます。

最近はあまり見かけなくなっていますが、マッチの側薬(箱の方に塗ってある茶色の部分:発火剤)として使われているのが有名です。


リンを含む有機化合物は主に農薬、殺虫剤として使用されています。

これらは、神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)の作用を阻害することにより、害虫に対する神経毒として効果を発揮します。

※なお、これらの殺虫剤はリン酸エステル型の構造を持っているため、環境中で比較的すみやかに分解されるのが特徴です。


生物に含まれるリン化合物の中で代表的なものとしては、DNAやRNAなどの核酸が挙げられます。

さらに生体にとって重要なものとしては、ATP(アデノシン三リン酸)があります。

これはエネルギーを蓄えておきながら必要なときに供給することのできる分子で、ATP分子内のリン酸結合が比較的大きなエネルギーを蓄えていることによるものです。

※細胞がエネルギーを必要とするときには、このリン酸結合を分解することで生じるエネルギーを利用することになります。